境界線上の守り刀   作:陽紅

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十四章 忍と白睡蓮 《邂逅編》

 

 

 

 耳を澄ます。

 目を閉じて、呼吸も忘れて。全神経を聴覚の一点に集中させて……ただただ『聴く』ということに全身全霊を向けて、極限まで耳を澄ませる。

 

 やがて、自身の心臓の鼓動がうるさく聞こえるほどに耳が研ぎ澄まされて──それでも、彼の足音を聞き取ることは、きっと、不可能だっただろう。

 

 

 ──地に着く音も蹴る音も。それどころか、ほんの僅かな擦過音さえもしない。

 

 

 そんな、凄いを通り越して『有り得ない』という感想しか持てそうにない()()を、無意識にやっている点蔵は……正しく、変態忍者と言えるだろう。

 

 

 

 

(……なんでござろう。いま、ものすご〜く理不尽な罵倒を受けた気が……)

 

 

 

 一般的には被害妄想だ気のせいだ、と判断するのだろう。だが、絶対に一般的とは言い切れない環境(梅組)に在籍しているからだろう。点蔵は確信をもっていた。……誰か、 まではわからなかったが、確実に関係者(梅組)の誰かが自分に対して何事かを言ったのだと確信もしていた。

 

 

 

 

 

(さて、もうすぐでござるな……)

 

 

 ──夜の英国。以前歩いた時とはまるで違う雰囲気の街中を一人疾走する点蔵は、頭に叩き込んだ地図と目的地までの道のりを思い出しながら──腹の奥に重いものを感じていた。

 

 ここまで休みなく走り続けたが、流石というべきか、点蔵は体力の減りも疲労もほとんど感じていない。級友たちの援護もあって、戦闘らしい戦闘を殆どすることなくここまで来れたからだろう。唯一ウォルターとの交錯で強い緊張を得たが、それも僅かな時間のことだ。残ったミルトンが上手くやっているのか、追走の気配はない。

 

 しかしその際……長年愛用してきた忍刀が二本とも砕けてしまった。

 確かめたわけではないが、衝撃の感触からしてどちらも打ち直すこともできないだろう。……ああしなければ突破できなかったと確信しているが、しかし十年を超える長年の相棒だ。喪失感は半端なものではない。

 

 ──有名な企業の製品、というわけではない。無名企業の、無銘の数打ちの品だ。最近は経年による劣化が目立つようにもなってきて、そろそろ休ませるべきか、と考えていたほどだ。

 だが、新しい……手に馴染まない忍刀だったなら、きっと……いや、絶対にあの動きはできなかっただろう。ウォルターほどの手練れに『致命傷の手応え』を誤認させることができたのは、あの忍刀だからできたのだ。

 

 

 

 だからこそ、強く思う。誓い直す。道を作るために砕けた愛刀のためにも……必ずメアリを救わねば、と。

 

 

(ぬ……)

 

 

 走り、ある場所が視界に見えて、足運びがわずかに乱れた。

 

 なんの変哲もない通りの一角の、街灯がある以外なんの変哲もない街の一部だが……祭りの時にメアリとともに歩いて、あそこにあった店で売っていた大きな魚のフライを二人で分けて食べたのだ。食べ物を半分に分けて食べるという行為に、嬉しさやらを感じたのはあれが初めてだった。

 

 

 そこから少しすれば、二人で並んで歩いた通りを超えて、二人で拍手した見世物小屋があった場所を抜けて。

 

 また少し走れば、そこは空腹でお腹を鳴らしてしまって真っ赤になった彼女に萌えた十字路だ。

 

 

 そして……彼女の立場を知り、別れを交わした門を潜った。

 

 

 

「……あれが最後になど、絶対にさせぬ」

 

 

 ……もう一度。いや、一度などではなく何度でも。彼女は祭りの街中を歩き、楽しそうに笑う。なぜなら、彼女は生きるのだから。今日今宵の処刑を超えて、明日を生きていくのだから。

 

 ──たとえその笑顔の隣に、自分ではないほかの誰かがいたとしても……きっと、自分は後悔を抱くことはない。間違いなく情けなくも盛大に引きこもるだろうし、数ヶ月はみっともなくも枕を水没させるくらいには泣くだろうが──……。

 

 

 

 『守れた』……この一点において、自分は──点蔵・クロスユナイトは間違いなく、胸を張っているはずだ。

 

 

 

 そして、英国本土の第二階層から、目的の場所がある第一階層へ入り……処刑場である塔が建つ広場にたどり着き、その走りを止める。

 

 

 

 止めて、改めて歩き進んで……彼の横に、立った。

 

 

 

「……来たか点蔵。随分遅かったな」

 

 

 

「Jud. ……道中、いろいろあったのでござるよ。

 

 

 待たせてしまい、申し訳ござらん──止水殿」

 

 

 

 甘い花蜜と、芳醇な洋酒の香り。

 

 酒の瓶と、甘い匂いのする包み紙を前に置き、芝生の上に胡座で座る守り刀が一人……体の向きからして、きっと月見酒でもしていたのだろう。

 

 

「止水殿は、いつからここに?」

 

「ん? いや、遅かったなって今言ったけど、実は俺も今さっき終わってコッチに来たばっかりなんだ。──お前が万が一間に合わなかったら、俺一人でも『あそこ』に突っ込まなきゃいけないからさ」

 

 

 そう言って、だから間に合って良かった良かった、と笑う。

 

 緋色の衣は、日頃以上に配置された無数の刀たちに覆われて見え辛い。少なくとも、点蔵はこれだけの数の刀を配刀している止水を見たことがなかった。……日頃より多く、そして、明らかに『戦うこと』に主眼を置いた刀たちの配置からして……点蔵は止水の戦意の高さを知る。

 

 

 ──いるだろう。 と、点蔵は確信はしていた。

 

 

 メアリの歴史再現による処刑を真っ先に止めると宣言していたのは、他でもない止水だ。

 アルマダ海戦中は英国に縛られてしまっているが、逆に捉えれば英国相手に誰よりも先に国交政治ガン無視で喧嘩を売ることができるのである。しかも中枢に堂々と入り込んだ上で。

 

 

 

 ……堂々と入り込んだその地で、盃になみなみと酒を注ぎ、一口含んで、吐息を一つ。

 

 

 そして、これから始まるだろう処刑の舞台の──()を眺めた。

 

 

 

「エルザが言うには、英国の最精鋭・完全武装五百人──だってよ。……お前が来るちょっと前くらいかな、準備終わらせてた。……もうちょっと早く来てたら、なんの苦労も無しに行けたはずなんだけどなぁ……」

 

「Jud. 素直に、申し訳ないと思ってるでござるよ。いや、ホント」

 

 

 ……ぐいっと酒を煽るその姿が、月見酒に自棄酒も混じっているように見えてしまっても、まあ仕方ないだろう。

 

 

 

 広場に立つ五百人の兵。──彼らは警備兵などではなく、戦争に参ずる純粋な兵士たちだ。

 

 

 異族主体である英国だからだろう。体格や構える得物などは面白いほどにバラバラだが、実力の高さは肌でヒシヒシと感じられる。三河で戦ったK.P.A.Italiaに数こそ劣るだろうが、個人個人の実力は目の前の兵団の方が何倍も高いだろう。

 

 陣形と呼べる並びはしていない。各々が実力を存分に発揮できるように、広く間を取って分散している。

 

 

(守る陣形ではない。だからこそ相当に厄介でござるな……しかも、異族が最も力を増す満月と。つまりこれが──)

 

 

 最後の関門でござるか、と腹に力を込めようとしたところで……はて? と、止水のセリフにあった違和感に気付く。

 

 

 

「止水殿? いま──」

 

「そろそろ時間か」

 

 

 聞こうとした点蔵を遮るように発せられた、静かな、強い声。

 

 立ち上がりつつ告げられた時間を比喩する言葉に、点蔵も意識を無理やり切り替える。

 

 

 ──英国が予定した、重双血塗れ(ダブルブラッティ)・メアリの処刑……その時刻が、あと数分後に迫っていた。

 

 

「──なあ点蔵。この前、軽く昔のこと話したろ? その時にさ……思い出したんだよ。

 

 ……十年前にお前が俺をぶん殴って、俺に術式を止めろって胸ぐら掴んできた後に、俺がどうやっても術式を止めないってわかったら──お前はこう言ったんだ。

 

 

 

   ──止水殿が誰かの傷を奪うと言うなら……! 自分がその『誰か』が傷を負う前に助けるでござる! そうすれば良いだけでござろう!?──

 

 

 

 ……だっけ? 確かそんな感じでさ」

 

 

 言われて、聞いて。そして、思い出す。

 ……ああ、そう言えば、そんな事も言っていたでござるなぁ。と、若干の気恥ずかしさを点蔵は背中に感じた。

 

 ──あの頃は若かった。いや、今でも若いが、それ以上に幼く……無知だった。武蔵全域に住む全員を、いつ来るかもわからない脅威から守る……そんなこと、どう考えてもできるわけがないというのに。当時の点蔵は怒りというか苛立ちに任せて宣言してしまったのだ。

 

 

 そして、齢を重ねて。それが守りに行く止水に先んじて行く、という決意に改まった。その決意が、気付けば皆に広まった。

 

 

 

「それ聞いてさ──俺は " ああ、こいつバカだなぁ " って思ったよ。出来るわけないだろそんな事、ってさ。けど……」

 

「…………」

 

「けど、うん。嬉しかったんだ。俺やトーリと同じ、『バカ仲間が増えた』ってさ」

 

 

 ニカリと笑った止水に、点蔵も笑い返す。このバカは自分が『バカげたことをしている』という自覚を持って、バカをやり続けていたらしい。

 ……配された刀達の下の見え辛かった緋衣は、立ち上がることである程度見える様になる。そこにあったのは、まるで、激戦を超えてきたように着崩れ汚れ、ところどころに赤が目立っている緋色だった。香りの強い酒と花蜜で隠されていたが、立ち上がった際に鉄の匂いも僅かにしている。

 

 

(バカでござるなぁ……)

 

 

 笑う。自分もバカで、隣に立つバカもバカのままで。

 

 ならば。

 

 

 

「では、バカ仲間からの頼みでござる。……自分の一世一代の大馬鹿に、どうか、付き合って欲しいでござるよ」

 

「一応答えるぞ? 『Jud. 』ってさ。

 

 んじゃあ……今更だけどさ、俺に『宣戦布告』させてくれないか?

 ……正直、英国のこのやり方は、ずぅぅっと、気に入らなかったんだ」

 

 

 

 

 命をかけて守る。──わかる。

 

 

 

 たとえ死んでも守り抜く。──これも、わかる。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 誰かの命を犠牲に

 

 国を守る力を得る

 

 

 

 ──空気を、大気を。胸部がわかるほどに膨張させて、背が大きく仰け反るほどに吸い溜めて……守り刀は、()()()

 

 

 

   ──『 英 国 に 告 ぐ !!!』

 

 

 

 ……直近にいた点蔵は、反射で片方の耳を塞いでいて被害はなかったが……それでも、雷が落ちたのではないかと思わせるほどの声が轟いた。

 

 

 

   ──『 誰かの犠牲を糧に! 国を守る力を得るというのがお前達の正義なら! 』

 

 

 武蔵には武蔵のやり方がある様に、英国には英国のやり方があるのかもしれない。だが、どいつもこいつもそのやり方を、苦渋に満ちた顔を必死に隠してやろうとしている。

 

 

 

   ──『 ……止めてみせろ! その正義で……!』

 

 

 

 それが正義なら、賢明な選択だというのなら。

 

 

 

 

     ──『 我らの──『命も国も守る』というこの『信念(大罪)』を──っ!! 』

 

 

 罪人になろう、喜んで。

 馬鹿になろう、心から望んで。

 

 

 

 ……点蔵はビリビリと轟くその傍らで、利き脚に力を込めながら思い出す。

 

 ──緋衣を纏うこの刀は、酒が入ると日頃と打って変わり、とても……饒舌になるのだ。そしてノンビリとしているようで、その身の内に、誰よりも熱いモノを秘めている男なのだ。

 

 

 

 

 轟きの余韻が消える、その前に。

 

 

 ……駆け出した忍と刀が、同じく駆け出した五百が、激突した。

 

 

 

***

 

 

 

 さて、おっ始めたバカ二人のことを伝える前に、この戦場においていくつかある『条件』を説明するとしよう。

 

 

 まず、もっとも重要な『勝利条件』──これは単純に、点蔵がメアリの下に辿り着くこと。告白の成否は次段階だ。

 

 そして次に『敗北条件』──これも単純に、点蔵もしくは止水がメアリまで辿り着けず、彼女の処刑が成されてしまうことである。

 

 

 ……最後に、おそらく最も面倒臭いであろう条件がある。この場は『限定条件』とでも言えばいいだろう。

 

 

 それが『敵兵の殺害、及び軽傷以上の損害を与えてはいけない』という、なんとも理不尽極まりないものだ。

 

 理由としては──今後、武蔵と英国は同盟国の間柄となるからだ。アルマダ海戦が行われる今夜からその同盟は正式に締結されるのだが……その初日から、武蔵の特務が英国の兵士を手にかけたとなれば、当然同盟関係に影響が生じ、最悪同盟解除も十二分にあり得るのだ。

 

 さらにそこから武蔵そのものの悪評に繋がり、武蔵が今後他国と同盟を結ぼうとしても、この一件が大きな影を落とすことになるのは間違いない。

 

 故にこれは、巫山戯た攻撃力を持つ止水にとって、とてつもない枷になる。

 

 

 

 

 

──『!?』

 

 

 ……はず、だった。

 

 

 脇差ほどの長さの刀を右手……逆手に構えた止水が、十名ばかりの異族の間を静かにすり抜ける。すり抜けたその人数がそのまま地に伏せたのだ。

 そんな光景を目の当たりに……いつの間にか最前線に立っていたその英国の兵は思考を止める。

 

 

 

 

 

「何を驚いているのでござるか? 『守り』の刀でござるぞ? ──殺さず、傷付けずの制圧はむしろ、止水殿の最も得意とする分野でござる」

 

 

 

 

 

 そしてその彼も、背後から聞こえたその言葉と首の裏に受けた軽い衝撃を最後に、地に伏せ組に加わる。

 

 ……激突の瞬間までは、確かに二人いた。しかし、いきなり一人(点蔵)が消えて、点蔵を狙った一同に生まれた虚をもう一人(止水)が貫いたのだ。

 

 

 そして、その足は止まるどころか加速して、貫き続けて、突き進んでいく。

 

 

(ふむ。おそらく、『固まっていては一掃される』と思ったのでござろうが……)

 

 

 大柄の毛深い……恐らく雪男かなにかだろう。止水よりも大きな巨体から振り下ろされた棍棒を、止水が脇差で受け止める。その止水の股下から滑り込み、ガラ空きになった懐に入った点蔵が掌底を打ち、難なく沈め……巨体が倒れ切る前にさらに駆ける。

 駆けながら思い出すのは、最近になってさらに上限が跳ね上がった『止水の一撃の威力』だ。密集した骸骨兵が一振りで軽く三桁が薙がれる様を見たら、普通はバラけるだろう。

 

 

 

 その警戒こそが、英国最大の悪手になった。

 

 

 ──精霊術だろう火の玉や土塊が飛来するが、全身の刀を()()()止水が大きく身体を回し、弾き払うか打ち返す。その対処法にポカンと口を開けて呆けた術者たちの技後硬直に、鞘の一本を掴んで遠心加速を得た点蔵が飛来し、瞬く間に打ち倒す。その突破口に止水がこじ開け、さらに前へ。

 

 

 

 止水たちは、『英国兵を必要以上に害してはいけない』──だからこそ、一網打尽にされない様にとバラけていた英国側の布陣は、寧ろやり易いくらいだった。疎らな二人は全速で突っ込むことで、『2対500』ではなく、『2対1の500連戦』の形を無理矢理作り上げたのだ。

 

 止水と点蔵の戦闘系特務に、腕利きとは言え特務に届かない実力しかない部隊長級。さらに、攻撃を点蔵が、防御を止水が、と役割を完全に分業することで理不尽な難題に斜線を引いた。

 

 

 

「っ、囲め! 距離を詰めて対応しろ! 足を止めるんだ!!」

 

「「おう!」」

 

 

 しかし、『戦は水物』……英国側も形を変える。空けた空間が仇となったなら、その空間を埋めればいい。さらに足の速いものが後ろから回り込むことで全方位から殺到する。

 

 点蔵たちが進めたのはおよそ半分ほどだろう。

 

 

 ……故に二人は。

 

 

 加速の勢いを、一気に最大まで跳ね上げた。

 

 

 

「じょ、冗談だろ……!?」

 

「「大真面目 でござる()!!」」

 

 

 

 前に立つ者を掴んで投げとばし、前に立つ者を打ち据えて足場にして。さらに前へ。

 

 峰打と拳打で意識を飛ばした巨軀を、左右に流して。さらにさらに、前へ。

 

 

 ほんの数秒、それだけでも足を止めることができれば包囲が完成するのに、誰一人としてその数秒を止めることができなかった。

 

 

 

 そして、残り僅かにという距離に至り、止水が一気に跳ぶ。途中にいた兵がまるで重機に跳ね飛ばされたように弾かれ、道が出来た。点蔵を残す形で二手に分かれた後、止水が全身で、地面を削るようにして減速し振り返った。

 塔の真下で──突撃が始まって、初めてその足を止めたのだ。

 

 

 足を止めた止水は、脚を開き腰を落としてやや前傾の姿勢。脇差を鞘に納刀し、手の平を上に……低い位置で指を重ねるように()()()

 

 

 ──開いた道が、止水の姿勢が。何より点蔵たちの『勝利条件』が。

 

 ……止水のその行動の意図を、この戦場にいる全員に、正しく理解させた。

 

 

「と、止め……!」

 

 

 止められない。刹那程の差だが、より早く理解した点蔵はすでに駆けていた。後方から追撃の術式やら飛矢が飛んでくるが、構わず走る──駆け抜ける!

 

 

 

 

 

 止水の手前で飛び、手の上に片足を乗せる。……子供の頃、巫山戯てやって痛い目にあったが……今なら、問題なく出来るだろう。

 

 

 

「……忝い……!」

 

「今度、昼飯奢れ。それで勘弁してやる、よっ!」

 

 

 

 背筋から肩へ力は伝播し、押し上げる。弾き出す。

 

 

 ──それは重力に逆らい、直上方向への急加速を生み出した……!

 

 

 

 

「行けっ点蔵! ……この国との決着、お前が決めてこい!」

 

「Jud.!!」

 

 

 

 階段を使えば数十秒、壁を駆け登れば数秒。

 

 ……その高さを一瞬で超え、点蔵は処刑場である王剣の場に至る。

 

 

 この事実をもって、2対500の対戦は、見事に武蔵が錦を飾った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 ……やりきった笑顔を浮かべながら小さくなっていく点蔵の姿を見つつ、

 

 

「……あ。いけね……伝えるの忘れて……まあいっか」

 

 

 

 なんとも、なんとも不安を掻き立てる呟きをボソッと、止水は口にした。

 

 

 もっとも、悔しさに憤る約400名との国関係無しの乱闘に突っ込んでいった止水は、すぐにそのことを忘れた。

 

 

 

***

 

 

 

 ──点蔵が至った、塔の最上部。

 

 英国の守護を担う王賜剣の前に並ぶようにして……。

 

 

 ……『二人』のメアリが、そこにいた。

 

 

 

「……あ、あれ? 自分、いつの間にハーレムルートのフラグ立てたのでござるか……?」

 

 

 

 




読了ありがとうございました!

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