アリアンロッド2E×エミル・クロニクル・オンライン リプレイ   作:とあるGM

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キョワ卓
第1回ECOAR2Eキョワ卓『古い屋敷と竜の世界樹』


 2017年8月14日。ECOサービス終了告知を受けた我々はその世界観でTRPGでもしてみないか? という軽いノリの元、セッションを行った。

 当時GMも実際のセッションが5年ほど前に一度だけという状態かつ、かなり混沌としたログとなっていた為、小説風に纏めるかと一昨年くらいに纏めていたものがフォルダの中に眠っていた。ぶっちゃけ纏め直すのも面倒なのと内容に違いは無いので、既に纏めてある第3回までの内容を続けて投稿しようと思う。その後の4回目はシーン2まで小説風に纏めてあるが、シーン3以降がログのままなので、この辺りからリプレイになる。本作は誰得な記録を残す用と考えて投稿しているので、もしこの作品を読まれている方がいらっしゃるようなら許して欲しい(土下座)。

 

 

第1回ECOAR2Eキョワ卓『古い屋敷と竜の世界樹』

 

◆オープニングフェイズ

●シーン1:道中

 

 その者たちは行商として、放浪の旅を続けていた。

 中性的な顔立ちの男性、懐には短剣を携えロリチャイナ帽がトレードマークの商会のリーダー、CHUN。

 瓦のような灰色のすらっと伸びた美脚、その上にあるのは体ではなく太鼓を思わす円。その円に顔を持つ不思議な妖精にしこくん。

 背の小さな何の変哲もない少女に見せかけ時折キョワッっという擬音の出そうな狂った顔を浮かばせるアルン。

 一度嵌められどん底に落ちた商会は、その地位を取り戻す為にこの地へやって来た。

 

 道中の森、アルンが川に落ち溺れて流されていく。

 それを追いかけてみると、なんと目的地へ着いてしまった。

 

 ここはファーイーストシティ。

 緑豊かな自然と共生する共和国。

 

 アルンを助け出した一行を屋敷からの使いである二人組が迎えてくれる。

 

「CHUN商会の皆様、よくぞいらしてくれた」

 

 槍を携え猫耳を生やした偉丈夫の執事と、同じく猫耳の生えた可愛らしい小さなメイドの少女。

 

「どうもこんにちは」

「こんにちはブーン」

 

 CHUNとにしこくんが挨拶を返す。

 

「こんにちは! ファーイーストシティへようこそ!」

 

 メイドの少女、シャルは笑顔で挨拶を返すとそのまま屋敷があるというイーストダンジョンの方へ歩みだす。

 

「屋敷でお嬢様がお待ちです。どうぞこちらへ」

「おじゃましまブーン」

「では急いで参りましょう」

 

 同じく執事が手を招くのを見て、二人は頷き急ぎ屋敷へ向かった。

 

◆ミドルフェイズ

●シーン1:屋敷前

 

 目的地があるというイーストダンジョンの奥へ足を踏み入れる。

 毒の菌糸に覆われた森と聞いていたが、入り口は比較的毒素が薄く、何の問題も無く進むことができた。

 暫く歩くと見えてくる大樹。そこにくっつくように屋敷が佇んでいた。

 

「まるで世界樹を思わせるきれいな屋敷ですね……」

 

 お世辞などではなく、心底そう思う声。

 CHUNは商人としての目でその樹に関心を抱いた。

 

「こちらになります!」

「おじゃましまブーン」

 

 屋敷の中に入ろうとしたとき、中から誰かが出てきた。

 

「おやおや、お客様ですかな? 私の屋敷へようこそ。ではここで一曲、さよならランデブー」

「!?」

 

 人見知りであるアルンは突然現れた人物に驚き後ずさってしまう。

 

「ブーン♪」

 

 対しにしこくんはその人物が奏でる音楽に合わせ踊りだした。

 上半身は水着姿の美しい少女のものだ。しかし、その下半身は鱗に覆われた魚の尾びれのような姿をしており、そこにスカートを履いている。一言で言い表すなら人魚。最も、この世界には様々な種族の人間が暮らしている。彼らもこの程度で驚くほど世間に疎いわけではない。

 音楽が止むタイミングを見計らって、CHUNが声を掛ける。

 

「今日はお話があると伺っているのですが」

 

 屋敷の主、ローレライはぽんっと手を叩くと、思い出したように口を開けた。

 

「そうでしたそうでした、忘れていました」

 

 屋敷の前で始まる取引を他所に、いつの間にか踊りをやめていたにしこくんが樹の上へ向かい登っている。

 CHUNは呆れたような顔をしながら、顔を覆い大きくため息を吐くと頭上を見上げ声をあげた。

 

「にしこくん、ゆっくり降りて来るブーン」

 

 それを聞いたにしこくんがゆっくりと降りて来る。

 

「実は地下の倉庫を整理していたところ、このようなものが見つかったのです」

「ほう、これは……?」

 

 特段気に留めもしないで取引が始まった。

 差し出されたのは竜の形をした真っ赤なクリスタルのような彫刻。

 

「うーん、鑑定してみないことにはどのようなものか分からないですね」

 

 CHUNはまず手始めにとアルンに品を見せた。

 アルンは知力を振り絞り鑑定を開始する。

 結果、その彫刻が最初からその形であったことが分かった。

 

「アルンは知っているのかい? 俺には分からないものだったよ」

「うーん、分からないけど、この石変だよ? 削ったり作り出したようには思えないかな?」

 

 アルンに言われCHUNも鑑定をしてみる。

 確かに、加工のようなものを施した形跡が無く、自然にできたものである可能性が高い。

 

「ブーン」

 

 その隣でにしこくんは特に意味もなく踊っていた。

 

「お~? ならこの石は生まれた時からこの形だったということですね~~~」

 

 ローレライもにしこくんに合わせて踊っていた。 

 この二人、馬が合うのかもしれない。

 

「うーむ……ローレライさん、このお屋敷は古くからあるものですか?」

「そうですね~、少なくとも私が生まれたときにはありましたし、きっと古いものですよ~」

 

 それについて後ろで控えていた執事が補足説明をする。

 

「お亡くなりになった旦那様、その先代、それよりも古く一番最古の文献によっても200年は昔からあるようですな」

「すごいですー!」

「ほ~~~、それはびっくりドンキー」

 

 どうやらこの話はシャルとローレライも初耳だったらしく驚いた。

 CHUNもまた、「二百年も!?」とその歴史の古さに驚く、と同時。二百年前からある竜の石、危険性を危惧してさらに鑑定の目を働かせる。

 結果、その危険性は分からなかった。

 続きにしこくん、アルンも危険性を調べてみるが、分からなかった。

 

「ブンブンパワーがみなぎってくるブーン」

 

 石に魅入られたか、にしこくんが魔法力を高め始める。

 いち早く気付いたCHUNが力づくでにしこくんを止めに入った。しかし、

 

「こいつの執念とんでもねぇ!?」

 

 微動だにしないにしこくんを止めることができず、そのまま魔法が放たれようとする。

 

「おお、お客様困ります困りますーーーー!」

 

 CHUNの動きからにしこくんが何かとんでもないようなことをしでかそうとしているのに気づいた執事が慌てて止めに入る。

 それでも奴は止まらなかった。

 

「とまらねぇ……」

 

 CHUNが沈んだ声を出す。

 シャルやローレライも遂に気付いた。

 「あわわわ」と慌てるシャルに対し、ローレライは暢気なもので歌を歌っている。

 

「アルン、説得をよろしく頼む」

「うん!」

 

 そうしてアルンが説得を試みるも、聞く耳を持たない。

 

「もうだめだぁ……」

「にしこくん魔法撃っちゃだめっ!!」

 

 水晶は今、アルンの手元にある。

 つまり魔法はアルンに撃たれることになる。

 CHUNはロリコンなのでそれを庇おうとする。

 マジックセンスで増幅され、ファイアロードによりさらに増幅、マジシャンズマイトにより最大まで高まったファイアボルトが放たれる。

 対しCHUNが割って入り魔法を破った。

 危機一髪、インタラプトだ。

 

「あっぶねぇなぁ……すみません、この一円玉に足のはえた生物、いい人なんですけどたまに暴走するんです」

 

 にしこくんが魔法を撃ったところ、赤い竜の水晶、以後赤竜水晶と略す、が少し光った気がした。

 これに対しCHUNとにしこくんが反応を示す。

 

「今光りませんでした?」

「光る? 見逃してしまいましたね~~」

 

 今よりもっと酷かった時のことを思い出しながら、CHUNはにしこくんに対し良くやったと心の中で言葉をかけた。

 どうやら赤竜水晶は火の魔術に反応して光ったようだ。にしこくんの暴走が無ければこの結果は得られなかっただろう。最も、偶然の一致でしかないので暴走したにしこくんを単に良くやったと褒められたものではないのだが。

 

「ブーン!」

 

 魔法を目前で止められたにしこくんはご機嫌斜めだ。

 

「ごめんて!」

 

 それをCHUNが宥める。

 にしこくんは落ち着いた。

 

「にしこくんは危ないから、アルン、少し頼んでいいかな?」

 

 ローレライに光る水晶を見せる為、アルンに仕事を頼む。

 

「分かった!」

 

 アルンは自らの魔法力を高めるが、反応しない。

 単に魔力に反応した、という訳ではなさそうだ。

 

「仕方ない、にしこくんの魔力を見せたれ」

「ブンブンパワーがみなぎってくるブーン!」

 

 ファイアボルトに複数の補正魔法をかけて火力を練り上げる。

 通常のファイアボルトよりも巨大な炎の塊。

 その魔術が完成するにつれて、水晶が赤く輝いた。

 

「おや? 赤く光っていますねー。ファイヤーって感じで干からびてしまいます」

 

 水晶は熱を発し温かくなっている。

 温い。ドラゴンホカホカ石かもしれない。

 CHUNは赤竜水晶に対し感知行動を行う。

 聞き耳を立てると、石から小さな声のようなものが聞こえてきた。

 何て言っているかまでは定かではないものの、苦しんでいるように思えた。

 悲鳴、というよりも呻き声に近い。

 

「むむ? どうかしましたか?」

「今、石の中から苦しんでいるような声が」

「石から声? 不思議ですね~?」

「声、ですかな?」

「怖いですー!?」

 

 ローレライは不思議がり、その使用人二人は若干怯えた様子。

 

「少し文献を漁ってみましょう。どうぞ皆様も此方へ」

「分かりました。」

「おじゃましまブーン♪」

「おじゃましまーす!」

 

 それまで屋敷の外で会話をしていた面々はようやく屋内へ入っていった。

 

●シーン2:書庫

 

 屋敷の中は綺麗に片付けられており、整理整頓といった掃除が徹底されていることが分かる。

 

「綺麗なお屋敷ですね」

「ありがとうございますー!」

 

 掃除を担当しているシャルが嬉しそうに受け答えする。

 それに微笑みながらもCHUNは内部を観察。

 広い屋敷にしては、使用人の数が少なすぎる。ここにいる面子以外の人間を未だ見ていない。

 たった三人で生活しているのだろうか。深く考えすぎることなく、二階への階段を上る。

 少し進んだところで立ち止まり、ローレライがマスターキーを使って鍵を開ける。

 ぎっしりと本が並べられた書庫に辿り着いた。

 中は部屋の外と違い埃だらけだった。

 

「はりきっていくブーン♪」

 

 部屋の中をウロチョロと見物する。

 

「けほっ、けほっ、ご主人様~、自分でお掃除されると言って、してないじゃないですかー!!」

「書斎はいつもは締め切っているのですか?」

「いやいや、ここを掃除するだなんてもったいない。この埃っぽい部屋がいいのですよ。さてさて、皆さんもご一緒にトレジャーハントといきましょうかー?」

 

 シャルのお説教を聞き流しながらのほほんとした表情でローレライが本を漁りだす。

 それに合わせて他の面々も本を漁りだした。

 アルンは執事とシャルに連れられて客室に案内される。

 そこでこれとは別件の取引を行う為だ。

 

「この量を二人で探すのか、日が暮れそうだ。二百年前の文献を探すのは相当骨が折れそうだ」

「いえいえ、私も探しますぜ」

 

 屋敷の主がそんなことをして良いのかとも思ったが、手伝ってくれることに越したことはない。

 そのまま手伝いをお願いし三人で本を漁る。

 暫く立って、ローレライは力尽き干からびた魚のように倒れてしまった。

 そんな事は露知らず、二人は探索を続ける。

 にしこくんは熱と因果関係のある本という観点から料理本を探した。

 それに対しCHUNは純粋に古い歴史ということから、歴史本を中心に探している。

 

 手分けして探していると、にしこくんがかなり古いレシピ本を発見した。

 爽やかなハンバーグのレシピが掲載されている。

 にしこくんはそっとレシピ本をバックパックに仕舞った。

 

 CHUNは一冊の文献を見つける。

 内容は、かつてこの屋敷の背後に聳える大樹には霊的な力が宿っており、竜が住んでいるとされていた。

 その竜は町を守る主語竜として崇められており、大嵐に見舞われた際にも作物と人を護ったという逸話が記されている。

 一年のうちの二つ目の月、四年に一度、二つ目の月が三十の日を超える時、竜は自らの力を高める為に、樹の内に眠りに着く。

 その間、町の守護が薄れないよう竜は結界を張っていた。

 だが、そのタイミングを狙い黒き者が結界を侵食し、世界樹を犯してしまう。

 それにより竜の力は失われ地下深くに封印されてしまったという。しかし、竜もまた最後の一太刀として力を振り絞り、黒き者を自らと同じ地へ封じ込めたようだ。

 

「ハロー、ハロー、ハロー。おや、もう夕暮れですか」

 

 死にかけていたローレライが起き上がりCHUNの元へやって来た。

 言われてから外を見ると、結構な時間書庫に潜り込んでいたらしく、お昼の時間をとうに超えて、夕焼け空が広がっている。

 

「おや? これはとある不思議な物語が記された文献ですかな? 昔は、この町にドラゴンがいたなんて、不思議な話ですよねー?」

 

 ローレライはどこか懐かしむようにうんうんと頷いている。

 

「ブーン♪」

 

 レシピ本を隠し持ったにしこくん。今度はローレライの恥ずかしい日記を探し始める。

 赤竜水晶の危険性は結局分からずじまいだ。

 CHUNは休憩がてらにしこくんがおかしなことをしないか見守ることにした。

 

 にしこくんは黒い装丁のされた一冊の絵日記を発見する。

 子供の絵と拙い文字。年は書かれていないが、日付は書かれている。

 最初の方はその日の出来事が描かれていて、今日はハンバーグを食べた、変な虫を発見した、など。ごく自然なことが書かれている。

 ただ、そのどの絵にも描いた本人と思われる女の子以外の人間が描かれておらず、背景もまた、部屋の中が主なもので、外を描いたものが一切ない。

 とある年の二月二八日を区切りにいきなり日付が十二月に飛ぶ。

 真っ赤なインクが二ページに渡り大きく飛び散っており、目から赤いインクを流す女の子が中央に描かれていた。

 そして次のページからまた白紙が続き、最後のページにはこう書かれていた。

 

『タ ス ケ テ』

 

 CHUNとにしこくんは絵日記から嫌な感じがした。

 すぐに離れなければという危険性を感じる。

 にしこくんはそれをそっとバックパックに……仕舞った。

 CHUNは持ち前の罠探知技能によりにしこくんが本を仕舞う所を確認。罠が掛けられている可能性は薄く、すぐに何かが起きることはないだろう。先ほどまでの嫌な感じもにしこくんが本を仕舞ったあたりで無くなった。

 

「おや? どうしましたかな?」

 

 ローレライは二人の方を見て首をかしげる。

 

「ブーン♪」

 

 にしこくんはとぼけてどこかへ行ってしまった。

 にしこくんと入れ違いにシャルがやって来て、「皆様、そろそろお食事は如何ですか?」と声を掛けてくる。

 どうやら調べものが終わるタイミングを見計らっていたようだ。

 

「集中していたようなので少し遅めのお食事になってしまいますが」

「ありがとうございます。にしこくんを連れて向かいます」

「夕食としては早すぎる気もするんだぜー?」 

「夜には軽めのものをご用意しますね!」

 

 外を見れば日が暮れようとしていた。

 

●シーン3:リビング

 

 長机にそれぞれが席に着く。ローレライが中央の席で、客人である三人が両サイドに。アルンもいる。

 

「調べ物は終わったー?」

「終わったブーン」

「終わったブーン」

「終わったブーン」

 

 何故かCHUNとローレライもにしこくんみたいな口調になっている。

 

「うちのシャルが作った料理は三ツ星シェフもびっくりなトレビアンなおいしさですぜ。ささ、温かいうちに冷めないうちにどうぞどうぞ」

 

 ローレライに勧められたのは高級そうなコース料理だ。夕食には少しばかり早い時間ではあるものの、これならかなり腹が膨れそうだ。

 

「こんな小さいのに凄いですね」

「あわわわ、ありがとうございます!」

 

 CHUNに褒められたシャルは照れた表情で笑みを浮かべる。

 談笑を交えつつの食事が、何事も無く進むかに思えたその時、にしこくんの顔色が悪くなる。

 

「ブーン」

「どうしたんだ!?」

 

 ばたりと倒れるにしこくんを見て、慌ててCHUNが駆け寄る。

 

「なんと、もしや毒が!」

「えええ!? ちちち違います違いますー!!」

「これは一体何が!」

 

 ローレライの毒というワードに反応しシャルがパニックを起こす。

 遅れて部屋に入ってきた執事が状況が分からず、兎も角パニック状態に陥っているシャルを落ち着かせなくてはと近づいては声をかけていた。

 

「もぐもぐ、別に毒はなさそうだよー?」

 

 アルンはその光景を眺めつつも平然と食事を摂り続けている。

 CHUNは毒がないか食事を調べるが、そういった類のものが混入していないことが分かった。

 

 何かが起きようとしている。

 

 にしこくんの体が発熱し、机の中央に置かれていた水晶も熱を発する。

 にしこくんが熱を発するのに共鳴するように、水晶の熱は強くなっていく。 

 陽炎ができ、ゆらゆらと揺れる湯気。にしこくんの体の中に何かが入ってくる感覚と、バックパックから溢れる黒い靄。

 にしこくんは狂気に取り憑かれ、その場にいるものに襲い掛からんとする。

 

◆クライマックスフェイズ

●シーン1:仲間割れ

 

 CHUNはにしこくんの暴走を止めようとナイフでの斬撃を放つ。

 ゆらりと、揺れるような軽やかな動きでそれを躱すと、にしこくんの魔法力が高まった。

 ファイアロード、フレイムロードとも呼ばれる火の魔術の才能。それを備えたにしこくんの炎はとても強大な力だ。

 普段ならば赤、或いは朱色の炎であるが、黒い靄のせいなのか、今は真っ黒な炎となり、にしこくんの体を纏う。

 放たれた黒炎がエンゲージするCHUNを襲う。至近距離での魔法、普段より遥かに増した威力に回避行動が一歩遅れる。

 

「だめー!」

 

 瞬時にアルンがプロテクションを唱え光の盾を生み出す。

 それにより炎は抑えられたものの、全てを防ぎ切るには至らず、多少なりともダメージを受けてしまう。

 その傷を癒すため、続けてアルンはヒールを唱えCHUNへかけた。

 

 にしこくんをさらに黒い靄が包み込む。

 

「これは何事ですかな?」

 

 にしこくんに起きている暴走。その原因を探ろうと執事が動く。

 

「これは、このバックパックから何かが流れ込んできている?」

 

 そのアドバイスを受けて、CHUNはにしこくんのすぐ横に置かれているバックパックに狙いを定めた。

 ナイフにロープを絡ませ、鞭のようにそれを投げる。

 にしこくんの股を掻い潜り、鋭い刃の先がバックパックから覗いていた絵日記に刺さる。

 絵日記から悲鳴が漏れ、にしこくんの黒い炎が靄となり絵日記の中へと戻っていく。

 同時に、にしこくんの嫌な雰囲気が無くなった。

 ガタリとバックパックから絵日記が零れ落ち、赤竜水晶も熱を放つことをやめる。

 

◆エンディング

●シーン1:解決?

 

「おー、フェスティバル? お三方は一体何を争っているのでしょう?」

 

 CHUNは正直ににしこくんが本を盗んだことを白状する。

 

「泥棒さんだったんですかー!?」

「それはいただけませんな」

 

 驚きにあうあうしているシャルと呆れ半分の執事。

 そんな状況であるにも関わらず、ローレライはのほほんとした表情でその話を聞いていた。

 

「おはようブーン!」

 

 倒れていたにしこくんが意識を取り戻し起き上がる。

 CHUNは絵日記に続きレシピ本のことも伝え返却する。

 

「それは不思議ですねー?」

 

 そう言いながらローレライはレシピと絵日記を受け取った。

 そして続ける。

 

「確かにこのレシピ本はこの屋敷のものですが、この絵日記は誰のでしょう?」

「私のじゃないです!」

「私のでもありませんな」

 

 どうやらローレライを含む三人の中にこの絵日記の持ち主はいないらしい。

 

「フシギだブーン♪」

「ここは一曲、さよならレクイエム~♪」

 

 CHUNに無理やり頭を下げられそうになり抵抗するにしこくん。

 

「パパたちなんで喧嘩してるの……?」

「熱くなってしまった」

 

 落ち着いたところでローレライが切り出す。

 

「それで取引はいかがしましょー? 私としましてはー、こんな怪しい石さっさと売り払いたいところですが。むしろこんな怪しいものおいておきたくないので、一人八〇〇ゴールド支払うので絵日記ともども引き取ってはいただけないでしょうか?」

「ハンバーグのレシピとセットなら引き受けるブーン♪」

「それでしたらこちらの写しを!」

 

 落ち着きを取り戻している間、手元のメモにシャルはレシピを書き写していた。どうやらシャル自身はそのレシピを初見だったらしい。本には他のレシピも掲載されているのだが、にしこくんはハンバーグにしか目が行っていないようだった。

 CHUNはそれに頷くと取引成功の握手を交わす。

 窃盗罪で逮捕されなかっただけましと思うべきか。いらないものもあるが、ここで引き取らないと後々面倒なことになる。どちらにせよ面倒ごとが増えることには変わりないが、後腐れない方を選んだ方が断然いいに決まっている。

 

 爽やかなハンバーグのレシピ、赤竜水晶、怪しい絵日記を手に入れた。

 さらに一人八〇〇ゴールドを入手した。

 

 こうしてCHUN商会は取引を終え、新たなコネクションを得たのであった。

 

「それでは皆さんさようなら。ここいらで一曲、さよならランデブー♪」

 

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