扶桑達を保護してから一週間が過ぎたある日の午後の事。
「はい…鹿屋第十三監視所 紅東ですが…」
俺は、何時ものように電話に出た。
「私は九州管区憲兵師団本部の櫻井ですが、明日先日そちらで保護した艦娘達の事情聴取を朝九時から三日間程行います、我々総勢十名の受け入れ体制をお願い致します、彼女達を逮捕する訳ではありません、鎮守府の責任者に問題が発覚致しまして、その事実確認と今後の身の振り方について確認するだけです」
それは憲兵師団本部からの電話だった。
「了解した、宿泊場所の手配はしておく、それでこれは本人達に伝えても問題ないか…それといきなり憲兵からのとなると……なんだ…彼女達も言うべき事を言えないのではないだろうかと思う…そこで提案なのだが、うちは明日彼女達も一緒にバーベキューをするつもりだ、その場で雑談がてら確認するというのはどうだろうか」
「はい、伝えて問題ありません…確かに仰る通りです、つきましてはこちらからもその案でお願いします」
「ならば憲兵の制服とは別にラフな格好「水着着用を厳命します!」…」
櫻井という憲兵は鼻息荒く答えた。
俺は呆れながらも電話を切ると、間宮を呼んだ。
「間宮、速やかに執務室迄」
それから程なくして間宮がやってきた。
「所長、お呼びですか?」
「ああ、明日から憲兵が三日間十名泊りがけの要件があるそうだ、食事と宿泊場所の確保を頼む、それと明日の昼は浜でバーベキューを行う…約四十名位は参加となる」
「了解しました」
間宮が敬礼をして出ていった。
「青葉、少し席を外す不在の間を頼む」
俺は、青葉に後を頼むと保養施設従業員宿舎へと向かった。
「扶桑いるか?」
「はい…、何か?」
「明日、君達への事実確認に憲兵がやってくる」
俺の言葉に扶桑が少し震えていた。
「心配するな、どうやら君達が在籍していた鎮守府の指揮官に問題が発覚したらしく、その確認をしたいらしい」
俺の話を聞いていた扶桑の表情が少し和らいだ。
「そうですか……それで私達は…」
扶桑が聞いてきた。
「俺からは本人達に任せると伝えてある」
「そうですか……私達はこのまま此処で静かに暮らしたいのですが……」
やはり扶桑達は残留を希望していた。
「そう言うと思っていたから、その様に話をしてはあるから安心しろ、それと明日の昼は浜でバーベキューを行う…憲兵もそこで事実確認をするそうだ」
「有り難うございます」
扶桑が研修に戻っていった。
「?」
俺は扶桑が出ていった扉の奥を見た。
其処には山城が顔の半分を出して覗いていた。
「山城、安心しろ扶桑だけじゃないお前たちみんな紅東観光の社員だ、うちの社員組合が付いてる」
山城が微かに頷くと立ち去った。
『紅東グループ組合……犯罪でも犯さない限り徹底して社員を擁護する……場合によっては軍をもねじ伏せる……だがしかし犯罪を犯した場合は断固とした処分を敢行する……』
俺は姉貴からは聞かされた組合の規則を思い出していた。
「所長、執務室迄お戻りください」
俺は青葉からの呼び戻しを受けた。
「どうした?」
俺は青葉の顔色が気になった、何故なら若干青ざめていたからだ。
「隼鷹が……」
俺は青葉からの返事を聞くより早く通信機で隼鷹を呼び続けた。
「聞こえてるよー」
通信機から隼鷹の間延びした返事が返ってきた。
「何かあったのか」
俺は自分でもわかるくらい動揺していた。
「……ゴメン……」
「ゴメンっておい!何があった」
俺は隼鷹の謝罪に更に動揺した。
そして少しの間を置いて、
「座礁して、少し怪我した」
俺は安堵すると共に、怪我の具合いを確認した。
「怪我って大丈夫なのか…何処怪我した」
俺は、大切な女性が怪我したとの報告に焦った。
「大丈夫だよ、少し脛を擦りむいただけだから」
隼鷹からの報告と同時に吹雪からも報告が入った。
「所長、隼鷹さんの傷ですが…絆創膏貼っておく位の傷で航行には支障ありません……命にはこれっぽっちも響きません」
俺は青葉を見た。
青葉も隼鷹が怪我をしたと聞いて動転していたようだった。
「わかった、本日最後の哨戒任務だが十分気を付けて帰投するように」
俺は通信機のマイクを置くと、安堵から椅子に崩れ落ちた。
「所長、麦茶どうぞ」
青葉が冷えた麦茶を持ってきてくれた。
「ありがとう」
そして二人して笑っていた。
「怪我したって言ったから焦ったよホントに」
「私もですよ、隼鷹からいきなり座礁して怪我したなんて報告入って来たんですから」
「まぁ帰ったら隼鷹には報告書の提出をしてもらうか」
「そうですね、私達が膝を擦りむいた位の岩礁ですから今後の為にも」
青葉がコップを片付けると、報告書の書式を用意していた。