戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
「は、波形増大! ノイズの反応が次々と消失していきます!」
「うそ……! しょ、照合完了。適合する聖遺物あり!」
「こいつは……! 帰ってきたのか……!」
学園の地下深く戦場を見つめる大人達の元に、
「黄金色の槍の柱…………!」
「おいおい! まさか、あいつらか!?」
航空機のツバサに立ち戦場を見定める奏者達の元に、
「……?」
そして寮の屋上でただ一人の親友の帰りを信じ待ち続ける少女の元に、
その風の調べは吹き抜ける。
「響?」
「ハァー」
極限まで燃やし高熱を放つ装甲を冷却する。滾った体も一緒に落ち着ける。
「……。ふぅ、片付いたな」
「みたいだね。おつかれさま~」
踊君が巻き戻しのように鎌を消してよう君に戻る。
「立花……なのか?」
「ほぇ?」
凄く懐かしい声が後ろに降り立ったの気がする。
後ろをちらり。蒼くて艶やかな髪がぶわっと棚引いてた。その横ではほんのり紫な銀髪ツインテール(先っぽは何故か4つだけど)な女の子が……。
「つ、翼さん? クリスちゃん?」
「お前、帰ってきたのか!?」
「え、え? ホントに翼さんとクリスちゃん? いや、え、どうなって……もしかしてこれは夢!?」
「違うわ」
「おうふ! 痛い………………ゆ、夢じゃない」
拳骨ならぬ踵骨。楽だからって踵落としはないと思う。やるならせめて靴は脱いで欲しかった……。
「こんなバカは他にいないよな」
「ああ。安心しろ。こんなバカは他にはいない」
「二人とも酷いよ!」
10年ぶりにあったって言うのに二人してバカにしてーっ!
………………あれ? 10年経ったにしては変わってないような?
「だろうな。恐らくこっちでは数日しか経っていないはずだぞ。翼嬢、俺たちが時計に引きずり込まれてから今日で4日目じゃないか?」
「え、ええ。その通りだけれどいったいどういう? いやその前にお前、聖か?」
「形は小さいが紛れもなく聖踊だ。なんなら響の成績でも高らかに歌ってやろうか? たぶんダンナなら答え合わせしてくれるはずだぞ」
「私関係なくない!?」
なにゆえよう君の証明に私が傷つけられなきゃいけないの!!
「……おま!? そこまで成績悪かったのかよ」
「ち、ちがっ! ……わなくもないけど…………」
「ふむ。立花の成績を知ってると言うことは聖なのだな」
そんな方法で確認しないで下さいよ~!
クリスちゃんにまで呆れられちゃったよ……およょ~……。
「どうせすぐに」
「わかることだ」
二人して虐めてくる……。
誰か癒やしを!
――ぷるぷるぷる、ぷるるるるる
「はい、もしもし?」
『あ、やっぱり繋がったー! もしもし、響?』
こ、この声は!?
「み、未来……なの?」
『うん! そうだよ。帰ってきたんだね。おかえり』
最強の癒やしキターーーーーー!!
私が求めた時にかけてくれるだなんて……さすが未来、私の――! ムフフ。
「うん。ただいま」
『今までどこに行ってたのか、後でちゃんと話してよね』
「はーい」
『ふふふ、お買い物行かなくちゃ。早く帰ってきてね。響』
「了解であります!」
「こいつ完全に胃袋掴まれてやがる……」
「しっかり手綱は小日向が握っているようだな……」
未来が買い物!
うぇっへっへー、これは腹の虫がなりますなぁ~。
「うわー……懐かしい~」
母校……たぶん母校であってるはず……リディアン音楽院を一望する。
流石に島を改造して作られたIS学園よりは小さいけど、それでもここは国家クラスの案件を担う一拠点。
改めて見るとやっぱり大きい。
「懐かしいってお前ら3日来てないだけじゃねぇか」
「いや~、色々あったんだよ」
「呵々、なにせ濃密濃厚な3日だったからな」
エレベーターを使って高速落下。そして奏者揃ってご帰還です。
「皆さんお久しぶりであります! ……て程でもないんだっけ? えっと奏者立花響、ただいま戻りました!」
「心配したぞ、響君、踊君」
おお! 懐かしの師匠です。相変わらずの真紅のシャツ、あ、でも半袖バージョンだ。流石の師匠でも袖まくりじゃ乗り切れなかったみたいだ。
「いや~、ご心配おかけしました」
「元気そうで何よりだ。とりあえず休むと良い。先程ノイズと闘っていたのだろう?」
「はい、どうぞ。冷たい麦茶よ……あったかいものじゃなくてごめんなさいね、ふふ」
「ありがとうございます。今はあったかいものはだいじょぶです」
あったかいものは未来でチャージ済みです。
友里さんからお茶をもらって喉を潤す。ついでにはふぅ、と一息いれる。
「聖、いろいろと聞きたいことがある。かまわないか?」
「もちろん」
備え付けのソファーやイス各々の過ごしやすい場所に腰掛けて比較的楽な体勢を取る。寝転びたい気分はあるけど我慢です。
真剣な顔して話す二人を前にそんなことできるほど肝は据わってない。強面のおっさんと超ロリッ子幼女が真面目に顔をつきあわせて話してるのに笑い転げそうになるのも我慢です。
「俺たちが何処にいたのか、未確認パターンのノイズはどんなだったのか、それとガングニールの定まらない波形がどういうことか、ですよね」
「ああ。それとその姿についてもだ。いったい何がどうなっている?」
「この姿はただの節約です。理由は後で話していたらわかります。先のノイズもガングニールについても全部俺たちが飛んだ先でのことが原因なので後回しと言うことで」
よう君と目が合った。ちゃんとニッコリスマイルとポーズで丸投げを訴えとく。私に説明なんてできません。
「…………、君たちはどこに行っていたのだ?」
「…………俺と響はこの時計の影響で、こことは異なる世界へと渡っていたのです」
よう君の言葉に二課のメンバーは驚き半分、呆れいっぱい、その他もやもやと反応でちょっとカオスなことになってしまった。
でもそこは二課。異世界在住のノイズを相手にしてるだけあってすんなり順応しちゃった。すぐに落ち着いてよう君の話に耳を傾ける。
そしてよう君が語っていく。
………………
…………
……
私たちが向こうの世界で10年過ごして学校にも通っていること、
「つまり今の響さんの精神年齢はにzy――(ry」
………………
…………
……
その世界ではISなる特殊兵器があって今ニールハートとしてガングニールと連携してること、
「立花さんに長期飛行や絶対防御が追加……まさしくお――(ry」
………………
…………
……
そしてそのISを纏った新種のノイズが現れたことを。
「それをワンパンて……やっぱこいつばk(ry」
………………
…………
……
ついでに生徒を守って戦い抜いたよう君がこうなったってこともおまけで。
よう君が一通り話し終えると、クリスちゃんや緒川さん達が変になっていた。
「「「ひ、ひぇぇ……」」」
「ドウシタノ?」
「「「なんでもありません!」」」
物凄く怯えてらっしゃる。とくに何かあった覚えはないんだけどな~……いったいなにがあったんでしょうね?
「ああぁ……ゴホン。新型のノイズか……強さはいったいどれ程のものだった?」
「動きが複雑になってタフだったけど、そこまで強くなかったと思います」
ちょっと時間がかかるくらいで、踊君が手こずったのが驚きなくらいだ。
「それは響が奏者としての本領を発揮できているからだ」
でもよう君はそう前置きすると一台のプレート端末を取り出した。それをちょこちょこっと操作すると二枚の画面が宙に飛び出して表示される。
「まずはノイズ。説明するまでもないですがノイズは本来こことは異なる次元位相に存在する生命体です。そしてこちらの世界で現象を引き起こす時にこちらの世界との接触を図ります」
「そしてそれを防ぐためにシンフォギアシステムで調律してこの世界で討っているのでしたね」
「その通り。一方、IS。こちらは世界の次元空間に干渉し操縦者と外界の間に境界線を引いて絶対的な防御機能を実現させているのです」
「どっちも次元を扱ってんのか……?」
「なるほどね……。それは確かにようちゃんが手を訳のも無理ないわね」
……ちゃん付け? ま、まぁいっか。
クリスちゃんの呟きで、了子さんはどうしてなのか気付いたみたいです。
「いい?」
了子さんは備え付けの冷蔵庫の元に行くとおもむろに氷の入った冷凍室を開いた。
「この中をノイズの世界として」
中から1つの氷を取り出すとそのまま机の上に置く。
「この氷は世界に溢れ出たノイズ。時間が経てば自然と消えていく……それが今までのノイズね」
机の上に水たまりを作って氷は小さくなる。
「けどここに……」
次に了子さんはビールジョッキを掴んだ。
「ISという次元を操るものを使って」
そういうと了子さんは別の冷凍室を開いて
「ちょっと待て、それは俺の!」
「男がガタガタ小さいこと気にしなーい」
いつから入ってたんだろうキンキンに冷えたジョッキと入れ替える。
「ノイズ界を再現してあげると~」
カランコロンと音を立てながら氷は冷えたジョッキの中に入った。
しばらく観察してもほとんど変わらず、机の上に置いた氷が溶けた後でもジョッキの氷はしっかり形を残している。
「長時間世界に残存することができるってわけよ」
さすが了子さん、わかりやすい解説どうもです。
「そしてその逆、ノイズの位相世界にISが引っ張られているのもあります」
「なにか不味いの?」
「お前が一番わかっていることだろう……。シンフォギアの下位といえど、ISは一機で旧兵器をまとめて相手に出来るほどのスペックを秘めているのだ。それがノイズと同位相になるということは――」
「……我々が使えるシンフォギアシステムを介さない攻撃を一切受け付けることがないということ、か」
「そういうことです」
そ、それは大変だ。
もともと効いてなかっただろって意見はなしにして、よう君一人じゃ戦えないってことだよね……。
戦力大幅ゲインです。
「しかし旧兵器とは要するに刀のような武具、銃器などだろう? ISとやらにどこまで通用するか?」
「大丈夫に決まっている。確かにお前たちの使う武器は旧型の姿をしている。しかしそれはお前たちのイメージから形を作っているからであって、内包するものは別格だ。機能だけならISさえも凌駕可能だぞ。まぁ、絶対防御やシールドエネルギーなど安全機能がないからそれが良いとは言えんが」
それに自在に飛べるし。
う~ん……どっちもどっち。
「安全なんかにゃ興味ねぇな。あたしらはいつだって命懸ける覚悟は出来てんだ」
「心意気は雪音と同じだ。だが、だからといって訓練にまで懸けるのは止めてくれないか? 張り切ってくれるのは嬉しいが、怪我でもしていざという時に動けなくなられては困る」
「うぐ……」
クリスちゃんも二課にずいぶん馴染んできたんだねぇ~。最初はあんなにツンツンしてたのに……。
遠い昔のことのようだよ~。
「(実際、昔のことなのだが……)」
「……ふぇ?」
よう君の微妙な視線が向けられてる。目を合わせるとぷいっと目を背けられてしまった。
「それで今の話を聞いた限りだと二人はまた向こうにいくのか?」
「はい。こちらの戦力は翼嬢とクリス嬢で十分なはずです。しかし向こうには奏者は居らずこのままではノイズは野放しに、それに向こうには守るべきガキも多く居て義弟のようなガキもいるもんで。見捨てるわけにはいきません」
「ふっ、そいつは会ってみたいな」
「俺としては義弟の姉と会って欲しいところですね。向こうの世界で人類最強と呼ばれてる人で、見立てではダンナと同格ですよ」
「ほぅ、人類最強か。一度は手合わせしてみたいものだ」
ちー姉と師匠の手合わせ…………うわ、ちょー見たい。
ISと聖遺物がタメを張れて、それにさらにタメを張って増さる二人の激突なんて、すっごい胸アツです。
「おっと、もうこんな時間か」
時計を見るともう夕方。すっかり話し込んじゃったみたい。早く帰んないと未来に怒られちゃいそうだ。
「ダンナ、響は……」
「ああ、聞いている。そろそろ解散するとしよう。長い間付き合わせてすまなかった。未来君にも悪いことをしてしまったな」
「いえいえ! お気になさらず。それじゃあお先に失礼します! 翼さん! クリスちゃん! また明日!」
許可も出たとこで部屋を飛び出してエレベーターで学舎に戻る。そのまま全力ダッシュで寮まで駆け抜ける。
そしてエレベーター……はいいや。登っちゃってるし待つのじれったい。
IS学園の訓練で培った身体能力をフル活用して4,5段飛ばし+壁キックでサクッと登る。……あ、エレベーター追い抜いてる。
記憶は朧気だけどたしか部屋はこの階にだったはず。
『ここで合ってますよ~』
「覚えててくれてどうもです」
未来の待つ部屋の前に立つ。ここを開けた先に未来が待ってる!
「ただいま、未来!」
「ふふ……。お帰り、響」
私はもぎゅっと未来を抱きしめた。
問題ないけど前回後書きを書き忘れてしまった。
踊君の使った技がいったいなにか気付いてくれた人はいてくれるのだろうか……。
そして次回(予定)、響の身に最大級の不幸が!
(ぜひ予想を~)