この作品は作者の処女作であるため、どうしても拙いように感じられるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
第1文明圏 東方海域
波が穏やかな青い海の上に2つの黒い物体が浮かんでいた。そしてそれは、海をかき分けるように白い波を立てて進んでいる。
鯨のように黒い物体。非常にゆっくりとした速度で進んでいるそれは、鯨よりも大きいが、無機質な見た目をしている。
異世界の住民なら、それを海魔の仲間だと考えそうな見た目をしているが、決して海魔ではない。
それらは、海上自衛隊の潜水艦「こくりゅう」と「せいりゅう」だった。
こくりゅうの艦長の秋吉は、他の3人の乗組員と共に外へ出た。
それぞれが手に双眼鏡を持ち艦橋の上から辺りを見回している。浮上中において監視任務はとても重要だからだ。
「いい風だな」
ふと秋吉が呟く。強すぎず弱すぎない涼しい風が吹く。たまにしか外に出ることの出来ない潜水艦乗りにとってこの風は、普通の人よりも気持ちよく感じる。
「ええ。それに波も穏やかで本当に良いですよ、最高です」
秋吉の呟きに、見張りの1人が答える。
「本当に良い天気だ。正直な話、今までの中で最も良いぐらいなんだがな」
「ええ、私にとっても最も良い日です」
秋吉は言わなかったが、心の奥底で不吉なものを感じていた。嵐の前の静けさの様な何かを感じていた。それが何なのかは正直な話、彼自身もはっきりとは分かっていなかった。
浮上している間に、空気の換気とエンジンを動かして480基もの蓄電池の充電を行っている。2基のディーゼルエンジンはしっかりと動いていた。
通常ならシュノーケルで行うが、この世界では潜水艦を有している国が現時点でグラ・バルカス帝国ぐらいであろうと判断されていたため、決して油断してはいないものの前世界と比べたら比較的浮上している機会が多くなっていた。もちろん、シュノーケルでの作業をやめている訳ではない。
「もうすぐ充電が完了しそうです」
乗組員の1人が報告する。またしばらくの間この風に当たれなくなることを考えると、この報告はうれしくなかった。
「了解、充電が完了次第に報告しろ」
秋吉は海を見渡す。太陽の照りつける光によりコバルトブルーの様な青い海は、一層きれいに輝いて見えた。
「艦長、充電が完了しました」
遂に充電が終わる。
「分かった。潜水準備、命令次第開始せよ」
秋吉は見張りの3人を先に艦内に戻らせる。艦橋上には秋吉1人だけになった。
「潜水開始せよ」
「了解、潜水開始」
こくりゅうのバラストタンクに海水が注入される。船が潜水を始める前に秋吉も艦内へと戻っていく。
「(さっきからのこの胸騒ぎの様なものが収まらないな)」
扉を完全に締め切ったの確認した秋吉は、収まらない胸騒ぎをよそに本来の任務に取り掛かるようにした。
こくりゅうの喫水が深くなってくる。船の重さが浮力を突破し、少しづつ海へと潜ろうとしていたのだ。
船体が完全に水没し艦橋だけが浮かぶ。船体全体から生み出された大きな
遅れて、せいりゅうも同じように姿を消していった。2隻が潜っていった海は、変わらず青くきれいな海であった。
・・・・・・・・・・
神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス
先進11ヵ国会議にてグラ・バルカス帝国の外交官が宣戦布告を行った後、会議から出ていった。ちょうど現在、外交官がグレードアトラスターに乗船しているところだ。
偶然この光景を見た巡視船しきしまの船長の瀬戸衛は、異変に気付く。
「なあ。先進11ヵ国会議はまだ6日あるはずじゃないのか?」
「ええ、その予定のはずでしたが……。何かあったのでしょうか?」
事情を知らない部下も困惑する。
「いずれにしろ、外務大臣にも事情を聞いてみないと分からないか……。しかし、悪いことが起きそうな予感がするな」
縁起でも無いことを言うが、内心は皆同じだった。
黒煙をもうもうと煙突から吐きながら、グレードアトラスターはカルトアルパスの港から離れていく。巨大な戦艦が港から消えたことによって、港には大きなスペースが空いていた。
港から目立っていた大きな戦艦が無くなったことは、少なからずカルトアルパスの町にてちょっとした話題になったが、そこまで大事と捉える住民はいなかった。
だが、一方でそうとは捉えずに危機感を持つ者たちもいた。
「遅くにすみません」
「いえ、大丈夫です。どうぞこちらへ」
外務大臣が話をしたいと言ってきたため、しきしまの船長の瀬戸は外務大臣を船に招待することにした。
あまり大事に出来ないことらしいので、船長室に案内することにした。
「では失礼します」
扉を開くと、少し狭いが2人が入るのには十分な部屋があった。そこへ、瀬戸と外務大臣は近くの椅子に座る。
瀬戸がコーヒーを差し出す。外務大臣はありがたくいただくいただきますと言うと、一口飲んでから話を切り出した。
「実は、先進11ヵ国会議にてグラ・バルカス帝国が宣戦布告を行った後、会議を退出していきました」
「なっ!?」
瀬戸は何か起きていたと思っていたが彼の予想を上回るものであった。
思わず、コーヒーカップを落としそうになる。中に入っていた熱いコーヒーの1滴が床に落ちた。
「このことは本国にも伝えました。一応緊急対策会議が開かれるようですが、今後どのようなことがあるかわかりません。何か情報が入り次第、話すつもりです」
「ええ、わかりました。……ところで、国際会議の場で宣戦布告をするとは一体何が目的なのでしょうかね?」
「かの国は帝国主義の国です。つまりは全世界の植民地化が目的でしょう」
淡々と話す。そして外務大臣はゆっくり息を吐くと、告げるように言った。
「私の予想では、何か実力を示す機会があると私は思っています」
沈黙が室内を支配する。つまり、軍事衝突が起きることが予想されることに巻き込まれる可能性があるのだ。
「つまりは、ここが襲撃される可能性があると?」
「それについては否定しません。今後の動向次第で変わることになるでしょう」
さすがの外務大臣もそれについては断言できなかった。だが、甘い言葉でごまかそうとは決してしなかった。
そろそろ頃合いと考えた外務大臣が席を立つ。
「忙しい中話を聞いてくださり、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそわざわざありがとうございます」
「では、失礼します」
瀬戸は扉を開けると見送りのために同行する。外務大臣が船から降りたのを見送った後、彼はフォーク海峡の方角を眺めていた。
「何も起きないでほしいが……」
願うようにつぶやく。まだ何も情報が来ていないが、それ故に不安の暗雲は晴れる事無くただただ空を覆っていた。
艦首にあるエリコン35mm機関砲を眺める。この武装だけでも異世界の軍鑑のほとんど倒せる。海賊の多くをこれで倒した事もある。もしグラ・バルカス帝国の船が戦列艦程度なら、これを見ただけで不安は解決しただろう。
しかし、敵が第二次世界大戦レベルの敵ではどうしようもない。余計に不安を助長させるだけであったため、瀬戸は見るのをやめた。
不安の雲に押しつぶされる前に、瀬戸は船内へと戻った。
それとは裏腹に、多くの他の国の軍艦では楽観ムードが漂っていた。正確に言えばここを襲撃されるとは思っていなかったし、例え戦う羽目になったとしても正確に判断できていなかった為、勝てると思っていた。それは文明圏外国だからと言うバイアスがあった。
一方、比較的まともに判断できた国も無い訳でははなかった。それはムーとミリシアルであったが、やはりどちらもかなり過小評価をしていた。
ミリシアルは現時点で何が起きるか分からないので警戒レベルの引き上げなどの措置はしていた。それでも襲撃までは想定していなかったのだが。
もし仮に襲撃してくるとしたら、数によっては地方隊では荷が重いと答えるぐらいの認識である。
ただ、軍事力の面ではミリシアル以外のほとんど国には、少なくともグラ・バルカス帝国とまともに戦うことはできないだろうと判断だけはできていた。
その一方でムーは、もしもの時の事を考えていたがあまり脅威ではないと考えていた。ミリシアルを含めた他の国と協力さえ在れば、打ち破ることができると考えていたからである。もっとも実際の強さの差は大人と子供ほどあるのだが、彼らは理解していなかった。
多くの国が油断しきっているカルトアルパスの港。そんな中、タイムリミットは着実に近づいていた。
・・・・・・・・・・
後日、ミリシアルに大きな衝撃を与える出来事が発生した。それは、マグドラ群島にて訓練を行っていた第零式魔導艦隊がグラ・バルカス帝国海軍と衝突し、全滅したと入ってきたのだ。
これだけでも一大事であるがさらに悪い報告が入ってきた。それは、その艦隊が首都のルーンポリスとカルトアルパスのある東の方角に進んだのだ。現時点ではどちらに来るのか判明していないが、特にカルトアルパスの防衛で頭を悩ますことになっていた。
なぜなら、ルーンポリスの方は防衛用の艦隊の到着が間に合うものの、カルトアルパスの方ならば間に合わない可能性が高いからだ。もし、戦うとなれば現地にいる地方隊の巡洋艦8隻と大臣護衛の為に派遣された各国の軍艦らを足した、計61隻の艦隊である。
流石のミリシアルですら勝てるとは思っていなかった。ミリシアルにおいて精鋭艦隊であった第零式魔導艦隊を全滅させたほどの敵がこちらに来るのだ。敵も損耗しているだろが、だからと言って地方隊の戦力で何とかなるような相手だとは決して思っていない。
国の
しかし、第零式魔導艦隊が全滅したという本当の情報を伏せたことが裏目に出てしまうという結果になってしまった。先進11ヵ国会議にでたほとんどの国がグラ・バルカス帝国を見くびっており、移動しなかったのだ。
さらに、自国の面子のために戦おうと呼びかける国が出た結果、余計に移動をしないという結果になった。特に国際的な協調を重視する日本にとっては余計に離脱しにくい状況を作りだしてしまった。
会場の移動に反対する意見が圧倒的に多い中、外務大臣と近藤は一刻も早く離脱できるように奔走していた。いくら軍事に疎い彼らでもこのままでは大惨事になるのは目に見えていた。
なぜ勝てないのが明らかなのに逃げたりしないことに理解できず、心の中であきれ果てているが同時に、巡視船で来たことに後悔した。最初、会議に軍艦を同行させる事が分かったため、護衛艦の同行を行ってもらうように防衛省と協議していた。
しかし、あくまでも会議に参加することが主目的で海上自衛隊の護衛艦の同伴は不要とする意見が多かった上に、他国を必要以上に刺激する可能性を挙げて来たため、いくら外務大臣でも大勢の意見を無視するわけにはいけなかった。
その結果がこの始末である。外務大臣は予想される最悪の事態を避ける為にも、本国にこのことを伝え、会場移動を早期に認めてもらおうとしていた。
外務大臣ら外交官の乗っていた飛鳥IIの一室で通信機をとっていた近藤は事情を話していた。
「現在、ミリシアルから会場移転の要請がありました。カルトアルパスからカン・ブラウンへと移転を求められているのですが、全ての国が反対しています。
また、こちらに接近している艦隊の戦力についても情報の分析と提供をお願いします」
短時間の沈黙ののちに、無線から返答が出る。
「分かりました。緊急会議を開きますので、それまでは待機してください。また、接近している艦隊についても情報が入り次第、報告します」
仏頂面の表情の近藤。本当は直ちに離脱せよとの命令が欲しかったために、どうしてもこんな顔になってしまう。
「ありがとうございます。できるだけ早期の決定をお願いします」
彼が言えるのはこれだけだった。
無線機の電源を切ると彼は大きなため息を吐く。予想をしていたとはいえ、これでは間に合わない可能性が高い。
「(どうすれば……。こちらがもたもたしている間にも相手は来ているんだぞ!)」
近藤は無線機から離れると、外務大臣の元に向かう。
「どうだった?」
緊張した顔をしている外務大臣。
「駄目でした。緊急会議を開き、そこで決定されるまで待機です」
いらいらを隠せない声色で話す近藤。隠そうとしても、やはり出てしまう。
「そうか……。……とりあえす、何か飲まないか?コーヒーでも飲んでリラックスしないか?ビールもあるぞ?」
焦りをどんどん募らせている近藤を見かねた外務大臣が気分転換を促す。
「分かりました。そうですね……。それでは私はアイスコーヒーでお願いします」
少し落ち着きを取り戻した近藤。一方、外務大臣は平常さを保っているように見えるが、実は内心はすごく焦っていた。
いかがでしたでしょうか?
今後の事に関してですが投稿時点でストックは2話(つまり次回)しか無いため、次回をいつ投稿するのかにもよりますが、更新速度はかなり落ちる可能性がありますのでご了承ください。
今後も頑張っていきますので、どうかよろしくお願い致します。
小説のサブタイトルを新しく付けるべきかそうでないか。
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付けるべき
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付けなくてもよい