『LostHeaven―盲目のユメ―』フリーゲーム三次創作ファン小説/本編終盤のネタバレ・IFバッドエンド妄想含みます。 作:MEIKO
※物語の終盤以降等についてネタバレと妄想に因るifやキャラクター崩壊等が含まれてしまうかもしれませんので、先に深く御詫びを申し上げます。
※ザウアーさんがまた生き残ってしまう……最早、呪いでは;
◆もしも第二の『終末の日』、あの真っ赤に染まった世界でリアン様が外縁調査に出る事無く三百年から五百年程、新生世界統一国家『ヴェルンディア』にて生き続けたら……と云う妄想がお題となっております。
◆本編後半から終盤に掛けてのシーンは本当にしんどくて涙腺が緩みました。ライゼさん、こんな所を見せつけられて良く耐えられるなー、と思ってしまい。もしも精神的に耐えられずあの日、諦めてしまったら……。
◆この物語は公式見解では有りません。非公式のIF妄想ですので原作本編には含まれておりませんので悪しからず。
※此処までの諸注意コピペ同文です。以下本編。
――俺が『お前』を殺した回数、『お前』が俺を殺した回数、『アイツ』が『お前』と俺を殺した回数。
――……これで、何度目だ?
蠢く蟲共の騒めきで目を覚ます。今日も全身が軋む程の激痛と激しい胸の痛みを感じるが、我が身の心配など気にも留めなくなってしまっていた。
あれからずっと薬も飲んでいない。飲もうと思っても、もうこの大地には雑草の一束でさえ生えやしないから調合さえも出来ない。
素材が手に入らないのであらば諦める以外に他はなく、己の不調の為でもあるが。半分は云い知れぬ頭痛に苛まれる部下の為にと、我ながら努力して取得した薬剤師の資格も唯の紙切れになってしまった。
今の俺には、何も持つべきものが無い。
仲間も願いも、想いでさえも失ってしまった。唯一、遺ったものは心の奥底で肥溜めの様に溜まっている『アイツ』への憎悪と。
例えこの身が壊れ、朽ち果てようとも、世界でたった一人だけ救いたかった部下の面影。
最期に、腐りきった両の瞳に焼き付けた『あいつ』の悲愴的な面が一向に忘れられずにいる。漆黒に染まる眼前で奴は泣いていた。
自ら仲間を手に掛けておきながら、泣いていたのだ。結局、昔と何ら変わらない高貴で御優しい魂の持ち主だった騎士様は、俺の心臓を幾度となく切り刻み血と劫火で穢された地に叩き落した。
その時だ、気紛れな『神様』が俺に手を差し伸べやがったのは。それは余りにも無責任で、皮肉極まりない所業であった。
「見るに堪え難い」と耳元で何者かが囁く声が聞こえて、気付けば俺の死骸は深紅の夜を落下しながらも虹色に輝く神々しいオーラに包まれ損傷部位が瞬く間に修復されていく。
体中が襤褸雑巾みたいに風穴だらけで、全身の骨と云う骨は脆くも破壊され、幾つか内臓も破裂していて。天を胡乱げに見上げつつ降り注いで来るどろどろとした鮮血と、俺の中に納まっていたであろう腸が頬に当たり、気色悪さを感じながらも彩る光輝に目を奪われる。
痛みも哀しみも絶望も、とっくの昔に麻痺して不感になってしまっていたのだが。『神様』何てものは毛頭、信じない性分だったのだが。
何故だか、この瞬間だけは神に愛されてやっても良いか……と、そう思い。俺は渇き切った喉を唸らせ嘲笑を吐き出しつつ、天上より堕ちる巨大な輝晶石の刃を全身で受け入れた。
あれから約三百年は経過している。俺の身体は『聖剣ヴェルンディア』に僅かながら残った神の魂と喰らい続けた輝晶石や、魔物の血肉に因る数多の妖力で蘇生を果たすのだった。
薬剤師として薬の調合は出来なくなったが、こんな時代でもそれなりの活用法が見込めるとして。どの魔物、或いはどの輝晶石が我が身にとって有用な作用を発揮して、自身の身体能力及び再生能力を高めてくれるのかを正確に見極める一助となっていた。
当時は医師でもないのに資格を得て何になる、と思い悩んでいたのだが。あの時、寝る間も惜しんで勉学に励んだ事は決して無駄にはならなかった。
そうだ、無駄な事なんざ何一つだって無いんだよ。『お前』がフォーア村で嬢ちゃんと過ごした時間、初めて村の外に出て来て都会の賑わいを知った喜び、迷いながらも砂漠を超えて天使様と協力して最初の神約を果たせた時も、俺とクレオスで再会した時も、皆でトロッコに乗ってバカみたいに大騒ぎして楽しかったよな。あの時も、あのときも。
嬢ちゃんが作ってくれたクッキーが美味かったと嬉しそうに語ってくれた夜を俺は憶えているぞ。
軟禁された挙句、そのまま別れ離れになってたかもしれない、ってのに『お前』は小さくも哀れな天使様を信頼して皆で助けに行ったよな。
ルヴィスに疑いの目を向けられている俺の事も、『お前』は最後まで信じてくれてさ。
この真間、また一緒に旅を続けてくれるのかと……悪夢から覚めても皆と共に歩んでくれるんだろう、と。そう思っていたんだぜ。
今でも、俺は未だ奴が側にいてくれてると思っている。あんな、あんな苦しそうな面ではなくて、お前にはずっと笑っていて欲しいんだ。
「昔の様に、無邪気で明るい笑顔を見せて欲しい。そうして、皆の元に還って来て欲しい……その為ならば俺は何だってしてみせるさ。言っただろう、お前を壊してでも止めてやると。」
――なあ、ライゼ……待っていてくれよ、今直ぐにでも『お前』を殺しに行ってやるから。
場所は旧エリュシオン離宮。魔物が群れを成す樹海の奥に、廃墟と化した宮殿が存在していた。
本来であれば、この場も狂暴な魔物の巣窟になっている筈なのだが何故か離宮に近付くにつれて勢力が弱まり。その代わりでもあるかの如く何らかの肉塊と夥しい血痕が周囲の美しい景観を荒らしていた。
理由は三百年も前から知らぬ間に、宮殿内へと隠れ潜む様になったアンチエーテル等級『SSS』の怪物『死神』が巣食っているからである。
通称エクス・タルタロとも呼称されている、この魔物は人の身と元の『人格』を維持しつつも、世界に散らばって蔓延している魔物の群衆を意図も容易く喰い荒らして。数多の輝晶石を体内に取り込み、その力を無限に増幅させ生き永らえる正真正銘の魔王とも称される化け物である。
私も『彼』の事は、良く見知っている。遠い昔に、リアン様……否、ライゼ様と共に旅をしていた御方だ。当時は気さくな好青年風のおじ様で、余り会話をした事はなかったが何時もライゼ様の側で御父さんの様に温かく見守っていた。
仲間達と苦難を共にして、長い旅路を過ごし、それでも楽しそうに微笑む彼は朗らかで。辛い思い出に見舞われても乗り越えて行けると一致団結していた彼等を見て、私は密かに羨ましいと思ったものです。
離宮での永く孤独な日々は苦では有りませんでしたが。一緒に笑い合う友が居て、同じ時を過ごし、等しく安らかな死が訪れるであろう。
そんな彼等が羨ましくて、幸せそうに思えたのに。どうして『神様』は、このような惨たらしい仕打ちを賜るのですか。
「よお、久し振りだな。オマエに逢うのは、何年振りだったか……ハッ、まあ良いか。『あいつ』以外のヤツなんざ、どうでも良い。」
「ザウアー、さん……約束通り、例の物を持って参りました。認証コードは既に変更してあります。これで再び王宮へ入れるでしょう。」
「約束? あ、嗚呼……そうだったな。随分、昔の事で忘れちまってたぜ……年は取りたくねェなー、く……カハハッ!」
身の毛がよだつ殺気に当てられ、思わずたじろいでしまう。彼の喉元から拉げた嗤いが漏れる度に宮殿内の空気が底冷えして、私は耐え切れずにかたかたと身震いを起こして正面に居座る『ソレ』を見据える。
見るも無残な廃墟の景観と合わさって。悍ましい気配を漂わせる魔王の黒々とした魂が、鎌首を擡げる音色で空気は震撼する。深淵なる慟哭からゆっくりと、闇が姿を現した。
淡く黒炎を纏った神の器に宿るは、ある一人の心優しき青年を想い黄泉と共に生きようと誓った、鬼神の魂魄。
瞳は輝くばかりの青磁色、髪は月光にも劣らぬ白銀を耿々と靡かせて。我等がヴェルンディア王家の全勢力を以てしても止められぬであろう、最大最悪の魔人が此処に凱旋の火蓋を切って落とす。
この世は終わりだ。きっと、誰も助からない。レクセス様でさえも、リアン様でさえも、コレを討ち果たせるかどうか。
王都に遺して来た友人――私は友達だと、思っていたが彼女はどうであったろうか――でもあり、人としても侍女としても尊敬していた女性、クーシアが気に掛かる。彼女は何故、私にこんな大役を頼み込んで来たのか。
当人の口から訊けず仕舞いだった為、今となっては何を思い考えていたのかは知る由が無い。それでも、彼女の『最後の願い』だからと断り切れなかった。
それが一体、どんな意味を成すのか。漸く解ってしまった、解りたくはなかった。
「やっとだ、やっと。『あいつ』を殺してやれる。」
「ざ、ザウアーさん……っ」
「オマエは此処に残れ。大丈夫だ、安心しろ……俺の目が黒い内は、誰もオマエを取って喰いやしねェからよ。」
「ザウアーさん! ま、待って下さい……っ!」」
「此処は、世界で最も安全な場所だぜ。今まで、護ってくれて有難うな。」
擦れ違いざま、そっと昔みたいに頭を優しく撫でて下さって。一瞬、余りにも恐ろしくて身を固めてしまったけれど彼の根本的な人格は変わっていない。
生暖かく、ごつごつとした骨ばった手指が私の髪を柔らかく、腫物を扱う様に滑り落ちて彼は離宮を去って行った。その背に、身の丈以上もの長大な得物を担ぎ上げて。
こんなにも、哀しい思いは嫌です。どうして戻れないのでしょうか、もしも神様が私の願いを聞き届けて下さるのなら。
「どうか、この世界を御救い下さい……どうか、私の愛する人達を還して下さい。あの美しい日々の憧憬を……御願いですから、還して」
願いは虚しく、荒野に溶ける。
【『LostHeaven―盲目のユメ―』第四章/了】
やっとザウアーさん書けたー!
これからバトルシーン書いて来ます。一先ず書けた所までを載せて、おかしな所もしくは誤字脱字が有りましたら後で修正します。
それではまた次回、レクセス様には頑張って貰わないといけない;
追伸:そういえば月が落下してるのに未だ上空に月ががが、みたいな描写を誤ってしていましたね;
シェルターに投影された一種の幻想風景と云う事にしておいて、何とかなりませんか;(毎回、拙い文章ですみません)