「鹿児島県警から電話です」
千歳が俺に電話を取り次いだ。
「ハイ、紅東ですが」
県警からの電話内容は聞きたくないものだった、あの高倉 柚香が近隣に現れたらしいというものだったからだ。
「どこで…」
「監視所から500メートル町よりの山中です」
電話の向うの警官が答えた。
確かあの辺は空き別荘が沢山あって隠れるにはもってこいの場所だった。
「青葉、至急執務室へ」
俺は青葉を呼び出した。
「青葉呼びました?」
俺は青葉に事の次第を話した。
「それってマジヤバいじゃないですか!」
そう言って青葉は、警備システムの点検に向かった………丁度その瞬間、侵入者を告げる複数の警報が鳴った。
「所長、台所の窓が破られて何者かが侵入した模様!」
青葉がシステム画面を見ながら報告した。
「陸奥は俺と台所へ向かう」
俺は陸奥を連れてそっと台所へと向かった。
「音立てるなよ……」
俺は暖簾の隙間から室内の様子を伺った。
「あれ、あの冷蔵庫の前に居るのって……」
陸奥が先に気が付いた。
「あの後ろ姿は……柚香じゃねえか!」
衣服はボロボロで、その顔は垢まみれだったが、間違いなかった。
俺はおもむろに近づくとその脳天に鉄拳を落とした。
「みぎゃぁ!」
柚香が頭を押さえてうずくまった。
「いったーい」
そう言いながらこっちを振り向いた。
「げっ!紫苑……あっちゃー紫織さんまで」
柚香の顔が蒼白となっていった。
「陸奥、警察への通報は少しだけ待て、あと少しだけ二人にしてくれ」
俺は陸奥に席を外すように指示した。
俺は陸奥が台所から出るのを確認してから、柚香をどついた。
「馬鹿野郎、お前何したか分かってんのかよ!」
俺の怒鳴り声に、柚香が小さくなっていた。
「ごめんなさい」
柚香が小さな声で謝っていた。
「謝んなら最初からするな!脱走犯だぞ!分かってんのか!」
柚香には目の前の事しか見えていなかったのだ、俺に逢いたい、ただその一心で脱走したのだった。
「柚香……お前に一つだけ確認する、前みたいな事はしないと誓えるか?」
俺はある事を柚香に確認した。
何故なら事前に柚香の処遇について上と話し合い、給糧艦『間宮』(仮)ではあるが再配備を、ある条件の元取り付けておいたのだ。
「はい、私 高倉 柚香は紅東 紫苑さんへの一切の迷惑行為を致しません」
柚香はしっかりとした目で俺を見ると誓った。
「その迷惑行為のラインは俺が迷惑行為と感じたらでいいな」
「はい、それで結構です」
以前の柚香にはないはっきりとした口調だった。
「わかった、もし俺が迷惑行為と感じたらで即座に警察に身柄を引き渡すでいいな」
「構いません」
俺は柚香の返事を聞くと台所の外にいた陸奥を呼んだ。
「陸奥、警察へ柚香の処遇について大本営からの指示を待てと伝えてくれ、それと柚香を風呂に入れてやってくれ」
この事は事実上、柚香の罪は消滅したと同じだった(柚香次第だが……)
俺は風呂から出た柚香を連れて執務室へと戻った。
そして所属艦娘を全員集めて、
「高倉 柚香……いや予備役艦娘『間宮』として本日付をもって本監視所所属とする」
俺の言葉に全員が唖然としていた。