戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
10年の一緒にいられなかった時間を埋めるように、未来や翼さんクリスちゃん達とやりたいことをやりまくっていたらあっという間に一週間が経った。
私の我が儘に付き合わせちゃって申し訳ないなって思ったけど、今更だと笑われてしまったよ。ちょっと解せません。
……それで今日が学園の外泊許可の期限なので一旦向こうの世界に渡ることになりました。見送りは一緒に住んでる未来だけ。
二課の人達が薄情なわけじゃないからね?
ただ世界間移動がこっちの自室と向こうの自室で完結しちゃってるから心配することがない、かつ1日,2日のインターバルを開ければ問題なく転移できちゃうので意味がないだけなんです。
「気を付けてね。響のことをお願いします」
「うむ。任せよ。この身尽きようと必ず守ってみせる」
「もう、怖いこと言わないでよー!」
「それはすまん」
よう君も私も荷物は行きとほとんど変わらない。
変わっているのはよう君の紙袋の中身がこっちの世界のお土産になってるくらいだ。
……こっちのものを持ってって良いのか不思議なところなんだけど、そこのところどうなんだろ。
「起動するぞ」
ウィーン……ううんちょっと違う、うぃよーん? うぃえぃぇん? なんとも表現しにくい音を起こして、門型装置のど真ん中におっきな穴が空いた。
うわ、リアルお先真っ暗。
「じゃあ、行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい」
意を決してよう君と一緒に穴に飛び込んだ。
世界の狭間はまるで宇宙君官途か深海にいるような感じ、なんだと思う。どっちも経験したことないからそうだとは言えないけど、特に何か別の力が働くわけでもなく入った勢いそのままにま~すぐ進んでいく。
「どれくらいかかるの?」
「空間の固定を図ったからな。あと30秒くらいといったところだ。……む?」
変化が起こったのはまさにその時。
「うぇ?!」
ぐんっと何かに引っ張られるような強い力が横向きに加えられた。掴むところがあるわけもなく、私たちはどこかに引きずり出された。
「うにゅっ!?」
「よっと。またイレギュラーか。さて今度はなんだ?」
私が顔から張り付いている横でよう君は無事に着地して辺りを見回す。
「イテテ……。ここどこ?」
狭間と同じくらい真っ暗。でも重力があるから世界の何処かに入るはず……。
「どこかの洞窟……、いや遺跡の内部のようだな」
よう君が山吹色に発光して周囲を照らしてくれた。
周りは見たことのない絵文字もどきがずら~っと並んでる石でできた通路だった。
――うぉぉおぉおおおおっ!!!
「何か聞こえたね」
「向こうの方からだな。……懐かしい気配もすることだし行ってみるか」
奥に進んでいるのかはたまた外に出ているのやら、さっぱりだけど声した方に向かって歩く。
一歩歩みを進めるごとに聞こえてくる音はどんどん大きく盛大に盛り上がっていく。音の発信源に到着したので入――
「ぎゃぁぁぁああああぁぁぁあぁあぁぁああっ!」
るぅ!?
どんな肺活量したら出せるんだって聞きたくなるくらい物凄い巨大な声が部屋から溢れて遺跡内に轟いた。
女子高生30人でもあんな声量は出せなかった。い、いったいこの中にはどんな人がいるんだろう……。
感心した様子のよう君が先に入り、私も続いて入った。
「ありゃ? 真っ暗」
「まったく……、世の中どうなっている……。目が腐るような光景ばっかだな、おい」
また目隠しされてる!?
いったい私の前では何が繰り広げられているんだ!
「な……!? こ、こんなところに……一般人だと……!」
「す、すぐに逃げて下さい!!」
えっと何がどういう状況? 一般人がいたらいけない空間らしいけど、目を塞がれちゃってるからどうしようもないし……。
「おいおい、しゅわっちなにやってんだ、こんな所で……。確かに前に厚着しすぎだから少しは脱げ、と言ったが何も全裸になることはないだろ……。露出狂の変態にでもなってしまったのか?」
「………………………………スッポンポンじゃないか!!」
「驚くくらいならとっとと服着ろ、変態」
あ、解放された。
おおぅ、包帯っぽい者をグルグル巻きにしただけの半裸の男性が目の前にいる。素っ裸で数人に囲まれたがる……なるほど、これは露出狂だ。確かに一般人の私がいちゃいけない場所だ。
「断じて違う! いつもいつも俺で遊びやがって! 今日という日は許さない、ひじっ……? ………………ひ、…………………………ひじ、………………………………………………………………………………………………………………………………………………ヒジリぃぃいいいいぃっ!?!?!?」
「わぁっ!?」
「む」
すっごい……声圧? 吹き荒れる突風に髪が乱れて引っ張られてすっごい痛い……。
「な、何故、お前が……こ、ここに?!」
「さぁ? 気がついたらここにいたな。久しぶり~」
よう君は気さくに話しかけるけど、しゅわっちさんったら酷い怯えようです。いったいよう君は彼に何をしたんだろう。
「鬼神が……怯えている?」
「ど、どういう?」
「くっ!」
「あ」
しゅわっちさんがホントにしゅわっちと飛んでいってしまった。しかも硬そうな……というか絶対硬いだろう岩を砕きながら。
「しゅわっち飛べるようになったんだな……。やっぱ人類ってすごいよな」
「えっと……行っちゃったけどいいの? 知り合いなんでしょ?」
「ああ。別に好きな時に会えるから平気だ。それに、あの月があるってことは他にも知り合いが結構いると思うぞ。生きていたらだが……、おぉ? あれはシニ君のだな」
「あの月? ……うぇ!?」
み、三日月が笑ってる!? こわっ!? 目も口もあってにたにた動いてるしいったいどうなってんの?! ひぃっ! 目が合った!?
そして床下からは頭蓋骨の厳ついお面を付けた蛇もどきがしゅわっちさんを追うように上に登っていく。
「なるほど……異世界だったのか」
「今気付くことなの!?」
「呵々っ! てっきり月が進化したものだと思っていた」
どんな進化したらああなるっていうんだろう。
月が口開いて笑うわ、目がぎょろぎょろ動いているわ、よく見たら赤い液体も口から流してるしで、進化の域を超えてるよ……。
「お、おい! 大丈夫か、キッド!」
「しっかりして、ブラック☆スター!」
「おっと、それよりもこっちのほうが重要だな」
「そうでした」
……? あれ? 人、増えてない? いや、変わってないのかな……? いや、でもさっき大きな人もいたような……?
「いいもの見つけたぞ」
「ゲ、ゲコゥ……」
「カエル?」
よう君の手の中にはカエルが一匹。
「その子のどこがいいものなの?」
とりあえずほっぺにある黒い点をつついてみる。鳴き袋がないから雌みたいです。
「あの少女らが取り込み中のようだから、いったいこれはどういう状況なのか教えてもらえないか?」
手でにぎにぎしながらよう君はカエルさんに聞いた。
「ゲ、ゲコゲコ」
当然答えが返ってくるはずもなく……、いったいよう君はどうしちゃったんでしょ。
「仕方がない。響は知ってるか?」
「え、なにを?」
「ゲ、ゲコ?」
「カエルって焼くと鶏肉みたいになっておいしいんだそうだぞ」
ニッコリイイ笑顔でよう君がそう言った。
それはどういう意味でいったんだろうね。もし私が何でも食べると思ってるならそれは偏見だ。気にならないでもないけど食べるんなら普通に鶏肉を食べます。
「ゲコッ!?」
「いくら私でも食べないからね。……食用のカエルだったとしても」
「誰がドブガエルよ!! ……あ」
……………………!?
「よ、よう君よう君! カエルしゃべった!」
「慌てるな。こんな姿をしているがこの子も人だ。ようやくしゃべったな、エル嬢」
「え、えるじょう? それによう……ひじり……、う、ウソ!? ようお兄さん!?」
煙を上げてカエルが本当に人間の女性になった。そしてそのままよう君に抱きついて泣き始めた。
「おう、久しぶりだ。元気にやってる……のか?」
「お兄さぁぁぁああん!!」
「皆、大丈……夫?」
「どうなってんだ、こりゃ……」
また新しい人が部屋に入ってきちゃったよ……。