玄関をあがると最初の部屋は、客間だ。
『一週間の予定がまだ滞在中の母さんが使っている客間だな』
俺は、声を掛けるとを襖を開けた。
「あら、紫苑どうかしたの?」
母さんが経済紙を読んでいた。
「まぁ、各部屋がちゃんと片付け出来てるかの確認かな」
俺は客間を出るとすぐ隣の青葉の部屋の襖を声をかけてから開けた。
「青葉、入るぞ」
青葉の部屋は手前側(玄関側)にパソコンやらコピー機が置かれていた。
『週間 鹿屋』明日配布予定の小冊子がコピー機の上に置かれていた。
『週間 鹿屋』とは青葉が発行している小冊子でうちの監視所で全員に配布されている、内容は今週の昼食メニューからお薦めの映画、町で人気のお店、コンビニの最新スイーツ等と共に今週の一枚と称して、野生動物の微笑ましい写真が掲載されている週刊誌だ。
俺はパラパラと軽く目を通すと元のコピー機の上に戻した。
俺は奥の衝立で囲われたスペースを覗き込んだ。
衝立で囲われた場所には……青葉がベッドの上で布団に包まってまだ寝ていた…事前に伝えてあったのだが忘れて寝ている様だったので、俺は青葉を起こさずに部屋を出た。
次は青葉の部屋の裏側に位置する間宮の部屋だ。
「間宮、入るぞ」
俺は声を掛けると襖を開けた。
「紫苑、片付いてるでしょ」
流石と云うべきか、綺麗にされていた。
間宮は布団派なので、部屋にベッドは無いから青葉の部屋より広く感じる。
間宮は、録画していた某3分クッキングを見ながら何かメモしていた。
「間宮の部屋は問題無いな」
俺はそう言うと、間宮の部屋を出た。
『次が厄介なんだよな』
俺は独り言を言いながら、間宮の部屋の更に奥の部屋に向った。
その部屋の主は夕張だ。
「夕張、入るぞ」
俺は襖を開けた。
目の前にはとても20代の女の子の部屋では無い光景が広がっていた。
何が有ったのか…先ずは薄い本…それも壁一面の背の高い本棚にビッシリと、次はアニメのソフト類…これも負けないくらい大量にあった、そして極めつけはフィギュアだった…勿論各種ゲーム機もある。
「夕張の趣味だからとやかくは言わないが……少し片せ、母さんに……」
俺が母さんを頼ると言い掛けた瞬間、夕張が片付けるから母さんには言わないでと泣きついてきた(母さんには既にバレていてこの後、お説教と強制お片付けが待っていた)。
まぁ後で夕張には物置代わりのスペースを確保してやるか……捨てられたら可愛そうだしな。
なんやかや言っても、俺は夕張には甘かった、勿論ではあるが間宮にもだが…。
俺は階段を上がると次の部屋へと向かった…ここだけは避けたかった、何故ならその部屋の主は姉貴だからだ。
俺は一旦客間に戻ると母さんを召喚した。
「姉貴入るぞ」
俺は襖を開けた。
「紫織……そこへ座りなさい」
母さんが部屋の惨状を見てお怒りになった。
部屋の片隅で義兄がゴミ袋片手に片付けをしていた。
……想像しやすい部屋を上げるとすれば……新世紀エヴァンゲリオンの葛城ミサトの部屋を思い浮かべてほしい……そのままズバリだ、義兄が碇シンジ君にみえてしかたないが。
俺は姉貴の件は母さんに丸投げすると、隣の千歳の部屋へと向かった。
「千歳、入るぞ」
俺は襖を開けた。
千歳は部屋の掃除の最中だった。
「紫織の部屋…大変でしたね、私も前々から注意はしていたのですが」
流石はうちの良妻賢母枠筆頭だ。
「千歳の部屋は特段問題ないな」
俺は少し見回すと、部屋をあとにした。
俺はチェックリストの次を確認した。
『次は吹雪達の部屋か…』
俺は1階に戻ると食堂を抜け、吹雪の部屋へ向かった。
「吹雪、入るぞ」
俺は吹雪からの許可を(何を今更?)取ると、部屋に入った。
「綺麗にしてるな、と云うか深雪の部屋までの襖を全て開けているのか」
吹雪達は四つの部屋の襖を全て開けて一つの部屋として使っていたのだ。
「吹雪考えたな、これなら分担してやれば掃除も楽だからな」
俺は吹雪達の部屋をあとにすると、最後の隼鷹の部屋へと向かった。
此処で少し説明すると、俺と隼鷹の部屋は元々大広間だった物を襖で二部屋に分けている、なので俺と隼鷹の部屋のみ庭に面した方は障子となっている。
俺は自分の部屋のベッド側の襖を開いた。
開いた其処には隼鷹のベッドがあった……隼鷹はほろ酔い気分で寝ていた、浴衣がはだけて色々なものを晒しながら。
「全く…隼鷹、起きろ」
俺は呆れながらも、隼鷹を起こした。
隼鷹が眠い目を擦りながら起き上がった。
勿論浴衣からこぼれた、たわわに実った二つのおやまを揺らしながら。
「あっ、紫苑……おはよう」
まだアルコールが抜けていない様子だった。
俺はテーブルの上の雑誌に目がいった。
「結婚情報誌…?」
俺は付箋のつけられたページを開いた、其処には各種ウェディングドレスが紹介されていた、なるほどこれを読みながら呑んでいたのか。
俺はふと一着のウェディングドレスに目がいった、それは薄いラベンダー色のドレスだった、俺には何故か其れが隼鷹に一番似合うと思えてならなかった。