戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第7話

「よし。これでなんとかなるだろ」

 

 決定より2日、我が家に新たな機材が設置された。妥協たっぷりな不安しかないものが……。

 

「失敗とかしたらシャレになんないんだけど……」

 

 部屋の奥、左の壁ど真ん中にもでんと佇んでるのは幅1m厚さ10cmほどの鳥居みたいな門。よう君の話では、こっちに来る時に通ったのと同じものだから大丈夫、とのことなんだけど、私は忘れてません。

 通って早々、大気圏に放りだされたこと。

 

「あんな経験もうイヤだからね」

 

 自分の意思ならともかく不意打ちは勘弁願いたい。

 

「仕方がないな。もうすぐなんだが、まあ少し早いが調整してみよう」

 

「最初からしといてよ!」

 

 よう君ったら失礼なことに私が我が儘を言ったみたいに肩をすくませやがりましたよ。言わなかったらそのままやる気だったらしい。

 目を離すとサボりかねないので監視しないと……。

 

「はいは~い。ひびきちゃん、ようちゃんいる~?」

 

「了子さん!?」

 

「ああ、来てくれたか」

 

 差し入れ片手に了子さんは家にやってきた。そしてしげしげと興味深そうに設置された装置の観察を始める。

 そうだ。了子さんって言う心強い人がいた。ガングニールなんかのシンフォギアシステムの基礎を築き上げたこの人もいればもっと安全なものを作ってくれるはず!

 

「当たり前じゃない。未知の技術をあれやこれやさせてくれるんでしょ? これは心が躍るわ」

 

 ……あ、あれやこれ?

 

「出来る女の手腕、期待してますよ」

 

「まっかせなさ~い」

 

「…………………………あぁ……ダメなきしかしない」

 

 むしろ狂人が増えてしまったんじゃないかな……。

 

 

 

「んで、それがいったいどうなったらこうなんだ……」

 

「いや~、巡り巡ったらこうなっちゃった」

 

 余りの居心地の悪さに部屋を抜け出してから一時間ほど、出会った人を引き連れてあるマンションの一室を訪れた。

 それで私たちの前にいる子がその部屋の主なんだけど、今日はなんだかカリカリしてる。

 

「お前のせいだよ! あたしんちは溜まり場じゃねぇ!」

 

 ひゃ~、クリスチャンが怒った~。

 

「クリス、ごめんね。いきなり押しかけちゃって」

 

「い、いや、別にあんたが悪いんじゃないし、それにあたしだっていやってわけでもねぇし……」

 

「意外と綺麗にしているのだな」

 

 そう言えば翼さんって掃除が苦手な人だっけ~。

 えへへ~、このソファー寝心地良いかも……。

 

「意外ってどういうことだ! ……て、ちょっと待てい! あんたはなに勝手に人のもん漁ってやがる!」

 

「クリスちゃ~ん、なにかおかしない~?」

 

「お前は厚かましいんだよ!」

 

「あだっ!?」

 

 とか言いつつも梨をくれたよ。

 当たった眉間はジンジン痛むけど、わざわざ今が旬の梨を選んでくれるんだからクリスちゃんマジ天使です。

 

「んー♪ おいしー」

 

「汚したら承知しねぇからな!」

 

「気を付けます」

 

「雪音にこんな趣味が……」

 

「だから人のん見んな!」

 

 クリスちゃんったら忙しない。翼さんから俊敏な動きでファッション誌を取り上げて、本棚に突っ込んだ。

 

「たく、油断も隙もあったもんじゃねぇ……。親しき仲にも礼儀ありって言葉を知らねぇのかよ、こいつらは……」

 

「「「………………!?」」」

 

 クリスちゃんの口から出た言葉に涙が出そうになってしまった。

 

「あん? あたしには似合わねぇ言葉だってか?」

 

「クリスの口から……!」

 

「親しき仲だと……!」

 

「言ってくれるだなんて!」

 

「………………ぅっ!?」

 

 イエーイ、思わず3人でハイタッチ。

 

「いちいちそんなことで盛り上がってんじゃねぇ!!」

 

 わー、また怒った~。

 

 

 

「今日は良いものを見せてもらったわ。異世界の技術に異なる時代の異端術、未知の分野は最高ね~」

 

「俺としても助かったぞ。如何せん古い記憶のために手の付けようがなかった部分も多くあった。了子氏のお陰で問題なく行けそうだ」

 

 特に世界転移の理論が危なかった。俺の分野ではお門違いも甚だしく、もしフィーネの知識を持ち合わせた了子氏がいなければ出たとこ勝負をしていたところだ。

 ……響には聞かせられんな。

 

「分解・解析・再構築、か……。呵々、どんなものも起源は同じと言うことか」

 

「ええ、そうよ。どんなものも分解してみなきゃ始まらない。外から見てるだけじゃどうにもならないものなのよ」

 

 それはそうだ。外だけできてもそれはただのハリボテでしかない。

 そうは思うが……、夜闇に浮かんだ月を見る。

 変わらず欠けたままだ。

 

「だからと言って月を壊そうとしないでもらいたいものだ。やるなら再構築が容易なものだけにしてくれ」

 

「それは私じゃなくてフィーネに言ってちょーだい。それにそんな容易に直せちゃ呪詛は解呪できないんじゃないかしらね。またね」

 

 終始陽気だった了子氏が帰っていくのを見送った。

 

「……それもそうか」

 

 そして欠けても損なわれない大きな月を視界に納めて、俺はそっと天を仰いだ。

 

 

 

 にたにた笑う月の下、大地を突き抜けさらに底で幾人の生命が魂の限りを尽くし激しい攻防を繰り広げていた。

 ある者は追い、ある者は逃げ、

 またある者は激しい死闘の末にどちらもが動くことの出来ない硬直へと陥り、

 そしてまたある者は敵であったものと魂で語り手を結ぶ。

 

「――っ! す、スゴい、狂気!」

 

「これが初代……!」

 

 道の先から零れ出た微かな気配に、逃げる男女が身を震わせた。

 

「何とおぞましい波長だ」

 

「ハッ! ビッグな俺様にはんなもん関係ねぇ!」

 

 追う少年のうち1人は起こらんとしている事態に焦りを覚え、もう一人は………………バカだった。

 

「私たちも急ごう!」

 

『おう!』

 

 新しい友達ができた少女はその子を残して一人先に進む。

 

 

――この先に何があるのかを、彼らは知っている。

 

 

 

――だが、彼らはまだ知らない。その先で何が起こるのかは……

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