戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第4話

「響、旅立つ準備だ」

 

「はーい………………………………はい? ハイッ!?」

 

 え、いきなりなに?! タビダツ……て『旅立つ』だよね。いやいや、何がどうなってそうなった!?

 先日の脱走から数日、缶詰にされていたところなんの前置きなくそうよう君が言い放った。

 私も私でふっつーに準備しようとしていたから驚きです。

 

「来ればわかる。さっさと手荷物まとめろ」

 

「えーーーーーー……」

 

 説明無しにどう準備しろと言うんでしょうか。せめて期間の目安くらいは教えて欲しいところです。それに数日以上かかるならちー姉に許可取らないといけないし。

 

「すでに織斑嬢から許可はもらっている。それに荷物も最低限、手荷物だけで十分だ」

 

 許可取ってるのに最低限で良いってどういうことだろ。

 尋ねたいことは一杯あるけど諦めよう。よう君はいくつもの紙袋を手提げて武装済みだし、ちんたらしてたら荷物なしで行く羽目になりそうです。

 

「こんなものでいい?」

 

 サイフなんかの本当に必要なものだけをウエストバックに入れておいた。もしあとで他にも必要な物があったら、よう君に払わせるだけです。

 最低限と言ったのはよう君だもん。責任は取ってもらう。

 

「あとこれも持っておけ」

 

「……携帯?」

 

 渡されたのはいつ使っていたか覚えてないくらい昔に使ってた携帯だった。まだ現役でさくさく動くけどやっぱり圏外です。

 使い道は無いと思うんだけどな……。

 でもよう君がわざわざ渡すんだから意味はあるはず。とりあえず今はポーチのポケットに突っ込んどこ。

 

「では行くぞ」

 

「はーい」

 

 どこに行くのかはわかんないけどとりあえず外に――

 

「そっちじゃない」

 

「……え?」

 

 よう君に引っ張られて引き釣り込まれた……いつの間にか増設されてたクローゼットの中に……。

 

「ひょぇええぇぇえぇええ!?!?」

 

 

 

 はぁ……。

 

「ちゃんと元気にしてるかな……」

 

 あの子ってよく食べるけど、すぐに偏っちゃうから心配です。でもあの人と一緒だからちょっとは気を付けてくれてるとは思うけど。

 

「はぁ……、どうしてるかな……響」

 

 まだいなくなってから三日しか経ってないのに……心配で心配で堪りません。

 

「小日向、またここにいたのか」

 

「あ、おはようございます。翼さん」

 

「ああ。おはよう」

 

 翼さんには迷惑掛けちゃってるな……。

 翼さんはあの日から時間があるといつも私の所に来てくれてます。

 響たちが選んだことだから責任はないはずなのに、止められなかったのは自分だからって責任を感じているのです。

 

「よ、よぉ。偶然だな」

 

「ふふ。偶然だな、雪音」

 

「偶然だね。クリス」

 

「な、なんだよ……二人して」

 

 クリスも毎日会いに来てくれてます。本人曰く『偶然』だそうですけど……ふふ。

 2学期からはリディアンの生徒になれるそうで今は忙しいはずなのにね。

 

「皆に心配させて……、帰ってきたらお仕置きしなきゃね」

 

 二課の人達も帰りを待ってるんだから。

 

『……翼さん、クリスさん! すぐに出動をお願いします。過去に類を見ないノイズパターンが検出されました!』

 

「「了解!」」

 

 また、現れたんだ……。

 

「んな顔すんなって。あのバカがいないくらいでどうにかなるほどあたしらは柔かねぇよ。どんな相手だって返り討ちだ」

 

「雪音の言う通りだ。立花が帰ってくるまでは……その後も私たちが必ず守りぬく」

 

「……お気を付けて」

 

「ああ!」

 

「おう!」

 

 そして私は二人を見送った。

 

 

 

「高い、高い高いタカイ!?」

 

「何をそんなに焦ることがあるのだ?」

 

「そんな真顔で聞くことじゃないよ!?」

 

 クローゼットに引き摺られること一瞬、私たちは物凄いところに出現していた。

 もっと具体的に言うとお空に浮かぶふわふわの雲のさらに上、たぶん大気圏と目と鼻の先くらいの上空に……。

 そして現在地球の大地目掛けて落下中です。

 

「どうするの!? このままじゃ地面とこんにちはして、私ぺちゃんこだよ!?」

 

「響なら問題ないと思うのだがな……。仕方がないか」

 

 よう君はいったい私を何だと思っているんだ。

 落ちてく最中、よう君が私の傍に寄ってきてくっついた。そっかよう君ならパラシュートくらいなれそうだ。

 

「お前こそ俺を何だと思っているんだ。そんな機能でき……なくもないが面倒だ」

 

「してよ!? ……きゃう!?」

 

 ぐぐんと落下速度が上がった。体感的には3,4倍くらいとかいう割と洒落にならないぐらいの上昇率です。

 

「上げてどうするのぉぉぉぉぉおおぉおぉぉおおお!?」

 

「じれったかっただけだ。意味は無い」

 

 ないのかよ!?

 

「きゃぁぁぁああああああ………………」

 

「そして」

 

――ズドンッ!

 

「問題も無い」

 

 もういろんなものが怖すぎてわけがわかんなくそりそう。

 特によう君の頑丈さが怖い。あの勢いで落ちてなんで問題ないの? 今のくらいの衝撃でもよく怪我してるじゃん。なのに平気とかどういう区分になってるんだろう……。

 

「目的地とはだいぶズレてしまったが問題はなさそうだな。響、携帯を」

 

 どこぞの草木が生い茂る平野に落ちたのを確認したのち頼まれた。

 

「えっとちょっと待って。すぐ取り出す……か…………ら?」

 

 なんか背中が丸まってるし、ぶら下がったバックも口が下向きそうで漁りづらい。あとよう君の幼顔がやたらと近いのは気のせい……じゃない!?

 ちょっとここで深呼吸。

 よし。自分の体勢を確認してみよう。

 足下から順に。

 足はふらふらできるから、地面に付いてないもよう。

 そして膝。膝の下に違和感あり。よう君の左腕が挟まってるみたいです。

 お尻や腰は特に問題なし。

 んで背中はよう君の右腕が支えてる。ついでに手が私の右肩に後ろからかかってる。

 

 はい。どう見てもお姫様だっこです。本当にありがとうございました。

 

「ちょっ! うぇ!? おろひっ!?」

 

「行き成り暴れるな。落ちる……あ」

 

「うぇひ!?」

 

 痛い……。でにちょっと落ち着いた。

 気を取り直していつもの携帯を取り出す。

 

「……あれ? 圏外だ」

 

「そっちじゃない」

 

 言われて取り出したもう一つの携帯は……

 

「アンテナ立ってる!?」

 

 ちゃんと繋がった。一体全体これはどゆこと?

 

「問題なしと。なら行くか」

 

「うん。――っ!」

 

 背筋を嫌なものが走った。これは最近感じたのとまったく同じ!

 

「なるほど……。予定していた座標よりもズレていたのはこいつ等のせいというわけだったのか」

 

 背中合わせになるとよう君は踊君になり腕を横に突き出した。そして指先で大気を捻った。

 

「やるぞ。響」

 

 出現したのは絶対に壊れない一振りの鎌。

 

「うん」

 

 私も闘う体勢に入る。呼吸を整え口ずさんだ。

 

「――――♪」

 

 

 

 異常なノイズパターンを検出してすぐに翼たちには出動を命じたが、如何せん距離が遠かった。

 

「間に合うでしょうか……」

 

 ノイズの出現地が人里から離れた平野だったために今のところ被害は出ていない。しかし二人が到着するまでまだ30分以上かかる。

 その間に奴等が進行してくる可能性は十二分にあった。

 ……無事でいてくれ。

 

――ピーッ! ピーッ!

 

「今度は何だ!」

 

 いかん。心頭を滅却せねば……。

 焦りが言葉に乗ってしまっている。

 

「どうした!」

 

「新たな信号をキャッチ!」

 

「またノイズだとでも言うのか……」

 

 クソ! 響君が欠けたことで奏者が足りないというのに!

 噛みしめていた歯からギギギと音が零れ出た。

 

「違います! ですが、これはいったい? 了子さん!」

 

「こちらに回して頂戴。これは……アウフヴァッヘン波形に近い……。でも何故こんなに不安定に……いいえ、そうじゃない? 波形が混ざっている? おそらくどこかに特定できる波形があるはずよ! すぐに調べて!」

 

「了解!」

 

 またも未知の波形だというのか……”

 

「いったい何が起きている……」

 

 

 

「踊君でも苦戦を強いられたタイプのノイズもいっぱい……。相手にとって不足なし、だったらいいなぁ~」

 

 いつものいっぱい、新型いっぱい。不足どころかむしろ手に余りそう。

 

「呵々! 案ずるな。俺たちならやれるさ」

 

「へへっ。うん。私たちならできる!」

 

 両の拳を打ち付け気合を込め、徒手空拳で構えを取る。

 脚部ユニットを展開……。

 

「さぁ……行くよ、ニールハート!」

 

 そして空に向け爆発させる。

 

「タァァアアアア!」

 

 一機は確実に堕とす!

 あるかどうかは別として、空中にいたやつの脳天に踵落としを喰らわせそのまま私は地上戦に持ち込んだ。

 

「邪魔だ!」

 

 私の背面で、地の上を行った踊君はいつものを一文字に下ろして3機を相手に斬り結んでる。

 

「時間は掛けてらんないの! だからとっととそこを退いて!」

 

 ノイズの爪と私の拳が相対する。でもかち合わせない。爪の下……脇まで腕を差し込んで振り上げる。

 その懐はガラ空き。だ

 

「――ここ!」

 

 腕部ユニットを開き胸に右の拳を徹す。その場でわずかに浮いた身にさらに左の掌を打ち回し蹴りを脇に突き立てる。

 

「次!」

 

 大量に突っ込んできたいつものは拳の連打で塵に還し、度々襲い来るISノイズを払い除け攻め続ける。

 その最中に傍で爆音が響いた。とっさに引くとその前を赤黒い熱線が通り過ぎた。

 

「わっとっと、そう言えばこんなのも使ってきたっけ。割と洒落になんない威力してるよ」

 

 しかも仲間諸共ってやつみたいです。ISノイズの数だけ熱線が飛ぶから、四方八方縦横無尽で不規則だ。

 そしてどんどん草原が焼け野原に変えられていく。

 

「踊君! 急がないと!」

 

「わかっている! ――こっから先は全壊で行く!」

 

 踊君は両手で握った鎌を地面に立ててそう宣言した。

 

「未完の大技、響かせようぞ」

 

 踊君を中心に突風が吹き荒れた。

 

「機魂の共振」

 

 踊君の手元から太陽のような光源が流れていき片鎌の刃はだんだん包み込まれていく。全てが光で覆われたその時、片鎌であったそれは柄を伸ばし倍ほどの刃を宿す両鎌へと至ていた。

 

「ハァッ!」

 

 一閃、それだけだった。けどそれだけで一機のノイズが真っ二つに崩れた。

 

「……すごっ!」

 

『響さん、呆けてる場合じゃありませんよ! 踊さんがおっしゃっていたようにあれは未完です。今の踊さんでは1分ほどしか維持できません』

 

 短っ!?

 余計な時間はないってこと。

 

「だったら私たちも一気に!」

 

『はい!』

 

 踊君の放つ熱量に気を取られてるISノイズに拳を、それもエネルギーの大出血サービス特盛りで引いたバンカー付きの重たいのを見舞ってあげた。

 こっちも一撃で屠れた。

 

「ウオォオオオオッ!」

 

「ドリャァアアアアッ!!」

 

 一度鎌鼬が吹くと数機のノイズの上半身と下半身がお別れし、一度轟音が鳴ると数機のノイズが消し炭になる。

 汚物は消毒だ~!

 なんて言いたいところだけど見た目と違ってお互いそんな余裕はない。

 よく考えて欲しい。

 数回攻撃してやっと倒せるのを一撃で倒せちゃうんだよ? もし間違って当たったり当てちゃったりしたら…………考えたくない。

 でも長いこと一緒に居るからどう動くかは分かる。

 

(――熱線、避けられない。なら!)

 

「払うだけ!」

 

 右手を突き出し、触れる直前でバンカーを爆ぜさせた。その衝撃で熱線を相殺する。

 熱線を抜けた先では3機のノイズが待ち構えていたが、目前まで瞬時に踏み込んで装填の完了した左拳と両足のバンカーで殴り蹴るで黙らせる。

 

『ラスト2! 左上方から来ます!』

 

「っ!」

 

 イアちゃんのアナウンスで意識を左方に向けて距離を見る。

 ほとんど不意に近い極限状態だった。でも胸で紡ぐリズムが一つの音色の存在を感じてる。だから私は音に身を任せて、体を後ろに倒しそして外へと開いて捻る。

 鋭い爪は首筋に触れようとした。

 

 その時、一陣の風は吹き抜ける。

 

「ラスト1! ぶっ飛ばせ、響!!」

 

 それは踊君がもう1機のISノイズを斬るために振った鎌の斬撃。

 私の体の前を縦に進んだ風はISノイズの爪を切り捨てた。もうこのノイズが私の首に触れることは叶わない。

 

(――後は私の番)

 

 倒れ行く体を支えようと宙に浮いていた足が大地穿つ撃鉄になる。地上すれすれまで曲げて沈んでいた腕が天を仰ぐ銃身を魅せる。

 

「ハァァアアアアアアッ!」

 

 そして鉄拳という名の弾丸で天を射貫いた。

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