(2021/3/7編集)
俺は昔、イジメられていた。魔法が使える。そう分かった日からだった。
国の魔法適正検査を学校側が容認し、検査を受ける事になったのだが、意外と直ぐに分かるモノらしく、俺ともう2人が魔法が使えると分かった。
その2人共女子で、みんなから『おめでとう』と明るく優しい態度を取られていた。
しかし俺は違った。男子からは『なんでお前だけ使えるんだよ!』と嫉妬の声。女子からは『うわ、魔法使えるとかキモッ』と何故か俺だけ言われる始末。
こんなにも不平等なのかと、そう思った。後々知ったが俺をよく思わないとある教師が、俺が風邪の日に何か生徒に言ったらしい。実を言うと魔法適正が発覚した女子2人も結構恨まれていて、その教師によって良くも悪くも女子2人を救う事になったみたいだ。
だがその不満や嫉妬は、段々と言葉では無く拳や蹴りと言った暴力に発展していった。最初は軽いパンチ程度だったが、中学に上がる頃だろうか。殴られ、蹴られ、血を吐き続ける様になったのは。こんな日々を終わらせたい。もう生きたくない。そう今まで思い続けた。
生きたくないから自殺しようとしても恐怖が上回る
終わらせたいと思っても俺には知恵も力も無かった
そんな俺の心の叫びは神様に届く筈も無く、憂鬱な日々を過ごしていた。
故に俺は、全ての場所や人から身を守る為に魔法科学校に行く事にした。そこなら俺の力は普通なのだ。
そんな淡い期待だけだった。
◆◆◆
魔法科高校。現代魔法使いの育成学校と言っても過言では無い場所であり、僅か9校しか無い国策高等学校だ。その中でも質が良いとされるのは、第一から第三までの三校であり、俺は地元が第一に近かった為、必死に勉学に励んで第一高校の一科生として入学出来た。
イジメのせいで、ノートやら教科書が大変だったが、それでも必死に勉学に励んだ。その結果奇跡の次席入学で入れてしまった。この時ばかりは目を疑った。
しかし勉学だけではまかなう事が出来ないのが魔法。俺は親が魔法が使える訳では無く、平凡な人間だ。突然の能力発覚だったから発覚した頃はどんな魔法か分からないかった。魔法科高校なだけあって、流石に魔法実技の方が勉学よりも優先される。だからどれだけ勉学が良かろうとも、実技が酷いと入れない訳である。悲しいね。
俺が得意な魔法は精神干渉。得意な技は死神の鎌。相手に攻撃した時に、相手自身が死んだ時のイメージを植え付け、その様子を脳内に暗示させる事によって内側から崩壊させる。まさに恐怖心に駆られるとはこの事。
因みに試験で披露した際は、ピエロが相手をサーカスの道具で殺す死のイメージを植え付けた。
四葉元造の死神の刃とよく似ているが、俺は相手がどんな様に死ぬかを植え付けるから若干違う。というかあんまり四葉元造の能力をしっかり覚えてないから合ってるかどうか分かんないな。
本来は少し違うかもしれんが、俺は生憎と語彙力が少し足りないもんでな。こんな感じ、としか言えん。
……ん?魔法の使い方が狂ってるだって?失礼な事言うね。俺にとっては狂ってなんかいないんだよ。なんなら平然と仲間を信じている人間の方が、俺にはよっぽど狂って見えるよ。人によって価値観は違うから、俺は他人の方がよっぽど狂ってると思う。
その第一高校への入学式。俺は入学祝いに貰ったシルバー・ホーンをお守り代わりに鞄に入れ、左目を包帯で覆った姿で校門をくぐった。現代の治療技術なら義眼を入れれば治るんだけど、俺はあえて今もこの状態である。あの苦しい地獄を忘れない為にだ。あと金が無い。
せめて名門エリートであるこの高校では、平穏に過ごしたいと切に願いたい。流石にここまで来て地獄なんて見たくない。もうイジメられたくは無い。
これでも春休みでだいぶマシになった方なのだ。昔はあまりやらなかったゲームや娯楽をやるようになったし、そのおかげである意味色んな知識が付けられた。
入学式の会場へと足を向かわせる途中で、様々な同級生の顔を見ていた。緊張してそうな奴。陽キャみたいに髪がめっちゃ明るいヤツ。だがそんな奴らよりも目立っていたのは、騒がしい兄妹だった。兄の方は背の高い社畜系のイケメン。妹の方は背はそこまで高くなく、普通の美女であった。まぁお似合いだろう。
但し妹の方は熱弁していて少し五月蝿い。まぁいいや。どうせ俺はクラスどころか学校全体で関わる人なんでほぼいないだろうし。なんなら卒業式まで存在を忘れさられるレベルの自信がある。
にしても、よくよく見たらあれって主席入学の司波深雪だな。つまり隣にいるのは兄である2科生の司波達也という事か……。こいつら、何か隠してそうな奴らだ。
事前に調べた情報によると一部の数字付きの人間が受験してないって知ったから主席辺りがそうじゃないかと睨んでたが……どうやらビンゴっぽいな。
じゃなきゃ主席があんなに騒ぐ訳が無いし。しかも司波って司の字を四にすれば四葉とも読むし。まぁまだ仮定段階だか。
ああいう言い方って事は、おおよそ兄の方に秘密があるのだろうが、深く詮索したら間違いなく死ぬな。脳内記録の関わりたくない奴らランキングトップ5入りさせとこう。信用、駄目、絶対。
おっとそういえば俺の名前を言って無かった。俺の名は
……しかしなんで俺はかなり早く来てしまったのだ。多分1、2時間はある。これめっちゃ恥ずかしいヤツだ。
とりあえず自販機でコーヒーでも買って、近くのベンチで休むとしよう。久々に小説でも読みたい気分だ。こうやって余裕があると平穏に感じる。やはり平穏なのは、安心するし落ち着く。
カチッと缶コーヒーのプルタブを開ける音が響く。電子書籍を読みながらほんのり甘いコーヒーを飲むのは至福の時間だ。社会人になったらゆったりなんて中々出来なくなるだろうし。最も、未来は分からないけど。
◆◆◆
「新入生ですね?会場の時間ですよ」
書籍を読むのをやめて、声を掛けられた方に顔を向けるが……………まさか生徒会の会長とはな。第一のサイトにすら顔が載ってる程の超有名人。まぁ、そりゃここの生徒会長なんて、名誉ある仕事だもんな。
「ご忠告どうも、感謝致します。七草生徒会長」
「あれ?私、自己紹介してないよね?」
「入学前に、ここの入学生や在校生を調べていたので。とは言っても、名前だけですが」
調べては見たけれど、特に平凡な奴は正直ほぼ覚えてないし興味無い。
「それは関心ですね。ところで、あなたの名前は?」
「俺は、禍幽葉です」
「禍幽葉くん……いきなりこんな2人に会うとはね」
「……何か自分、やらかしましたかね?」
「特に無いよ。ただ、先生方の間で噂が広まっているから、会えたらラッキーかな、とは思ったけれどね。
入学試験、七教科平均、百点満点中九十八点。魔法理論と魔法工学。全体平均点が七十点にも満たないのに、両教科共に小論文含めて九十点以上。今までに居ない、超成績優秀者が2人も居るんだもん。しかも片方は2科生だしね」
「その言い草だと、まるで俺が成績優秀者に聞こえますが、所詮ペーパーテストですよ。実技なんてそこまで上手くないんで」
「そんな凄い点数、少なくとも、私には真似できないわよ?しかもあなたは魔法も優れてる。きっと同じ問題を出されても、禍くんのような点数はきっと、取れないだろうなぁ」
「取れないと思ってない人から言われても、全く同情する気になりませんよ」
「君、面白いね。生徒会長である私に堂々と意見を言って来るし、今まで喋っていた時一度も私に目を合わせてくれないや」
「堂々と意見した事は謝ります。しかし生憎と、人間不信でして。特に地位も高くて頭の良い方に絡まれてると生きた心地がしませんので。失礼ですが、そろそろ行かせて頂きます」
スタコラサッサと逃げましょう。こりゃ初日からとんでもねぇ方に会っちまうとはな。幸先不安だなぁ……。
あと俺の第六感が【関わってはいけない】と防衛本能を働かせていた。あれは多分、仮面を被ったタイプの人間だな。関わりたくねぇ……。
◆◆◆
俺が講堂に入った時には、既に半分以上座っていた。座席の指定とかは特に無いから、自由に座れるのだが前と後ろで綺麗に一科生とニ科生に分かれていた。こりゃ受けてる側か最も差別意識が強い証拠だな。醜い。
俺は面倒くさかったから分かれ目の所に座って、開始まで仮眠でも取ろうかと思ったが、どうやらニ科の方に騒がしい奴が近くに来たみたいで寝れなかった。しかも耳を傾けると、まさかの司波達也だった。さっき関わりたくないと言ったばかりなのに……。
そんな事を思っていると、入学式が始まった。
入学式の感想
主席、司波深雪の答辞は表向きでは完璧だった。最も本人にそう思っているかどうかは分からないので表向きとしか思わない。建前でくるみ、棘は感じないように上手く書いたのだろう。天才としか言えない。
生徒会長である七草先輩のお祝いの言葉もかなり素晴らしい物だった。具体的と言われたら難しいが、心の中から俺達の入学を祝ってくれる。そんな感じだった。
絶対あの2人のどちらかに心奪われた馬鹿な奴もいるだろうと思いながら、一応それらしく話は聞いていた。
因みに入学式が終わると個人のIDカードを作成しなければいけない。面倒くさかった俺はなるべく早く会場を出て、適当にIDカードを作って、自分のクラスを確認してみた。どうやらA組らしい。あの主席もそうだろうな。ホームルームに行っても良かったのだが、やめといた。俺の第六感が再びやめとけと言ってきた。
一応、生徒会長にまた声を掛けられたがとりあえず挨拶して適当に会話して切り上げた。あの人に会う度に俺の第六感が少しでも関わったらろくな目に合わないと告げている。まさかこんなにも第六感が働くとはな………。なんで今までの人生の中で働いてくれてなかったのか不思議である。
そんな高校生活一日目であった。
少なくとも今までのような学校生活では無いだろう。
これからどうやって自分自身が進んでいくのか。それは俺にも分からないが、せめて平穏に過ごせる事を祈る。
意外と文字数多い……。