戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
「案ずることはない。二人ともただの重い魂酔いだ。死にはせんよ」
泣いてる女性を引きはがして、よう君が倒れ込んだ☆の痣がある少年ブラック☆スター君と三本の白いラインの入った少年キッド君の診察を行う。
命に別状はないようなので一先ず安心です。……重いのにただのですませちゃっていいのかは別として。
「2,3日安静にしたらこの二人ならすぐに治るだろう。一度起きてしまえば安静にする必要も特にない」
「よかった~……」
いつの間にかいた忍者っぽい衣装の少女、椿ちゃんが深く息を吐いた。ブラック☆スターという子がとても大切なんだとよくわかります。
「き、貴様が何者かはわからんが……感謝しよう。動いても大丈夫なんだな」
その隣でキッド君が立ち上がった。
「今がどうでどんな状況なのかは知らんが止めておけ。今の君じゃしゅわっちには指一本触れることは叶わないと思うぞ」
「わかっている! だが、それでも僕はやらなければならないんだ!」
見てわかるほど満身創痍なのに彼は譲ろうとしなかった。
当事者じゃない私にわかることはないけど、でも誰にも譲りたくないって思う気持ちは私もよくわかる。どころかよくやって呆れられてる始末だよ。
それによう君だってちゃんと理解してるしね。
よう君が止めてるのは、ただただ死にかけで行くのは止めろ、てことなだけです。
「やっぱシニ君のせがれってことなのかね……。しゅわっちのアホたれ……いったい何をやったんだ……」
穴の空いた空を見上げてよう君は疲れたように嘆いた。
「あ、あの! 少し聞いても良いですか?」
「ん?」
そうよう君に声を掛けたのは2人を追いかけてきた私と同年代くらいの少女だった。その子は何故か恐ろしいものを見た時のような目を向けて声を震せてる。
「さっきから聞いててずっと気になってたんですけど……、しゅわっちってまさか……そ、そんなわけないですよね~……」
「ああ、そうか。シニ君にせがれができるくらいの月日は経っているのか。分かるはずがなかったな。……しゅわっちってのはさっきの露出狂のあだ名だ。あいつ名前が阿修羅だろ? 堅苦しいからしゅらっちと呼んでたんだが気付いたらしゅわっちになってたんだよな」
阿修羅、しゅらっち、しゅわっち……わからなくもない、ことありません。まったくわかんないです。しゅらっちで徹してあげたらよかったのになんでよりによって光の巨人が飛び立ちそうな効果音になってしまったんだ。
さっきの人も災難です。
「……ま、まじかよ。このガキ、いったい何者なんだよ…………」
少女の隣に立つ柄の悪い少年が……て、いたっけ、こんな人……。
「ただのシニ友だぞ。あ、そうだ。あれが動いているのなら繋がるかもしれないな……。鏡持ってないか?」
「こんなのでいいなら」
手のひらに納まるコンパクトの手鏡を渡すとよう君は息を吹きかけて鏡を曇らせた。そして曇った鏡に指を走らせる。
「何してるの?」
「たしか……
「う、うそ……なんで!?」
「
「なんと!?」
鏡が波打った。そしてよう君を映していたはずが波に合わせて一気に別のものを映し始めた。
「ハロハロ、シニ君おっひさ~」
「うっす! ちゃっす、うい~す。おっひさ~、ひー君。……………………え? ひー君?」
「呵々! 何百年ぶりだろうな。元気してた?」
「もちろんだとも。君の方こそ元気そうでなによりだよ。突然音信が取れなくなって死んじゃったんじゃないかって心配したんだよ~」
ノリが軽い骸骨が現れた。と思ったけどよく見たらお面だった。なのによう君を見た途端ぽけっとした形になって話す度に形が変わっていく。
「君は全然変わらないね~。むしろ幼くなってない?」
「そういうシニ君はデフォルメ化でもしたのか? いろいろあってな」
「僕もだよ」
2人だけで話が盛り上がり始めちゃってる……。早く私たちが待ちぼうけをくらってることに気付いて欲しい。
「ところでそっちのお嬢さんは? それにマカちゃん達とも一緒のようだね」
「おお、そうだった。こいつは響。コッチ風に言うなら職人に当たる子かな」
職人?
私は特に何かを作れる人じゃないんだけど……、どっちかと言うと壊す派だし。でもここの人たちがそれを知るわけもなく私を見て少し驚いていた。
「それで、こっちはシニ君――じゃなくて死神だ。特に名前はない」
「初めまして、立花響です。よろしくお願いします!」
「うんうん。よろしくね~」
死神……だから頭蓋骨のお面をつけてるんだ。そしてこの人(?)を見てるとディバンスたちを思い出すな~。あとやっぱりこの人(?)ノリ軽い。
「それでマカ……とは彼女のことか。偶然会っただけだぞ。それとさっきしゅわっちともあったぞ。露出癖に目覚めたみたいでちょっと心配しなきゃならんが、元気なことはいいことだな」
「……………………全然良くないんだけど~」
そしてついでとばかりによう君がさっきの阿修羅さんのことを話したら死神さんはげんなりしだした。
やっぱり裸で外を駆け回る変態さんは早急にお縄につくべきと言うことですね。
詳しい話は鏡の間で、と言うことで居合わせた少年少女らとその教師2名につれられて死武専なる学校にお邪魔することになった。
「人が武器になって、その武器を用いる人が職人さんか-」
部屋に付くまでにマカという少女を中心にこの世界のことを頭に入れておく。まだ異世界について話して良いのかの判断を付けていないのでその辺りはぼかして、だが。
「な、なかなかにスプラッターな学校なんだね」
何かしらの要因で怪物と化したモンスターを退治するというのには目を輝かせた響も、悪に堕ち殺しなどに悦を感じる存在の討伐なんかもしている、という話ではちょっと引いていた。
かく言う俺もガキに殺しをさせているのに引かずにはいられない。
「これからどうなっちゃうんだろ……」
「大丈夫、私が付いてるから」
ん? 沢山の生徒とすれ違う中、2人の生徒に目がとまった。
「ほぅ……」
最後に会った時はいたく嫌っていたが数百年の年月で考えを変えてくれたらしい。
「呵々、魔女とも上手くやれているみたいだな」
「――っ!?」
エル嬢が袖の中で怯えているが彼女が大げさなだけだったようだ。
「この学園には魔女がどれくらい在籍してるんだ?」
「え? いないよ。学内どころかこのデスシティーにだってもういないって」
「なに? ……シニ君は、この死武専とやらは魔女をどのような存在だと教えているんだ?」
「人々の命を脅かす敵」
「危険極まりない存在だ」
「もちろんこもn――「違います」――の……」
………………………………どうやら俺には他に優先させなければならないことがあるようだ。
「すまない。先に行っててくれ」
「え、よう君!?」
全員を送り出して来た道を一人引き返す。少々離れてしまっていたが人気のない場所でセンサーが良好な場所だったためにすぐ発見できた。
「い、今、たしかに魔女って……!」
「お、落ち着いて、キム。それはたぶんメデューサのことでキムは気付かれてないわよ。だってあなたはソウルプロテクトを掛けているのよ」
「蒼い顔して、大丈夫か?」
「ッ!? だ、大丈夫。なんでも……!!」
比較的落ち着いていた少女が俺を見ると臨戦態勢をとってしまった。俺には闘う意思などないのだが果たして聞いてくれるかね。
「や、やっぱりこの子気付いてる!」
「だ、大丈夫。私が何とかする!」
「む、ちょっと待て。武器を納めてくれ。話を聞いてくれ」
少女の腕が赤く熱を帯び始めるので慌てて手を当て押し留める。4桁程度で焦げるほど柔な体をしていないとは言え熱いものは熱かった。
「聞きたいことがあるだけなんだ」
「き、聞きたいこと? そんなこといって私たちを油断させる気でしょ!」
「そうではない。ただ死武専は楽しいかどうかを聞きに来ただけだ」
「はぁ? 意味わかんない!」
「キム! 相手の話に乗るな!」
この分からず屋ぁああああ!! と、するわけにもいかんよな。はてさてどう説得したらいいものか……。
「待ちなさい! キム・ディール!!」
……意外と何とかなりそうな予感。