戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

112 / 139
キャロルちゃんの追加曲を初めて聴いたら涙が止まらなくなってしまった……。


第3話

――一方その頃――

 

「ふむ。やはりさっきの反応はこいつからか」

 

 踊は締め切った部屋で何か小さな物を弄っていた。

 

「この歪む感覚は覚えがある。初期構造もあいつの作った物とほぼ同じだ。呵々っ、やっぱり奴も最後まで天才だったと言うことか」

 

 まだ響達……シンフォギアが動き出すよりも遙か昔に出会ったある変わり者の話だ。

 色んな街を旅し見聞を広めるのが好きな底抜けのお気楽者でよくいろんな物を発明してはバカをしていたそうだ。

 踊もよく巻き込まれてすすだらけにされていたらしいのだがよく笑っていたのだとか。

 それで踊の言う似ている物というのはそんな変人から最後にプレゼントされた発明品である。

 時空を超えるスッゴい発明ができたと言って渡された代物だったのだが、結果は失敗。特に何も起きずそれ以降会うことも叶わなかった。

 しかし今踊の目の前にあるのはその完成形だ。それも根底はその変人が組み上げた物をそのまま使っており、変人の理論が正しかったことを示している。

 

「気付かないうちに俺も転移をしたことがあったりしてな」

 

 時を刻みだした懐中時計を片手に、踊はくくくっと笑みをかみ殺していた。

 

 

 

「お客様、@クルーズへよーこそー!」

 

 おしとやかなメイド服でお出迎え~。

 

「さぁ、こっちのお席にどうぞ~」

 

 お客をテーブルにお通ししてお水とメニューを届けたら、次へ参りまーす。

 さて今私たちが何をしてるかというと、メイド&執事喫茶のお手伝いです。カフェで会った女性がこのお店の店長さんで、頼まれちゃいました。

 ここの店員さんが急に止めちゃったんだとか。なのにお偉いさんが着ちゃうからさー大変ってところで私が声を掛けてこうなった。

 離れた所ではラウラちゃんがメイド服でドMホイホイしてたり、シャルちゃんが男装執事で女の子を骨抜きにしたりしてる。

 

「店員さーん! 注文お願いしまーす!」

 

「はいはーい!」

 

 ちなみに! 私のお客さんは普通だからね? 変な想像とかしないでね。

 

「響ちゃん、三番と五番テーブルの片付けお願い!」

 

「お任せ!」

 

 往復するのが面倒なのでまとめて持ってっちゃえ。

 他のテーブルでも空いたお皿を頂いてく。併せて30枚くらい掌に乗せることになったけどいまいち重くないや。

 

「四番テーブルにお願いします!」

 

「お任せー!」

 

 コーヒー運んで、オムライス運んで、グラタン運んで、ポテトフライ運んで、……やばヨダレ出てきた。

 

「よかったら、メイドさんも食べます?」

 

「いいんですか!?」

 

 わーい!

 

「メイドさーん! こっちのもどう!」

 

 ここのお客さん、気前の良い人でいっぱいでしあわせでふ。

 

「いやされるわ~」

 

「コラコラ……」

 

「餌づけされてない?」

 

「あれはあれで人気がありそうだからいいのではないか?」

 

 わう?

 

 それからも大体2時間くらいおつまみもらいながらお仕事を熟していたところちょっと面倒なお客さんがやってきた。

 

「全員、動くんじゃねぇ!」

 

「きゃぁああ!?」

 

「いらっしゃいませ~。3名様でお間違いありませんか~? お席はこちらになりまーす」

 

 まぁ、気にしないけど。

 覆面なんか付けてザ強盗犯な格好で銃を見せびらかして入ってきたけど、店内に踏み入れた時点でお客さんなのです。なのでマニュアル通り席にお通しする。

 

「あ、どうも……じゃ、ねぇ! 舐めてると撃つぞ!」

 

「立ち食い希望ですか? 良い場所あったかなー」

 

「普通の席で良いわ!」

 

 もう、我が儘だな。

 

『あー、犯人一味に告ぐ。君たちは既に包囲されている。大人しく投降しなさい。繰り返す――』

 

 近所迷惑な人がいたもんです。外で騒ぐなんて非常識です。

 

「ど、どうしましょう兄貴! このままじゃ、俺たち全員!」

 

「うろたえるんじゃねぇっ! 焦ることはねえ。こっちには人質がいるんだ。それにこいつもある」

 

――パァアアンッ!

 

 銃口を天井に向け一発。一つの蛍光灯が破裂し何人かのお客様が悲鳴を上げて震えた。もう後で掃除しなきゃ。

 

「おい! 聞こえるか警官ども! 人質を安全に解放したければ車を用意しろ! もちろん追跡者や発信器なんか付けるんじゃねぇぞ!」

 

 また一発。

 

「他のお客様の迷惑になるような発砲はお控え下さい」

 

「アァン!?」

 

「……迷惑にならない発砲ってあるの?」

 

 お水とメニューを取りに行くとラウラちゃんが準備してくれてた。

 

「持ってくよ~」

 

「いや、いい。私が行こう」

 

「そう?」

 

 矢鱈と氷を入れたコップを……水は? あ、行っちゃった。

 

「…………」

 

 そして氷しか入ってないコップをトレーに乗せてお客3人に無言で突き付けた。

 

「……なんだこれは」

 

「水だ」

 

「ふざけてんのか!」

 

「水だ。飲め。――――飲めるものならな!」

 

 ラウラちゃんがそう言うとトレーが傾き、氷が宙に放り出された。くるくる舞ういくつもの氷がラウラちゃんの掌に隠れ、弾けた。

 

「ぐわっ!」

 

「うげっ!」

 

「じふっ!」

 

 すごい。初めて見た。今の指弾ってやつだ。3人の各部位に突き刺さり、悶絶してる。

 

「く、くそ! ふざけやがって!」

 

 中程さんが銃口をラウラちゃんに向けた。感想としたらあーあやっちゃった、かな。軍人さんに銃は向けるもんじゃない。

 小柄で細身な体型とは裏腹に、踏み出した一歩は強かな心を幻想させ瞬く間に腕の下に滑り込んでいた。そして直下から放たれる回し蹴りは手を巻き込んで銃に炸裂し、さらにそのまま二段目に続く跳び蹴り――しかもヒールの爪先という尖ったところが彼の頬を穿ち抜いた。

 うわぁ、痛そ。痙攣してるし。

 

「こ、この!」

 

 残った2人が乱射して応戦する。……のだけどラウラちゃんはソファーや机、だけでなくドリンクサーバーなんかも盾にしてやり過ごした。

 

「うろたえるな! ガキ一人すぐに――」

 

「――残念だけど、一人じゃないんだよねぇ」

 

 おっと、ここで執事のシャルちゃんも参戦だ!

 華麗に突き出された飛び膝蹴りが大柄さんの後頭部を殴打し脳を揺らした。そして突然のことに驚いて固まる小物さんの腕を取ると、するりと後ろに回って捻り上げ抑え付ける。

 その時、グギィグギュィと怖気の走る音は空耳だったことにしときます。

 

「目標2、制圧完了。――そっちはどうだ?」

 

「大丈夫だよ。目標1、目標3、制圧完了」

 

「二人ともかぁっくいぃ」

 

 小さく拍手をしてると目の隅でむくりと動くものがあった。

 

「ガキが……舐めんなァァアアアア!!」

 

「――っ!」

 

 まだ動けたの!?

 立ち上がり振り向き様に大柄さんは風を起こすほどの強烈なボディーブローを放った。鈍重なのが幸いしてシャルちゃんに当たることはなかったけど、吹いた風は体勢を崩すには十分すぎるものだった。

 

「シャルロット!」

 

 即座に踏み込み零距離に迫ったラウラちゃんが鋭い拳を打ち込んだ。

 なのに……

 

「効かねぇナァア」

 

 平然としていた。

 たぶん防弾チョッキのお仲間だと思う。聞こえてきた堅い音的に板でも詰め込んだタイプ。

 うーん……

 

「ちぃっ!」

 

 ラウラちゃんが下がり始めた瞬間、大柄さんの銃がまた火を噴いた。ラウラちゃんの頬が少し切れてしまった。

 

「…………………………………………ブチッ」

 

 どんな人が相手だろうと|店員(メイド)さんになったからには等しくお客様として相手をするのがお仕事です。

 でも流石にこれ以上は許せないカナ?

 仏ノ顔モ三度ガ限界ナンダッテ。

 

「ネェ……言イマシタヨネ?」

 

「またガキか! 邪魔なんだよッ!」

 

 裏拳が私の顔面に当た……らない。その前に右手の甲で受け止めた。

 

「――なにっ!?」

 

「他ノオ客様ノ」

 

 手を反して腕を握る。

 

「ゴ迷惑ニナルヨウナ発砲ハ」

 

 左足を引き、無手の左を脇の下に置き力を練り込める。

 圧縮した力で腕が震えそうになるけど全部我慢してさらに高みを目指す。

 悪いのは忠告を無視した大柄さんの方なんだから、これくらいは良いヨネ!

 

「ゴ遠慮シテ下サイ……テ!!」

 

――ドウン…………

 

 吸い込まれていくように音の波が周囲に広がる前に消えていく。

 

「ゴハッ……」

 

 軽く胃酸をまき散らしながら大柄さんが沈んだ。

 

「ふぅ」

 

 

 良かったー。無事成功です。

 掌底破徹し……略して掌底徹。

 この技はフィーネさんと闘った時に痛感させられた強固な防御能力に対抗するためのもので、10年……もしてないけどそれでも5、6年ぐらいずっと覚えようと鍛え続けていました。

 いつも岩とかを相手に特訓して成功率は半々だったんだけど上手くいってホント良かった。もしミスってたらバンッてなって18禁の光景になるところだった。

 

「ねえ、ラウラ」

 

「……なんだ?」

 

「これからは響も怒らせないようにしよっか」

 

「……同感だ」

 

 あらら……、イスも机も穴だらけです。ジュースも零れて床がドロドロ。掃除するの大変だな~。

 

「……お、俺たち助かったのか?」

 

「い、生きてる……?」

 

 なんかお客様が騒がしい……て、そっか。

 

「お騒がせして申し訳ありません。すぐに(散らばった破片を)片付けますので皆様方はごゆるりとお待ち下さいませ~」

 

 ちゃんと謝っておかないと。せっかく来て頂いたのにうるさくしちゃった。

 

「……このまま掴まってムショに行くくらいなら、いっそ全部吹き飛ばフッ!?」

 

 しつこい。

 なんか言おうとしていた大柄さんの顔面に私が裏拳を突き刺して黙らせる。

 

「(スゴい……。あの人ただの癒やし系じゃなかったんだ……!)」

 

「(なにあのメイドさん、カッケェーんすけど! マジで強盗を片付け(・・・)た)」

 

 うん?

 掃除しようと思ったら何故か皆から拍手をもらってた。

 ……不思議だ。

 

「ふむ。日本の警察は優秀だな」

 

 また大量の警察官(お客さん)が流れ込んできた。余りの人が犇めき合い過ぎて店内の掃除ができない……。

 

「二人とも落ち着いてないでまずいよ! 僕達代表候補生で専用機持ちなんだから、公になるのは避けないと!」

 

 私は違うんだけど……。

 

「国に属さない専用機持ちはもっとまずいでしょ!」

 

「それもそうだな。このあたりで失敬するとしよう」

 

 反対はできなさそうなので大人しく失礼することにします。どたばた喧騒としてるのを利用してこっそり私たちは店を抜け出すことにした。もちろん服は回収して。

 

「マスコミ多いね」

 

「ふむ……どうするか」

 

 でもやっぱり報道陣は早いのなんの。交通規制も乗り越えてカメラを回して待機していた。

 

「だったら上に行けばいいよ」

 

「「え?」」

 

 裏道から覗き込んでいたラウラちゃんとシャルちゃんを小脇に抱えて、いざジャンプする。

 いや~、壁キックって便利な技だよね。簡単に屋上に到着した。

 

「このまま少し離れたとこまでレッツゴー!」

 

「ちょっ!? 待っ!?」

 

 何件ほど飛んだかわかんないけど離れた場所まで屋上を伝って移動する。途中シャルちゃんが騒がしかったけどすぐに静かになってくれたので問題なし。

 

「このへんならいいかな?」

 

「はい。もう大丈夫かと思われます。どこに行ってもお姉様はお姉様ですね。感激しました!」

 

 敬礼されるようなことはしたつもりないよ?

 師匠や踊君もよくやる人助けの序の口だから。

 

「死ぬかと思った……」

 

「そんな大げさな~」

 

「(……響に取ったらね)……色々あったけど、後はどうしようか」

 

 あまりにも

 

「なんでも~」

 

「任せる」

 

 二人一緒に丸投げです。

 頑張れ、シャルちゃん。

 

「もう、二人して……。あ、そうだ。公園行かない?」

 

「公園?」

 

「うん。この近くに公園があって、そこにクレープ屋さんがあるんだって」

 

「クレープ!」

 

「うわ!? そんな食いつかないでよ」

 

 午後のおやつー♪

 

「構わないが、何故クレープなのだ?」

 

 クレープ、クレープ~。

 

「お店の人に聞いたんだけどそこのクレープ屋さんで『ミックスベリー』を食べると幸せになれるっておまじないがあるんだって」

 

「ほぅ……」

 

 公園に着いてクレープ屋さんはすぐに見つかった。帰宅中なのか学生さんが沢山いて目立っていたのです。

 

「あれだね」

 

「じゃあ早速――「おじさん! ミックスベリー3つ!」――早っ!?」

 

 即行飛び込んで注文する。こう見えてもさっきの話はちゃんと聞いてたんだよ? ただクレープが頭の中で踊ってたわけじゃないのだ。

 

「ごめんよ、お嬢ちゃん。ミックスベリーは売り切れちまったんだ」

 

 なんと!? それは残念です。なら――うん?

 

「そうですか……」

 

「ふむ」

 

 ラウラちゃんもってことはやっぱそういうこと?

 あ、頷いた。

 

「了解。じゃあ、いちごと『ぶどう』を2つずつお願いします!」

 

 そういったらおじさんがにやりと笑った。

 どうやら正解みたい。

 

「構わんけど、お嬢ちゃん達3人なんだろう? 大丈夫かい?」

 

「もち! 2つくらい余裕でぺろりです」

 

「食い意地張ってるなー」

 

 お会計はラウラちゃんと半分こです。

 

「面倒だから1個は2つまとめて包装しちゃって下さーい」

 

「あいよー」

 

 いちごはシャルちゃん、『ぶどう』はラウラちゃん、そしてダブルは私がいただきです。

 

「ミックスベリーが売り切れだなんて残念」

 

「そうでもないぞ。ほら、食べるといい」

 

 ラウラちゃんがシャルちゃんの口に『ぶどう』のクレープを差し出す。

 いちごとぶどうまとめてガブリ。うまうま。

 

「ありがと。でもどういうこと?」

 

「シャルちゃん、ラウラちゃん! これ一緒に食べるとしあわせだよ~」

 

「そうか。では私も」

 

 シャルちゃんのクレープにラウラちゃんがパクッとかぶりつく。

 おっと、見てる場合じゃなかった。出来立てクレープだから中身がとろけて零れそうになってる。

 良い具合に混ざったところに今度はバクリ。

 

「確かにな」

 

「え? え?」

 

 シャルちゃんはまだ気付いてないみたいだ。

 

「あの店にはそもそもミックスベリーはなかった」

 

「でもお店の人は確かにミックスベリーって……」

 

「お姉様の持ってるものをよく見ろ。それと厳密には『ぶどう』のクレープというものもあの店にはなかったぞ」

 

「いやいや、ちゃんとこうして『ぶどう』は…………あ、これって『ブルーベリー』? まさか……」

 

 私の手の中で混ざったいちご(ストロベリー)ぶどう(ブルーベリー)のクレープを見てやっと思い至った。

 

「そだよ~。ストロとブルーでミックスベリーってこと」

 

 気付いたのはホント偶然。他の味を選ぼうとしてメニューの隅から隅まで探してた時にないことに気付いたのです。色んな味に目移りしてなかったら私も気付かなかったと思う。

 

「そっか。『いつも売り切れのミックスベリー』ってそういうおまじないだったんだ……」

 

 皆でシェアすれば幸せは一杯ってことですね。……シャルちゃんの顔が真っ赤になってるのが相当気になるけど黙っておいてあげよ。

 頑張れ、恋する乙女ってやつですな。

 

「あー、美味しかった。それじゃあ帰ろっか」

 

「う、うん。そうだね」

 

「はい。お姉様!」

 

 ラウラちゃんの呼ばれ方がお姉様で固定化されないことを願いつつ私たちは学園に帰還する。

 

 

 

「響、町歩きは楽しかったか?」

 

「あ、よう君! うん、楽しかったよ!」

 

「それはそうだろうな。なんせ学業をサボって遊びほうけたのだからな」

 

「あ゙ぁっ」

 

 今日という一日の終わりはまだまだ遠いみたいです……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。