戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
「……お早いお帰りだな。聖」
どーも、どーも。皆さんこんにちは、それして……サヨウナラ♪
「へにゅりんっ!?」
こうして私の人生の幕は今、下ろされた……れた……れた…………れ……た…………
「仕方が無いな。この私が直々に切ってやろう」
「自分で上げるので切らないでへいきへっちゃらです!」
私の中のちっちゃな私が超特急でえっちらおっちらと下りた幕を引き上げる。
そして開いた目の前には、聖母のような微笑みを浮かべ出席簿の角を手で撫でる
ちー姉に切ってもらったら最後、幕と一緒に玉の緒も切り落とされそうだよ。
「ハッハッハ、遠慮するな。これも教師の役目ダ」
「そんなのなにゅぅっぶっ!?」
本日二度目の出席簿落としが頭に炸裂した。
とほほ……、この二回で何個の脳細胞が死んでしまったのか心配だよ。これ以上おバカになったら流石に困る。学校二つも行くことになっちゃったし……。
「大丈夫だ。それ以上にポコスカやられている一夏が大丈夫なんだし。……勉強内は」
「私を舐めるなよ。何処を叩けばどうなるかなど承知している」
「勉強だけでもダメだよ! ちー姉もそれわかっちゃダメなやつ!? てか一兄のアレってちー姉の故意だったの!?」
「「ウソだがな」」
「ウソなんかい! て、よう君のはどこからどこまでがウソなの?!」
「ご想像に任せする」
……勉強内だけがウソってことで考えといていいかな。」
「それで、何故こんなに遅れた? 話では一昨日だったはずだろう」
「うむ。それが転移中に知り合いのバカ騒ぎに巻き添え喰らってしまってな。そのまま余所の世界で漂着していたのだ」
ちー姉とよう君は何でもなかったかのように……どころかやり遂げた感たっぷりにハイタッチしてふっつーに話を戻してしやがりましたよ。
「……て、え?」
「転移に影響を与えるほどとは、お前の知り合いは末恐ろしいな」
「空も飛べるようになっていたが……、よもや千冬嬢は飛ばぬよな?」
「人間を止めたつもりはない」
うわー、よう君すっごーい。ちー姉相手にタメ口使ってるー。
いつもなら即座に出席簿を叩き落とすのにそれを咎めようとはせず、ちー姉も口調を軽くして話し出す。
ま、まさか私が勉強に明け暮れてる間に二人の間に何か進展が!?
「確かに進展はあったぞ。ただし響の考えているようなことでは全くなかったがな」
「むしろ響のせいでといったほうが正しいだろう」
ちょっとピンクな邪推してたらあっさり看破されてしまった。私の兄姉の勘の良さにもはや恐怖しか感じられません。
てか何故に私のせい? なんて思わなくもないけど……………………現実逃避はこのくらいにしときます。
「なんでちー姉が世界転移のこと知ってるの!?」
「なんで、て俺が教えたからだ」
だろうね! 呆れた目で見なくても、私が言ってないんだからよう君しかいないのはわかってるよ。そうじゃなくてなんでちー姉に教えたんだかが聞きたいんです。
ジト―と半目を向けて睨むと、冷ややかで蔑むような目が4つも帰ってきた。
「な、なに?」
「「元はと言えばお前が原因だ」」
「うぇぃ!?」
私、何かしたっけ!? 特にやっちゃった記憶なんて持ち合わせてない。どっちかって言うとよう君がズタボロになったり槍になったりしたのが原因じゃないかと思う。
……うん。やっぱり私は悪くない。
「臨海学校の時に一夏を除いた奴らで話したらしいじゃないか」
「え、うん。話したよ。色々と」
「その時に自分がどんな話をしたか覚えているか?」
…………えーっと、確か最初にライブで起きた事故の話をして、それから色んな人に助けられてよう君と暮らすことになった話、……あと生き残ったこと虐められた話、だったかな。
「うん。でもちゃんとノイズのことは話さないように気を付けたよ」
「…………はぁ」
深い溜息を吐かれてしまった。
「……千冬嬢」
「……わかった。響、この世界でそのような大きな事故は起きていない。精々あっても人が一人、二人亡くなる程度だ」
あ……。
「仮にあったとしてもだ。一夏と出会う前、響は5才以下だったのだぞ? 小学生どころかまだ園児、そのような子供に大人公認の虐めがあるわけ無かろう。そも逃げるという行為すらできるか怪しい年齢だ」
……。
「えっと……、まさか……」
「あの場にいたほぼ全員が気付いている。気付いていないのはオルコットくらいだ。まぁ、あいつもそろそろ調べている頃だろうがな」
「箒ちゃんにまで気付かれちゃってるんだ」
「むしろあの中では箒が一番最初に気付いていたぞ。同じ国で過ごしていて事件があったかどうかくらいわかるに決まっているだろう」
あっはっは~…………ごもっともです、はい。
「ちなみにデュノアを通じてボーデヴィッヒも調べているとの話だ。2学期にでも入れば聞かれるだろう。覚悟しておけ」
「よ――「手は貸さんぞ」――攻めて最後まで言わせてくれてもいいじゃんか……」
一人一パタキくらいは覚悟しとくべきなのが決定しちゃったかも……。
「いつかは話さなければならないことだ。それに話したお陰で昨日までのように世界を超えることができたのだぞ。そう悪い話でもあるまい」
「そうだけどー」
……て、あれ? もしあの話してなかったら夏期課題が倍になることもなく平和に……
「留年決定だな♪」
「わー、話してて良かったー!」
平和どころか、未来とクリスちゃんに殺される所だったと言うことですね。
ぐっじょぶ、あの日の私。
「留年だと?」
「響は向こうの世界でも学生なのだ。年齢も今と完全一致でズレはない。今回繋がったのも、二つの世界で基点の響が一致したからとみるべきなのだろうが……、まぁ、そんな話はどうでもいいことか。その都合でこれからは向こうの学院にも通うことになった」
そうよう君が言うや、じぃーっと私を見つめるちー姉。その目は困惑と不安を訴えてきます。
「…………………………大丈夫なのか?」
主に二つも掛け持ちできるのかという心配を。
私ってそんなに信用ないのかな……。これでも頑張ることには自信があるんだからね。同時通学だって熟してみせます。
「赤点目前だった奴が言えたセリフか?」
「……ひゅ~」
視線という名の矢がグサッと胸に突き刺さる。
「大丈夫だ」
「よ、よう君!!」
「向こうには未来という心強い少女が手綱を握ってくれている。彼女の手にかかればこんなじゃじゃ響でも7割は取れるぐらいびしばし扱いてくれるだろう」
「ぴゃ!?」
上げて落とされた!?
しかも入試前や夏休み前のオホホホと笑いながら私を縛り続ける未来を思い出すような発言をしてくれやがりました。
ううぅ、何だか寒気が…………ガタガタガタガタ。
「とはいえ二つの学園で全く別のことをやっていくと、流石の彼女でも無理があるので……」
「ふむ。それはそうだな。ではどうすると…………」
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナ…………」
『オホホホ、ニゲチャダメダヨ、ヒビキ-』と言ってひたすら勉強を詰め込んでくる未来の顔を思い出して震えの止まらない私を横に、私の兄姉は長々と教育方針を語り明かすのでした。
これにて長くなってしまった閑話編終了です。
本来ならもう少し短くまとめてしまおうと思っていたのですが、予想に反して倍近く……。これって閑話と呼んでいいのだろうかと疑問が尽きませぬ。
次回より終章『SS編』スタートです。