紫織の紅東観光開発での役職ですが、現在は保養施設開発統括と云う普通の企業には無いような役職です(いずれは紅東観光開発の社長に就任はしますが……)。
「会長、こちらが保養施設建設現場となります」
姉貴が仕事モードになっていた。
「それで、施設の内装等はどうなっているのですか」
母さんもしっかりと切り替えていた。
「それでは説明致します」
姉貴が部屋数、保養施設迄の移動手段、娯楽施設について説明していた。
「大体はわかりました、ですが従業員の雇用については再計算をしなさい、紅東開発統括の計算では廻りませんよ」
母さんが姉貴の人員計画に待ったをかけた、俺から見ても分かる位不足していた。
俺は姉貴に助け舟を出す事にした。
「俺の所みたくシフト制にしてローテで休みを入れるとわかりやすいぞ」
姉貴は直ぐに再計算を始めた。
「紫苑が助け舟を出したら何にもなりません、紫織の事を思うなら紫苑は口を挟まないであげなさい」
母さんがいつになく厳しい表情で俺の助け舟を制した。
「母さん、わかったよ」
俺は二人の後を黙ってついていくことにした。
「宿泊施設についてご説明致します、ツインが6部屋、4人から6人迄の大部屋が4部屋、シングルが6部屋となっています」
母さんと姉貴の後ろについて俺は工事中ではあるが部屋の内装を見て回った。
「内風呂はユニットバスがついているのですね」
母さんがシャワー室と一体になったトイレを確認していた。
「海側に大浴場を配置しています」
俺達は姉貴の案内で大浴場を視察した。
「紅東開発統括、大浴場の更衣室ですがもう少しドレッサーの数を増やしなさい、これでは待っている間に湯冷めしますよ」
母さんの言う通り、大浴場と銘打っておきながら更衣室の設備が貧弱だった。
「ただちに……」
姉貴が監督妖精にドレッサーの追加設置の指示をだした。
「それでは次に行きます、従業員の居住施設となります」
姉貴がうちの離れに向かった。
「紅東開発統括、待ちなさい」
母さんが引き留めた。
「何か?」
「私は先程従業員数を再計算しなさいと言いましたね、そうなると居住施設もそのままとはいかないのでは無いですか?」
俺も同じ事に気が付いてはいたが母さんから助け舟を禁止されていたので黙っていた。
「宿泊棟横にワンルームマンション形態で建設しなさい」
結局アタフタとしている姉貴に母さんが助け舟を出した。
「保養施設から従業員居住施設迄の距離が離れを使った場合遠くなり過ぎです、極力天候に左右されずに行き来できる様になさい」
姉貴は母さんの言葉を必死にメモしていた。
「紫苑、貴方も同じ人の上に立つ役職です、紫織へ弟としてではなく部下を持つ者の先輩としてアドバイスをしてあげなさい」
俺は母さんに頷いた
「わかったよ、姉貴厳しくいくぞ」
姉貴が人でなしとか言っていたが聞こえないふりをした。
結局の処、離れは使用しないで話が纏まった…筈だった。
「紫苑、離れはどれ位空いているのですか?」
母さんがいきなり振ってきた。
「1号棟は皆の倉庫代わりに使うとして、2号棟はまるまる空きになるね」
俺の答えに母さんは少しだけ考えると、トンデモ発言をした。
「空いている離れを紅東で借り上げます」
俺と姉貴はその言葉に『?』となった。
「紅東観光開発の鹿屋支社とします」
俺は母さんの言った意味を理解した。
詰まり姉貴の職場を離れに持ってくると言っているのだ、確かに姉貴のオフィスは知覧にあるから……鹿児島湾を挟んで対岸に位置し、通勤となると鹿屋から知覧へそしてまた鹿屋ととんでもなく大変なのだ。。
「2階を支社長室と会議室、秘書控室…として、1階は運転手控室、休憩室と仮眠室でいいかしら、建築部に指示を出しておいて」
そう言うと指示書を書き直していた。
「それから紅東開発統括、あなたの役職ですが本日付で鹿屋支社長に任命します、精進なさい」
離れを姉貴の職場に改装した。
離れの入り口には『紅東観光開発 鹿屋支社』と書かれた看板が掛けられていた。