プロローグにつながる話なので第0話としています。
「紫苑……気持ち悪い」
明日香が食事中に口元を押さえてトイレへと向かった。
たまたま、この日は母さんが遊びに来ていた。
「紫苑……まさかとは思うけど、明日香ちゃん妊娠してるんじゃない?」
俺には思い当たるフシがありすぎた。
「病院連れていってみるか……」
俺は夕食の最中だったが、明日香を車に乗せると救急病院へと車を走らせた。
病院に着くと看護師や医師から質問や検査を明日香は受けていた。
「旦那さん、どうぞ」
まだ結婚してないんだけどなと内心思いながら、診療室に入った。
「ご主人、結果から申し上げます……」
俺は医師の妙な間に不安を覚えた。
「結果は……おめでとうございます、奥様は妊娠5周目です」
俺は安堵から脱力するのと同時に最大の幸せを噛み締めていた。
「明日香……」
おれは明日香の肩にそっと手を置いた。
「紫苑……」
明日香が肩に置いた俺の手を握り返してきた。
「お大事に」
俺と明日香は診療室を出ると会計を済ませ、帰宅した。
「母さん、皆これから大事な話がある」
俺は帰宅するなり。全員を食堂に集めた。
「えーと、その……明日香が妊娠した」
俺の報告に全員が湧き上がった。
「こうしちゃいられないわね」
母さんが親父に電話していた。
「お父さん、明日香ちゃんに赤ちゃんが……」
その後は泣き声になってうまく話せないでいた。
「親父、来年にはジジって呼ばれるぞ」
俺は親父に明日香の懐妊を伝えた。
「……」
電話の向こうが何やら大騒ぎになっていた。
俺はそのまま明日香の両親にも報告した。
「夜分遅くにすみません、ご報告すべき事が出来ました…明日香が妊娠致しました、妊娠5周目です」
俺の報告に義母(結婚前なのに?)が、電話の向こうで泣いていた。
俺は義父とも話すと電話を切った。
「明日香、お腹が目立つ前に挙式しよう」
俺は明日香に結婚式をお腹が大きくなる前にする事を話した。
「うん」
明日香が頷いた。
妊娠すると感情の起伏など色々な事が変化すると聞いていたが、明日香は普段と変わらなかった、強いて上げれば飲酒しなくなった事くらいだ。
俺は、明日香の体調が良い日を選んでは式場選びを二人で進めた。
3ヶ月後…
「明日香、綺麗よ」
義母が明日香のウェディングドレス姿を見て泣いていた
「まさか、本当に紅東家の嫁さんになって……初孫まで…」
義父も感無量という雰囲気で泣いていた。
俺は目の前の明日香を改めて見た。
お腹は少し目立ってきたが、ウェディングドレスでの挙式となった。
明日香の着ているウェディングドレスは薄いラベンダー色のドレスで、以前見ていた結婚情報誌に載っていたものだった。
「あと半年位で、俺も親父か…」
俺も思わず泣いていた。
「全く、紫苑……あなたまで泣いてどうすんのさ」
明日香が笑いながら俺の頭を撫でた。
「新郎新婦入場です」
司会のアナウンスに合わせるように俺と明日香は会場に入った。
急な挙式にも関わらず、魚屋の店長夫妻(奥さんはガングート)と店員さん(奥さんはタシュケント)、姉貴夫婦、明日香の同期達(飛鷹と千代田は出所後消息不明)と俺の同期達等の招待客が欠席無く駆け付けてくれた。
式の最後に俺は司会からマイクを受け取ると、
「えっと、お集まりの皆さん、今日は私と明日香の結婚式にご参列ありがとうございます、新郎妊婦ではありますが……これからは二人…いえ産まれてくる我が子と3人力を合わせて助け合っていきます、本日は急な挙式にも関わらず多数の参列本当に有難うございました」
俺は明日香と頭を下げた。
そして式の最後、ブーケトスは柚香に手渡された。
「柚香ちゃん、次は貴女よ」
明日香が優しく微笑みながら。
そう柚香も恋人が出来ていたのだった。