『LostHeaven―盲目のユメ―』フリーゲーム三次創作ファン小説/本編終盤のネタバレ・IFバッドエンド妄想含みます。 作:MEIKO
※物語の終盤以降等についてネタバレと妄想に因るifやキャラクター崩壊等が含まれてしまうかもしれませんので、先に深く御詫びを申し上げます。
※ザウアーさんがまた生き残ってしまう……最早、呪いでは;
◆もしも第二の『終末の日』、あの真っ赤に染まった世界でリアン様が外縁調査に出る事無く三百年から五百年程、新生世界統一国家『ヴェルンディア』にて生き続けたら……と云う妄想がお題となっております。
◆本編後半から終盤に掛けてのシーンは本当にしんどくて涙腺が緩みました。ライゼさん、こんな所を見せつけられて良く耐えられるなー、と思ってしまい。もしも精神的に耐えられずあの日、諦めてしまったら……。
◆この物語は公式見解では有りません。非公式のIF妄想ですので原作本編には含まれておりませんので悪しからず。
※此処までの諸注意コピペ同文です。以下本編。
此処、半年程。我が弟であるレクセスとは、ろくに言葉も交わせずにいた。考え得る要因と云えば、私とクーシアとの政略結婚の話が研究機関から持ち掛けられた事だろうか。
あの日から彼の態度は明らかに一変し。私とエルメルディア様に対する執着心が増した上、クーシアとの記憶が少しずつ薄れていき怪訝に思うまでになっていった。
彼からしてみれば『母親』と呼ぶべき存在は一人しかおらず、私との大切な時間を他者に奪われる事も我慢ならないらしい。
これ程までに独占欲が激しく甘えん坊な奴だったか、と困り果てるもロスト化の影響で心身共に壊れ掛けている弟を見捨てる訳にもいかない。
王宮内の中庭奥に移築された聖櫃の間にて籠るレクセスを気遣い、侍女達が足を運ぶ日も有ったが。それももう私以外に此処を訪れる者は居なくなってしまった。
癇癪を起したレクセスに言われなき暴力を振るわれ辞めていく者も有り、給仕の選定にも一苦労である。
この子の身を案じて、と張り切って来たが私の労力も限界に近い。ましてや不老不死の身だからと言って、私自身もロストを発症しないとは言い切れないのだ。
彼の為に調達せねばならない緊急用コールドスリープ機材も、エルメルディア様を御救いし目覚めさせる手段も解らず、何もかも目途が立っていない。
ならば、せめて次代に繋げなくては。私の意志と研究機関の采を余す事なく我が子孫に受け継がせなくては。
だが、世間体はそう簡単に私の希望を全て受け止めてくれる訳ではない。
王族の血を確実に色濃く遺す為には庶民の者から婚姻相手を選ぶなど、以ての外。言語道断と浅はかな願いは悉く切り捨てられ、苦渋を呑み込みそれなりには格式の有る生まれであった侍女のクーシアと結ばれなくてはならなかった。
侍女との婚姻と云うだけでもセンセーショナルだと、上流階級の者らから散々、嘲笑われたが致し方なし。
レクセスとエルメルディア様の為を想えば、と自分に言い聞かせ私は今宵、彼女と結婚する。
これは贖罪なのだから。あの日、愚かな選択をして道を誤ってしまった私自身への。
「何時までそうして不貞腐れているつもりなのだ。レクセス、昼過ぎには式典の準備が整うだろう、お前もそれまでには礼装に着替えて貰わねば。」
「僕は、まだ……あの人を『お母さま』だなんて言いたくありません。」
「では何とする? 式典が終わるまでずっと此処で籠っているか? それでは私の示しが付かぬぞ。大好きな兄とやらに泥を被せる気ではあるまいな。」
「……兄さんは、意地が悪いです。僕の『お母さま』は一人しか居ません……僕の『兄さん』も一人だけです。」
病弱なまでに細く華奢な膝にいじけた顔を埋めて、涙声を堪えつつ抗議の言葉を絞り出す弟に振り回され朝方から対応に追われている。
花婿が式典に遅れる訳にはいかぬので何時までも相手をしてやれる身分ではないと云うのに、私はつい心配になって甘えたがりの弟を探してしまう。全く、未だこんなにもお人好しな部分が残っていたなど。
自身の中で消え去ったと思っていた人格の細微な発露に苦笑を漏らし、目の前で独りで置き去りにされるのではと不安を抱く弟の説得に注力する。
「彼女の事を母と呼びたくなければ、お前の好きなようにすると良い。何時も通り、侍女のクーシアとして扱ってくれて構わないと彼女自身からも伝えられている。それでも嫌ならば『お母様』の警護をお前に任せよう。式典が終わるまで、此処に居ると良い。」
「…………兄さん、本当に意地悪だ……。」
聖櫃の間から立ち去ろうと、颯爽と足を運ぶ私に続いて地下からとぼとぼと後に着いて来る気配を感じて。重い足取りで階段を上がり未だふくれっ面をした真間、のろのろと隣に立つ弟にほとほと呆けつつ。
「やれやれ、礼装を着る気になったか、弟よ。」
「僕は、お母さまも大切ですが……兄さんも大切ですから。僕が護らないと、お母さまが悲しみます。だから……。」
「ふん、相変わらず頑固だな。お前は、ならば私の護衛を任せる。後に着いて来なさい。」
「……っ! はい、兄さん!」
我が勅命を受けると途端に調子が良くなるのも困りものだ。壮健で嬉しそうな表情を垣間見えるのは良い事だとは思うのだが、無理が祟ってしまってはと思うと募る心配事も増す。
彼の症状を戻し、治す手立てを確立しなくてはならない。一刻も早く。
それから昼も過ぎて式典の準備と衣装合わせも済んだ私とレクセスは式典の会場に一早く赴き、念入りに最終的なチェックと警護部隊の確認を取るのだった。
花嫁であるクーシアの身支度も順調に進められているようで、会場の付近では招待を受けた賓客が今か今かと話題に花咲かせながら待ち兼ねている。
その雑踏に紛れ込んでいる化け物には誰しもが気付かずに、祝いの歓声で賑わう晩餐会は粛々と催され時は過ぎていく。
「リアン様、御成婚おめでとうございます。御二方共、仲睦まじい御様子で感動致しましたわ。」
「リアン様ー! どうして私と、うっ……うっ、私の想いは届かなかったのでしょうか。グスッ、こうなりゃ今日は自棄酒よー!」
「ちょっとはしたなくてよ。リアン様の前で! 申し訳ありません、このめでたき日にこの子ったら。後程、きつく叱り付けておきますわ。」
「いえいえ、どうぞ御気になさらず。私も多忙につき先方の御子息様への応対を怠っておりました事、この場をお借りして深く詫びを申し上げます。」
「あら、まあ! そんなに畏まらなくても良いですのに。また何時でも御店にいらっしゃいねー?」
「ハハ、それは申し訳ないのですが花嫁の前ですので。丁重に御遠慮させて頂きます。」
「やだわ、私とした事が。ホホホ、今のはお忘れになられて下さいましね。」
「リアン殿、御噂は兼ねがね御聞きしておりますよ。失礼ですが、あちらの……ええ、何と申せば良いのでしょうね。庶民の、と言ってしまうのはいけませんかな? 嗚呼、いや。」
「先に私の従者と婚姻を遂げるおつもりだったのでは、と申したいのですかな? その件につきましては既に解決致しました。あれは唯の従者で、それ以上でも以下でもありません。」
「ほ、ほう……では、その。弟君とは一体どの様な御関係で? 今この瞬間でも我が背に刺さる彼の視線が痛いのですが。聞けば何か良からぬ事に手を染めていらっしゃると。」
「あれは少々、心配性の甘えたがりでしてね。真に遺憾ですが私と家族の間に疚しい隠しごとなど有りませぬよ。何一つでさえも、彼には私の警護を任しておりますゆえ、目を光らせるのは自明の理かと。」
怒涛のように押し寄せる雑音に辟易とする。途絶えぬ好奇の目とゴシップを好む品を欠いた者らとの無駄な対談は早々に切り上げて、人の群れを避けふらつく足で妻の元へと向かう。
彼女は精神的な疲弊を隠し切れない私を気遣い、そっとバルコニーの方で休憩をと匿ってくれた。
機敏な身の熟しで包み隠す手腕は誰に教わったものでもない。クーシア自身が永年、従者として培ってきた人生観と度量の賜物なのだと感じる。
柔和な微笑みであやす白磁の手は女神にも似た抱擁で、こうしていると悪意に打ち拉がれる心が落ち着きを取り戻すのだ。
「貴方、御疲れ様でした。どうかなさったの、花婿がその様な暗い顔を見せてはいけませんわ。さあ、早くこちらへ。」
「嗚呼、すまない。クーシア……少々、疲れてしまってね。」
「無理もありませんわ、今宵の賓客に上流の者が良からぬ方々を御呼びしたようですから。一応は私の方でも止めようと試みたのですが。」
「相手の方が一杯も二杯も上手だったのだな。まあ、良い……大衆の面前で話の種として持て囃される事には慣れているよ。」
「申し訳ありません、リアン様。あの者達の処遇は私に御任せを。」
そう言うとクーシアは殊勝な面持ちで抱く腕を緩め、静かに謝罪を述べる。美しい花嫁から侍女の顔へ成り代わり、口惜し気に宴の席へ戻って行く。
彼女の首元を清楚に飾る翠玉の輝きが目を晦ませる。アレは私が手ずから彫金して贈って下さった品だと言うが生憎、今の私には身に覚えが無いせいか。記憶を持たぬ自分自身への当て付けで愛用しているようにしか思えない。
何ら感情も籠っていない瞳を涼やかに流して過ぎ去って行くクーシアの背を見送り、改めて一時の休息を取ろうと壮麗なバルコニーの淵に身を預けて寄り掛かった。
遠くの方から見失った私の姿を追い求めて。先に屋内へと戻って行くクーシアと、窓辺に出ている我が存在を見付けたレクセスが何やら憤慨しつつ足早に近寄って来るのが見える。
擦れ違うクーシアとまたしても揉めている様子で疲れを取る暇も無く、諫めに行ってやらねば……と、夜の帳に微睡みつつも思案に耽っていた丁度その時だ。
直ぐ近くで唯ならぬ殺気と覇気を感じ取ったのは。
「ご機嫌麗しゅう、国王陛下。」
何時からそこに居たのか、私に声を掛けて来た妖魔とも見紛う程の謎めいた男は気配も音も無く宵の暗がりから現れた。
透けるような白い髪に情熱的な色を宿した青磁の瞳。永年に渡って鍛え抜かれたのであろう肢体は非の打ちどころが無い勇ましさと、その身を覆う純白の燕尾服の様相も相俟って何処か人間離れした雅さと佳麗な風体を醸す。
何処かで、出会った事が有る様な気もするが記憶に無い。言葉では例え切れない奇妙な懐かしさと、胸を締め付ける罪悪感が沸々と湧き上がって来て微かに頭が痛む。
警護の者を薄めるにも考え物だな、と内心で己の不手際に舌打ちを押し隠すが何処からともなく紛れ込んでしまったのだから仕方ない。
胡散臭さが服を着て歩いているのでは、とも思えるこの男ですら単なる来賓客の一人かもしれぬと踏んで一応の応対はしてやろう。警戒の念は解いてやれぬがな。
「今宵はイイ御日柄でございますな、陛下。申し遅れました、私、国内にて『武器商人』として御勤めさせて頂いておりまして。此度の御成婚祝いにと思い、我が御自慢の鍛冶職人の手で鍛造致しました一点物の代物を御謙譲に挙がりましてございます。」
両の掌を擦り合わせながら、武器商人と騙った男はいけしゃあしゃあと私の傍に踏み込もうとして来る。王国内の情勢や経済的な活動など熟知している私の前で良く平然と言えたものだ。
この王都に許可なく武装を扱う商店など在りはしない。許可が無い限りは争いの火種になる物品は極力、この手で排除し統率しているのだから。
「武器商人の方でしたか、それは私の方でお気付き出来ず失礼を致しました。この様な場でなければ後程、御商談の席を御用意致したのですが。」
「嗚呼、いやいや! 国王陛下の御手を煩わせてしまう訳には参りませんので、勝手に置いて行こうかと思っていた所でしてね。」
「は? あ、いえ……度重なる不始末を御許し下さい。しかしながら勝手に置いて行くなど、一体どういう」
意外な言葉に思わず素っ頓狂な声を上げたがそよぐ涼風に掻き消された。
頭痛と警鐘が高鳴る。夜も更けた、宴も酣。シンデレラが王子様と楽しい一時を過ごす時間も、もうすぐ終わり。王宮の天上に連ねた鐘が零時を示す。
シェルターに投影された偽りの月が薄らと雲間から這い出て男の顔を照らす。闇夜に潜ませた陰々滅々の姿が露になる。私の、忘却した魂の記録に……この男は存在していた。
「俺からの御祝儀、って事で受け取ってくれよ。なあ、■■■。」
「あ、ああ……お前、は……っ!」
見覚えが有る、と思ったのだ。背丈も出で立ちも、温かい声も、背中に担いだ大剣の握り方も、構えも。
『俺』を一心不乱に見詰める、その瞳も全て。記録していた。
【『LostHeaven―盲目のユメ―』第五章/了】
連続で投稿してしまい申し訳ありません、書き終わった分だけを纏めます。
バトルシーン頑張る為に実はこっそり燃え系バトルギャルゲーを見てると云うのは秘密にしておきます;
またしても誤字脱字やおかしな所が有りましたら後で随時、修正を加えて行こうと思います。
それではまた次回! バトルシーン……どうしたら良いんだ!?(宇宙猫顔)