戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
「あの、聖君大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えるなら眼科に行った方が良いですよ」
「やっぱり痛いですよね。ご愁傷様です」
あははは、ごめんなさい……。一発やっちゃった後、我に帰って今は反省中です……。
「あったかいものどうぞ」
「ほえ? あ、あったかいものどうも」
近づいてきた女性にお茶を頂いたのでほっと一息。フハァ~……。そう言えば、女の子は?
「ママ!!」
丁度、お母さんと出会えた所みたい。お母さんも無事で良かったね。
「あのお姉ちゃん達が助けてくれたの! それとあのお兄ちゃん、昔助けてくれた時のお兄ちゃんだよ!」
え? あの子、踊君の知り合いだったの?
「あー! あの時の女の子か。呵々、元気そうで何よりだ」
「知ってる子なのか?」
制服姿に戻った翼さんが聞いた。どうやって着替えたんだろ? 元の制服に戻れないよ……。
「三年前のあの日に助けた子なんだ」
そう言えば、子供を助けるために腕ごと天井を砕いたって言ってたっけ。こんな偶然ってあるんだ。助けられて良かったよ。
「礼を言うのは俺の方だよ。響の勇気になってくれてありがとな」
「???」
女の子は首を傾げながらも、お母さんに諭され、軍隊っぽい人と安全な場所に送られていった。踊君の言うとおりだ。あの子がいなかったら、戦う以前に逃げることすら出来なかっただろうな。
「うわぁっ!?」
不意に体が光り、制服姿に戻れた。びっくりした~、けど良かった。あの格好のまま帰らないと行けないのかと思ったよ。
あと、翼さんに言わないといけないことがあったんだ。服も元に戻ったので、翼さんの元に駆け寄る。
「翼さん!」
「…………」
なんだか、視線が冷たい。な、何かしたかな。
「あの~、実は翼さんに助けられたのは、これで二回目なんです。その、あの時も今日も、助けて頂いてありがとうございました!」
「二回目?」
「あの日、俺と一緒に近くに倒れてた子だよ。奏が助けた子、って言った方が伝わるか」
「あの時の……!」
あれ? 何かさっきより、目が鋭くなってない? 目のハイライトが見当たらないんですけど……。
「…………い」
「え?」
何か呟くと翼さんは離れていった。
「やれやれ………」
「? じゃあ、私もそろそろ……」
私も帰ろうと思って振り返ると、サングラスを掛けた黒服の人がたくさん並んでいた。その真ん中には翼さんと踊君の姿もある。ついさっきまで隣にいなかった?!
「貴女をこのまま帰す訳にはいきません」
「へ? え!? 何ですか!?」
一瞬で黒服の人たちに囲まれてしまった。私、何もしてないよ!?
「特異災害対策機動部二課まで御同行願います」
ガシャンと大きな音を立てて大きな手錠のようなものを付けられる。こんな手錠初めて見た。鎖のように腕に自由がない、輪っか同士がくっついている、という変わった形をしている。それに重い。
って、そんなことより何で手錠されなきゃいけないの?!
「すみませんね。貴女の身柄を拘束させて頂きます」
謝るくらいなら、付けないで下さいよ~。
そのまま、車に乗せられて何処かに拉致されてしまった。
「……何で学院に?」
連れて来られたのは月明かりに照らされた学校。新しいはずなのに何か出そうな雰囲気があるよ……。
車を下ろされ翼さんと踊君、サングラスをしていない黒服の人に連れられて来たのは、先生達がいる中央棟。そのまま奥に進みエレベーターに乗る。黒服さんが何かに端末をかざすと、扉が何時もより厳重にしまり、エレベーターが変形して取っ手がいくつも現れる。
「あの~……」
「危ないから、掴まって下さい」
そう言って、黒服の人が私の手を取っ手に掴ませる。
「え? 危ないって!?」
「チャレンジャーなら、掴まる必要ないだろ」
私、チャレンジャーじゃないからね!?
「聖さんも掴まってほしいんですが……」
注意された踊君は、腕を組み堂々と立っていた。
「必要ない。俺は響ほど、軟弱じゃない」
ムッカ! 軟弱だなんて言われちゃ黙ってられないよ! これでも踊君に言われて、 しっかり鍛えてるんだから!!
掴んだ取っ手を離して、重心を少し下げて立つ。でもすぐに後悔したよ。踊君を見ると口元が笑っていたのだ。
嵌められた!?
エレベーターがゆっくり動き出し降り始めた。でもゆっくりだったのは初めの一瞬だけですぐに絶叫マシンかと思うほどに加速した。
「キャァアァアァアアアア!?!?」
一瞬、体が浮かんだ!? 慌てて取っ手を掴んで踊君を見ると、悠然と立ち続けていた。どんな足腰してるのか本当に不思議だよ……。そして、このエレベーターは何時まで降り続けるんだろう。地獄行きじゃないよね……。
「そろそろだぞ」
そう言って、踊君が窓を指す。
「スゴッ!?」
見えたのはとてつもなく巨大な空間、壁には変な模様が一杯あり異様な雰囲気を醸し出している幻想的な光景だった。パイプがびっしり敷かれているのがちょっと残念。
やっとエレベーターを下ろしてもらって、一つの扉の前に立たされる。
「逝ってこい」
「字が違うッ!?」
イイエガオの踊君に背中から突き飛ばされ、扉が開く。
パンッ! パンッ!!
鳴り響く破裂音。私、齢16歳で死す……。ガクッ………………?
「て、あれ?」
予想していた衝撃はこず、代わりに頭に当たったのは、パーティーグッズとかでよく見るヒラヒラしたものだった。
「ようこそ!! 人類最後の砦! 特異災害対策機動部二課へ!!!」
「……へっ?」
派手な格好をしてそう叫んだのは、踊君の保証人の弦十郎さんだった。って、何でここに!?
「ハァー……」
「あははは……」
「呵々っ!」
上から順に翼さんが頭を抱え、黒服さんは苦笑い、踊君に至っては大笑いだしている。
「さぁ! さぁ! 笑って笑って!」
「ハイ?」
突如、綺麗な女の人が近付いてきて、肩に手を置いて携帯を上にかざす。
「お近づきの印にツーショットシャシン~♪」
「うぇぇぇええっ!?」
慌てて女の人から離れる
「嫌ですよ!? 手錠をしたままの写真だなんて悲しい思い出として残っちゃいます! それに、皆さんが私を知ってるのは、弦十郎さんがいるからわかりますけど何であだ名まで知ってるんですか?!」
辺りを見回せば『歓迎! ビッキーさま』と書いてる看板がある……。可笑しい……、弦十郎さんも踊君も知らないはずなのに。
「元々、我々二課の前身は大戦時に作られた特務機関でね。調査などお手の物なのさ」
「んん~♪」
そういう弦十郎さんの元に、さっきの女の人が……。
「ぬわぁ~! それ私のカバン!! 何が調査ですか!? 勝手に人のカバンあさったりして~!?」
慌てて取り返そうとしたけど、意外とすばしっこい。てか、この手錠邪魔!
「……緒川さん、お願いします」
「はい……」
カバンを取り戻して、手錠も外してもらった。はぁ、良かった。このまま拘束され続けるかと思ったよ。
「では改めて自己紹介だ。俺は風鳴弦十郎。ここの責任者をしている」
「それであたしは、出来る女と評判の櫻井了子、よろしくね」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
自分で出来る女、って言っちゃえるんだ。凄い。
「君を呼んだのは他でもない。協力して欲しいことがあるのだ」
「協力……ですか? あ……あれはいったい何だったんですか!?」
お二人に問いかけると、互いに顔を見合わせ、了子さんが私のほうに近づいてきた。
「貴女の質問に答えるためにも、二つばかりお願いがあるの。まず一つは今日のことは誰にも内緒♪ そしてもう一つは……」
了子さんが私を抱き寄せる。何か嫌な予感が……。
「取り敢えず脱いでもらいましょうか♪」
「え……。だから、なぁあんでぇぇええっ!?」
やっぱり、私、呪われてる……。