『LostHeaven―盲目のユメ―』フリーゲーム三次創作ファン小説/本編終盤のネタバレ・IFバッドエンド妄想含みます。   作:MEIKO

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※元の御話が好きで語彙力が消失しています。全体的に稚拙な文章力で申し訳ないです;
※物語の終盤以降等についてネタバレと妄想に因るifやキャラクター崩壊等が含まれてしまうかもしれませんので、先に深く御詫びを申し上げます。
※ザウアーさんがまた生き残ってしまう……最早、呪いでは;

◆もしも第二の『終末の日』、あの真っ赤に染まった世界でリアン様が外縁調査に出る事無く三百年から五百年程、新生世界統一国家『ヴェルンディア』にて生き続けたら……と云う妄想がお題となっております。

◆本編後半から終盤に掛けてのシーンは本当にしんどくて涙腺が緩みました。ライゼさん、こんな所を見せつけられて良く耐えられるなー、と思ってしまい。もしも精神的に耐えられずあの日、諦めてしまったら……。


『LostHeaven―盲目のユメ―』第十三章

――貴方は何故、こうも私を裏切るのですか。

 

 

 足元に転がるコレ等の生体番号は果たして幾つだっただろうか。

 喉元を焼き付ける程の灼熱に覆われた大地に一人、私はたった一人で孤高に降り立つ。見覚えの有る道則を重く身体を引き摺る様に辿って、懐かしい『故郷』に帰還する。

 眼前に広がる地獄の焦土を温かく優しい思い出と重ねて、自らの内に秘めた力を呼び覚まし取り戻す。

 思い出したくもなかった記憶を、叶わなかった願いの無念を、受け止めたくない冷たい現実を。取り戻し、隣に立っていた筈の彼を探して、側に居ない事に気付き。

 また、こうして裏切られたのだと云う絶望と慟哭に直面して肩を落とした。また、また、また、また失敗した。

 これで何度目の失敗になるのだろう。私が下した決断はどれも皆、浅はかで稚拙で非現実的だとでも言いたいのだろうか。どいつもこいつも、非効率だと。

 

「ディアナ様、そろそろ帰りましょう。あの御方が報告を待っておられますので……何を、していらっしゃるのですか?」

「申し訳ありません、クーシア様。後少しだけ、コレの死因を調査しましたら全ての事が済みますので。」

「はあ、死因……ですか。随分と悪趣味、いえ……研究熱心なのですね。」

「職業病、と云うものでしょうね……御迷惑でしたらクーシア様だけでも御先に御帰還なされて下さいまし。私はまだやるべき事が有りますので。」

 

 そう告げて今し方、調査を終えた一つの遺骸を捨て置いて次に回る。背後で怪訝そうに見据えていた黒髪の騎士は、呆れと疲弊を込めた嘆息を吐くと一寸も躊躇いもなく踵を返し転送地点へと去って行く。

 一人だけ残酷な世界に取り残されて、漸く荒んだ精神が落ち着くなどと自身の変態ぶりに自嘲が込み上がって来る。しかし、悟られてはならない。

 決して、誰にも……周囲は恐らく敵ばかりで私は何処に行こうとも今後、永遠に独りきりだ。彼ですら自分を救ってはくれない。

 あの人は優しくて、弱いニンゲンだから。ゆっくりと時間を掛けて注意深く観察していかなくては。

 嗚呼、職業病とは何と不愉快で憎たらしい『胎児』か。一際に小さな髑髏を丁寧且つ細かく調べて最後の一つまで研究資料として記帳を残す。

 この潰れ果てても尚、諦めずに生き足掻こうとした嘗ての実験体達に感謝と謝辞を事務的に述べて。懐かしい『コキョウ』を去る。

 誰にも気付かれてはならない。私のロスト化が回復し、全ての記憶を取り戻し、あの人と心中しようと決意を固めたなど。

 

 

――生体番号XXX/死因:時限爆弾の実験に失敗。家屋の傍らで極普通にヒトとして潰えていた。九百年以上も生き永らえていたとは想定外だった。どうやら転送後に永い事、一人きりで旅を続けていたらしい。その影響も有って身体的に逞しくなり、本能的に免疫を構成してしまったのだろうか……次はもっと身体の弱いモノを『村長』にしよう。

――生体番号XXX/死因:損傷が激しい為に委細不明。前述の実験体と同時期に送ったモノの筈。カレが長旅に出ている間、一人で集落を守っていた様だ。責任感も正義感も人一倍、強かった様で。生前、我が身を投げ打ってでもカレを村のモノ達を救出しようと、懸命に奔走した名残が見受けられる。死因は遺骸の破損が酷く、判別不可能であった為に、保留としておく。

――生体番号XXX/死因:窒息死。あの人の家付近に有る小さな牧場で牛や鶏の世話をしていたモノだ。カレの死に様は村の中でも最も惨たらしい状況で発見された。正直に言えばこの帳面にも残したくない最悪の死因である、しかしながら私は腐っても研究者の端くれ。責任を取り書き記さなくてはならない為、痛切では有るが一筆、認めて遺そう。カレは狂い転げた挙句、近場の鶏を襲い頭部を喉に詰まらせて絶命したのだ。

――生体番号XXX/死因:最も普通で、最も綺麗に死したモノだ。自殺である。カレは実験体の中でも、最も頭の狂った実験の犠牲者だったモノである。確か不死者から不死は産まれるのか、と云う研究を上層部……特に軍部の方から言い渡されて流れて来た実験体だったと思われる。結果的には失敗、挙句の果てに過度な実験の代償で子孫が遺せない身体になってしまった。当時の私は哀れに思ったのか、それとも保身に走ったのか知らないがカレの記憶を消して応急施術を施して転送した様だ。未来永劫、子を成せぬ体質に成ったカレは自由奔放で楽観主義者で、同時に享楽主義者で純粋な好青年だった。生涯、たった一人だけでも愛しい伴侶と共に死を迎えたかっただろうに。終ぞ叶う事も無く、自身の胸に包丁を突き立てて事切れるに至る。

――生体番号XXX/死因:爆風で吹き飛ばされていたのか、焼け果てた荒野―嘗て森であった―の一角で遺骨を見付ける。焼死。村の出入り口付近で何時も出迎えてくれていたモノだ。誰であっただろうか……其処に居た、と云う事は覚えてはいるのだが数多の実験体らを世に放り出していたせいで面影を忘れてしまった。性別も特徴も月面落下に因る甚大な損傷を受けて、尚且つ燃え広がった山火事に呑まれて判別不可能になってしまった。所々、消失している部品で今後、再調査しなくてはならずサンプルのみ採取して今は済ませようと思う。何て事は無い、コレも消失している部分は有るが、綺麗な焼死体である。

――生体番号XXX/死因:上記と同じく出入り口付近に倒れていたモノだ。年齢の割には頭蓋骨が著しく小さい為、コレも恐らく前述の通り。頭の狂った優生学に基づいた実験の犠牲者である。先に自害を図った青年と同じ研究所で強引に施行された『実験』でカレと同じく身体を壊し、美意識と自意識過剰な性格が歪んでしまい。元の清楚で可憐な御嬢様は、憐れにもお人形さんになってしまった。初めて出逢った日から変わらず美しく、素直で可愛くて。あの人とカノジョが何気なく親しくしている度に、私はじくじくと焦りと惨めさを感じていた。村になんて転送しなければ良かったと、ずっと私には無いモノを持っているカノジョを羨み、嫉妬していた。カノジョの細い指に、まるで玩具みたいな指輪が鈍く輝いている……黒く煤けた焼け跡を軽く擦り取って見てみると、そこには子も遺せぬ青年の『ナマエ』が刻印されていた。

――生体番号XXX/行方不明、推測に過ぎないが骨も遺らず消滅してしまった模様。出入り口付近から道を外れて奥に進むと、簡素だが小さな農場が在った。その近辺でティータイムに興じていたモノが居た筈だ。何処を捜しても見当たらず時間にも限りが有った為、これ以上の捜索は打ち切らざるを得ない。あの人が良く紅茶を頂いては楽しく賑やかに談笑をしていた、あの穏やかな時をこの瞬間でさえも確と生々しく覚えている。カカシ作りの達人で、あの人が村に来てから暫くして真剣な眼差しで作り方を教わっていた。何時も優しくて温かな人柄だったけれど、その時だけは職人魂と農業に汗水を流し燃える先達の面立ちをしていたね……ライゼ。そんなカノジョが、見付からない。

 

――生体番号XXX、生体番号XXX/死因:焼け落ちた家屋に潰された事に因る圧死。戦争の惨状を鑑みて国が新たに造ろうと企てていた計画の被害者であり、最後の実験体。不死の施術適齢期をぎりぎりで通った幼子を実母から奪い去り、不滅の少年兵に仕立て上げようと送られて来たのがこの子。そして、亡き実母の代わりにと治癒神術の研究で使っていた元酒場の調理人だった女性を宛がった。全ては私の我儘で、勝手に偽りの幸福を与えていた。まるで飴玉の様に。

 

 あの人の、ライゼの、母親代わりと言っても良いモノで『家族ごっこ』の一部だった。

 傍らに、護る様にしっかりと抱えている小さな、小さな遺骨は『弟』にも似た存在だったのだろう。

 あの人がカレに出来なかった事を、叶わなかった夢を見続ける為に置かれた可愛い人形。

 私にも彼にも良く懐いていて剣技の稽古にも付き合っていた日々を思い出す。

 村の御勤めや修行でくたくたになって帰って来ても、何故かカノジョが作ってくれる温かい家庭料理はとても美味しくて何時も楽しみにしていた。

 皆、元気で明るくて幸せそうに生きていた大切な記憶。

 あの人、ライゼにとって掛け替えの無い人達で無責任にも捨て去ってしまった思い出の残滓。

 

――私が、最後に此処へと送った人達。

 

 この総てを誰一人として欠ける事なく弔いたい。出来る事ならば、だが私にはそんな権利も時間さえも無い。

 私に架せられた原罪が重く伸し掛かる。今まで散々、モルモットの様に扱って来て最期までこの腐れた手で彼等を葬ろうなど。誰が許せるものか。

 私は村でのうのうと生きて来た一人の少女ではなく、冷たく非道で下劣な研究者に戻らねばならない。そうする事でしか彼等の魂を安息の地に送れないから。

 私は貴方が選んだ未来を認めない。あの穏やかな日常を忘れて生き続ける何て許さない。どんなに悲しくても、辛い記憶に苛まれようとも、捨て去る事など出来ないのだから。

 例え貴方の魂がこの世界を、私の愛を、皆の想いを、育み満ちる生命を、見殺しにして忘却しようとも必ず呼び戻して見せる。

 この地獄の底に。昔みたいに恥ずかしそうにしながらも二人で手を繋いで、森を抜けて、村に還ろう。私達の遠く遥か彼方に置いて来た、懐かしい約束の地へ。

 

「私は諦めない。今も感じているの……貴方を奪い去ろうとしている者が、この世に二人居るんだって。彼等が諦めない限り、私も絶対に諦めないから。」

 

 待っていてと、最後に赤黒く染まる虚空を見上げて失われてしまった月の灯りを胸に抱く。

 彼を心より深く愛している者は私しか居ないと思っていたのに、どうしてこうも弊害ばかり増えていくのか。全く、恋敵が多いと苦労すると思いながら煤けて汚れた頬を拭う。

 閑散とした大地を濡らしていた涙は、もうとっくに枯れ果てていた。

 こんな目に遭っても未だ、あの人への想いにやきもきしている己はまるで、うら若き乙女みたいで。似合う訳も無いのに無垢で幼気な少女ぶってしまい、思わずくつりと異様な嗤いが口を吐く。

 もう戻れないのに、もう叶わないのに、伝えたかった想いが未だ一杯有ったのに。

 どうして何時も彼等ばかり、素直に想いを伝えられるの。どうしてそんなに、あの人の心を奪えるの。どうして……届かないの。

 どうして……私の愛は。

 

 

 

 黒く荒廃した悪夢の終わりが、朝焼けの光と共に訪れる。正確に言えば、未だ悪夢は続いているのかもしれないが。

 あんな悲惨で残酷な夢が続くよりは断然、こちらの方が幸せだと思い込ませながら目を覚ます。

 そうだ、今日は行くべき所が有るんだった。今は何時だろう、未だ間に合うだろうか……とにかく急いで顔を洗って支度して、朝食を軽く摂って、行かないと。約束の場所へ。

 

 もしも、また逢えたらどうしよう。いや、そもそも。そんな簡単に夢で逢っただけの『運命の人』が都合良く現れるのだろうか。

 私を此処に呼び寄せた天使様は、こうして朝っぱらから緊張しながらそわそわと待ち望んでいる初心な乙女をからかっているのではと。

 自分で乙女だなんて言っちゃって、ますます恥ずかしくなって来る。大体、何なのだ……あの不山戯た容姿と態度の自称キューピッドは。

 何が「この丘で待てばお前の王子様が現れる。必ず、オレが連れて行ってやるから待ってろ。」だ。本当におかしな人。

 私を囃し立てて弄ぶ為に、ずっと変な夢を見せていたとしたら今度こそ怒ってやるんだから。それに来る訳がないじゃない、だってこんな、面倒で重たくて根暗な女の所に何て来る訳がない。

 

「だって私には解るの。私だからこそ解るの……私は、彼の手を」

 

 『あの人』の手を握り締めてやれなかった。悪夢の最後に映るのは何時だって最期の瞬間で、必死に伸ばす指は先端から雪の様にぽろぽろと毀れていく。

 何時だって見たくもない哀しい悲劇で幕を下ろす。目の前で安らかに眠る彼には届かない。何度も、何度も、何度も、何度も。

 ずっと、ずっと、失敗する度に繰り返している。たった一つしか掴めない『人生、最初で最期の成功』を……そして、今から五年前。私が十四歳の年になった頃だ。

 

 今までずっと辛く苦しく、色の無い世界にぽつぽつと雨粒の様に天から涙が落ちて、暗かったセカイに華やかな彩りが溢れて。その日を境に私の夢が少しずつ変わっていく。

 

 今まで自分一人で戦っていたと思っていたのに。一人、また一人と、私の側に柔らかく懇篤な魂が静かに寄り添って来る。

 何処から現れたのか何て野暮な事も訊けずに、白く染まっていく世界に呑まれそうになる私を支えようと一人ずつ、温和な手を差し伸べて微笑む。優しくて温かくて、懐かしい素敵な笑顔。

 私がずっと願っていた、彼等の幸福と安寧を其処に称えて消え掛けていた魂に喝を入れてくれる。

 お父さんの様に、お母さんの様に、兄弟姉妹の様に、無二の親友の様に、苦楽を共にした戦友の様に、共闘する何て思いもしてなくて息が合わないと思っていたのに、同じ事を考えていた癖に回りくどい事してくれちゃって。

 そして、今まで声も姿も感じられなかった彼が居た。私の側に、ずっと居てくれていたのだ。

 

「何、今更……起きるの、遅いにも程があるよ。ライゼ……おはよう」

「嗚呼、ずっと待たせてごめん……今からじゃあ遅刻の弁明に、ならないかな?」

「もう、良いよ……此処まで来ちゃったんだから。あの、こんな汚い手で良ければ……その」

「好きな女の子の手を汚れてる何てさ、言える訳がないだろう。リーン、君は綺麗だよ……昔からずっと変わらない。」

 

 彼はあの時から何も変わらない無垢な笑顔を浮かべて、私の手を握り締める。「一緒に帰ろう」と力強い呼び掛けを添えて。

 その傍らでもう一つ、自身よりも酷い損傷を負っていた一人の騎士様が片方の手を取った。弱弱しく震える腕は既に事切れる寸前の魂を現していて。

 胸に突き刺さる様な懇願と羨望と、燻る嫉妬を綯交ぜにした翠の瞳に睨まれて身を強張らせてしまう。私はやはり、この人とは上手く付き合っていけないのだろうか。

 こんなにも憎悪と殺意を向けられてしまう程、嫌われているのだろうか。彼が心の底より憧れていた『あの人』を奪う醜い女だと。

 そう落胆して次に叩き付けられる言葉を待ち構えた。きっと恨まれている、汚らわしい阿婆擦れだと思われている。

 そう、思っていたから予想外の反応に驚いて目を丸くしてしまった。彼は、私に微笑み掛けた。

 

「何て、顔をしている……そんな、見窄らしい成りでは兄さんも呆れ果てるぞ。せめて、自信を持て……そして常に笑顔でいろ。」

「え……っ!?」

「呆けるな、お前に……兄さんを、託そう。僕は、もう……兄さんを助けられない。手が、伸ばせないんだ……だから、お前に有り余っている神力を譲ろう。」

「レクセス様ッ! 御身体が……っ!!」

「レクセスッ! 無茶をするな、これが済んだら……済んだら、お前を助けて」

「ライゼ……世界の全てを唯一人の人間が、救えると思い、上がるな……。」

 

 どうして、そんなに強がれるのだろう。

 彼の身体の、腹から下はもう塩の柱に呑まれて消滅している。それ処か、あの人へと差し伸べていた腕も……もう、雪の様に溶けている。

 何れ秒も経たずに全身が分解されて消えてしまうだろう。それなのに彼は最期の力を振り絞って、辛うじて遺っていた腕をこちらへと伸ばして来る。

 じりじりと進む指先が私の冷たい手に触れて、彼は満足そうに無垢な笑顔を浮かべて瞼を下ろす。

 揺れる胸元の隙間から翠玉に輝く首飾りを大切そうに見詰めて。

 

「ああ……ライ、ゼ。もっと、早く……お前と逢いたかった。」

「レクセス、様……っ」

「兄さんを、頼んだぞ……」

「レク……セス……ッ」

 

 私達は白く温かな世界に溶けていく。

 夢は、いつだって悲しみしか連れて来ないと思っていたのに。

 

 

 

 春風に乗って白馬に乗って来る様な王子様ではなく、極普通の想定していた方とは真逆な王子様が小高い丘を登ってやって来た。

 頂上から遥か遠くに見える白亜の王城こと、花の都『ヴェルンディア』から訪れた旅人だそうで。何処か浮世離れした風貌に、幼さの残る無邪気で陽気な笑みが印象的な人だ。

 流浪の民にも似た雰囲気は知らぬ間に、遠くへ消えてしまいそうにも思えて何気なく繋いでしまった手を離せずにいる。

 異性と手を繋いで歩いた事何て。物心付いた幼い頃から孤児院で暮らす様になって以後、何度も有るのに。

 彼の温もりだけは特別だ、とは恥ずかしくて到底おいそれと言えたものではない。

 でも、この手を離したくないと感じている。こんなにずっと繋いでいて、彼は迷惑に思っているだろうか。

 ちらりと横目に覗き見る。あどけなくも精悍な面持ちに胸がときめく。良く見れば存外に整った顔立ちをしているかもしれない。

 翠玉の瞳を陽光に瞬かせて前を向き歩む様は、幾度の困難も苦難も乗り越えて来た頼もしい冒険者の勇気に満ちている。

 見詰めれば見詰める程に愛しさと憧憬が沸き起こる。今夜の日記に記す事柄が十頁では足りない程、素敵で魅力的な御人。

 決して、望んだ王子様とは違うかもしれないけれど……私は昔からずっと、彼を愛していたのだと想う。

 

「まさか、本当に現れるとは思わなかった……。」

「うん? 何か言ったかい、リーン?」

「ううん、何でもない! て云うか訊かれても絶対に教えないです!」

「何だよ、秘密かー。教えてくれても良いじゃないか、リーン」

「ダメです、教えません! ライゼが、気付いてくれるまでは。」

「むう、気付くまでって。一体、何に気付けと……まだ初対面だし、もしかして何か迷惑掛けちゃったとかか?」

「ふふっ、さあどうでしょう?」

「さあ、って……全く。本当におかしな子だよな。君ってさ、まあ……そこが可愛いんだけど」

「ん? 何か言ったかしら、ライゼ?」

「そうやって直ぐにからかう。今日は本当に、何なんだ……妙な人ばかりに絡まれるけど。」

 

 悪い気分はしないと細やかに呟いて、彼の頬から一粒の涙が零れ落ちる。

 煌く様に降り注ぐエーテルと雫が溶けて地面にぽたりと垂れた。

 新緑に芽吹く豊かな地に、天の恵みが舞い戻る。

 失われた宝物を取り戻す為に、もう一度。

 

 

――この温かい手を繋いで歩んで行こう……もう一度、希望を夢見て。

 

 

【『LostHeaven―盲目のユメ―』第十三章/了】

 




 漸く大詰めです。次回で終わりに出来たら締め括らせて頂こうと思います。
 文章力が足らず、未だ未だ直さないといけない箇所は山の様に有ると思うのですが何はともあれ。
 リアン様の永く辛い旅路に、何とか綺麗に丸く終止符を打てたら……と思いつつ後少しだけ綴らせて頂きます。
 次回はショタクス様の大活躍回にしよう。ハートフルほのぼの兄弟トークで御送り致しましょうか、と予定は未定過ぎて恐縮です。
 そういえば「シークレットとは?」みたいにもなってしまいましたし、また後程ちょっとずつこそこそと修正を入れておきます。
 それでは、此処まで読んで下さり有難うございました。また気が向きましたら次回も御楽しみになられて下されば幸いです。

追伸:某所でダ○ビーさんのカバー曲(月光浴、病名は愛、声)を拝聴しながら書いていたのですが、個人的に似合うと思うのでこっそり御薦めさせて頂きます。是非ともお聴きしながらどうぞ。
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