戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第八話・後編

―響が襲われる一時間前のこと―

 

     *****

 

 響が走って出て行くのが見えた。

 そういえば今日があの日だったな。

 

「小日向、進んでるか?」

 

「よ……聖先生。はい! もうすぐ終わります」

 

「それは良かった。あと一時間もしたら先生たちは忙しくなるだろうからな。早めに終わらせられるなら大丈夫だろ」

 

 転生者とはえ何処で起きるかまではわからなかったけど、工場近くでCDを売ってそうな場所はここから一時間だった。

 でも、走って行ったみたいだからもっと短くなるかもしれないな。

 

「何かあるんですか?」

 

「ちょっとな。俺も行かなきゃならんだろうし、メンドいよなー」

 

「き、教師がそんなこと言って良いんですか?」

 

 聞かれなければ問題ない。それに例え聞かれたとしても……ネ。

 

「聖先生、黒いのが漏れてます」

 

 おっと、しまった。抑えて、抑えて。

 

「それじゃ、そろそろ行くよ。課題、頑張れよ」

 

「あ、待ってください。もう、終わりましたよ?」

 

「何?」

 

 確認すると本当に終わっていた。

 もう少し掛かると思ってたんだがもう出来たのか、……まさかあそこの大人たちよりも有能だなんてことないよな……。教師の想定していたよりも、正確かつ濃密に書かれているレポートを見て思ってしまう。

 これも俺の介入のせいか? 困りはしないが、小日向の処理能力が格段に上がってしまったようだ。

 

「な、何か間違ってました?」

 

「いや、何処も問題ないぞ。ただ、ここまで正確だと思ってなかっただけだ。これは俺が提出しておくよ。響が返ってきたらぶっ倒れるだろうから迎えてやってくれ」

 

「わかりました。ありがとうございます。そうしますね」

 

 未来が帰るのを見送って、校舎のとある場所に行く。

 

     *****

 

 そこには既に沢山の人がいて勿論目的の人もそこにいた。

 

「ちぃ~~っす」

 

 何時もの挨拶をすれば「ちっす」「ヤッホー!」「オツカレー」と様々な反応が返ってくる。

 

「遅かったな」

 

「すみません。担当の生徒から課題を受け取っていたので」

 

「うむ、そうか。すっかり馴染んだみたいだな」

 

「はい。皆、優しい子ばかりで、頭も良いですからね。年齢的に大丈夫か心配だったんですけど、何とかなってます」

 

 基本はクラス担任がやっているから、補佐に大した仕事が回ってこないからなんだろうけど。

 

「風鳴のダンナのほうはどうですか?」

 

「今の所、ノイズも出てない。平和だ。これがずっと続いてくれれば良いんだがな」

 

「ま、無理でしょうね。ノイズの生態が何一つわからない現状じゃ終わるなんて、期待できないです」

 

「嵐の前の静けさとでも?」

 

「わかりません。ですがそろそろ何かが起きても可笑しくないでしょう」

 

 俺が会いに来たのはこの人、3年前に俺を響の家の養子になるため協力してくれた風鳴弦十郎氏だ。響たちはこの人を政府家あたりだと思っているみたいだが、実際はちょっとだけ間違っている。政府関係ではあるが政治家ではない。

 

 ダンナは警察寄りであり、ここ『特異災害対策機動部二課』‐通称ノイズ対策本部‐の局長であり、ノイズ事件の責任者である。

 

「確かにそうなのよね~。最近平和すぎるのよね」

 

「ム、了子君か」

 

「ちぃ~っす」

 

 研究所にでもいたのだろう櫻井さんが入ってきた。

 あとどれくらいか確認するため携帯を見る。携帯のGPS機能と言うのは便利だ。響の居場所が簡単にわかってしまう。

 

 お、そろそろコンビニに着きそうだな。

 

「ダンナ、翼嬢は今何処に?」

 

「まだ学園にいてるがどうした?」

 

「ちょっと用事が出来たので確認したかっただけです」

 

「何?」

 

 弦十郎さんは不思議そうに見てくるがそれを無視して部屋から出る。向かった場所は本部内の車庫のようなところで、二課用の大型車や黒の普通車がある。そして一つだけ目立つようにバイクが置かれていた。

 

 これは風鳴翼専用のバイクだ。整備はしっかりされているが、もうすぐ必要になるのだし最終点検といこうかな。

 この時、こっそり通信を指令室に繋げておくのも忘れない。

 

 全ての車両の点検が終わったちょうどその時、警報が鳴った。

 

『どうした!』

 

『ノイズ出現! 工場の方角です!』

 

『ちぃいいっ。本当に嵐の前の静けさだったとでもいうのか!』

 

『……ノイズですか?!』

 

 翼が来たようだ。携帯を見れば響が工場に向かっているのがわかった。もうちょっとかな。

 

『親玉の居場所の特定まだか!』

 

『範囲が広過ぎます! 見つけられません!』

 

 そろそろ潮時かな。

 

「ああ~、ダンナ聞こえる?」

 

『踊か? どうした?』

 

「親玉なら工場に行く(・・)と思いますよ」

 

『何故そう言い切れる? それに行くとはどういう事だ?』

 

 呵々、その疑問も仕方ないことか。

 

「ノイズは聖遺物がある場所に向かう習性があるからね」

 

『そんな話聞いたことがないぞ。それにそれが正しいとしても、あの場所に聖遺物はないはずだ』

 

 そう言えば、まだ言ってなかったから仕方がないか。

 

「それはそうなんですが、響が工場向かって一直線なんですよねー」

 

 あ、そろそろタンクを登りきりそうだ。

 

『何!? どうしてそれを早く言わない!! 何故そんなに落ち着いているんだ!』

 

「え? だって響も聖遺物持ってますし、奏者ですし」

 

『どういう!?』

 

 新たな警報が鳴り響く。ごめんね、響。痛いだろうけど我慢してくれよ。

 

『そんな!?』

 

『いったい今度は何だ?!』

 

『この反応は! ……だ、第3号聖遺物、ガングニールです!?』

 

『ガングニールだと!?』

 

『それは!』

 

 ま、驚きますよね。こうなることを知ってたのは、俺だけだし。っと、そろそろ動かないと響が、というより響が連れているだろう子供が危険だ。

 

『急いで車両の用意を!』

 

「ダンナ~、もうやっときましたよ。翼も何時でも出れるように準備も終わってるぞ」

 

『まさかとは思うが、気付いていたのか?』

 

「そんな訳ないですよ。ただ響の不幸っぷりを知ってただけです。響って予定が大切であればあるほど事件に出会っちゃうんですよね。例えばダンナも知ってる3年前の時とか」

 

『そ、そうか……不憫な子なんだな』

 

 それが響なんです。今日の翼嬢のCD発売を本当に楽しみにしてたから、事件に巻き込まれちゃうのも仕方がないことなんですよ。

 

「あ、そうだ。ダンナ、今日発売の翼嬢の限定盤CD用意できませんか? たぶん響のことですから買い損ねると思うんで買っておいてやりたいんですけど?」

 

「わかった。用意しておこう。ただしお前の給料から差し引いておくぞ」

 

「構わないですよ。お金があっても使い道ないんで」

 

 何百年も前から世界中の銀行に預けているせいで……現在なら小国の二つ三つを支配できるくらいの額はあると思うし。……そういえば、ここ百年で使ったのはほぼ三年前のあの時一回だけだな。久しぶりに銀行に……。

 

 む、翼嬢が来たようだ。

 

「聖さん!」

 

「よう。響のこと頼んだぜ」

 

「はい!」

 

「あぁ、そうだ。もうすぐ奏は目を覚ませるはずだ。奏のことは俺に任せな」

 

「!!……お願いします!」

 

 響が目覚めてくれたならもうほんの僅かな時間で終わらせられる。

 エンジンは既に温めていて、何時でも出れる状態にしてある。翼はそれを確認するとヘルメットを被る。

 

「新しい後輩になるんだ。響<バカ>を導いてやってくれ」

 

「…………?」

 

 翼は何も返答せずにバイクを吹かせ走っていってしまった。

 

 頑張れ若者!

 

『貴方も頑張りなよ~』

 

 ん? AIか、久しぶりに話したな。

 

『誰のせいだと思ってるの!? 貴方の頼みを聞いてやってるんでしょ! はぁー……こっちの準備は終わったわ。後は向こうが準備できるのを待つだけよ』

 

 ふむ……後は時間だけが問題か。

 ま、取り敢えず今は響の回収に行きますか。




ね? 伸ばす必要のない場面でした~。

来週は漸くノイズ戦、第二号。上手くかけるか心配だ~。
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