日本国召喚 カルトアルパス改変   作:文月之筆

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読者の皆様、作者の文月之筆です。

投稿が遅れてしまいましたが、何とか決着を書くことができました。
今回は少し長いです。

次回で最終話になりますが、投稿は1週間ほど空けさせてもらいます。
どうかご了承ください。


第9話

海上保安庁 巡視船しきしま

 

「敵艦発砲!」

「面舵45度、回避せよ!」

船長の瀬戸は回避の指示を出す。放水銃の効果かは断言できないが、発射までの時間が少し長くなっていた。

船が右へと曲がり始める。舵が効くまでの時間が長く感じる。

少し経って、グレードアトラスターの砲弾が弾着する。着弾時に生じた大きな水柱によって、位置は少しだけ正確になっていたのが分かった。

「少しは効果はあるようだが……」

何もしないよりかはマシな為、放水銃による水の煙幕は続けることにする。

だが、このままでは長くは持たないだろう。何か手段は無いか頭の中で考える。

「次の回避時には大きな減速をいれるとして……。機関砲で測距儀などを攻撃するには最低でも5kmほど近づかなければならないから、現実的ではないな」

普通に考えれば、それまでに敵に撃沈されるのは容易に考えられる。だが測距儀でも破壊しなければ、いずれ砲撃が命中するだろう。

瀬戸は考える。敵の戦闘能力を奪う事は難しい事から、敵の攻撃を妨害したり、混乱させることを第一に考える。

「船長、被弾して使い物にならない右舷のボートを降ろしましょう。ひょっとしたら気を引けるかもしれません」

シリウスの機銃掃射で破壊されたボートを下すことにより気を引こうと副長は考えた。被弾しているため最終的には勝手に沈むだろうが、多少は時間は稼げるだろう。

一方の瀬戸は懐疑的だった。

「効果は無いと思うが……。だが、やってみるだけはやってみよう」

多分効果は無いだろうが、放棄しても良いと判断した為に実行することにした。

「右舷のボートを切り離せ!」

瀬戸の命令により、しきしまの乗組員たちは右舷の煙突の真横にあるボートへと向かう。煙突の周囲には多数の弾痕があり、ボートにも多数の穴が開いていた。

「切り離すぞ。お前たちは奥の方をやってくれ」

ボートを固定しているクレーンから手際よく外していく。左右2ヵ所を外し終えた時、ボートは勢いよく海へと滑り落ちていった。

「船長!ボートを切り離しました!」

「分かった。すぐに船内に戻れ!」

安全の為に急いで船内へと戻るように指示を出す。その指示に従うように全員急いで船内へと戻っていった。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス海軍 戦艦グレードアトラスター

 

しきしまの投下したボートは海上でゆらゆらと揺れている。複数の穴によって少しずつ浸水をしていた。その光景を見た見張り員はすかさず報告する。

「艦長、小型のボートが出現しました」

「なんだそれは?」

艦橋から入ってきた情報にラクスタルは困惑する。「敵がボートを降ろしたようです。おそらく内火艇だと思われます」

「なんだと?」

意味が分からない行動にラクスタル以外も困惑する。

「そのボートには誰か乗っているのか?」

「いいえ、見た感じでは誰も乗っていませんし、動いてもいません」

「はあ……」

ますます意味が分からなくなる。誰か重要な人物が脱出を図った訳でも、囮として出てきた訳でも無いならば、何故ボートを降ろしたのだろうか?

司令塔内でも、その目的について様々な憶測が飛び交っていた。ボート自体に何かが仕組まれているとか、ボートを捨てる事で少しでも船の足を早くしようとしているのでは等の考えにくい推測すら出ていた。

謎のボートが様々な憶測を呼ぶ中でラクスタルは決断をする。

「ボートには誰も乗っていないのだな?」

「はい、誰も乗っていないようです」

「ボートは動いていないのだな?」

「はい、ただ海に浮いているようです」

「ならば、ボートは無視しろ。ひょっとしたら勝手に外れて海に落ちただけだろう」

何の脅威にもならないのならば無視をするのが良いだろう。そう考えたラクスタルはボートを無視する事にした。

遅れて射撃指揮所から報告が入る。

「主砲、発射準備完了しました」

「撃て!」

巨大な主砲が火を吹く。グレードアトラスターは7回目の主砲斉射を行った。

 

・・・・・・・・・・

 

海上保安庁 巡視船しきしま

 

海峡内で大きな轟音が轟く。それは船橋内からも聞こえた。

「敵艦発砲!」

「取舵一杯!速度を16ノットへ減速せよ!」

瀬戸は苦虫を噛み潰したような顔をする。発射までにかかった時間が長くない事から、例のボートを囮にする作戦は失敗したようだ。

砲弾が巡視船から2kmほど手前に着弾する。船橋からも大きな水柱が上がるのが見えた。

全員が焦りを持つ。ここに来て瀬戸はある決断をする。

「35mm機関砲で威嚇射撃をするぞ!」

突然の発言で周りは驚いた顔をする。威嚇射撃とは言えども敵は最大射程の3倍以上も離れている。

「本当に良いのですか?敵に我々の方の火力の弱さを気づかれるかもしれません」

「構わん。ただし、方向だけはしっかりと合わせておくんだ」

下手に撃たれ続けるよりも、威嚇射撃を行う事で相手を牽制できる可能性を狙う。その命令は速やかに実行された。

しきしまの甲板上にある白く塗装された35mm機関砲がグレードアトラスターへと向く。前後の計4門がグレードアトラスターへと向けられた。

「発射準備完了しました!」

「良し、撃ち方はじめ!」

2基の砲塔が発砲を始める。短いバースト射撃を行う2基の砲塔から、数発の曳光弾が飛んでいくのが見えた。

3回のバースト射撃が終わると、一旦発砲を中止する。

「全弾、5km先の目標地点に着弾!」

海面に着弾した曳光弾があちこちに跳ね返る。ただし、いずれもグレードアトラスターには届いていなかった。

「面舵一杯!回頭が終わり次第、もう一度威嚇射撃をするぞ!」

「了解」

白い船体が右へと曲がり始める。回頭が終わる前に敵が発砲した。

「(当たらないでくれよ……)」

瀬戸は祈る。その願いは全員一緒だった。

大きな水柱が離れたところに多数あがる。その内1発が投下した後、漂流していたボートの近くに着弾した。その時に発生した衝撃と水柱がボートを飲み込み破壊する。

「すさまじいな……」

1.5t近くの物体が音速で近くに落ちた結果としては当たり前だろうが、思わず言ってしまう。瀬戸らは気を取られていたがすぐに気を取り戻す。

「威嚇射撃用意!先ほどと同じように狙え!」

再び35mm機関砲が発砲する。3回のバースト射撃が終わると射撃を中止して狙い通り命中した事を確認する。

「取舵30度、速力22ノットに増速!」

しきしまは舵を切りながら船速を上げる。グレードアトラスターの照準から逃れようと頑張っていた。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス海軍 戦艦グレードアトラスター

 

「敵艦発砲!」

水の煙幕から曳光弾が多数飛んでくる光景を見た見張り員は驚きながらも報告を入れる。艦橋内に緊張が走る。

放たれた曳光弾は前回の射撃時と同じように5km程の距離で海面に落ちていく。その光景を見た全員は安堵した。

「こちらには命中せず、前回と同じように5kmの地点で落ちました!」

続いて見張り員からも報告が入る。おそらく敵の攻撃はこちらには届かないようだ。

その事を司令塔に居るラクスタルらに連絡した。

 

「なるほど。敵の攻撃は届かないか」

報告を聞いたラクスタルは考える。口径から射程は最大でも10km以下と判断しており、この事から相手の砲の射程は5kmほどだろう。

そしてラクスタルは考える。敵の距離は15kmを切ったが命中させられない事に焦りを持つ。相手の回避機動が優秀などの理由はあれども、レーダー射撃ができないだけでもこれ程命中精度が下がるとは思わなかった。

司令塔内の周りを見渡す。ラクスタルを含めた全員は焦りを隠せていなかった。

「ラクスタル艦長、敵をまだ撃沈できないのでしょうか?」

外交官のシエリアが話す。予想以上に手ごまいている状態に不安を感じていたのだ。

「大丈夫です。例え敵の攻撃が命中しても、装甲がある為に被害は微々たるものでしょう」

ラクスタルは落ち着きを持った声で話す。相手の機関砲では最悪命中しても受ける損害は少ない。非装甲区画にある高角砲や対空砲は破壊されるだろうが、その程度ならば許容できる。

他の乗組員も同じように考えていた。ただし装甲はあれども、撃たれたくはないと内心では思っていた。

「発射準備完了。今度こそ夾叉できます!」

射撃指揮所が報告を入れる。とても自信のある声で報告を入れる。

「撃て!」

グレードアトラスターは9回目の主砲斉射を行った。

 

・・・・・・・・・・

 

海上保安庁 巡視船しきしま

 

「敵艦発砲!」

「まずい。取舵一杯、急げ!」

旋回を終わったばかりな為に、再び舵が効くよりも砲弾が先に着弾する。

しきしまの右舷と左舷に巨大な水柱があがる。両方とも1kmほど距離が離れていたが、夾叉された事には変わりがなかった。

「敵の砲撃、本艦を夾叉しました!」

部下の一人が叫ぶ。夾叉されたという事は次からは命中する可能性が高くなることだ。

冷汗が滝のように噴出する。今までと違い命中する可能性がぐっと上がったのだ。

「25ノットに増速せよ!急げ!」

艦のディーゼルエンジンが大きく唸り、しきしまは25ノットへ加速する。艦首は海水を大きく撒き上げて波を切り裂きながら進んでいく。

 

青い海の上を25ノットで航行する白い船。そしてそれを狙う2倍程の大きさの灰色の船。2隻の間でには一触即発の空気が流れていた。

「3、2、1、今だ!」

白い船の方である巡視船しきしまの船長である瀬戸は叫ぶ。それに合わせて航海士は左に舵を切る。

遅れて灰色の船の方のグレードアトラスターの主砲が火を吹く。2基の46cm主砲塔から6発の砲弾が放たれた。

6発の46cm砲弾が目標へと飛翔する。その内の3発がしきしまの300mほど手前に着弾する。更に3発がしきしまの上空を過ぎて100から200mほどの位置に弾着する。

「全弾外れました!」

見張り員が叫ぶ。幸いにも命中しなかった。だがしかし、喜んではいられない。

「気を抜くな次が来るぞ!」

2回目の効力射が来ることは容易に想像できた。1回目の効力射がこれほど近いならば2回目は命中する可能性が大きい。

そんな中で、敵に異変が起きる。

「敵艦、針路を変更しました!こちらに横腹を向けようとしています!」

全部の主砲で狙おうとしているのが分かった。恐らく確実に止めを刺すためにだろう。9門もの主砲をこちらへと向けようとしている。

大きな船体はゆっくりと右へと向く。その姿に大きく恐怖を掻き立てる。

「取舵一杯、速力そのまま!」

完全に右へ向き9門の主砲がこちらに向く。

「(もはやこれまでか……)」

そうあきらめかけていた時、それは起きた。

 

・・・・・・・・・・

 

グラ・バルカス海軍 戦艦グレードアトラスター

 

「全砲門、敵に向きました!」

ラクスタルへ報告が入る。ようやく船体が左へと向き終わった。

「射撃指揮所、あとどれくらいで準備は終わる?」

「あと15秒ほどです」

主砲の微調整に時間が掛かる。しかし、ようやく止めが刺せそうなことにラクスタルらは安堵した。

「あと10秒」

報告が入ったその時、艦内が大きく揺れる。

 

こくりゅうの放った3発の89式魚雷がグレードアトラスターに命中した。3発はそれぞれ、副砲直下、煙突直下、艦尾の辺りに命中したのだ。

爆発の衝撃波は海底から反射し本来の2倍近くの威力を発揮する。爆発によってスクリューと舵は完全に破壊され、船底に開いた破孔から海水が機関室などに流れ込む。

「損害を報告せよ!」

いきなりの出来事に全員が驚く中、ラクスタルは真っ先に艦の状態の把握に努める。

「機関室が浸水していますので緊急停止をしています!また操舵装置とスクリューが破壊され航行不能になりました!」

全員が予想以上の損害の酷さに驚愕する。

「その他には損害はないのか?」

「副砲弾薬庫でも浸水が発生しています!幸いにも事前に注水した為、火災などは起きていません!」

火災が起きていない事は良かったものの、依然として悪い事には変わりはない。

「主砲弾薬庫には火災は発生しているのか?」

一番最悪な状況が頭によぎる。主砲の弾薬庫で火災が発生していれば最悪の場合、大爆発を引き起こし轟沈するだろう。

「待ってください……。現在、火災や浸水は発生していません!」

一番最悪な状況でない事に安心したものの、最悪な状態である事には変わりがない。直ちに対処する必要がある。

「手が空いている者は、被害が発生している区画に向かって被害の収拾に努めろ!また随時、損害に関しての報告も怠るな!」

手の空いていた人員たちは急いで被害の発生している区画へと向かう。いきなりの事ではあったが、迅速に対応は行われた。

 

「浸水止まりません!全機関室の隔壁を閉鎖します!」

「副砲弾薬庫、完全に浸水しました!引き続き周囲で発生している火災と浸水の対応を行います!」

絶望的な報告が多数入ってくる。グラ・バルカス海軍でも魚雷の被雷時の訓練と艦自体の対策を行っていたが、いずれにおいても予想を遥かに超えていた。

ラクスタルは考える。これ程ひどい損害が発生したからには総員退艦命令を出すかどうか悩んでいた。

「(総員退艦命令を出すには早いかもしれないが……。戦闘になってからでは脱出できなくなって多くの味方が死んでしまうかもしれないな……)」

船は左に傾いており主砲は発砲不能になっていた為に、戦う事は出来ない状態になっている。さらにスクリューと舵も破壊されており逃げることもできない。そんな状態で戦闘になれば脱出できない状態になって多くの乗組員が犠牲になる可能性が高い。

ラクスタルは決断する。

「シエリア殿、脱出の準備をしてください。これから総員退艦命令を出します」

全員が驚いた顔をしている。しかし誰も反対はしなかった。

「乗組員の諸君、総員退艦命令を出す。急いでグレードアトラスターから脱出せよ!」

聞き逃す者を出さない為に、ありったけの声で伝声管に叫ぶ。それを聞いた乗組員たちは作業を中止し脱出を始める。

「君、シエリア殿を頼む。私は船に残る必要があるから、代わりに脱出の案内してくれ」

近くに居た若手の士官に外交官であるシエリアの避難の案内を任せる事にした。艦長である自分は全員が避難を終えるまでは艦から避難できない事から、代わりに案内役を任せる事にした。

若手の士官は返事をした後、シエリアを連れて司令塔内から出ていく。二人が出ていったのを見送ったラクスタルは全員の脱出までグレードアトラスターに残るつもりだ。

総員退艦命令が出てから少し経ち、甲板上に人々が集まった時にそれは起きた。

遅れて発射された89式魚雷3本が命中したのだ。今度も海底に衝撃波が反射して大きな威力を発揮するが、今度は致命的な一撃になった。

魚雷3本が第1、第2主砲塔の周囲に命中し、弾薬庫に誘爆したのだ。2000t以上もある巨大な主砲塔が吹き飛び、火山の様にバーベットから炎が吹きあげる。

遅れて巨大な爆発が起きた。その爆発によりグレードアトラスターは真っ二つに折れる。2回目の爆発によって生じたキノコ雲はカルトアルパスからも見る事ができた。

 

グラ・バルカスの誇る戦艦、グレードアトラスターは多数の乗組員を巻き込みながらカルトアルパスの海へと沈んでいった。

 




いかがでしたでしょうか?

普段よりも少し長くなったので執筆するのが遅れました。
(普段5000文字を目安としている中で、話を収める為に9話は6000文字ほどになってしまいました)

次回の投稿に関してですが
執筆にかなりの時間が掛かる事が予想されるので、1週間ほど時間を頂きます。
(終わらせ方がなかなか難しいです)

誤字報告を行ってくださりました
さとりの怪 様
誤字報告ありがとうございました。

小説のサブタイトルを新しく付けるべきかそうでないか。

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