「なんだこれ…」
千歳が一通の封筒を持ってきた、だがそれは見た目からして普通の郵便物では無かった。
「追跡記録付?転送不可?……差出人は……大本営?誰宛だ?」
俺は封筒をすみからすみまで確認した。
「あっ所長、これ陸奥さん宛みたいです」
千歳が宛先に気が付いた。
「あー、陸奥郵便だぞ」
俺は陸奥にその封筒を渡した。
「私宛?」
陸奥が訝しげながら封を開けた。
「…………!」
陸奥の表情が曇っていた。
「どうかしたのか?」
俺の問いかけに、陸奥は内容物を俺に寄越してきた。
「転属命令だと!」
それは陸奥の舞鶴への異動命令書だったのだ。
「私……退役しようかなぁ、折角弟と妹達と一緒に暮らせるって思ったのに」
陸奥はいつになく泣きそうな顔をしていた。
「なら……退役しちゃえよ、別に艦娘という職業に拘ってねえんだろ」
そんな会話をしていると、卓上の電話が鳴った。
「ハイ、鹿屋第十三監視所ですが」
俺が電話に出ると、相手はクソ親父だった。
「ワシじゃ、陸奥は其処におるか?」
「ああっ、いるけど」
俺は陸奥に受話器を渡した。
「クソ親父だ」
陸奥は受け取ると、何か話し始めた。
「うん…うん…うん…、お父様…ありがとうございます、はい…」
そのまま電話を切った。
「紫苑……いえ所長、元帥の許可は出ました、私戦艦『陸奥』は今月一杯を持って退役致します」
陸奥は退役を選択した。
「退役後はどうするつもりだ」
俺はテンプレ的なことを確認した。
「お母様からの指示待ちってところかしら」
俺は判ったとだけ言うと口を閉ざした。
そして迎えた月末……
「本日付を持って、戦艦『陸奥』を退役申請を受理とする、官給品の返却と各種手続きを早急に進めるように」
俺は決められた書式を記入すると退役の書類を大本営に送った。
「陸奥……いや姉貴、これでもう艦娘じゃなくなった訳だが、怪我とか事故には気を付けるように…それでいつ母さんの所に?」
俺は一番聞きたくない事を聞くしかなかった。
「あら、私帰らないわよ……ここで空いてる土地を使って保養施設を運営する事になってるから、それと紫苑……監視所の土地を買い取りなさい、軍と話はつけてあるわ」
姉貴がしれっとぬかしやがった。
「俺は聞いてねえぞ?」
俺の疑問に姉貴は、ただ一言だけ言った。
「お母様のご指示よ」
俺はそれ以上言えなかった、何故なら母さんからの言いつけは絶対だったからだ。
「で姉貴、従業員とかどうすんの?」
俺は必要な人員について聞いてみた。
「それについては、お母様から元艦娘の娘達を手配してくれるって、それと一部施設も増設するって言っていたわね…それとね、紫苑に話さないといけない事ががある」
俺は姉貴が続きを話すのを待った。
「私、婚約者いるの」
俺はそれについては親父から聞かされていたので知っていた。
「それでね、今回の退役を期に正式に結婚する事になったの」
俺は姉貴の衝撃的な発言に只々驚くだけだった。
後日談
それから数カ月と経たずに、あの広場にちょっとしたリゾートホテルが完成していた(妖精さんと紅東建設の力恐るべし!)、そして空き別荘群も同様に保養所の施設として利用が開始された。
この土地についてだが、全ての土地を俺が貯金総てを叩いて買い取り、軍へレーダーサイトと監視所部分を賃貸する形で纏まった(因みに賃料は月額120万円となった)