戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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気付いたら二部構成になっていた。
だが後悔はしていない。
――後書きに続く――


第2話

「…………む?」

 

 学園に出された山ほどの課題の大半を終わらせた8月も始まったばかりの今日この頃。

 暑さにだらけていたら、隣でよう君がなんか唸った。

 

「よう君?」

 

 呼んでみたけど返事がない。

 天上の隅っこのあたりに顔は向いてるけど、特に何かを見てるわけではないようで虚ろになってる。

 案の定、目の前で手を振っても反応はないすぺっ!?

 

「何をやっとる」

 

「あう……、意識あったんだ」

 

「並列思考だ」

 

 く、油断した。機械なんだからそれくらいできても当然だった。何故気付かなかった、私。

 

「いたた……。それで突然どしたの?」

 

「なにやら妙な気配を感じた。懐かしいようで初めてのような、そして体内で起こったような体外で起きたような酷く曖昧なものだ」

 

「全然わかりません」

 

「俺にもさっぱりわからん。だから少し調べてくる。課題は溜めるなよ」

 

 はーい、と元気に返事するとよう君はさっさと部屋を後にした。

 

「ふっふっふ…………遊ぶぞー!」

 

 まずは一兄に突撃を仕掛けようかな~。

 

『勉強は……』

 

「あーとーでー」

 

 いざ行かん!

 

 

 

 いなかった……。

 

「しょぼーん」

 

 一兄の部屋は空っぽだった。まだ朝早いっていうのにどこに行っちゃったんだか……。つまりません。

 仕方ないので街をぶらり徘徊しよっかな。

 あ、そうだ。

 

「困ってる人を探しに行こう!」

 

 入学してからほとんど学園敷地内で一日を過ごさなきゃいけなかったから趣味の時間が全くなかったんだ。

 思い立ったが吉日ってことで、行って――

 

「――の前に私服に着替えなきゃね」

 

 さすらいのお助けマンが特定できちゃう格好だったら夢がないもんね。

 動きやすい服装ってことでタンクトップに短パンでお着替え完了。ボディバックにサイフは入れたしハンカチ、ティッシュも忘れてない。

 手早く確認を済ませて今度こそ行ってきます。

 

 

 

「あ、響も出掛けるんだ?」

 

「そだよ~。シャルちゃん達もどっか行くの?」

 

 駅でばったりシャルラウちゃんと出会った。

 ほぅほぅ、シャルちゃんは白のワンピースですか。夏にぴったりなとっても涼しい格好です。でもやっぱりふりふりしてて動きにくそうだ。

 それに比べてラウラちゃんはとっても動きやすそう。ちょっと袖が長くてズボンもふっくらしていて見た目は暑そうだけど通気性は抜群なのでとっても着心地が良い生地を使ってる。

 え? 何でそんなに詳しいのかって? それはね……

 

「なんで制服なの!?」

 

 私もよく着る学園の制服だからです。

 

「なんでと言われても、私は私服を持っていないからだ」

 

 いや、ババンと胸を張って言われても……。

 

「あはは、そんなわけで今からラウラの私服を買いに行くんだ。響は?」

 

「ちょっと街を散策に」

 

 困っている人が勿論助けるけど、街を知らずに助けるのは中々に大変なのでまずは知ることから始めないいけないのだ。

 意外と人助けも奥が深いのです。

 

「なら僕達と一緒に行く?」

 

「いいの? 行く行く!」

 

 やったね、仲間が増えたよ。

 

 

 

 デパート着!

 

「前に来た時もそうだったけど、ここって凄い人多いよね」

 

「うむ。紛れるには丁度良い数だ」

 

 出て行く人も入ってくる人もすっごい数。押し流されちゃいそうでちょっと怖い。そして隣の銀髪少女の発想もちょっと怖い。

 

「この付近にはここ意外場所がないからね。あと危険なことを考えるのは止めましょうねー」

 

 私たちの呟きにシャルちゃんは器用に反応して、シャルちゃんは手にした雑誌と目前の案内板を見比べてる。

 なんかこのやり取り懐かしい。

 未来と出掛けた時もよくしてたっけ? 多分、今シャルちゃんがやってるのは最短路計算だ。ここで全部決めておいたら無駄がないんだとか。

 ファッションに疎い私で楽しむために、未来も入る前に必ずチェックしてた。

 そう言えばあれからもう10年経っちゃったけど、向こうだとどれくらい時間が経ってるんだろ……。

 

「……うん。この道順なら無駄はないかな」

 

 もしかして向こうも10年経ってみんな大人になってたりして…………うわぁ-、それはやだなー。

 でも、神様の計らいで1年くらいなら……、あ、ダメだ。それだと私留年確定しちゃう。未来と学年がズレてしまう。

 できることなら挽回できる2,3ヶ月以内であってほしい。

 

「最初は服から見ていって、その後ランチ。午後からは雑貨とか小物を見ていこうかと思うんだけど、2人ともそれでいい?」

 

「よくわからん。任せる」

 

「右に同じくです」

 

「…………ラウラが2人に増えた気分だよ。僕一人で大丈夫かな……」

 

 行き当たりばったりな私に言われても困るのです。

 

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。イアちゃんもいるから」

 

『そうですよ。安心してください。見た通りもともと響さんは素材が良いですし、勧められたものはほとんど大人しく着られてくれますから愉しいですよ』

 

「イアちゃんもこう言ってるし! ………………ん?」

 

 なんかおかしな気もしたけど、いっか。

 

「はぐれちゃうと合流するの大変そうだね。手、繋いでいこっか」

 

「う、うむ」

 

 シャルちゃんがラウラちゃんの手を取って握る。

 

「それじゃあ、私はもう一方!」

 

「あ、ああ」

 

 俯いてしまったラウラちゃんの空いてる手と繋がる。一瞬見えた顔は真っ赤だった。

 

「どうしたの?」

 

「……何でもない」

 

「何でもないんだ」

 

「そうだ」

 

「「ふふふふ」」

 

「――――――っ」

 

 照れるラウラちゃんをあたたかな目で見つめること数分、一つ目のお店に辿り着いた。

「まずはここだよ」

 

 覗き込んでみるとけっこうな賑わいを見せてる。セール中ってのもあるんだろうけど、人気のあるお店みたいです。

 外から見てても始まらないってことで入店、一人の店員と目が合った。

 

金髪(ブロンド)……、銀髪(プラチナ)……、それにまさか天然の茶髪(ミルクティー)……!」

 

 ミルクティー?

 いやぁ、流れ的に髪のことなんだろうっていうのは想像が付くけど、それでもミルクティーって……。しかも天然だったらどうだっていうんだろう。

 

『最近注目のヘアカラーの一つなんだそうですよ』

 

 へー。でもそんなに珍しいの?

 

『そうですね……。響さんのようなはっきりした茶色でありながら淡さを併せ持った髪は、体内に居着いてからすれ違ってきた人の中には同色天然の方はご家族以外では見た覚えがありません。数万人いたライブ会場でも確認できた中では響さんお一人でした』

 

 なんと!? 私の髪って地味に珍しい色だったんだ……。もうちょっと大切にしてあげよう。

 ふわふわ髪の事実に驚きながら店員さんと見つめること数瞬、その店員さんが何故か戦慄き他の店員さんやお客さんからも注目されていた。

 不快じゃないけどなんかそわそわする。

 どうしようかとシャルちゃんに目配せを……、と思ったその時店員さんの手から紙袋が滑り落ち……

 

「とう!」

 

――すとん。

 

 ……ていくので私はダイブしてキャッチしていた。

 せーふ。

 

「えっと……」

 

 ただどっちに渡せば良いかわからない。この紙袋は店員さんの隣のお客さんが買った商品みたいでそっちに渡せば良いのかな……? でも店員さんから手渡した方が……あ、だめだ。この店員さんトリップしてる。

 

「はい、どうぞ」

 

「ど、どうもありがとうございます」

 

 お客さんに渡しとこう。

 

「流石、お姉様。素晴らしい反射神経と瞬発力です」

 

「お姉様呼ばないで」

 

 くぅっ、戦場では響って呼んでくれてたのに……。

 

「……ユリ、お客さんお願い」

 

「は、はい……店長」

 

 呼ばれた女性がまるで戦場に送り出すようにその店員さんの背に応える。

 ……え、店長さん?

 

「ど、どどどどのような服をお探しで?」

 

「えと、とりあえずこの子に似合う服を探してるんですがいいのありますか?」

 

「こちらの銀髪の方のですね! 今すぐ見立てみせましょう! はい!」

 

 超速で店内の服が飛び交う。トップスを選んでボトムスを……と思いきやトップスを替え、と何度も繰り返すのを待つ。

 そしてついにコーデに納得した店長さんが一着のセットをラウラちゃんに見せた。

 

「どうでしょう?」

 

「……わから――「ないはナシで」――むぅ……」

 

 シャルちゃんの先制攻撃。

 ラウラちゃんに会心の一撃。ラウラちゃんは言葉に詰まって拗ねた。

 

「せっかくだから試着させてもらったら?」

 

 間を置かないシャルちゃんの追撃。

 

「い、いや、めんど「くさいはナシでね」――うぅ……」

 

 トドメのシャルちゃんの追い討ち。

 ラウラちゃんのメンタルはポッキリ折れた。ラウラちゃんは涙目になった。

 普段クール系なラウラちゃんの子供っぽい仕草にきゅんきゅんしながら、私は試着室に送り出してあげる。

 そして出てきたラウラちゃんは、

 

「着替えてないの?」

 

 そのままだった。大きさがあってなかったのかな?

 

「もしかしてお気に召さなかったでしょうか」

 

「い、いや! そうではない。そうではないのだが……その、も、もう少し可愛いのが…………」

 

 そうラウラちゃんはもごもごとお願いした。

 

「「「『「――――っ!?」』」」」

 

 なにこの生き物、萌え死にそう。

 

「任せて下さい!」

 

「僕も手伝います!」

 

 それから楽しく見立てていき一つの愛らしいコーデが出来上がった。

 顔を赤らめて恥ずかしがってもじもじする姿に思わず、お持ち帰りぃぃぃ! と叫びたくなったけど、よく考えたら持ち帰ったところで寮生活だから意味なかった。ざーんねん。

 

「それじゃあ次は響だよ」

 

「私も?」

 

「当然だ。私だけこんな思いをしたままでなるものか」

 

 今の私の格好はちょっと濃いクリーム色の英字付きタンクトップ(おへそが見えそで見えないのがポイント)と膝上の気持ち長めのショートパンツ。

 こんな私がどう変わるのかな?

 

「まずはこれ」

 

 ちょこっと待って渡されたのは白の半袖Tシャツと薄い藍色のダメージジーンズ。そして濃い緑で袖無しのロングトレンチコートにオレンジのキャップだ。

 せっかくだから自分流にアレンジして来てみよっと。

 皺をつけると不味いのでTシャツには手を加えない。代わりにジーンズを膝下まで捲り上げておいて、コートは前を閉じずに羽織るだけに。見せる方針で着崩した。最後にキャップを被って腕を組む。

 

「こんな感じでどう?」

 

 キリッとした感じで登場してみると、私を見た人たちがほんのり赤くなった。

 

「……かっこいい」

 

 見ていたお客さんの意見が聞こえてきた。

 

「凄く似合ってる!」

 

「まさに戦場に立つ勇士という感じだな」

 

 似合ってるのは嬉しいけど、私服としてどうなのか複雑です。でもかっこいいのが気に入った。おサイフと要相談しよう。

 

「今度はギャップに挑戦」

 

 満足するだけしたら即行次の服を渡された。

 今度のは垂れた赤いリボンが可愛いゆるっとしたふわ襟付きのブラウスと緑……ぱすてるぐりーん? で水玉模様のロングワンピースです。

 いろんな名前があって頭が混乱してきた。

 あと黄色いリボンがたゆたう麦わら帽も預かった。

 

「私とは思えないくらいすごい清涼感」

 

 着てみたところ、清楚な雰囲気が漏れ出していた。木陰で涼んでそうなイメージがする。実際の中身は太陽の下で走り回ったり川に飛び込んで暑さを乗り越えようとするタイプなのに。

 

「どうかな?」

 

「凄く可愛いよ」

 

「うむ。良いと思うぞ」

 

 意外と好感触?

 

「「でも、笑える」」

 

 ふわふわした服はツボに入ると言われてしまった。

 性格とは正反対なのに似合ってるから想像するとおもしろいって。

 

「ほかにもまだまだ一杯あるよ。今度はラウラだよ」

 

 なんだかシャルちゃん生き生きしてるな~。

 

 

………………

…………

……

 

 

「ふぅ……疲れたな」

 

「まさか最初のお店であんなに時間を使うとは思わなかったね」

 

「うん。何時間ぐらいいちゃったんだろ?」

 

 ラウラちゃんのを中心に結構な服を買い込んでしまった。当然、私は一着だけですけど。

 お昼時になってしまったので今はオープン照らすのカフェでランチ中。

 

「店員さーん! このスパゲッティ追加お願いしまーす!」

 

「……まだ食べるんだ」

 

 追加すること四人前目、これくらいは食べなきゃ満足しないのだ。

 

「それで午後からはどうするのだ?」

 

「生活雑貨を見て回ろうと思うんだけどいいかな? 僕は腕時計を見に行きたいんだ。日本製の時計ってちょっと憧れがあって」

 

「腕時計か」

 

「うん。ラウラはなにかないの?」

 

「ふむ……」

 

 4品目のミートを口に運んでる間に、日本製の話になってる。あんまし関係ないけど同じ日本人として鼻が高くなる気持ちです。

 

「日本刀だな」

 

「「ん?」」

 

 聞き間違い、だよね。

 

「御姉様も使っていた剣の一つ、日本刀。あれほどに薄く鍛えられ斬るために全てを注ぎ込んだあの刃は実に見事だ」

 

 ……合ってた。ラウラちゃん、それ生活雑貨じゃないよ。

 

「そ、それじゃあ響は僕らの国で何か欲しいと思うのってある?」

 

「うーーん……美味しいもの?」

 

「もう響まで……、はぁ……二人ともホントに女の子?」

 

「踊君じゃないんだから女です」

 

 失礼しちゃうな-、まったく。もきゅもきゅ。

 

「……こんなのどうしろっていうのよ…………」

 

 私のお助けセンサーがびくんと反応した。

 シグナルの発信者は隣にいた女性です。二十代後半くらいでスーツを着ている。たぶんいつもならビシッと着こなしていりのだろうその女性は、ほとんど手を付けてないのに冷め切ってしまったペペロンチーノを前に深い溜息を吐いて沈んでいた。

 

「ねぇねぇ、二人とも」

 

「お節介はほどほどに、と言いたいところですがお姉様には無駄なのですよね」

 

「いいよ。響の生き方のことは一夏から聞いたことあるから。それに僕もほっとけないし」

 

 へへ、良いお友達を持って私は幸せです。

 了解を得られたのでどんよりしてる女性の前に立つと声を掛けた。

 

「どうしたんですか?」

 

 いつだってどこだって困ってる人が居るなら笑って手を伸ばすのが私です。

 

「……………………」

 

 沈みすぎてて気付いてもらえてなさそう。

 でも私はめげないよ。どんなにはねのけられちゃったとしても手が届くまで私は手を伸ばし続けるのだ。

 

(『肉体言語という手段に出なければ素晴らしいんですけどね~』)

 

「あの、何かあったんですか?」

 

 再度声を掛ける。今回はもうちょっと耳元近くに迫ってから気持ち大きめに。

 

「え?! ――あ、いえ――――――――!?」

 

 よかった。今度は気付いてもらえた。

 でも何故か私や後ろで見守ってくれてる二人を見ると固まってしまった。

 うーん、困った。何に悩んでるのか聞きたいのに聞けない。一往、悩んでるのは確かなんだし先に私から距離を縮めてみよう。

 

「私にできることなら手伝いますよ」

 

 声を掛けた途端、がたんっ! とイスが跳ね上がった。そして女生徒の距離が物理的に縮まって目と鼻の先に……。

 そして気付いたら手を握り締められていた。

 

「な、なら!」

 

 くわっ、と目を開いて私の姿を映す女性は口も開いた。さっきまで消沈気味の空気を出して人とは思えない勢いだ。

 若干、引いてる私に女性が言った。

 

「ウチでバイトしない!?」

 

 なんて予想と違ったことを。




――前書きより――

響のコーディネートができたから!
ただ服の型に種類がありすぎて、響もだいたい似合ちゃって
イメージ通り書けなかったのが無念だ……。
スタイリストの方々やファッションコーディネーターの方々には脱帽です。
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