「金剛お姉さま、予約が一杯で中々取れない鹿屋保養所と往復の航空券や諸々の予約が取れました!」
比叡が何やら紙を持ってやって来た。
「比叡お姉さま、彼処の予約取れたんですか!?!」
霧島も驚きを隠せずにいた、何故なら鹿屋保養所は空きが出ると直に埋まってしまう程の超人気保養所なのだ。
「其処って…部屋からの眺めやお料理が美味しいって評判なんですよね」
榛名が嬉しそうにしていた。
「楽しみですネー」
私は紅茶を飲みながら微笑んだ…ただ唯一の気掛かりは、紅東提督も確か鹿屋辺りに着任しているという事だ。
「そういえば、あの芋提督…確か鹿屋の何処かに左遷されたって言ってましたよね」
霧島がやはり其処を口にした。
「ええ、その辺りの監視所みたいネー」
それからの私達はその日を楽しみに過ごした。
ーーーーーーーーー1ヶ月後ーーーーーーーー
「今日明日は快晴か…なぁ浜でバーベキューしようぜ」
俺はとある土曜の朝そんな提案をした。
「いいんじゃない、材料もあるし」
間宮が冷蔵庫の中を確認して了承した。
「ビールビールと」
隼鷹と千歳が冷凍庫にビールを2箱分ぶち込んだ。
「お前ら…それで足りるのか?」
俺の疑問に更に追加していた…流石に3箱は呑み過ぎ?
俺達はプライベートビーチ(?)へと道具や食材を持っていった。
「吹雪、保養所の奴等も手空きが出来たら食べに来いって伝えてきてくれ」
「は~い、深雪ちゃんいこっ」
吹雪が深雪を連れて保養所へと向かった。
「紫苑…採れた」
初雪がバケツ一杯のアサリを採ってきた。
「酒蒸しにするか、塩抜きしてないから少しジャリジャリするぞ」
俺は鉄板の上でアサリの調理を始めた。
「へー綺麗な砂浜ネー」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「紫苑、この声」
青葉と間宮が同時に反応した、
「あぁ…間違いない大湊の金剛達だな」
俺が会いたくない艦娘の筆頭だ。
「えっ!何で芋提督が此処に…って間宮に青葉迄…まさか強制されて!…貴様!」
霧島と目が合うやいなや殴りかかってきた。
「霧島…貴女何をしているのかしら」
更にその背後から姉貴が般若の形相で睨みを効かせていた。
「げっ!」
霧島が固まった。
「紅東提督…大変申し訳ありませんでした」
金剛がいきなり謝罪の言葉を口にした。
「何に対してだ?」
俺は金剛を睨んだ。
「…自分で考えもせずに噂を信じて提督を失墜させる言動を取ったことに対してです」
金剛が何時もの口調ではなくなっていた。
「金剛お姉さま!!こんなヤツに頭を下げるなんて!」
霧島が驚き金剛をみた。
「金剛…お前の謝罪は受けよう、但し条件がある、既にこの件は決着がついているから絶対に蒸し返すな…いいな」
「はい」
金剛が素直に頷いた。
「で?」
姉貴にアイアンクローを噛まされ霧島が宙に浮いたままでいた。
「霧島、榛名、比叡君達は何がしたい?」
俺は吊るされたままの霧島に問いかけた。
「…」
霧島が俺に蹴りを入れてきたが、榛名と比叡は金剛同様に誠心誠意謝罪してきた。
「成る程…分かったよ、比叡と榛名の謝罪は受け入れよう…だが霧島は謝罪する気すらないんだな」
俺は姉貴に頷いた、
「霧島の保養所使用を今から無期限で禁止する、直に出ていってね、それからね家族でバーベキューなの今すぐ消えろ!」
姉貴が凄んだ…食い物の怨みか?
「こんな所に二度と来ない!」
霧島が捨て台詞を吐いて保養所へと戻ろうとした、
「貴女は…多分こうなるだろうと思って、私達は桜島泊地への転属希望を出し受理されました、これで貴女とはサヨナラです」
金剛がとんでもない爆弾発言を噛ましてくれた。
「金剛お姉さ…ま…それは…」
霧島が驚き泣きそうな顔になっていたが、
「私は紅東提督へ本気で謝罪する為に此処に来ました…なのに貴女は…」
「霧島…自分のした事には責任を取ってください」
比叡と榛名にまで突き放された。
「こっちから願い下げです、こんな芋提督に簡単に頭を下げる金剛達は姉でも何でもない!」
霧島は1人荷物を纏めると大湊へと帰っていった。
「紅東提督…本当に申し訳ございませんでした」
金剛が改めて謝罪した。
「もう気にするな、当事者同士でもケリはついたことだからな…なんならバーベキュー参加するか?構わないぞ」
俺は金剛を宥めた。
「ソーリー」
俺は金剛達にビールを渡した。
「ほら気持ち切り替えろ…食え食え」
俺は金剛達の皿に次から次と焼けた肉や野菜をのせた。
「紅東提督、一つ教えてください」
榛名が口を開いた、
「何だ?」
「悪評の流布源の間宮や青葉が何故ここに?」
「あぁその事か、金剛と同じだよ、きちんと謝罪し…今では青葉は一応姉、間宮は妹で落ち着いた」
俺の端折りすぎない説明に金剛達の頭上にはてなマークが浮かんでいた(ように見えた)。
「説明するわよ…千歳、青葉は私達の血縁者だったの…家族が皆死んでいるから、うちと養子縁組して次女と三女になったのよ…間宮も似たようなもので四女という感じね…」
姉貴が金剛達に事情を説明してくれた、
「ブッキー達まで…」
金剛が驚きを通り越して呆れていた(祖母と養子縁組した時雨達の事も話した)。
「それからの俺の事は仕事中は所長とでも呼んでくれ、オフなら普通に紫苑で構わないな」
「フランク過ぎませんか?」
俺の事に対して榛名が流石にと躊躇っていた。
「此処はそれでいいんだよ…なんていたって家族経営の監視所だからなん」
金剛がやっと笑った。
「何ですか…その家族経営の監視所って」
「何だ其処から説明がいるのか…所長は俺だろ、副所長は婚約者の隼鷹、電探監視は姉の千歳と青葉、整備は妹の夕張、補給は妹の間宮…それから退役したが吹雪、白雪、初雪、深雪も妹だな」
金剛達がまた固まったていた…まぁホントに家族経営の監視所な事をやっと理解したのだろう。
「提…いえ紫苑さん、何か大湊の頃よりも笑顔が」
「そうか…多分コイツラのお陰だな、そうそう今は桜島泊地に異動したが天龍、龍田、球磨、多摩の4人もいるからな…コイツラも家族同然だよ、土日には帰ってきているぞ」
その日の夜、霧島が俺に用があると警備詰所にやって来た。
「芋…失礼しました、紅東提督…申し訳ございませんでした、提督に対する悪口は態度、そして手を挙げたことに対して心より謝罪致します」
霧島が警備詰所で警備兵の目のある場所で土下座をしていた。
「霧島たて…」
「許されるまで…」
「いいからたて…」
霧島は土下座をやめなかった。
「なぜだ?」
俺は霧島に謝罪の意味を問うた。
「単純に姉妹の縁を切られるのが嫌だから…取り敢えずだったら直に帰れ」
俺は霧島の側にしゃがみ込むと小声で話した。
「……違います、あの後考えたんです、何故金剛が謝ったのかを…やっと分かったんです…」
「そうか…でこれからどうするつもりだ」
俺は霧島の目を見た。
「大人しく大湊に帰ります」
霧島か静かに答えた、
「そうか…何故だか丁度桜島泊地への着任命令書があるんだよなぁ」
俺は元帥から貰った無記名の着任命令書をちらつかせた、勿論艦娘名以外の必要事項は記載されたものだ。
「どうする?」
俺は霧島の頭の前に紙とポールペンを置いた。
「…」
霧島がボールペンを手にすると、名前を書いて俺に差し出した、
「許していただけるなら何でもします」
「分かった、泊司令には話してある」
後日…金剛から滅茶苦茶お礼を言われた。
吹雪達は退役し普通の女の子になっていますが、ややこしくなるので、艦名のままで行きます。