境界線上の守り刀   作:陽紅

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八章 王、道を定む 【壱】

 

 

「ノブタン! 大変だよ! 止水君似のショタっ子が見つかったって弾幕が各所でブッパされ──」

 

「待ってろ我が愛孫よ! お爺ちゃんが今ゆくぞぉ!」

 

「展開の進行が早すぎるよノブタン! 正副会で予算出しまくったケッコン式を無視とか、許しませんよ!? お色直しで『白無垢・ドレス・緋和装』の順番とか全然決まってないんですからね!?」

 

「待って! 式もそうだけど、まだ定番の『娘ぼく(娘さんをぼくにください)』されてないよコニタン! 『娘やら(娘はやらん!)』もやってないよ!?」

 

「報告しなくていいって正純さんの意思があった可能性が微レ存」

 

「      」

 

 

 

 

 ー*ー

 

 

 

 

「各隊、被害はどんな感じだい?」

 

「Tes. 怪我人は多いですが、重傷まで行くものはいません。しかし、その反面、物的被害は甚大と言わざるをえないかと……」

 

「んじゃあ、その物的被害ってやつの詳細は?」

 

「Tes.──航空戦艦、大破六艦、中破二艦。搭載していた武神・機動殻合わせて七十九機が巻き込まれ大破しています。それ以外の艦にも小破レベルの損害があり……現在、全力をもって復旧に当たっていますが、本日中はまず動けないかと」

 

 

 

「持ってきたのがほぼ全滅、か……。っはー。こりゃあ、しばらく国をあげて節約生活か。……くそ、アタシも安く見てたってことかよ」

 

「ふふ。朕は輝元さえいてくれれば何もいらないよ? ……そういえば、輝元は三河で武蔵が決起して以来、ずっと動向を気にしていたね? 彼のことを以前から知っていたのかい?」

 

「まあな……聞いたのさ、ガキのころに。あの一族の、唄? っていうのかね、ありゃあ。

 

 

 『一騎当軍』──その名乗りに、嘘偽りなかったって話だけど、流石に人狼女王といい勝負できるなんざ聞いてねぇって……」

 

 

 

 ──はは。そりゃあ、そうだろう。だって、言ってねぇからなぁ。

 

 

 想像の中でそう言われた輝元がイラッとして。

 

 ……隣にいる金髪全裸に地味に痛い八つ当たりの肘が炸裂した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 駆ける。足は当然に、腕も大きく、全身で。命を懸けて、ただ駆ける。

 

 

 ──不出来が過ぎる。

 

 

 荒い呼吸でカラカラに渇いた喉から、鉄のような臭いと味が上がってくる。酸素の供給がまったくと言っていいほど追いつかない。もっと大きく口を開けなければならないのだろうが……しかし、彼女は逆に、歯を強く食いしばった。

 

 

 ──どうしようもない役立たず。どうしようもなく、足手まといだった。

 

 

 駆ける。駆ける。ただ駆ける。

 

 木々が邪魔だ。引っこ抜いてしまおうか。

 

 地面の凹凸が邪魔だ。山や森など、なくなってしまえばいい。

 

 

「ミトツダイラ殿、少し──」

 

「っ、わかっ、てますわ!」

 

 

 遅いというのだろう? 急げというのだろう? わかっている。息一つ乱さない忍者と、そのすぐ後ろを精霊術の行使で殆ど飛翔というレベルで軽やかに跳んでいるその嫁に、必死に返事を返す。

 二人は自分よりずっと前にいる。届いた声は、風の精霊にでも運ばせたのだろう。

 

 少し高い所を移動する墜天の金翼は、強い羽ばたきで生まれる瞬間的な加速力を巧みに扱って移動している。時折木々の天辺からほんの僅かに顔を出して、周囲の索敵を行っていた。

 ……すごいな。自分には、周りを警戒する余裕もない。

 

 

 

 ──それを羨み、そして妬む自分が、堪らなく……醜かった。

 

 ──もっと、早く。動け。この鈍足。狼の血を半分でも継いでいるのなら、せめてそれらしい速度を見せてみろ。

 

 

 

 はるか前を行く点蔵からなにかの合図があるが、気にしない。

 

 

 

(はやく、はや……く! もっと、まだ……!)

 

 

 奇しくも、数時間前に母親であるテュレンヌが駆けて行った道で、娘であるネイトが同様の事を思いながら駆けていた。急ぎ、そして焦る。

 違いは、その足が母と比べて明らかに遅いことと……同行者がいることだろう。

 

 

「ミトっつぁん! ちょっと落ち着い──」

 

「わかってます!!」

 

「……ああんもう! こんの頑固者ぉ!」

 

 

 声はマルゴット。位置は後ろ。距離は……超至近。

 

 ──ゴズンという一撃が、後頭部を強打した。

 

 

「ふみぅ!?」

 

「いったぁ!? 膝、皿が割れるぅ!」

 

 

 疲れや諸々で受け身を取れず、顔面から地面へ向かって二転三転するネイトに対し、攻撃側であるはずのマルゴットは慣れない打撃技をやった所為で膝を抱えて二転三転。敵襲を受けたわけでもないのに被害甚大だった。

 

 

「くぅあ……! マル、マルゴット! 貴女いきなりなにを……」

 

「ナイちゃん達の話ガン無視してる石頭に喝った! 今では後悔して……まって、まじ痛い膝痛い。メーやん! へるぷみー!」

 

 

 ──うえーん、というのは演技なのかガチな泣きなのかはさておいて、あらあらと笑うメアリ殿マジ天使でござる。

 

 後頭部を抑えながら、しかし怒りの矛先を向けるに向けられないネイトに、先行状態から戻った点蔵が寄った。

 

 

 

「ちょうどいい、と言っては変でござるが、休憩でござる。かなりのハイペースで想定より距離は稼げたので、少し長く休憩を取っても大丈夫でござろう。

 さて……ところでミトツダイラ殿。先ほど言った自分の話、ちゃんと聞いていたでござるか?」

 

「は、話……?」

 

 

 なにかあっただろうか、と思い返すが記憶にない。後頭部の一撃で記憶が飛んだ、というわけではないが、それにしても曖昧だ。

 なにが、と立ち上がりながら記憶を漁ろうとして、しかし足底から全身へ登ってきた強い疲労に尻餅をつく。

 

 

「え? なんで……」

 

「……まあ、当然でござろう」

 

 

 忍者は、その光景に苦笑を浮かべた。

 

 人狼女王からの打撃。その回復のために絞りきった体力が戻る間もなく、この強行軍だ。むしろここまで走り切れたこと自体驚愕である。それは一重に、ネイトの意思の強さだろう。

 

 『点蔵とメアリが先行し、マルゴットとネイトがネイトのペースで安全確実に進む』という作戦を説明したのだが──『少しでも早く二人を救う』というネイトの意思には却下されていたようだ。

 

 

「先の戦闘の余波か、六護式仏蘭西は軍を展開できないようにござる。……警戒は少なからず必要でござろうが、速度重視でも問題はないでござろう」

 

「な、なら!」

 

 

 急げることに喜び、ならば急ぐべきだ──そう告げるために、疲れで力の入らない足に力を入れる。痙攣のような震えしか起きないことに驚いていた。

 これほどの疲労感と脱力感は経験がない。……本当に今まで走れていたのか、とネイト自身が疑問に思ってしまうほどに。

 

 

「──故に、ある程度速度を捨て、ネイト殿には移動しながら鍛錬をして頂くでござる」

 

「……はい?」

 

「ある程度、でござるよ? ああ、『鍛錬する暇があったら〜』というツッコミは無しな方向で……マルゴット殿ー? その用意したヘルリッヒはしまってくだされー?

 ……こほん。ぶっちゃけると、今のミトツダイラ殿の速力ではなんとか五日以内には辿りつけるでござるが、その()が続かぬのでござる。止水殿が勝ち取ってくれた条件の五日間は、『人狼女王がトーリ殿を喰わない』というものでござるが……逆を言ってしまえば『喰わぬ以外はなんでもあり』でござろう?」

 

 

 ……有り得る。幼い頃、自分が大事に取っておいたオヤツを食われたときも「食べてませんわ。口に入れただけですわよ?」と──……。

 

 

(めっちゃヤバイですわ……!)

 

 

 例えば、トーリを救いにきた者たちを蹴散らしてもいい。そうなってしまえば、トーリが自力で人狼女王から逃げ切れるわけもなく、そのままいただかれてごちそうさまだ。

 

 

 

 だからこそ。点蔵は言っている。

 

 人狼女王と()り合い、トーリを奪還するだけの実力を持て、と。

 

 

 

 

「……リベンジを果たせ、と?」

 

「そうなるでござるな」

 

「……可能性は?」

 

「ゼロではない、と自分は思ってござるよ?」

 

 

 そうでなければ、点蔵はネイトを救出チームに入れていない。選出の時にも告げた理由はあるだろうが、これはそれ以上だ。

 

 

 ……今のままではありえないその可能性を、この短時間で発現させるとこの忍者は言っている。

 

 

 

 それを……ネイトは否定してしまいたい。「無理だ」と言ってしまいたい。相手はあの理不尽そのものな母だぞ? あれと戦えるだけ……抗えるだけの力を持つなど、不可能ではないか。

 武蔵最強である止水ですら軽く遊ばれ、命を代償にしてやっと対等に近付けるような化け物だぞ? なのに……

 

 

「で……これから行う鍛錬の内容でござるが、実は放課後鍛錬用に止水殿が考えていたものにござる。さらにそして、『これが出来るようになったら、俺と肩並べられるかもな』とも笑っていたでござるよ。

 

 さて……どうするでござるか?」

 

 

 ──この犬臭い忍者、嫁ができてからなにやら小生意気になりましたわね。そんなことを言われてしまったら……!

 

 

(やる以外の選択肢が、ないではありませんの……!)

 

 

 動けない体で、しかし挑むように前のめりになる重心。それを見て、点蔵はマフラーの下で笑みを浮かべた。

 

 梅組の戦闘系メンバーが集まって行う放課後の鍛錬。僅かにしか取れない時間で、少しでも皆が強くなれるように──無事に生き残れるようにと、止水は『敵』として『師』として、刀鞘を打ち、四肢を放った。その最中で口下手とプロフィールに乗るほどに説明下手な彼がするアドバイスは、その全てが真剣に考えられたものである。

 

 

 専ら『挑む組』である点蔵やウルキアガは、家系的に英才教育をされた忍者やそもそもが優性種族である半竜だ。アドバイスは然程必要なく、あったとしても僅かばかりの底上げにしかならなかっただろう。事実、彼らの放課後鍛錬の内容は止水を相手にほぼ実戦形式の組手、『乱取り稽古』を連続で行うだけだ。

 

 だが逆に、肉体的にはほぼ一般人……アデーレやシロジロ、ノリキといった『学ぶ組』の面々の実力は大幅に向上していた。特にアデーレに関しては、これまでに挑んだ相手の殆どが副長や五大頂六天魔と、遥か格上の相手だったにも関わらず『負けていない』というその戦績が実証している。(なお、奔獣騎乗状態の鍛錬は止水でも行えない模様)

 

 

 ……ネイトは色々あって比較的最近参加した新参組の一人で、しかも戦闘方法や思考観念など完全に固まってしまった後での参加だ。もっと早くに参加していれば……! と歯を噛んだことは一度や二度ではない。

 

 

 

 

 だからこそ、点蔵は『今だ』と判断した。

 

 

 大敗を晒し、無様を晒し──しかし成さねばならない大事がある、今。

 

 

 固まりきった自分への価値観が粉々に粉砕され、しかし、さらなる高みを必要とし、それを望む今なのだと。

 

 

 

「……ねえ、テンゾー? その……ミトっつぁんの鍛錬で速度重視しないのはわかったけど……しーちゃんは、どうするの……?」

 

 

 大丈夫だよね……? と、普段は細めて弧を描いている眼を僅かに開いて、不安そうに問うてくるのはマルゴットだ。

 

 膝蹴りのダメージが意外と大きかったのか、それともついでに疲労軽減でもしているのか、メアリの精霊治癒を受けたまま──そうでなければ、マルゴットは点蔵に詰め寄っていただろう。

 ……急ぎたいのは、ネイトだけではないのだ。

 

 

「あれだけの負傷でござる。生存の可能性は──……申し訳ござらんが、かなり低いと言わざるを得んでござろう」

 

 

 そう告げる点蔵も、これまで道中、何度も全力で駆け出したい衝動に駆られていた。

 

 ……付いてきている女子三人を無視して辿り着くことだけを考えたなら、点蔵だけならば今日中に到着も可能だろう。だが、それでは点蔵自身が言うように後が続かないのだ。今日中にたどり着けたとして、人狼女王をどうにか出来る手段も、人狼女王を出し抜いてトーリと止水を救い出す手段も彼にはない。このメンバーが全員揃って、初めて僅かながらの可能性が出てくるのだ。

 

 だから、全力の加速を行おうとする両足を、必死に抑えた。

 

 

 ──なお、敵国領内に潜り込んでいる点蔵たちは、現在傍受を警戒して武蔵との通神を完全に切っている。幼児化した止水のことも当然知らず、そして、彼が伝えた『ギリギリ死にかけてる』という情報も当然知らない。

 

 生きている可能性は極めて低い──そして、その極めて低い可能性でなんとか生きていても、『止水を食う』と宣言した人狼女王の元にいるのだ……という現状における事実に基づく情報しかない。

 

 

 唇を噛む二人に、点蔵は言葉を続ける。

 

 

「それでも、だからと言って諦めたわけではござらん。止水殿には自分、恩も借りも大量にあり申す。全て返すまで生きて貰わねばならんでござるし、なにより、これからも武蔵を守って頂けねばならんでござる」

 

「…………」

 

「トーリ殿と止水殿。両名を救うために、ミトツダイラ殿の鍛錬が必要なのでござる。お覚悟を。止水殿は、結構重いでござるぞ?」

 

 

 絶望的かもしれない。希望など、ないのかもしれない。

 

 だが点蔵は、最悪の結果はもとより、次善結果すら求めなかった。

 

 

 

「……わかりましたわ。それで、止水さんは、どのような鍛錬を?」

 

「Jud. それは……」

 

 

 

***

 

 

 

「……ガチパートだと思ったらギャグパートだった件」

 

「マルゴット様? どうかされましたか?」

 

 

 止水提案のネイトの鍛錬にマルゴットとメアリはなにもすることがなく、二人は現在樹上を飛んでいた。

 

 マルゴットはなんでもないよーと、隣を風精の力で滑空しているメアリに言葉を返す。

 

 

 ……点蔵が言った鍛錬の内容を聞いた瞬間、思わずポカンとして、そして、何故か安堵に似た感情がこみ上げた。

 

 

 

(ふふ……しーちゃんらしいなぁ)

 

 

 そっかなぁ? とボヤキつつ彼が頭を掻く姿を想像して、少しほっこりする。……危ない状態であることは先刻承知だが、それでも、どうか無事でいて欲しいと願わずにはいられなかった。

 

 

(まだ、ナイちゃんもガッちゃんも、ちゃんと告ってないかんね。だから、死んじゃだめだよー)

 

 

 マルゴットとメアリは念のための周囲警戒をしているが、魔女の探査にも精霊の視野にも野生の獣以外の反応は掛からないので、本当に念のためだ。

 そして眼下に意識を向ければ……信じられないことに、銀色の豊髪が結構なスピードで忍者を追い回している光景がある。

 

 

 

 ──「流体枯渇(腹ペコ)鍛錬……いや、ネーミングも止水殿でござるから! これほんと!」

 

 

 

 力が入り過ぎてガチガチになり、動けない。

 ならば、力が入りようもないほどに疲弊し切った状態から鍛錬を始めれば良い。

 

 『騎士()』としての矜持やプライドで固まった固定観念がある。

 ならば、『(本性)』をさらけ出させて、ぶち壊してしまえばいい。

 

 

 止水はそのことを以前から知っていて、そして、マルゴット達も英国で知った。

 

 ネイトが主食とも言える肉を長い時間絶った際、()()なるのか。その禁断症状とも言える、あの野獣の様な状態になり、自分たちがどうなったのか。

 

 

「……逃げ切れたの、テンゾー()()だったかんね」

 

 

 まだ男らしさが勝っていた直政は機械油を被って難を逃れたので除外するとして、空を飛べるという絶対のアドバンテージを持つはずのマルゴットはしかし捕まり匂いを嗅がれ……高速移動を主力とする副長の二代ですら銀鎖との連携で捕獲されたのだ。

 

 最後に残った点蔵を追いかけたネイトは、十数秒ほど追いかけて『これはいらん』と言わんばかりに踵を返され、当時真っ先に自己防衛に走った緋鞘の塊の近くにお座り待機。

 

 ……その後はご存知の通り『騎士様ハムハムくんかくんか事件』(某姉ネーミング)である。

 

 

 

 ──『っていうかさ、俺の次に力強くて、俺よりずっと軽いんだぜ? ……遅いわけがないんだよ。本当なら』

 

 

 止水考案のこれは、その『本当なら』を、引き出す鍛錬。荒いにもほどがある荒療治。

 

 体力は限界。疲労も甚大。その上、負傷を癒すために流体を大量に消費した今のネイトは、英国で行った二週間のサバイバル以上の流体枯渇状態である。飢餓状態で理性は薄くなり、生存本能がネイトの内に眠る人狼を呼び覚ます。

 

 その状態をできる限り維持し、その上で動き回ることで、『動けるのだ』と理解させ『動き方』を覚えさせるのだ。

 

 

(周りに人がいない超広い場所と、ミトっつぁんをそんな状態までお腹空かせる準備が必要な時点でホイホイできる鍛錬じゃあないよー……あ、だからしーちゃんもできなかったのかな?)

 

 

 ……マルゴットの条件にさらにプラスで、『その状態のネイトから逃げ切れる強者』と『ネイトが追い掛けてでも食いたい獲物』が『『=な存在でなければならない』』と──まあ早い話が止水がそれなのだが、さすがに食われるのはなぁ、と本人が渋ったのも実行に移されなかった理由の一つである。

 

 『武蔵最速』である点蔵は、その代役に十二分の強者だろう。だが、ネイトの求める肉ではなかった。

 

 それを、点蔵は一工夫。

 

 

 

「しっかし、テンゾーよく見つけられたね。……しーちゃんの額当て、IZUMO崩落に巻き込まれたのに」

 

 

 人狼女王の一撃を受けて歪みもしなかったその鉢金。止水の身につける唯一の防具が、点蔵の手に握られている。探す暇がよくあったものだと感心するやら呆れるやら。

 

 

「あ、それは私が見つけて点蔵様にお渡ししたんです。王賜剣・一型(この子たち)が止水様の流体をよく覚えていたみたいでして、すぐに見つけてくれました。あの時、人狼女王に破られたネックウォーマーの方もお渡ししていますよ?」

 

 

 そのメアリはというと、旦那の役に立てた事が嬉しいのか、白百合の小さな花を頭に二、三輪咲かしてニコニコしている。

 

 

(……神格武装にもモテモテなんだね、しーちゃん)

 

 

 ……ライバルってどこからどこまでだろう? と割と本気で考える。全部がライバルだとしたら、先んじて行動を起こすべきだろうか? とも。

 

 ──だったら。

 

 

 

「……しーちゃんが無事だったら……ナイちゃん、告ってみよっかなぁ」

 

 

 ライバルに迫るのもリードするのもそうだが、なによりも──後悔しないようにしたい。

 止水が生きていたとして、今後どうなるかわからない。ならばせめて……ずっと秘めていた思いの丈くらいは伝えておくべきではないか、と。

 

 

 思わず呟いてしまったその言葉は……しっかりと隣の女子に聞こえてしまったようだった。

 

 

「まあ! マルゴット様も止水様のことを? なら、エリザベスと一緒ですね!」

 

「うわぁ金髪巨乳異族枠の強力ライバル忘れてたぁ! ……あれ? メーやん? なんでそんな嬉しそうなの?」

 

「? 皆さん一緒に嫁がれるのですよね? あ、でも……ということは、義弟義妹の関係になるのでしょうか。以前に止水様のお宅でやったお食事会のような素敵な団欒が毎日になるんですね!」←王族的思考有

 

 

 白百合・満開。

 

 

―*―

 

 

「ハッ……ハックション!」

 

 ごうっ。

 

「くしゃみで光翼爆発させんなって言ってんだろうがこのバカザベス!」

 

「さすがにそれは不敬が過ぎるぞオマリ! ……待て貴様、それ止水用にバージョンアップした蔦だと」

 

「「……とりあえず瓦礫に埋まった私たちを助けて頂けませんか……?」」

 

 

―*―

 

 

 

「……ギャグパートだと思ったらラブコメパートだったでござるな件。しかし、止水殿と義兄弟、でござるか。ふむ……ふむふむ」

 

 

 




読了ありがとうございました!

ネイトの伏線ちょっと回収です……w

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