戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
申し訳ないです。
今回からしばらく空白期になりますです。
前回の時に書いておけば良かったです……。加筆しておきましたので気が向いたら見てあげてください。
第1話
やってきました夏休み!
面倒くさい事後処理や反省文、トレーニングに期末再テスト、皆みんな終わらせて無事夏休みに突入だぁあああ!
え? つい最近このやり取りを聞いたような気がする? あと無事じゃない?
気のせいです。
気のせいったら、気のせいです。
「さぁ、響。楽しい楽しいお勉強の時間だぞ」
「ちょーーっと、誰かが
「逃がさないぞ?」
「ですよね~」
よう君が鬼過ぎて泣きそうです。
どっさり山積みされた教材に私は囲まれていた。本来なら海に行ったり山に行ったりって楽しい行事が沢山のはずが、この仕打ちは酷いと思う。
「他の生徒達よりも随分と多くのアドバンテージがあるはずが当然の如く追試を受けてきた生徒のこの教師に対する仕打ちはどうなんだ?」
「……だってISの実技試験があったんだもん」
「元々文句なしの満点だと千冬殿に告げられていたはずだが? そして一般試験に力をいれるように言われていたはずだが?」
「うぅ……」
はい。自業自得です。
渋々渡された課題に手を付ける。
山積みと言っても大体が参考書なんかで解かなきゃいけないものじゃないのが数少ない救いなのかなぁー。
「そう自暴自棄になるな。今日中に全てのノルマが達成できたら明日は解放してやる。先日、ご老人の厚意でこんなものを頂いたのでな」
よう君の手に握られていたのは二組のチケット。這いつくばって確認したところ今月できたばっかのウォーターワールドの前売り券。聞いた話じゃ人気ありすぎて当日券を手に入れるだけでも何時間も並ぶとか何とか……。
「何でよう君がそんなものを……?」
海だって真面に泳がなかった……あ、私もだ……のにプールのチケットを持ってるなんて意外すぎ。
「この前助けたおばあさんにもらったんだ。くじで当たったんだがあたしゃつかわんからお嬢ちゃんもらってくれんかって」
……あ、お嬢ちゃんなのね。
「考えるのは勝手だが手は止めないことをお勧めしよう。早くしなければこの話はなくなるぞ?」
「頑張る!」
うおぉおおおおおお!
………………
…………
……
ネクストデイ!
無事、完遂。やったね、プール!
「といいたいところなんだけど……」
「ふぅ……」
「はぁ……」
「見事に空気が淀んでるの~」
笑い事じゃない。
いざ入場したら偶然にも鈴ちゃんとセシリアちゃんがいたのです。それだけなら良かったのに後ずさりするくらいご機嫌斜めなようで……。
何でー? 聞いてみたけど聞くだけ無駄だったよ。私たちの知人女性が怒る原因は大体一緒、案の定一兄でした。
ドタキャンかつ説明不足のダブルパンチを両名同時にやっちゃったらしい。
ホント一兄、近い将来女性に刺されるんじゃないかな……。
「恨み辛みはどっかその辺にポイして泳ご!」
「そんな気分じゃありませんわ……」
「折角来たんだから泳がなきゃ損だよ! それに体を動かせばちょっとは嫌なことも発散できるよ」
「アンタと一緒にすな」
うぇ!?
「でもそうね。このまま帰んのも癪に障るし。で、ようはどうしたの?」
「たぶん……。あ、あれだ」
ポニーテールの乗った浮き輪が流れるプールでゆらゆら流されていた。その上でフリルスカート付きの翡翠色したビキニを着たよう君がうっつらしてる。
「相変わらず女の子してるわね……」
「男の子用の水着を買いに行ったはずが気付いたら店員に買わされてたんだって」
「不憫ですわね」
格好を気にしないよう君だからってのもあるんだろうけどね~。
プールに飛び込んで回収しとく。変な目をした変態さんたちが手を出したら大変だ、主に変態さんたちが。
『では! 本日のメインイベント! 第一回水上ペア障害物レースが午後1時より開催します! 参加希望者の方は12時までにフロントで手続きをお願いいたします』
おお! なんだか面白そうな催しがあるみたいです。
これは是非参加しなければ!
『優勝賞品はなんと沖縄旅行5泊6日! 奮ってご参加下さい!』
「「……!!」」
ひぃっ!?
「これは……!」
「……参加しなければ!」
二人が憤怒の炎に燃えてる。
「変なことにならないことを祈るのみだな」
ふっふっふ、と恐ろしい笑顔を浮かべる二人をなんとかいなしてエントリーをすませた。
ペアはもちろんよう君です。
「本当に俺が出ても良かったのか? 見た感じ皆女性で統一されているようだが?」
「鏡を見てから言おっか」
「うむ……」
よう君は自分の格好を見て黙った。バレなきゃ男の娘は女になるのだ。
「それではルールの説明です。舞台はこの50×50メートルの巨大プール! その中央にある浮島に渡り最初にフラッグを取ったペアが優勝です。なお、コースはご覧の通り円を描くようにして中央の島へと続いており、その途中途中に仕掛けられた障害は基本的にペアでなければ突破できないようになっています。ペアの協力、ふたりの相性と友情に期待しております!」
広いステージを一望する。
うーん、泳いでいくのは無理なのか。ワイヤーでリアルに浮いちゃった島にはたどり着けそうにない。そもそも水中に落ちた時点で最初からやり直しなんだけど。
それにショートカットも………………。
「よう君、よう君」
「投げられてはやらんぞ」
「やっぱりできちゃうんだ?」
「余裕でな」
今のよう君は設定30キロくらいで軽いし、ちっちゃいから投げやすい。私の腕力なら届くんじゃと思ったところマジで投げれちゃうらしい。
私もやろうなんて思ってないけどね? 楽しみたいもん。
「それではいよいよレース開始の時間です。皆さん、用意は良いですか? 位置について! よーーい……」
本気は厳禁。コースが沈んじゃう。ある程度加減してぎゅっと足場を踏む。よう君は突っ立ったまま時を待つ。
――パァンッ!!
空砲が室内に木霊する。
「行くよ、よう君!」
選手同士の妨害ありありのレースだそうだから注意しながら行かないとね。
「まぁ、待て」
「うぴゅ!?」
いきなり足を掴まれた。
ちゃんと注意を払っていたのに、思わぬ強敵がいたようです。真の敵は私のすぐ側に居る!?
なんてバカなことやってる場合じゃなくて、私の足を掴んだ人……よう君を睨む。
「何するのー」
『なんだ、なんだぁー! いきなりペア間でケンカか!? て言うかあの子供凄い!? どう見ても身長差は50センチくらいあるのに片手で止めているー!?』
「目的は景品ではなく楽しむことだろう。真っ先に飛び出てしまったら妨害もなにもあったものじゃない。場が展開されるまでここは我慢だ」
「なーるー」
一旦勢いを抑えてステージを見回す。始まってすぐだから先頭集団は先に言ってないけど意外なことが一個あった。
鈴セシペアがちょっと遅れてる。
「あの二人は年代的に運動能力が高いからな。初期妨害対象として多くのものから狙われていた。そんじょそこらの妨害で邪魔できるような甘い二人でないから突破はできるが、それでも遅れが生じる」
「でも私たちはなかったよね?」
「片方が
「ふむふむ。なるほど」
「それに遅れていけばちらほらいる妨害組も俺たちを狙わざる終えなくなる。その時にまとめてやってしまえば残りも向かってきてくれるさ」
鈴ちゃん達が2つ目の島に到達して、勢いよく放水してる噴水もどきの中を一気に駆け抜けていく。
先頭の人は3つ目……折り返し地点にさしかかってる
「そろそろ行くか」
「やっと~。追い上げるよ!」
「うむ」
1つ目の島目掛けてダッシュ!
ぷかぷか浮いた小島を止めて渡れってことだけど、ちゃんと中央踏めば動かないし沈まない。
だ~から飛び越える~。
「よっと」
さらによう君が私の上を飛び越える~ぅぇっ!?
『あの二人、いったい何者だぁああ!? 先頭を追いかける高校生ペアも物凄いですが、こっちはそれ以上だ!!』
妨害さんたちがやってきた。
掴みかかろうとしてくる人は腕でそらして投げ捨てる。飛びかかってきた人は慌てず騒がずひらりと躱す。
よう君は取り敢えず掴んで投げる、掴んで投げるを繰り返す。大のおとなが宙を舞った。
先行していたよう君が浮き道の半ばで反転した。私は真後ろを走って突進する勢いで距離を縮める。
「響!」
「よう君!」
飛び込みダイブ!からのよう君の巴投げ。私は高く高く飛ばされた。
「ひゃっほうー!」
「ハッ!」
私が空で上下を修正する最中によう君が1人2つ目の障害……水鉄砲を発勁で放つ衝撃波でかっ消して進んでいく。
そしてそこでようやく私は浮き道の端に着地した。で、すぐに第二に渡って逃げる。
先に行ったよう君が水を粉砕してくれるから超安全な場所になってるからとっとと抜ける。
後ろでは浮き道が大きく波打ってひっくり返ってしまった。落ちてく参加者の悲鳴がわんさか聞こえてくる。
大変だねぇ~、やったの私だけど。
『止まらない!止まらない!怒涛の速さで先頭を追い上げる2人をさらに追い上げる2人!最初の遅れはハンデと言うのか!?』
普段やってる訓練と比べたら障害も妨害も軽いもの。ちょっと足場が悪いくらいでもたついてたら学生はつとまりません。
ぬるぬる床も段差も軽く流して最後の関門、浮島に渡れ。
「こんのぉー!」
「ウオォォォオオオオオ!」
「鬱陶しいですわ!」
「グレェェエエェエエエイ!」
「それなら私は! モォォオオオオオン!」
バトルを繰り広げてる二組に頭から飛び込んでみた。
「「グオォォオォオッ」」
「ありゃ?」
ただのヘッドスライディングだったつもりがムキムキペアがプールに落っこちてしまった。強そうなのは見てくれだけだった……。
「も、もう追い上げてきましたの?!」
「あとちょっとだっていうのに!」
何、その出口目前でドラゴンに通せんぼされたようなリアクションは?
「「その通りだからよ!?」」
解せぬ……。
「……無理ね」
「……しかありませんわ」
あ、この2人プライベートチャンネル使ってる。
作戦会議を終えた2人と向かい合う。
広がっていく剣呑とした空気が一瞬だけプールを黙らせた。
「いま!」
2人が踏み込んだ。
私も身構えて備えたんだけど……
「?」
逆方向に走っていってしまった。置いてけぼりにされることコンマ3秒、気付いた。
先にフラッグを取るつもりなのだと。
「待てーーー!」
浮いた島にはそう簡単に上れるもんじゃないんだけど、鈴ちゃん達ならなんとかしそう。だからちょっと急ぐ。
て、よう君はどこ行っちゃったの?
「頑張れ、3人とも~」
「頑張れじゃなくて手伝ってよ!」
「「「……………………」」」
……今、おかしなの見なかった?
もう一度見上げる。よう君がワイヤーにもたれかかってだらけていた。
そこはまだいい。よう君の反対側を見ると旗が刺さってはためいている。
なんかすでにいる!?
「俺は取らんぞ。優勝に興味は無いからな~」
それを聞いた途端、先頭がさらに早くなった。ちょっとセシリアちゃんが前に出てるかな? でも負けたくないので私もちょっと走りに力を入れる。
水面に振幅10センチくらいの波が出来るのはご愛敬ってことでよろしく。
「このままでは!?」
「セシリア! そこで反転!」
「ふぇ!?」
鈴ちゃん、それはないんじゃないかな!?
私の目の前で行われた行為、それは!
セシリアちゃんの顔面を踏む。
私を振り切るには確かにそれが手っ取り早いかもだけど、あれはどう考えても鈴ちゃんの独断だ。
今は落ちてくセシリアちゃんを捕まえて一緒に水中に飛び込んでおこう。
「取ったぁアアアア!!」
「やれやれ……、仲間内で何をやっとるか」
よう君の手が鈴ちゃんの足首を掴み軽く引っ張った。フラッグを手にした鈴ちゃんは喜びで隙だらけだ。前に大きく倒れた体は修正なんかする暇もなく頭からプールに落っこちた。
「ふふっ……ふふふっ……フフフフフッ! 今日という今日は許せませんワ! あろうことか、私の……ワタクシの! 顔を踏み台にするなんて!!」
きゃーー。
突如荒ぶった波に流される。そして強い光が放たれるとセシリアちゃんの周りに何かが浮いていた。
どう見てもBTです。本当にありがとうございました。
て、言ってる場合じゃない!?
「はっ、やろうっての! ――甲龍!!」
「ちょっ!? やめ、もち付いて!?」
仲間割れで両者がISを展開してしまった。しかもどっちも撃つのに躊躇いがないから手に負えない。一般客がとっても危険だ。
『な、な、なんとぉ!? ふたりはまさかIS学園の生徒なのでしょうか! この大会でISを、それも2機見られるとは思いませんでした! ……え、でも、あれ? ルール的にどうなんでしょうか……?』
こうなったら仕方ない! 私もやるしかない!
「ニールハート!」
唄歌う、身を滾らす彼の唄を。
『まさかもう一方の女子高生まで!? これはいったいどうなってしまうんだ!?」
空気砲にビット兵器に徒手空拳。三者三様の技がプールを揺らす。
「動きが止まればこちらのものですわ!」
「この距離なら衝撃砲の方が早いのよ!」
「どっちも撃たせないから!」
2人が武器を発射しようとするど真ん中に割り込んで、全力のラリアットを狙う。
「「「おぉぉおおお!!」」」
そして接触……
「そろそろ止まれバカ共が」
しなかった。
「「「ぼあgじゃgskdj」」」
い、息できない……。
「ひどいよ。よう君……」
「暴れるのが悪い」
何をどうやったのか、鈴ちゃんとセシリアちゃんの意識は一撃の下に刈り取られていて引き摺られて陸に投げ捨てられた。
あ、起きた。
「貴様ら、白昼堂々良い度胸をしてるじゃないか? 緊急でもないのにISを展開するどころか一般の前でとは恐れ入る。IS学園の生徒としての自覚がないのか? それ以前に国家代表候補生としての誇りもないのか? なんとかいったらどうだ?」
よう君がマジギレしてる……。
「響も逃げられるとは思うなよ? 今だからこそまだいいが、本来ならそれを白昼に曝すということがどういう意味を持っているのか理解しているよな? だというのに使うとはどういう了見だ?」
3人仲良く正座させられて叱られる。
――――ガミガミガミガミ
「申し訳ない。司会のお人。この賞品は返上させて頂きます」
「えっと、よろしいのですか?」
「建物に影響がなかったとはいえ、あのバカ3人が騒ぎを起こしてしまったのは事実です。あの2人には手にする資格がありませんし、私たちペアは参加したかっただけですので
必要ありませんから」
「そうでしたか。わかりました」
場所を事務所に移してよう君が迷惑行為の代償として賞品を返す。
隣にいる誰かが物欲しげな目で見ていたけれど、優しさの欠片もない笑顔で黙殺されていた。
「迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。学園から迎えも来たようですのでここで失礼させて頂きます」
「困ったお姉さんをもって君も大変ね」
「もう慣れました」
それはどういう意味かな?!
「失礼します。IS学園から来ました織斑です」
「一夏!?」
「一夏さん!?」
問いただす前に邪魔が……じゃなくて迎えが来た。驚いたことに一兄だったよ。来れなかったんじゃなかったの?
「待たせたか?」
「ちょうど説教も終えたところだ」
「そっか、そりゃ良かった。じゃあ帰るか」
帰り際に一兄と鈴セシちゃんの間に一波乱あったことは言うまでもないことだよね。
ち・な・み・に
後にも開かれることになるこの水上ペア障害物レースには一つの伝説が生まれたらしい。
3機のISをひねり潰す幼女とかいう末恐ろしい伝説が……。