戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
ズーンと沈んでる間にお天道様はお休みになられたみたいです。お空は真っ暗――でもないや。空気が綺麗だからかお星様で深く静かな蒼空だ。
「よし、行こう!」
パンッと両頬に一発咬ます。
くよくよしたって何も始まらない。どうせ踊君のことだから、散ったところで放っておいてもひょっこり顔を出すでしょ。死にかけるのは毎度のことだし、心配させられた分はそん時にぶん殴ってお返し願う。
だから今は踊君の頼みを聞くとしますか。
「と思ったけど、何したら良いんだろう?」
たしか……最後の願いを叶えてくれ、だったかな。はてさて何のことなのやらわかってないから、勘を頼りに相談タイム。
「ねぇ、イアちゃん。ずっと気になってたんだけど福音ってホントに無人機なのかな……?」
『提出された資料を見るに無人機だとのことですが……。現実とのスペック差を考えると正直なところ虚偽である可能性も十分考えられますね』
イアちゃんも同意見なんだ。着眼点違ったけど。
「福音の動きが気になるんだよ。なんか妙に人間らしい、ていうからしすぎる? 挙動はメカメカしててちぐはぐなのに、曲がる時の背中の反り具合とか躱す時の腰の捻り具合とか不自然なくらい自然な量しか曲げてないんだよね。何でだろ……」
いや、無人機だから毎回限界まで曲げろなんて言わないよ。不要な時もあるだろうし。でも見てたらもやっとした。
「あ、もやっとで思い出した。あの時の踊君もらしくなかったんだ」
パンチも大振り、キックも大振り。ピョンピョンしなきゃいけないにしても信じられないくらい隙だらけだった。
「最後のお願いかー。踊君も縁起でもないんだか……ら…………?」
…………あれ? 最後の願いって……踊君のだっけ?
『どうかしましたか?』
「ちょっと聞きたいんだけど、踊君は誰の願いを叶えてくれって言ってたっけ?」
『福音の、とのことですが? それが何か?」
福音の……、福音ってISだよね。もしかしてISにも意志がある?
『それはそうでしょう。ISがコア・ネットワークなる電脳世界で繋がっていることはご存じですよね。個となる意思を持たなければ見境無く共有して、世界中で同一の物が構成されてしまうじゃないですか』
な……なんですと!?
『まぁ、ニールハートは機密だらけですので完全独立して一切のやり取りを行ってないのですがね』
「それって弄った踊君も当然『知ってます。良くお話ししてますよ』……」
福音にも意思があるなら……、それを踊君が理解出来るのなら……。
――高速の連打が交差する中、ノイズの力に圧し負け踊君が弾き飛ばされた。
違う。
――でもすぐに体勢を立て直し、今度は離れて危険物を巻き放題の福音との間を一息で詰め飛び蹴りを。
ここも違う。
――そして息継ぐ暇無く直後に現れたノイズの口撃に曝され皮膚を焦がしながら、その脳天を踵で打ち抜いた。
「あっ……!」
「もしかして……!」
1対2じゃなくて、1対1対1だったとしたら。ノイズが福音まで狙ってたとしたら。それを踊君が阻止するためにあんなに隙を曝してたのだとしたら……。
「イアちゃん! すぐに福音のこと調べて!」
『は、はぁ……』
「たぶん、人が乗ってる!」
それも福音にとって、最後……ううん、違う。命の全てを懸けた最期まで護りたい人が!
『っ! わっかりました! 5ZBのクラスタリングで進化した私の全力、見せてあげます!!』
え、イアちゃんがまだ進化してた……だと!?
5ZBがどれくらいかわかんないけど、取り敢えず米軍の皆さん、ご愁傷様です。
『――異常検出。テストパイロットデータ照合開始。100の運用試験日時との適合者、5を超える者なし。実行不能日67件あり。内パイロット必須事項55件――』
よくわかんないけどやっぱり裏があったみたい。
『……見つけた。故意に削除された米軍所属テストパイロットデータ一件あり』
「うわぁ……。惚ける気満々ってこと。イアちゃんよろしく」
『はいですよ。この私から隠し通そうなんてこと電脳世界においては不可能だと言うことを教えてあげます。復元開始――――クリア。はい、ロード成功です」
さっすが、イアちゃん。踊君すら呆れさせる自己進化をし続けてきただけのことはある~♪
『ナターシャ・ファイルス。件のISを専用機として持ち、米軍テストパイロットとして所属。ハワイ沖での試験以降の消息は不明。銀の福音の暴走後、軍にデータを削除されたようです』
「ってことは福音の願いは……」
『はい、間違いなく……』
「『ナターシャ・ファイルスの救出』」
米軍め……。もし成功してたら一兄たちが人殺しになるところだったじゃん。失敗したら地獄、成功しても地獄って……、後で一発ぶん殴ってやる。踊君が!
「そうとわかったら、急がなきゃ。福音が待ってる」
『ちゃんとニールハートで行って下さいよ? 長期飛行は向いてませんからね』
「うぐ、わかってるよ。……すぅっ! ――♪」
控えめな声で世界に私という音を響かせていく。
胸元から溢れ出す暖かな光が身体を包み込んだ。そして腕先を覆うように半円の柱を付加したガントレットが構成され、足には爪先を黒の鋼で強化させたブーツが現れる。
そして角のようなのが生えたヘッドギアが装着されると、最後に足下で擦れてしまいそうなほど長いマフラーが翼のように首元で左右に棚引いた
「行くよ――「ちょっと待ったぁああああ!!」――ふぇい!? うげしッ!」
は、鼻打った……。
「抜け駆けなんてさせないわよ。あたし達だってアイツをぶっ飛ばさなきゃ気が済まないのよ」
「そうですわ。一夏さんにあんな大怪我をさせた落とし前は、きっちり付けさせて頂きませんと」
「鈴ちゃん!? セシリアさん!? それに――」
「ふふふ、本当に二人の言う通りだったね。追い込んでるかと思ってたのに。ね、ラウラ」
「心配は無用だったというわけか。幼なじみとはすごいものだな」
シャルちゃんもラウラちゃんも……。
「あいつの妹なら私なんかよりもよっぽど早く立ち直れると思っただけだ」
箒ちゃんまで。
「大丈夫、なの?」
「問題ない……とは言わないが、響ほどじゃない。お前は2人の兄を――」
「あはは、それこそ大丈夫だよ。私の義兄ちゃんは皆、頑丈なんだから」
「ふっ、違いない」
既に5人ともISを身につけ準備万端なようだ。待機してた子達は勿論のこと、赤椿も改修済みで全快らしい。
これほど心強い味方はいない。けど今回に限ってはあんまり手放しで喜べないや。
「心配することなんてないわよ。アンタと……ええっと……イアだっけ? あんた達の話は大体聞かせてもらったから理解してるわ」
「あのISの中には人が乗ってるってことでしょう? でしたらなおのこと私達がいたほうがより確実に救うことが可能になると思いますわよ」
それはそうかも……。
『では問いますが、貴女たちは福音の動きに付いていくことが可能なのですか?』
「箒の赤椿以外では無理だな」
「けど、僕達は6人いるんだよ。そんなスペック差ぐらい作戦一つで簡単にひっくり返してみせる。1人で一世代差を覆すのに比べたらね」
シャルちゃんの言葉は妙に説得力があった。
……あ、わかった。
何の着なく闘ってたけど、よく考えたらシャルちゃんの専用機は
他の専用機と違って先代の機体なんだ。
凄く納得した。
『! ――わかりました。響さん』
「うん!」
イアちゃんもその答えに満足したみたい。同意の声が胸に伝わってきた。
「みんな、お願い。私と一緒に、踊君と一兄の仇を取るため、そして福音の最期の願いを叶えるために、力を貸して下さい」
「「「「「もちろんだ/よ/ですわ」」」」」
書けば書くほど長くなる~
第肆拾漆話から既に10話……orz