世界の崩壊 -内なる声に目覚めよー   作:葱三昧

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第2話  集う戦士たち~犠牲~

「このあたりか……」

 ピッコロは上空から周囲を見回していた。

 昨夜、大きな気が二つ膨らんで、そしてすぐ消えた。一瞬のことではあったが、他の皆も感じ取ってはいるだろう。もしかするとおせっかいな奴らが何人か来るかもしれない。現にいくつかの気はピッコロを目印にするかのようにこちらに向かっている。

 地上に降りたが特に変わった様子はない。遠くに集落があるようだがごく普通の農村のようだ。

「ピッコロさん!」

「よう、おめえも来てたんか」

 賑やかな親子がスタッと目の前に降りてくる。

「孫、それに悟飯か。貴様らも昨日の気を感じただろう?」

「ああ、でっけえ気が二つ。すぐ消えちまったけどな」

「ええ、片方は……ブウだったような」

 そう、そのうちの一つはかつての魔人ブウであった者の気だ。とはいえ、ほんの一瞬。皆、その確信は持てていなかった。

「急いで神殿から覗いてみたんだがな。何もなかった」

「そっかぁ~ じゃあ、地道に探してみるしかねっか」

「と、とりあえずあそこの村に行ってみませんか。何か知ってるかも」

 悟飯の提案を受け入れ、三人は村へと向かって飛び立った。

 

 

「ご、悟飯くん? ……悟飯くんっ!」

 村の外れに降り立つと、意外な顔が三人を迎えた。

「ビ、ビーデルさん、ちょ、ちょっと落ち着いて」

 抱きついて涙を流すビーデルの体を離しつつ、紅くなった自身の顔を悟飯は背けた。

「おお、あなたがたは!」

「どうやら変わった先客がいるようだな……」

 どこかで聞いた声に建物の方を見ると、サタンが驚いた様子でこちらを見ていた。

「おー、サタンじゃねえか。おめえもここに来てたんか」

「いや、奴らは昨日、ここにいたと考えるべきだろう。ブウらしき気の件もある」

「な、なんにしろ、話を聞かせてくれる? ビーデルさん……」

 森に近い農家の建物の中に入ると、昨日までの顛末をビーデルは語り始めた。気を感じ取れないサタンはブウが遊んで迷子にでもなっているだけだ、と思っているようだが、ビーデルは大きな気がもう片方の大きな気に消されるのを感じたという。悟飯達に連絡を、と思っていたところへ彼らが辿り着いたので思わず抱きついてしまった、とも。

「まさかブウに悪の心が戻ったか?」

「サタンさんと一緒にいて、そうなるとは考えにくいですね……。それにそれだとやられてしまった気が誰か、という問題も残ります」

 悟飯の言うように、そもそも感じた気は二つ。サタンとビーデルがここにいることから一つはブウに間違いないだろう。では、彼と戦ったであろう気は誰のものか、と謎が残るのだ。

「しかし万一、ブウが暴れたのだとしたら、止められるのは孫と悟飯、後は……悟天とトランクスのフュージョンくらいだぞ。俺ではもちろん、ベジータでも厳しいだろう」

「とはいえ、他のみんなに伝えないわけにもいかないでしょう。父さん、界王様から皆さんに声をかけてもらえますか?」

「おお、まかしとけ」

 

 

 界王様を通じ、村に戦士たちは集まって来ていた。天津飯と餃子、クリリン、ヤムチャ。

 姿の見えないベジータはそもそも拒否、18号は子守、悟天とトランクスに至っては遊びが忙しいらしい、とのことだった。

 訝しがる村人には獣退治の助っ人、ということでサタンのお連れ様扱いで納得してもらっている。数が多いので数日かかりそうだ、とも。

「では、揃ったところでもう一度説明をしよう」

 ピッコロが場を取り仕切り、状況を伝える。とはいえ、ピッコロ自身も何が起こっているのか、わからないことは多い。

「要するに森にいる動物を退治しようとしたら、何者かがいたってことか?」

 クリリンが簡潔に内容を繰り返した。天津飯がそれを受けて続ける。

「その何者か、と魔人ブウが戦い、どちらかが死んだ……」

「そ、そんな奴ら相手に俺らが何をするっていうんだよ?」

 ヤムチャは既に怯えている。いや、口にしてはいないが皆そうなのだ。ピッコロやベジータでさえも敵わないレベルの話なのだから。

「戦わなくてもいい、何者がいるのかそれを確認せねばならん」

「またへんてこな宇宙人とかが来たんじゃねえのか?」

 悟空がピッコロに尋ねるが、ピッコロは首を振った。

「いや、サタンやその娘の話によると、この事件が起きたのはここ最近だ。さすがに地球に向かってくる者がいれば前もって気づいていたはずだ。どこかの宇宙人というのは考えにくい」

「セルみたいな人造人間ってことはないんですか?」

「ないだろう。神殿から覗いた限り、森にはそれこそ畑を荒らす動物しかいなかった。ネコかタヌキのような生物の群れだ」

「ああ、そっちなら俺でも何とかなるかな、はは……」

 悟飯とピッコロの問答にヤムチャが情けなく笑う。

「まあ、とりあえず森の中探してみっかぁ」

 悟空の言葉に皆、一様に頷く。村人との折衝役も兼ねてサタンとビーデルを建物に残し、一行は森に向かうことになった。

 

 

「うひゃー、派手に吹っ飛んでるなぁ」

 上空から近づくと、円状に木々が吹き飛ばされ、地面が抉られている場所があった。そこへ一斉に降り立つ。ヤムチャが中心に降りた時、悟空以外の皆は例の光景を思い出していたのは暗黙の了解である。

「思っていたより広いな……危険だが別れて探すとしよう」

 人造人間の捜索で腹を貫かれたヤムチャの例もある。先程、皆が思い浮かべた光景が齎した作戦として、戦闘力の高い悟空と悟飯、そしてピッコロの三人を中心に分かれることになった。

 悟空はクリリンと。悟飯とヤムチャ。

 そして戦闘力の劣るピッコロの元には天津飯、餃子と三人。

「何か見つけたら、以前のように気を高めよう」

「ああ、そういえばサタンの請け負った獣退治はどうするんだ?」

 ヤムチャは少しでも活躍したいのか、そんな質問を投げかける。

 ピッコロは元・神である。自然の生態系の変化に口も手も出さないが、人間が害獣とみなした生物を排除するのならば止める道理はない。ただし、あくまでも、メインは謎の気の捜索であることは皆に注意していた。

 

 

 

「おーい、悟空。何かいたかぁ?」

 数時間後、森の中を探索していたクリリンは上空にいた悟空に声をかけた。

「いや、さっぱりだぁ。なんもいやしねえぞ」

「だよな。ブウが分裂でもして遊んでたんじゃないのかなぁ」

 集合の約束の時間が近づいている。見つからなかった場合は、数時間で元の爆発地点に戻るよう取り決めていた。クリリンも浮き上がり、集合場所に戻ろうとする。

「お、悟空にクリリン! どうだった?」

 ちょうどそこへ同じように集合場所を目指す悟飯とヤムチャが近付いてきた。

「こっちはさっぱりですね、父さんたちはどうでしたか?」

「狼牙風風拳を使う相手すらいなかったぜ」

 ヤムチャは動物相手に本気を出すつもりなのか、冗談なのかわからない発言をしていたが、いずれにせよ両チームとも謎の気どころか畑を荒らす害獣すら見つけられなかったのだ。

「仕方ない、一旦帰りますか……」

 そうクリリンが声に出した刹那だった。

「ひっ!」

「な、なんだってんだ! このバカでけぇ気は!」

「マズイです! 急がないと!」

 凄まじい気が森の奥で膨れ上がった。そして空へ駆け抜けていく閃光――

 悟飯の叫びに我を取り戻し、皆その場へ向かうのだった。

 

 

――数分前

「天さん、何もいない」

「ああ、畑を荒らす生き物とやらもな……。だが餃子、気を付けろ。ブウが襲ってくるかもしれんのだからな」

 ピッコロの近くとはいえ、天津飯は気を抜けなかった。この三人では誰一人、ブウには勝てない。一瞬で三人とも殺される可能性すらあるのだ。

「ダメだな」

 空に昇っていたピッコロが降りてきた。何も見つからなかったようだ。

「ああ、その謎の気とやらは感じない。害獣もな」

 天津飯が報告する。餃子も近くでまだきょろきょろしてはいるが、実際には捜索は諦めているだろう。

「フン、しかたない……。戻るか。ああ、例の動物の群れならさっきそのあたりにいたぞ。特に珍しくもない昔からいるやつだ。名前は知らんがな」

「俺はわざわざ殺生したくはないな。もう暗殺をやめてから無闇に生き物を殺したくはない」

「でも、村の人困る。ボク、ちょっと見てくる」

 餃子がそう言ってピッコロの示した方へ向かう。ピッコロと天津飯もやや遅れてその後を追った。

「天さん、獣の群れ、いた」

 餃子が嬉しそうに叫んでそちらへどどん波を撃とうとしている。まだ追いついていないとは言え、天津飯の目には微かに森の中を走る数匹の生き物が映っていた。

「どどんっ!」

 餃子の気はそれほど大きくなっていない。ただの動物相手だ。気を溜めずに、軽く撃つつもりであろう。高く掲げた餃子の指が光った時だった。

「――っ!」

「グッ……」

 天津飯もピッコロも思わず、空中で静止した。いや、正確には動けなかった。一瞬にして巨大な気が膨れあがったのだ。

「まずい、逃げるぞっ!」

「チャ、チャオズゥ――!」

 叫ぶ天津飯とピッコロの目の前で、餃子の姿は空を貫く光の中で溶けていった……。

 

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