戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第10話

 肝心のよう君がいないまま私一人で死神さんのお部屋に着いてしまった。

 知らない人の中に放り込まれてしまったわけだけど、まぁ死神さんも周りの大抵の人が軽いか変な人だから助かったよ。

 あっさり打ち解けて、今は死神さんからこの世界に来ていた頃の踊君のことを聞かせてもらえることになったところだ。

 

「ひー君と初めて会ったのは死武専ができるずっと前、鬼神・阿修羅が誕生するよりも前のことだよ~」

 

「え、あのガキ俺等より年上?」

 

「詳しく覚えてないけど1億は超えてるんだって」

 

 ソウル君の呟きに答えたら、皆のぎょっとした顔が一斉に私を見た。驚いてないのは死神さんだけだ。

 

「立派な老人だね~」

 

「あはは、たまに自分のことを老人とか老兵って呼ぶくらいですから」

 

 都合の良い時だけ、て注釈が入るけど。

 

「それで確か合ったのは何処かの森だったかな? 偶然迷子の世話をしてるところにばったり出会ったんだよ~。いや~あの時は参ったな~。戦闘する羽目になっちゃったし~」

 

 踊君と死神さんの出会いは勘違いから始まったそうです。

 当時のことを思い出すと死神さんがげんなりしたけど、今に繋がる良いことでもあったんだって。

 今の子供の書いたような丸っこいデフォルメお面と違って、その頃死神さんが使ってたのは風化した骸骨そっくりなあまりにもおどろおどろしいものだったやつらしくって、ばったり出会った迷子が盛大に泣いてしまったそうだ。

 そしたらなんということでしょう。当然のごとく颯爽と駆けつける踊君の目の前には、泣いた子供と泣かせた怪しい大人、という構図が出来上がり。

 踊君目線からしたらそれはギルティ決定です。

 

「あの時は結局4,5時間ぐらい戦い続けたんじゃないかな~。決着も付けられなかったんだよね」

 

「し、死神様と互角!?」

 

「うんうん。彼の強さは本物だよ~」

 

 聞いてる生徒さん達が驚くけど、私も同じくらいビックリしてます。雰囲気とっても優しい人っぽそうなのに踊君と互角ってことにです。

 でも当時の踊君だからそこまで強くないのかな……?

 

「あの時は僕も若かった~」

 

「――!?」

 

 そんなことなさそうです。

 のほほんとした声とは裏腹にナニかとんでもないものが垣間見えた気がします。それも師匠以上のスゴいやつ。

 ……どんどん私も人間離れが進んじゃってるような……いや、気のせい気のせい。

 

――ズガンッ!

 

 こんなほのぼのとした空気は唐突にけたたましい重低音に邪魔される。

 悲しいことにいつものことです。もう慣れた。

 

「はふぅ……」

 

「久し振りだな、死神ィ」

 

 ごめんなさい。ウソ付きました。こんな怒った踊君、私知りません。

 別れた時はよう君だったのにやってきたのは踊君――いやもっと大人な踊君になってる。それでも美人なことに変わらない……ていうのはどうでもいい話だった。

 能面のようなニッコリ張り付いた笑みを浮かべて、ドスドスと一歩ずつ近づいてくる。

 

「すこーしばかり学内を見学させてもらったが、面白いことをやらせているようじゃないか」

 

「あ~、子供達を闘わせちゃってること? ごめんね~、ひー君からしたら辛いことかも知れないけど仕方がないことなんだ。できることなら僕だってやらせたくはないんだよ? でもこんな世の中じゃ子供達自身が自衛の力を持つことだって必要なの」

 

 死神さんの意見に激しく同意します。だって変態が空飛ぶ世の中だもん。自衛手段なしに日常生活が送れるとか到底思えません。

 私の世界も一兄達のいる世界も多少変わってるんだろうけどモラルある社会であってくれたことに、凄く感動してる。

 

「違う。それは子供達が子供達自身で選んだこと、おもしろがることなどでは断じてない」

 

「? だったらなんでそんな怖い顔して……」

 

「あれから400年とか500年とか経ってるようで、面を替えるくらいの意識改革が行われたのだと思っていたのだがな。本質は何一つ変わっていないらしいな」

 

 閉じられた瞼を薄く開けて鋭く尖った切れ長の目を向ける。そして太陽のように眩い瞳が真っ直ぐに死神さんを捉えた。

 

「一発殴らせろ」

 

「へぼっ!?」

 

 いきなり私たちの真横で爆風が吹き荒れた。

 中心地なんて言わずもがな、踊君の右拳が死神さんの仮面を捉えていて遠くまで殴り飛ばしていた。

 

「いきなり何するの!?」

 

「何するじゃない。さんざん言ってきたというのにまだお前は魔女は全て悪と考えているらしいな。そしてそれを子供に教えているそうだな」

 

「事実だからね~。今回の鬼神阿修羅の復活も魔女が原因なんだよ? それに魔女は皆破壊の因子を持っている。生かしておく訳にはいかない」

 

 ちょっとムッとする話だ。魔女さんのことを全然知らないから言うことはできないけど、少なくとも地下であったカエルさん――じゃなかった、エルカさんは悪い人じゃない。

 精一杯生きててちょっと泣き虫なだけの普通の女性だった。

 チラッと見ただけの私がこう思うくらいなんだから長年こっちにいたことのある踊君がどう思うかなんて明白です。

 

「たしかにお前の言う通り魔女は因子を持ち悪である者もいる。討たねばならない危険なものもいる。だが――」

 

「君もわかってることだよね?」

 

「――ふざけるなよ」

 

 踊君の放つ怒気がさらに重くなった。お肌がピリピリして、マカちゃん達も身を震わせる。死武専の先生2人に至っては本気で構えた。

 

「それは一部のみ。魔女たちは少々自身の欲に忠実なだけで話せば改善できるものたちばかりだ」

 

「それはない。話してわかるようなやつらなら最初からそうしている」

 

「お前が最初に問答無用で魔女を攻撃したのが原因だろうが。敵意を剥き出しに攻めておいて簡単に話し合いに応じるわけがない。殺されると思うに決まっておろう。話を拗らせたのはお前だよ」

 

「…………」

 

「魔女だって人と変わらない。善も悪も両方の面を兼ね備えている。今の現状を引き起こしたのは他でもない死神であるお前の責任だ。現にこの街の暮らしが楽しいと言う魔女の子もいる。これ以上その子を苦しめるなよ」

 

「え? 魔女の子?」

 

 不意に顔を和らげると扉の方を見た。

 

「もう大丈夫だぞ」

 

「ど、どこが……?」

 

 踊君の声を受けて一人の女の子が顔を覗かせた。

 

「キム!? なんで……」

 

「や、やっほー」

 

「エル嬢も」

 

「う、うん」

 

 キムと呼ばれた女の子の肩に緊張の面持ちで一匹のカエルが乗った。

 

「「ソウルプロテクト、解除」」

 

「「「――!?」」」

 

 二人がそう呟くや否や何人かが肩を跳ねさせる。でも何が変わったのやら私にはわかんないけどね。

 

「本当にキムが魔女?」

 

「うん……」

 

「カエルも魔女になれんのか!?」

 

「これは化けてるだけよ!」

 

「テメェ、あん時の!」

 

「ちょっと、落ち着いて!?」

 

「%☆#$□&’!?」

 

 皆、取り乱しすぎ。てか最後の人なんて言った!?

 

 収拾がつかなくなった部屋にパァンッと弾けるような音が響き渡った。

 

「慌てすぎだ」

 

 踊君の柏手だ。目の前でしたわけでもないのにそれはねこだましのように全員の思考を一瞬止めた。

 

「彼女らのような子を見てもまだ魔女は全て悪だと言い張るか?」

 

「……う~ん…………」

 

「これでもまだ言うのなら俺の知りうる限りの者たちを呼ぶぞ」

 

 ……それは立派な脅しなんじゃないかな。

 

「はぁ……、たしかに僕も早急すぎたのかもしれないね。キム君みたいな魔女さんもいたんだね。ごめんね」

 

「え!? いや私がただ変わってるだけで、そんな死神様が頭をさげるようなことじゃないです!?」

 

「でも! 世界には悪い魔女もいるのは事実、彼女らを討伐するのを止めるつもりはないからね」

 

「結構。俺もそれを止めさせようなんて思っていない。善と悪を見極めろと言ってるだけだ。とりあえず俺の知る限りで分けてみたぞ」

 

 踊君が分厚い紙束を放り投げた。

 

「?」

 

「昔のことで変わってしまったものもいるとは思うが、これは依頼に出されていた魔女の中で俺が知っている善魔女のリストだ。対話を始めるには丁度良いだろ?」

 

「……君、こんなに魔女と知り合いだったんだね」

 

「お前から逃がすのに苦労したぞ」

 

「そんなことしてたんだ。道理であの頃は全然見つからなかったはずだよ……」

 

 素直に紙束を受け取ると死神さんは肩を落として疲れたような溜息を吐くのでした。




原作はどうしただって?
踊君の前で子供を苦しめる存在(原作)など許されぬのです。

……え、オックス君はどうなっちゃうんだって?
たぶん頑張ってくれるんじゃないかな。
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