放課後、第三演習室にて。
「それで、俺と司波達也さん。どっちから副会長とやるんですか?」
「まずは達也からだ」
「分かりました」
「……いいだろう。身の程を弁えることの必要性を、たっぷりと教えてやる」
「よし、それではルールを説明するぞ。
直接攻撃、間接攻撃を問わず相手を死に至らしめる術式は禁止。回復不能な障害を与える術式の禁止。
相手の肉体を直接損害する術式も禁止とする。ただし、捻挫以上の負傷を与えない直接攻撃は許可する。武器による攻撃も同様だ。
蹴り技を使いたければ、今ここで靴を脱いで、学校指定のソフトシューズに履き替える事。
勝敗は相手が負けを認めるか、審判が続行不可能と判断した場合に決する。
双方開始線まで下がり、合図があるまでCADを起動しないこと。このルールに従わない場合は、その時点で負けとする。あたしが力づくで止めさせるから覚悟しておけ」
さて、試合はどうなるかな。まぁどうでもいいから見ないけどな。なんなら面倒なだけだけど。
「では、初回。始め!」
、、、、、……終わったな。雰囲気で分かる。というかよくこんなあっさり終わったな。凄え。
「……勝者、司波達也」
さて、ここから無駄な口論が始まるから、CADの調整でもするかなと。
えーと、ストレージはいつものやつにして、軽く振って本調子がどうか確かめてと。
「おい、禍。次はお前だ。さっきは負けてしまったが、同じ一科生として負けない!」
「いいですよ。勝ってみせます」
「両者、配置に付け」
さーてと、神経を集中させろ。相手はたった一人。先輩といえど、ぶちのめせばいいだけ。
「それでは、始め!」
俺は思いっきり地面をCADで斬りつけた。
「な、ふふっ、馬鹿だなお前!」
「いや、馬鹿なのは先輩の方ですよ」
そういうと、俺の行動に気を取られてCADを発動していなかった服部先輩の足元から、腕が絡まれてくる。
「な、なんだ…こいつらは!?」
「あくまでルールは死に至らしめる事は禁止。そう、怪我なく倒せばいいだけ。簡単な話ですよ。回復可能程度には抑えてありますんで、楽しんで下さい」
「くっ……」
「なるほど、確かに精神干渉すれば戦わずに済む。上手く逆手に取ったな」
「卑怯ですね……」
「なんとでも言って下さい。それが俺の戦い方ですよ」
数十秒後、服部先輩は自主的に敗北を認めた。
「なんなんだあれは!?」
「簡単な精神干渉系の魔法ですよ。まるで腕があるかのように錯覚させて、じっくり苦しんでいく。
面倒な事をするぐらいなら、知恵張って戦うのが楽なんでそうさせて貰っただけです」
「でも、これじゃどっちを選ぶか決らないですね……」
「じゃあ、2人で戦って貰いますか」
えぇ……、もう面倒臭いよ。やりたくないよ……。なんでそんな面倒な事を………。
「渡辺先輩、CADを交換してもよろしいでしょうか?」
「禍か?いいぞ」
さて、相手が波を使うってならこっちもそれ相応の技をくり出さなきゃ面倒だな。
俺はアタッシュケースから、つや消しブラックで塗装されたシルバー・ホーンを取り出した。
因みに塗装したのは俺の趣味だ。
「両者、配置に付け」
多分、司波達也はさっきと同じ技を使うだろう。なら俺は絶対に先手を撃たなければならない。
俺が唯一相手を読み取らなくても使える『波』への対抗策が通じるか……?
「それでは、始め!」
俺は自分自身の頭に向かって魔法を放った。
その場にいた全員が驚いている。この魔法が唯一の対抗策である。自分自身の波だけを捉える暗示を自らに撃ち込んで、奴の波の振動数の変化を回避する。
簡単に言うと、その変わった波を自分の波として、慣れてしまえばこったのもんだ。という訳さ。
「波の変化に耐えたか……」
「今度はこっちの番だぜ、司波達也」
俺は自分自身ですら、残虐だと思う精神干渉魔法を発動した。この時点で負ける事は無い。
「なっ!?」
「終わったな。沈め!」
「うっ!!!???」
「お兄様!?」
「くっ……ぐぅ…………」
「そこまで!」
「なーんだ、つまんねェ。波を変えた所で、俺には詰めが甘かったみたいだなァ」
「禍!今のはルール違反では無いのか!!」
「全然?だって精神に干渉しただけですもん。内側にイメージを撃ちつければ、こんなの誰にでも出来ますよ」
「……くっ、やられたか」
「ほら、目覚めでしょう?司波達也さん」
「…………随分非道ですね」
「結構。五体満足が如何に幸せか、分かりましたか?」
「ああ、嫌になるほどな」
「それで、結局何をしたんだ?」
「自分の死んだ姿を精神干渉させて見せて、そこからどんな風に、そうなっていくのか。感覚こそ無いですが、目の前がそう見える幻覚。いわばトリックです」
「……君は危険だな。風紀委員は司波達也に決定する。今日はお終いだ」
やったやった。面倒な事をしなくていいんだ。これで社畜から逃れられる。
やったね完全勝利S