もしも次席がこんな奴なら   作:さろなく

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はいはいまたまた


三日目

昨日と変わらぬ朝日に照らされながら、学校へと歩いていく。ボーッと空を眺めると、案外いい天気だった。

 

「あっ……」

 

「あれ?あなたは、禍さん?」

 

「……どうも」

 

俺は挨拶だけして立ち去ろうとしたが

 

「ええっ、俺達と一緒に登校しないのか!?」

 

西城レオンハルトだっけか?あんまり覚えてねーけど。なんでそんな考えが思い浮かぶんだか。思わず後ろ振り向いちまったじゃねぇか。

だがそんな西城の事がどうでも良くなる程、俺の目があまり良くないモノを捉えてしまった。

そう、七草生徒会長である。これは早めに逃げるか。

 

「俺はそこまでつるまないんでな。あと用事がある」

 

「そうか…」

 

「あといい事教えておく。後ろから面倒なモノが来てるから、頑張って。司波達」

 

一応忠告はしといてやった。俺は小走りでその場から逃げる。どうせ生徒会に入れとか面倒くさい案件来ること間違い無いからな。即座に退散だ。

 

後ろからの威圧的オーラを無視しながら、俺は学校へ行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……危うく面倒な事に巻き込まれかけた。関わったら俺の精神が即死する」

 

「どうしたの?」

 

「いや、今頃生徒会長に巻き込まれてる司波達の姿を想像して大変だなぁと」

 

「なんでそう思うの?」

 

「朝ばったり会って、一緒に行こうと言われたが拒否して、後ろから来てる生徒会長の姿が見えたから忠告だけ入れて逃げてきた」

 

「逃げてきた、なんて悪い事したみたいに聞こえるけれど何かやらかしたの?」

 

「いや、単に怖いだけだ。というかああいう地位の高い人全般苦手だ」

 

「なんでそんなに怖いんですか?」

 

「貶められたからな。まだその時はCAD持ってるどころか魔法すらよく覚えて無かった」

 

 

そんな日常的会話をしていると、司波深雪が教室に入って来た……ちょっと待て。なんで俺を睨む?顔が整ってる奴に睨まれると本当に怖いんだぞ。因みにこれ経験談な。

 

「禍幽葉さん」

 

「は、はい…」

 

「お昼休み、私とお兄様と共に生徒会室に来てもらいます。いいですね?」

 

「アッハイ」

うわー俺情けねえー!ここは断らなきゃいけないパターンだけど固定ルートだから断れなくて寿命が縮む事が分かってる正に予想可能回避不可能って奴だコレ。

 

はぁ……マジ誰か助けて……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業は相変わらず魔法関係が凄かった。内容はシンプルだけどな。なんつーか、復習的な感じだった。

 

さて、お昼休みになった為、地獄の生徒会室にごーしなきゃいけないのだが、肝心の司波達也が来てないから困るんだよなぁ……。

ブラコンの妹がいるのに待たせるのは俺の精神力をわざと削りたいのかと言いたくなる。

なんか俺恨まれてるかな?いやまぁ、恨まれそうな事はしちゃったけども。マガツオレワルクナイ。

 

「さぁ、深雪。行こうか」

 

「はい!お兄様!」

 

おーおー、青春してますね。それを俺に向けるのは自分死にたいですと、堂々と宣言してるようなモノだぞ。もうリア充なんぞ見飽きたんだよ。

あとさり気なく俺スルーされてる。酷ぇ扱いだ。

 

階段をたった数段昇るだけで気がどんどん重くなっていく。これ逆に朝逃げない方が楽だったんじゃね?

というかなんで俺まで呼ばれるんだよ……。別に俺氏はエリートでもなけりゃ何かやらかしたヤベー奴じゃ無いんだから………。

 

生徒会室に着くと、司波深雪が七草会長とドアホンで連絡して、司波達也がドアを開ける。

その仕草がまた凄くてな。俺の脳内論理を確定付けるいい証拠ともなった。

 

奴、司波達也のドアを開ける時の動きはまるで深雪を守る護人みたいな動きだった。俺は初めてコイツらと会った時、四葉の人間だと思った。まぁ単に兄妹喧嘩と名前で直感的に思っただけだっだがな……。でも今は確証した。あの動きは多分、四葉の人間だ。数字付きは情報が厳重管理されてるから判り辛いが………過去の四葉家の護人の動きなら動画とかでも結構出回っているからな。

実際志願してる奴も居なくは無いし。

 

多分、何らかの事情があるんだろうから口は挟まないでおくが、いずれ聞く必要があるな。

 

 

「禍くん?どうして立ち止まってるのかな?」

 

「あ、いえ、少しボーッとしてしまいました」

 

「大丈夫か?」

 

「ええ、失礼致しました」

 

いけね、俺の悪い癖だ。考えてると直ぐに固まって周りに変人だと思われる。良くないなぁ……。

 

「いらっしゃい。遠慮しないで入って」

 

七草会長から声がかかる。俺は思わず反射的に目を伏せてお辞儀をする。

顔を上げると、なんか皆驚いたような顔をしている。そんなに意外だったかな?普通にこの程度なら独学で学ぶべき事だぞ。世の中の常識として。

 

「えーっと………ご丁寧にどうも」

 

あるゑ〜?なんな気まずいぞ〜?というかそんなに俺がイカれた人間に見えてたのか貴方達……。少なくとも、礼儀とかは普通にあるぞ。平穏を望む人間としてとても重要かつ必要になるスキルである。

 

「どうぞ掛けて。お話は、お食事をしながらにしましょう」

 

俺の行動にペースを崩されたのか、七草会長が少し砕けた馴れ馴れしい口調が少し隠しきれてない。

これは良いモノが見れたかもな。

先に司波達を奥に行かせ、会長の近くに座らせる。司波深雪が左端、司波達也が真ん中、俺が右端だ。

 

「お肉とお魚と精進、どれがいいですか?」

 

「すみません、七草会長。俺は弁当を作ってきてしまっているんですが……」

 

「あら、それならお弁当でいいですよ」

 

「すみません………」

 

俺は基本的自分で料理がしたいタイプだ。純粋に楽しいし、機械では作れないあの独特さが好きだ。かと言ってアニメのような、ゲロマズお召を作ってる訳じゃない。普通に作って食べるだけである。

というかなんでダイニングサーバーが学校内にあるんですかねぇ……?そっちの方が不思議なんですがそれは。

 

「なら自分は、精進を」

 

「私もお兄様と同じで」

 

流石ブラコン。俺は絶対にしないような事をやってのける!そこに痺れないし憧れもしない!

寧ろ純粋に恐怖心の方が強い!なんでも兄と一緒にとかこれ自立出来てるけど出来てない典型的パターン。

一周回ってヤンデレ化したら面白そうだな。命がどうなるかなんて安易に想像出来るけど。

 

「入学式で紹介しましたけど、念の為、もう一度紹介しておきますね。私の隣が会計の市原鈴音。通称リンちゃん」

 

「……私の事をそう呼ぶのは会長だけです」

 

黒髪ロングの完全清楚系女子ですね。ただ結構キリッとした顔や性格だな、という印象。あんまりリンちゃん、と呼ばれるような方ではないだろうな。

 

「その隣は知ってますよね?風紀委員長の渡辺麻利」

 

会話が成り立ってねぇだろ……。と思うが唯一司波兄が俺と同意見、と言いたげな顔をしていた。まぁお互いに言った所で無駄だって分かってるもん……。

因みに見た目はショートカットで戦国ドラマとかに出てきそうなキリッとした印象。さっきも似たような事思った気がするがいいだろう。

 

「それから書記の中条あずさ、通称あーちゃん」

 

「会長。お願いですから下級生の前で『あーちゃん』はやめて下さい。私にも立場というモノがあるんです」

 

なんかマスコット的ゆるふわ感ある先輩。なるほど、これならあーちゃんとも言われそうである……っておい、何失礼な事考えてんだよ。

因みに見た目は中学一年生ぐらいの身長にくるくるヘアースタイル。子供っぽい。

 

「もう一人、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが今期の生徒会役員です」

 

「私は違うがな」

 

「そうね。麻利は別だけど。あっ、準備が出来たようです」

 

ダイニングサーバーのパネルが開き、無個性ながら正確に盛り付けられた料理がトレーに乗って出てきた。

……あれ?5つだぞ。1つ足りなくないかと思ったら麻利会長がおもむろにお弁当を取り出した。

全員が自分の前に料理が置いたのを確認して、なんとも空気が重い食事会が始まってしまった……。

何気無いこの食事の話やらなんやらしてたら、司波妹の方からとんでも無い言葉が発せられた。

 

「そのお弁当は、渡辺先輩がご自分でお作りになられたのですか?」

 

こ、こいつ……いくら会話を円滑にする為とはいえ、ハイリスクな事を言うなぁ……。

 

「そうだ。……意外か?」

 

「いえ、禍さんが自分で作ってると言っていたので、先輩も作ってるのか疑問に思ったので」

 

「……そうか」

 

あ、この人意外と押しに弱いタイプかもしれん。なんかそんな気がする。知らんけど。

 

「私達も、明日からお弁当に致しましょうか?」

 

「深雪の弁当は魅力的だが、食べる場所がね……」

 

「あっ、そうですね。まずはそれを探さなければ……」

 

「そう言った会話はここでしないでくれ。脂っこい物を食ってる訳じゃ無いのに胃がもたれそうなんでな。兄妹愛に茶々を入れる気は無いが、TPOを少しは自重して貰いたい。それが常識だ」

 

「す、すまない……」

 

「禍くんって、結構ハッキリ言うんだね……」

 

「言っても分からん屑しか、俺の居た学校では居なかっんでハッキリ言っとかないと面倒だったんですよ」

 

「そ、そう……。とりあえず、本題に入りましょうか。

当校では生徒の自治を重視しており、生徒会では学内で大きな権限を与えられています。これは当校だけでなく、公立高校では一般手な傾向です。

当校の生徒会は伝統的に、生徒会長に権限が集められています。大統領型、一極集中型と言ってもいいかもしれません。生徒会長は、選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長が選任します。解任も生徒会長の一存に委ねられています。各委員会の委員長も一部を除いて会長に任命権があります」

 

つまり要約すると、生徒会は権限が凄く大きくて、その会長だから気を付けろって忠告か。

 

「私が務める風紀委員長はその例外の1つだ。生徒会、部活連、教職員会の3者が3名ずつ選任する風紀委員の互選で選ばれる」

 

先生方から選ばれるってのは、拒否権無さそうだな…。

 

「と言う訳で、麻利はある意味で私と同格の権限を持っているんですね。さて、この仕組み上、生徒会長には任期が定められていますが、他の役員には任期の定めがありません。生徒会長の任期は10月1日から翌年の9月30日まで。その期間中、生徒会長は役員を自由に任免出来ます。これは毎年の恒例なのですが、新入生総代を務めた一年生は生徒会の役員になってもらっています。趣旨としては後継者育成ですね。そうして役員に選ばれた一年生が、ここ5年間はこのパターンが続いています」

 

「会長も主席入学だったんですね?流石です」

 

「あ〜、まぁ、そうです」

 

司波兄は天然タラシなのかな?お愛想とは言え思いっきり照れとる会長。これが演技なのか本心なのか、はたまた釣っているのか、裏が見えないぜ……。

 

「コホン……深雪さん。私は、貴女が生徒会に入って下さる事を希望します。引き受けて頂けますか?」

 

つまり社畜入りしてくれと。俺は絶対に嫌だね。首輪なんて繋がれたくない。自由気ままに生きる。それが平穏な人生の為の第一歩だ。

さて、俺には関係ないが、司波妹はどうするのか。頼むからちゃんとした応答文で答えて。爆弾なんて放り込まなくていいんだから。

 

「会長は、兄の入試の成績をご存知ですか?」

 

「ーっ?」

 

 

 

 

や、やりやがった………。こいつ、平然とした顔で爆弾を放り込みやがった……!おい、司波兄も驚いてるぞ。めっちゃ叫びそうな顔してた。写真取りたかったな…。

 

「ええ、知ってますよ。凄いですよねぇ………

正直に言いますと、先生にこっそり答案を見せて貰ったときは、自信を無くしました」

 

司波兄が口から魂吐いてるぞ司波妹………。

やめて!司波兄のライフはもうゼロよ!

 

「……成績優秀者、有能の人材を生徒会に迎え入れるのなら、私より兄の方が相応しいと思います」

 

「おいっ、み……」

 

「デスクワークならば、実技の成績は関係無いと思います。むしろ、知識や判断力の方が重要な筈です。

私を生徒会に加えて頂けるというお話については、とても光栄に思います。喜んで末席に加わらせて頂きたいと存じますが、兄も一緒にという訳には参りませんでしょうか?」

 

おい、俺はわざわざこんな惚気話を聞きに生徒会室にこさせられたのか?だったらもう帰りたい……。

あと確かここ一科生以外生徒会禁止じゃ無かった?

事前に調べた時はそんな気がしたが。

 

「残念ながらそれは出来ません」

 

おっと意外な方から返答が来た。まさかの市原先輩だ。

 

 

「生徒会の役員は第一科生の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく、規則です。この規則は生徒会長に与えられた任免権に課せられた唯一の制限事項として、生徒会が現在のものとなった時に定められたもので、これを覆すには全校生徒の参加する生徒総会で制度の改定が決議される必要があります。

決議に必要な票数は在校生徒数の3分の2以上ですから、一科生とニ科生がほぼ同数の現状では、制度改定は事実上不可能です」

 

ま、例えやったとしても、投票は半分ぐらいだろうな。

 

「……申し訳ありませんでした。分を弁えぬ差し出口、お許し下さい」

 

「ええと、それでは、深雪さんには書記として、今期の生徒会に加わって頂くという事でよろしいですね?」

 

「はい、精一杯務めさせて頂きますので、よろしくお願い致します」

 

おー、社畜入りおめでとうございます。

 

「具体的な仕事内容はあーちゃんに聞いて下さいね?」

 

「ですから会長……あーちゃんはやめて下さいと……」

 

「もし差し支えなければ、今日の放課後から来て頂いてもいいですか?」

 

さーて、どうすんだこのブラコンは?

まあ兄の方がなんとかしてくれるでしょう。

 

「分かりました。放課後は、こちらに伺いましたらよろしいでしょうか?」

 

「ええ、お待ちしてますよ。深雪さん」

 

「……昼休みが終わるまでもう少しあるな。ちょっといいか?」

 

「風紀委員会の生徒選任枠のうち、前年度卒業生の一枠がまだ埋まっていない」

 

「それは今、人選中と言ってるじゃない。まだ新年度が始まって一週間も経ってないでしょう?麻利、そんなに急がないで」

 

「私としては、この禍幽葉を任命したい」

 

「お断りします」

 

「……なんだと?」

 

飛び火が来るのを予想出来ていたからこそ、ここいらでイチャコラしていた不満を晴らす為にちょっと兄の方には痛い目見てもらうぜ。

「俺より適任がいるからです。司波達也を風紀委員に入れた方がいいと思います」

 

『な!?』

 

「お、おい禍!」

 

「いくら俺が次席入学といえど、主席から信頼のある方が安心出来るでしょうし、俺はやりたくない事は絶対にやらない主義の人間なので」

 

達也は怒りの目線を。深雪はナイスという目線を。この程度でたじろぐんじゃねーよ。

 

「そうね。風紀委員なら問題ないじゃない。麻利、生徒会は司波達也を風紀委員に指名します」

 

「ちょっと待って下さい!俺の意思はどうなるんです!しかも次席の方がニ科生の俺より……」

 

「お兄様!是非やりましょう!!」

 

ほーら、簡単に釣れる。全ては俺の手の上、ってな。

 

「拒むなら、2人で副会長と模擬戦をすればいい。それで勝った方が風紀委員に任命だ」

 

……運命は、避けられないのか。怠い…。




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