境界線上の守り刀   作:陽紅

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十六章 刀、王と共に 【中】

 

 飛び交う怒号と銃弾、そして拳または刃に代わり。

 

 

 飛び交う悲鳴とその他諸々。――落ち来る戦艦の輪切り添え。

 

 

 

「は、走れ! とにかく走れー!」

 

「はははは! 夢だよな夢なんだよな夢だといってくれよ頼むからー!!」

 

「おかあさーん!」

 

 

  泣き叫びつつ、走りぬけるは武蔵の面々だ。逞しいのか生きしぶといのか、火事場の底力と危機的状況を上手に生かし、離脱困難であった陣形の中を突破。安全圏を目指して真っ直ぐ突っ走った。

 

 

「ああ!? 待って! トーリ殿が、トーリ殿がいないでござる! ちょっとそこな御仁、うちの総長知らぬでござるか!?」

 

「あ、貴様ら待て! よくもこんな非常識な……!」

 

「Jud. 敵方でござったか、御免。それについては大変申し訳なく――早く退避したほうが宜しいでござるよ。今は敵味方関係なく……危ないっ!」

 

 

 ――どこかで、国を超えた助け合いの精神が芽生えていたり。

 

 

 

『ぺ、ペルソナさん! これどういう状況なんですか!? な、なんか楽しそうな気配が……!』

 

「……! ……!!」

 

「(抱えながらジェスチャーするのか)……おいアデーレ、今は少し、ふざけなしで危ない。主に止水が馬鹿無茶したせいでな――」

 

『え、あ、はい。Jud.です……っていうか自分これ、完全にお荷物って言うか足手まといで』

 

 

    「そこっ! 避けろ!! 艦砲が!!」

 

ゴガインッ!!!

 

 

『ふっきゅ!? ちょ、なんですか今の!?』

 

 

「おいおい見ろよ、直撃してんのに無傷だぜ……」

「……押し込んだら突破できるわね」

「……異議なし!」

 

『あ、周り見えませんけどなんか嫌な予感。具体的に言うと自分が役に立っているのに喜べない感じのっ……』

 

 

 

 ――くぐもった悲鳴が、謎の歓声にかき消されていたり。

 

 

 

「カサカサカサカサカサカサカサカサカサ……!」

 

「ひぃ!?」

 

『……ねぇ葵君。君が意外と身体張れるっていうことはボクたち知ってるよ? だからそんな、えっと、台所とかに出てくる――スリッパで討伐されるGの真似とか、しないでほしいんだ。主人公をゴ〇〇リ表現とか、挑戦したくないよボク』

 

『 よごれ? きたない? 』『 おそうじたいしょう? 』『 じゃっじ 』

 

 

 ――武蔵の小さな頑張り屋たちが、一人の馬鹿を天敵認証したり。

 

 

 ……早い話が、大混乱であった。

 

 

 

 

「……うん。まあこんなもんか、な、っと!!」

 

 

 その惨事を、眼下に。

 

 止水は斬り残りである船尾を蹴るように踏み込み、自由落下よりも早い速度で落とす。反動で彼の身体も当然持ち上がるが、抜かりはない。

 おおよそ点蔵辺りが目安を付け、ネシンバラが指示しそうな『仕切り直し』の地点は予想が出来きている。その周辺に下りれば、約束どおり合流だ。

 

 

 

(……にしても、大罪武装……姫さんの感情ってだけあってえげつないな。攻撃させてくれないとか)

 

 

 こちらは、相手が女の子ということもあり手が出せないにも関わらず、中々に重く鋭いグーを抉りこませてくる少女。

 そういえば、宗茂の持っていた『悲嘆の怠惰』。あれは掻き毟るらしい。トーリと同じく制裁対象であった止水も、何度か引っ掻かれたことが――。

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

 いやなこと思い出した、とゲンナリしかけた顔に、疑問符が浮かぶ。

 止水はホライゾンに対して攻撃、反撃が出来なかった。したらヤバイと本能が警鐘を掻き鳴らしたからだ。

 

 

(いや、そっちじゃなくて――)

 

 

 ――中々に重く、鋭いグー。あれを、自分はバカ正直に、受けたことなど……あっただろうか。

 

 

 グーをパーで受け止めたことも、ヒラリと回避したことも、あったはずだ。

 

 

 そしてそれを、自身ではなく――トーリたちに、当てはめてみる。

 

 

 梅組一同含め、三河警護隊らは戦闘らしい戦闘はここまでしていないはずである。体力諸々を温存できるようにと、止水が初戦である2500名を単騎で相手にしたのだ。

 だというのに、あの時、追い込まれている時だ。攻撃は大罪武装の影響で出来なかったのだろうが――防御術式すら使っていなかったのは、何故か?

 

 

 

「まさか……ネシンバラ、ちょっ……と!?」

 

 

「はっはっは! ……油断は禁物だぞぉ、なあ、おい!」

 

 

 思考の隙。これで仕切り直せるという油断。

 

 それは――空中という、なんの対処もしようの無い空間で見せてしまった止水のミスと言えるだろう。

 右手首から先、刀の柄をも巻き込むように白く光る術式帯に縛られる。帯の元を辿れば――インノケンティウスが、ニヤリとした笑みを浮かべていた。

 

 

 体重差も、身長差もあるだろう。もともとの膂力も止水のほうが圧倒的に上で、引き合えばまず教皇のほうが引き倒されるだろうが――何度でも言おう。彼が今居るのは、なんの踏ん張りも効かない、空中なのだ。

 

 

『止水君!?』

「まずっ、一刀納刀、続いて全刀収納!! 悪い、確かめたい! 通神繋げたままにしといてくれ!」

 

 

 グン、と引かれる。術式がそういうものなのだろう、人の力とは思えない強い引きになすすべも無く……止水は、『淫蕩の御身』の効果範囲に捕らわれ――そのままかなりの速度を維持したまま、轟音とともに地面へと叩き落された。

 

 

 

 

 

『――人間の出していい落下音じゃなかったね。で、止水君? 生きてる?』

 

「痛っ、鉢金めり込んだ……あれ、今何か言ったか?」

 

『Jud. 何も言わなかったよ。……でもかなり、ヤバイよ、今の君の状況』

 

 

 ネシンバラの声が、若干だが硬い。それもそうだろう。

 ずれて目隠しのようになった鉢金を押し上げて位置を直し、若干涙目になった止水も、己の置かれた状況を確認した。

 

 

「……これさ。物語的に、どういう場面になるんだ?」

 

 

 なにせ、止水の落ちた場所が場所だ。――絶望の一つや二つ、してもおかしくは無いだろう。

 

 

 敵陣の、ど真ん中。左右を見ても敵。前後を見ても敵。上下を見れば茜空と大地。

 背後が壁ならまだ救いはあったろうに――見事に四方を、敵陣営に囲まれていた。

 

 

「……ああ、うん。ほんと――ヤバイ、かもな」

『……いや、それはもう分かったから……なんとか時間を稼いで。何とか立て直すから……っ!』

 

 

 ……時間を稼げ。そう言って繋げておけと言った通神が勝手に途切れる。タイミングが丁度良かった所為か、ネシンバラは止水が切ったのだと思うだろう。

 

 

「この状態で、時間稼ぎか――無理言ってくれるよ、ネシンバラ」

 

 

 時間稼ぎ。よほどの強敵で無い限りは、おおよそ難度が低い役目といえるだろう。

 しかしその課題が――いまの止水にとっては、とてつもない無理難題に思えてならなかった。

 

 

 自分を囲むように陣を組む周囲は無視して――止水は、栄光丸艦上に立つ、インノケンティウスを見上げた。

 

 

「――なあ、『コレ』もその大罪武装の効果か何かか?」

 

「……ふん。中々鋭いな、小僧。さっきの連中は、気付く素振りも見せずにまんまと嵌ってたが――いいだろう。教えてやる。

 大罪武装との連携術式。その試作だ。大罪武装(淫蕩の御身)が我がK.P.A.Italiaに与えられ数年。その間に俺たちはずっと試行錯誤を繰り返したわけだ。――防衛に特化し、しかし攻撃能力が一切無いこの武装の改良をな。しかしまあ、大罪武装そのものには手を加えられなかったわけだが――」

 

 

 従来の武器はもちろん、神格武装、果ては聖譜顕装とも構造が全く違う大罪武装の改良は、改悪にしかならないだろうという結論に至ったという。そして――ニヤリ。という音がぴったりなほどの笑顔を、インノケンティウスは浮かべた。

 

 

「逆転の発想だ。大罪武装そのものを改良するのではなく、大罪武装を組み込んだ物を造り出せば良い、とな。幸いにも、この『淫蕩の御身』はそういうことに適していたらしくてな――構想自体は簡単だったぞ? 範囲指定・標的決定。そして効果の発動条件――それを術式に組み込むことで発動するのだよ」

 

 

 

 

 膝を付いたまま、動こうとしない。否、動くことの出来ない止水を見下す。それはもう、満足げに。

 

 

 

「どうだ? ――蕩けていくだろう? 貴様の流体()が」

 

 

 ――流体で塞いでいた、無数の傷が。

 ――流体で補っていた、その血潮が。

 

 塞げば塞ぐほどに、補えば補うほどに。役目を果たすことなく、霧散し――消えていく。

 

 

 

「まあ、『淫蕩の御身』に倣ってか、流体や拝気を意図を持って使わない限りはその対象外なんだがな――お前にはことのほか、効果絶大らしいな、おい」

 

 

 

 最初こそ使えていた防御術式が、すぐに使えなくなったのはそのためだろう。

 

 

 乾いてきた衣は再び重く濡れていく。掲げた袖のほうから赤い雫が絶え間なく落ちる。

 ……そんな自身の状態を眺め、止水はため息を一つついた。

 

 

 そして、ややふらつきを見せながらも、その両足で立ち上がった。

 隠された顔から、表情は分からない。ただ、真っ直ぐインノケンティウスを見上げるその双眼に、失意諦め……妥協などの揺るぎは―― 一切として無い。

 

 

 

 

 

「ほう……。見たところ、満身創痍。それでも立つ、か。敵ながら天晴れな奴だ――投降しろよ若僧。無駄に命を散らすな。強者は力を示すものではあるが、弱者を甚振る者じゃあない。それに、松平 元信の言葉が万が一正しければ、貴様が思う以上に貴様の命は重いのだぞ?

 

 俺の軍門に下れ――身の安全は保証する。多少データは取らせてもらうかもしれんが、人道から外れた行為は俺がさせん。

 

 

 

 ……どうだ?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「よっしゃあ、俺とうちゃぁーくっ!!! ……いや、マジで焦ったぜ。ダムのやろう無茶しすぎじゃんか俺がボケる暇もあたえねぇとか――」

 

 

 あんな移動方法(カサカサG走り)にも関わらず無事に走破できたらしい。トーリは手に付いた泥を払いながら、同じく駆け抜けてきた仲間達を見やる。

 なりふり構わぬ障害物ありの全力疾走を終えて、荒かった呼吸と危機的状況で跳ね上がった心拍も落ち着いてくるころで――。

 

 

『――俺の軍門に下れ――身の安全は保証する。多少データは取らせてもらうかもしれんが、人道から外れた行為は俺がさせん。

 

 ……どうだ?』

 

 

 

 

 

「……あ"あ"?」

 

 

 

 

 

 ……そんな会話が、ふと聞こえた。

 

 

 

 振り返れば、あの混乱から早くも落ち着きを取り戻し、既に陣を作っているK.P.A.Italiaの精鋭部隊。しかし、トーリたちに向かっているのは前二列の盾持ちだけ。他の者達は陣の中心に身体を向けている。

 

 そして、『栄光丸』の艦上にて差し伸べるように手を向けるインノケンティウスと、それを向けられた、絶体絶命な状況の止水。

 

 

 

 

「だ、ダムが――!?

 

 

 

 

 

 

 ダムがオッサンにナンパされてる……!?」

 

 

 

 

 

 

 ――劇画タッチになったのはトーリだけだった。

 

 

 

 

 

「どう見ても違うだろうが……! おいネシンバラ、これは一体どういう状況だ」

 

『えっと……ボクにもいまいち理解できてないんだけど……止水君が、教皇総長に捕まって敵陣に落ちてから、通神が繋がらないんだ。……投降を促してるように見えるけど――これって』

 

 

 

 

 どう見てもコレ、勧誘だよね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、だよなぁ……ダム、すっげぇし。シロジロの情報で難癖つけてたいろんな国、今度は待遇で来るんじゃねぇの?」

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉に、あれ? と疑問を持ったのは、警護隊の面々だ。悔しそうな顔で止水のほうを見ていて、咄嗟に聞こえたトーリの声に振り返って呆然としている者も少なくなく……歯を強くかみ締めながら呆けるという、なんとも不思議な表情が多い。

 

 

「Jud. ……止水殿は此度の抗争の論功者、しかもその筆頭でござるからな。文字通りの一騎当千を見せ付けたわけでござるし」

 

 

 点蔵の言葉に賛同しているのは梅組の面々で、誰一人、止水がインノケンティウスの手を取る、とは欠片にも思っていない。

 周囲を敵に囲まれて。その上、攻撃の一切を封じられているにも関わらず。そんな状況なら、本心はどちらにせよ、投降をまず選ぶのではないだろうか。

 

 

「何度も言うけどよ、うちのダム舐めちゃいけねぇよ。アイツ、すんげぇ頑固なんだ。一度決めたらよ、あのベルさんが泣いて泣いて、大泣きして止めたって聞きやしねぇ。

 そんなアイツがよ――俺が、ガキのときに『王様になる』って言ったらさ、こう言ったんだよ」

 

 

 

 

 

 ――なら俺は、刀になるよ。トーリが王様になって、姫さんが夢持てるようになって。そんなお前ら二人を守る、刀になる。

 

 

 

 そして、刀になるといった少年は、青年へと成長し。

 

 目の前に差し伸べられた、身の安全と命の保証を約束されたその手を、掴むことなく――敵対の姿勢を選んだ。教皇は残念そうに、しかし予想していたかのように。

 

 

 小さなフィンガースナップを鳴らし――ただ一人に対し、軍による蹂躙を命じた。

 

 

 四方から迫る埋め尽くさんばかりの槍。突いてくるものだけではなく、上から叩き潰そうというものも少なくは無い。

 囲まれ、更に上への逃げ道を失った止水の末路を想像し、目を背けるものも多かった。

 

 

「嘘だろ……アレを凌ぐのかよ」

 

 

 倒れこむように身を沈め。背中を通過する槍を掴み取り。その下に転がって、振り下ろされる数多の槍に対した盾とする。

 ……己の武器が使えない。かといって、相手の武器を奪ったところで壊れてしまう。ならば、相手が持ったままの武器を利用すればいい。それは、ネシンバラが止水に伝えた、『もしかしたら』の対処法の一つだった。

 

 

「それがどれだけ難しいことだと思ってるんだ……!」

 

 

 だが実際に、目の前で見せられては信じるしかないだろう。

 流石にいくつかの傷が緋衣(現状は赤衣だが)に見られるが、それでも、十二分に凄いことだ。

 

 

 

「――おいネシンバラ、今もダムと通神繋がらないっぽい?」

 

『え、うん。繋がらないよ。なんか確かめたいから繋げたままにしておくように言われたけど――?』

 

 

 そう答えて、ネシンバラも疑問に思ったらしい。考え込むように眼を閉じ、何故? という疑問を解こうと思考をめぐらせている。

 

 

 と、そんな中――武蔵を映した通信が、トーリの前に割り込むように現われた。

 

 

 

『トーリ様、緊急の御連絡です。……止水様の流体補填が行えていないものと判断いたします……っ。また、補填する以上に流体が消失しているものと思われます。――おそらく、大罪武装とは別に、何かしらの流体を削る術式かと』

 

「……やべぇな」

 

 

 あの武蔵が焦っている。拘りある口癖を言えていないのがいい証拠だ。何かしらの情報――きっと止水の状態を示す何かだろう――を見ながら、トーリに一礼。

 

 

 その最中にも、止水への攻勢は続いている。だんだんとタイミングは合わなくなっているが、比喩なく袋叩きと言える。

 

 

 

 

 頭に振り下ろされた槍に、己の腕を盾にして防ぎ、しかし、防いだかと思えば、胴に何本かが迫る。それを咄嗟になんとか避けて――背中に、一槍が突き刺さった。

 

 後は、それの繰り返しだった。防いで、回避して。そして生まれてしまう、どうしようもない隙に――傷が増えていく。

 

 

 傷か血か、おそらくはその両方か。精彩がどんどん無くなっていく動きが、傷を瞬く間に増やしていく。

 

 

 

「……もう、いい……っもう止めろ! 本当に死ぬぞ!?」

 

 

 

 警護隊の誰かが、そう叫ぶ。その叫びは、聞こえているはずで、届いているはずで――。それでも、止水は、戦うことを、いや、抗うことをやめようとしない。

 

 

 

 ただ、一身に。ホライゾンの下へ。

 

 ただただ一心に、守らんが為に。

 

 

 加速度的に負傷を増やしていく全身から、その覚悟がひしひしと感じられる。

 

 

 

 

「ちくしょう……! なにも出来んのか俺たちは……!? もう、どうにもならないのか……!!!」

 

 

 

 

 赤に染まった、その緋色。覚悟はあっても、その身に力強さは既に無く――直に、大軍の中にて潰えるだろう。

 

 その事実を否定したい。ふざけるなと拒絶したい。

 

 

 

 ……しかし、それだけの力が、もう無いのだ。

 

 

 

 

 

 だれか。だれでもいい。教えてくれ。

 

 

 

 

 たった一人の、友を救う方法を。

 

 

 たった一人の……理不尽に課せられた死の運命を、拒絶する、その術を。

 

 

 

 

 

 

 

「……どうにかしたいかよ?」

 

 

 

 

 

 

 突如響いた、否。通ったその声に、だれもが振り向いた。

 

 

 

 

 傷ついて、今にも潰えそうな友を、眼をそらさず、真っ直ぐ見つめている、一人の(愚者)が、そこに居た。

 

 

 

「なあ、教えてくれ。本当にこの状況、どうにかしたい、って思ってるのか?」

 

 

 

 淡々と、淡々と。その眼はきっと、自分たちを見てはいない。しかし、言葉はしっかりと、三河警護隊全員へと向けられていた。

 

 

 

 

「どうにかしたいさ……! あたり前だ! どうにかしたいに決まってる!!」

 

 

「ああ……! 目の前に助けを必要としている仲間がいるんだぞ! 理不尽な死を押し付けられた人がいるんだぞ!?

 ……それを『見捨てる』なんてこと――俺たちは出来ない! 極東の民であれば、誰だってそうするはずだ!!」

 

「『死ねばいい』などと、そんな言葉を信じたことなど一度も無い!」

 

 

 

 

 全員だ。

 

 過半数でもなく、ほぼ全員でもなく。全員が、その言葉に賛同するかのように、トーリを強い眼光で見返している。

 

 

 

「……そっか」

 

 

 

 対し、彼らを見たトーリが浮かべたのは――笑顔だった。この上ない、満面の笑みをもって。

 

 

 告げる。

 

 

 

 

「……おい浅間! 聞こえてっか!? 前に申請してた俺の『契約』!! あれ、認可してくれ!!」

 

 

 

 




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