戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
今、私たちの目の前で三十二人のよう君による羽根付きが行われています。
え? 決闘はどうなったのか?
同じくちゃんと私たちの目の前でやってますよ。
「ぐふぁっ!?」
「どうした。聖剣に選ばれた勇者なのではなかったのか?」
「そぅぶふぅっ!」
ね。
どこか一人のよう君が羽子板(
「よう君が化け物過ぎます……」
『その代わり消費量が半端じゃなく、全聖遺物を総動員してももって3分程しか戦闘維持できませんけどね』
そ、そうなんだ。それでも十分な気はするけど、完全に化け物染みてるわけじゃないってことがわかってちょっとほっとしてしまった。
あといつになったらキッド君の模範になるんだろ……。
ぽかすか良い音が響き渡る中で沢山のよう君が一斉に口を開いた。
「エクスカリバーも随分と弱くなったみたいだな」
『むぅ……。おい、小僧。何をやっている』
「で、でも!?」
『ヴァカめ。今こそ私の伝説を見せる時ではないか!」
「!! ……はい!」
挑発に乗せられた一人と一本が光の翼を解き放ち、無駄に仰々しい漢字で羽根付きから脱出した。よう君もよう君でそれを拒もうともせず大人しく見送る。
「――ようやく飛んだか」
これから反撃、と行くはずのヒーロ君よりも、深く獰猛な微笑みを浮かべたのはよう君だ。その笑みのするところがなんなのかそれはすぐにわかった。
「リズ、弾丸の特性変化は可能か?」
『あ、ああ。できるっちゃできるけど……いつも一定にしてっからあたしも大して自信ないし、パティーなんか多分論外だと思うぞ』
『うぇひひっ!』
「その当たりは俺がやるから気にすることはない。二人は学ぶことに集中してくれ。それにしてもキッドはこの辺りをしていなかったのか。これほど有利な武装はそうないというのに、もったいない」
小太刀を仕舞ったよう君は両手にそれも逆手で銃を持ち小指を引き金に添える。さっきのキッド君と同じ持ち方だ。
珍しい持ち方だけど普通に持つよりも近接戦闘も併せて意識したものなんだそうです。銃身で打ち銃弾で切る、がやり方なんだとか。でもそれも武器がリズパティちゃん、つまり魔武器っていう早々壊れないものだから使える技だ。普通の武器なら銃口曲がっちゃいます。……イチイバル製なら壊れないだろうけど。
先にヒーロ君が動いた。
相変わらずの超高速でよう君の目の前に迫ると、さらにそこから左右に複雑な軌道を描いて攪乱を始めた。時折、鎌鼬のような光の刃が猛威を奮い辺りを切り刻んでいく。
それでもよう君には届かない。添えるように銃を当てるだけで、揺らぐ風のようにゆらりゆらりとなびいてやりすごす。
「調整完了、3種生成完了」
「そんな!?」
一瞬よう君の体が幾十にぶれた。ホントに一瞬のことですぐに戻ったけど、元に戻ったその場所ではエクスカリバーを振り下ろしていた最中のヒーロ君を、よう君は手の甲を合わせるように二丁の銃身を重ねてエクスカリバーの側面を白羽取っていた。
よう君の手の先で交差していた銃身があるべき位置へ戻るために内を目指し外へ駆け出した。
伝説の剣を破壊するのはよう君でも簡単じゃないかもしれません。でも壊れないのが必ずしも良いとは限らない、それを証明するかの光景が目の前で繰り広げられた。
「うわぁぁあああ!?」
『すごいすごーい!』
『マジかよ……!?』
折れないがために振った剣の勢いは持ち主が請け負うとことになる。
ピタリと止められたことでヒーロ君の体勢はボロボロです。さらによう君が腕を開くにつれて剣に回転の力が加えられて自由な鳥から束縛された鉄球に早変わり。前回まで開かれ剣が解放されたその時、振り回された
きりもみ回転でヒーロ君が地面を抉り転がっていく。
「今度はこちらの番だ」
両銃口から1弾ずつ弾が放たれた。ヒーロ君は何とか立ち上がって体を隠すように側面に隠れて受け止め弾いた。
「まずは通常弾。ここから派生させていくぞ。よく見ておけよ!」
ヒーロ君を視界に閉じ込めて、キッド君に指示を飛ばす。ブラック☆スター君に続いてやっとキッド君の実習が始まった。
「最初は速度を殺し硬さと回転力に重きを置いた直硬弾」
確かに第二派は遅かった。でも即撃ちされたので剣で前を塞いでいたヒーロ君は見ることができず、こちらも剣で防ぐことにせざる終えない。
ゴィンという鈍い音が響く。
そして……、
「な、なんで!?」
なんとギィィーンという音を絶え間なく鳴らしていた。見ると、当たって弾けるはずの銃弾は全く勢いを衰えさせず障害物に当たり続けている。それもかなりの威力のようでたった2発でヒーロ君が身動きできなくなっていた。
「撃ち出すのは撃ち手の信念。確かな歩みで自我を徹し続ける硬き意思を込めれば、決して屈さぬ直線を引く。故に彼の名は直硬弾。さて、次はこいつだ。威力を捨て硬さを落とし速度に重きを置いた柔奏弾」
よう君はさらにその場で引き金を引いた。……ヒーロ君はまだ剣を盾にしているのにもかかわらず真正面から、しかも同じ直硬弾ならまだ弾けるかもしれないところを、威力も硬さも削った新しい弾2発だけで、です。
さっきよりも何倍も速い柔奏弾はまっすぐまっすぐ一直線にヒーロ君の方向へ進んでいく。
そして剣と、
「何者にも手折れぬ強かさを持ちあらゆる逆境を受け流す柔らかな意思を込めれば、世界に浸透する音を奏す。故に柔奏。そいつは……」
当たらなかった弾がそのままいったら当たるのはもちろん地面だ。でもそれはただの地面じゃない。それはヒーロ君がやたらめったらに振り回して出来上がってしまった、でこぼこしてえぐえぐなフィールドの曲がってるところだ。
構えたヒーロ君を嘲笑うかのように横を通った弾は、わざわざ柔奏弾と名付けられたそれは、名の通り威力も硬さも無いのでズガンともガキンとも鳴らず弾けることもなく地面に当たると、弾んだ。
「んがっ!?」
「跳ねる」
弾んだ柔奏弾が地面の傷口を跳ねて背中に衝撃を与えた。威力が弱くても銃は銃だから衝撃があるわけで、抑えていたエクスカリバーは傾いてしまい今まで止めていた直硬弾が解放されることになる。
真っ直ぐ進み続けようとする弾はぐさりと貫かないまでも体の深くまでダメージを徹してようやく朽ちた。
「今度は直硬柔奏のバーゲンセールだ」
クリスちゃんに若干影響された気がしなくもない言葉を吐き出してよう君が連射を始めた。その勢いはガトリング砲に迫るくらいほどでもう私の目じゃ区別ができないくらいの猛攻で、さっきよりも凶悪なものになっている。
どっちかだけでも大変なのに、これらは組み合わせることで真価を発揮するものだった。
出だしは柔奏弾過多で弾同士で干渉させることで上からでも降り注ぐというなんともあくどいものに、中盤では直硬弾が多くなり、柔奏弾に気を取られている相手に重撃を叩き込むという役割と跳ね返らない壁となって柔奏弾の動きを複雑化するという凶悪な役割を果たし、最後はまんべんなく撃ちこんで囲いを作る。
「し、信じられん。なんという魂コントロールだ。僕にあんなマネができるのか……」
「キッド君なら絶対できる! よう君が今やってるのだって、キッド君ならできるって信じてるからやってるんだよ。だから大丈夫、だいじょーぶ」
目指さないといけない場所の高みを知って打ちひしがれている人がいたので応援しておいた。
その間によう君の構えが微妙に変わっていて、二丁銃を一つに合わせると正面のヒーロ君に向け、膝を曲げ腰を落として二つの銃口を突きつけていた。
「これが最後の弾、名は吸束弾。……最果ての弾丸だ!」
引き金は引かれ二つの弾が飛び出した。どういう原理か二つはクルクルと螺旋を描いて一つの塊のようになって突き進んだ。そして一つの直硬弾に追いつくとその回転力を奪うように力を高め、さらに直硬弾が朽ちると他の直硬弾の方へと向かうように機動を変えた。
それとほぼ同時に先を行って飛び回っていた大量の柔奏弾のほとんどが吸束弾に向かうように方向を変化させており、超高速回転に至り始めているところに身を掠らせると回転力に磨きをかけ、描く螺旋の直径を狭めていく。
「意味はそのままだ。あらゆる全てを胸の内に吸い込み受け留める意思を込めれば、全ての思いを力に変える束を為す」
既存の全ての力を吸収集束させた螺旋はさながら横這いの竜巻のよう。
地平線や水平線なんて区切りでさえも一つにするかのごとく勢いでヒーロ君に襲いかかった。
「うぐぅ……」
「呵々、人の上に立ち共に歩んでいく死の神としてこれほど尊き者はないと思わないか?」
呻くヒーロ君を前にしてよう君は屈託のない笑みを浮かべていた。
「ふむ、少々やりすぎたか? これではソウルの出番が望み薄になってしまいそうだ」
いやいや、もう今更感ぱないです……。