戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
ついにこの日がやって参りましたよ-!!!!
「ビッキーってばテンション高すぎ」
「仕方ないわよ。なんかここんところあっちのことで色々忙しいらしいじゃない」
「うん。詳しいことは言えないけどとっても大変みたい」
皆さんのお察しの通りここは未来達のいる世界、現在未来と弓美ら三人娘、つまりいつもの5人でお出かけ中であります!
どこへ向かっているかなんてことも多分わかりきったことだと思うけど、一往念ため。
今日は翼さんのライブの日なのです! 一日千秋の思いで待ち続け、カレンダーに八つ当たること幾十回、見つかる度に精神科を進められたりとかしたけどそんなことはどうでもいいこと。
もうすぐライブかと思うと、こう体の奥底から振動が!
「滾る! 滾るぞぉおおおっ!」
「……な、なんだか、燃えてらっしゃいますが、あんな大股開いたはしたない格好で大声出して乙女として大丈夫なんでしょうか…………?」
「へーき、へーき。あれも
「響はあれがいいんだよ」
「「「いいの!?」」」
「皆どうしたのー? 早く行こーよ!」
遠くで声がしたと思ったら未来たちが随分遅れてた。あー、どっちかと言うと私が早すぎるのか。
手招きで促して来るまで待とうっと、ん? ポケットが揺れる。いやーな予感しかしない。
「うぇー……、はい、こちら響。師匠、何かあったのでしょうか?」
『こんな時に申し訳ない。至急本部に来てくれ。山口に向かっているクリス君たちから救援要請が入った。……新型を含むノイズの大群に襲われているらしい』
「っ!? 分かりました」
嫌な予感がやっぱり的中!?
なんてこったい、こんちくせう! せっかくのライブなのになんてタイミングで出てくるんですか。てこんなこと前にもあったっけ……。
あれか、私と未来が約束したら有事に巻き込まれるのがお約束にでもなってるのか。もしそうなら神様だろうと責任追及してぶっ飛ばしてやる!
「皆、ごめん。私行かないと」
「ライブはどうすんのよ!?」
「あははは、私の分まで皆で楽しんできて」
残念だけど大事な友達のピンチに駆けつけないわけにはいかない。それにもし私が行かなかったら翼さんが行くって言い出すだろうしね。結局見れないんじゃ、私が行った方がマシって話です。
「すぐ行きま――『お二人さん、その必要はないぜ』――え?」
通信がザラザラと揺れると私の言葉を遮って、一人の女性の力強い声が割り込んだ。それは私たちのよく知る人物で、風来坊でもやってるんじゃないかってもっぱら噂な私が憧れる人たちの片翼。
『デュランダル奏者、天羽奏。潜む悪を倒すため現着ってな』
「『奏(さん)!?』」
「電光刑事バン!?」
弓美がなんかいってて気にはなるけど私の中では今更な意味不明語なのでちょっと今は無視。なんで奏さんがこの通信に割り込めちゃってるのかってことのほうが大事なのです。今までどこで何をやっていたのかも聞きたいし、今どこにいるのかも――て、本当にどこにいるんですか?
『奏、今どこに?!』
『言ったろ。現着って。当然、現場だよ』
ツンデレ子ちゃんの、げっ、なんでこんなところにいやがる!? というツンツンした声や聞き慣れてしまった爆発音なんかがスピーカーから零れて聞こえてきた。
奏さんってばマジで現場にいるみたいです。
師匠共々呆気に取られて声が出せない。
『あー、翼の晴れ舞台ってのもあっけど、聖に頼まれたんだよ。岩国の方で杖の取引があるから、万一の場合のため見といてくれって』
勿論何事もなけりゃそっちと合流出来る手はずでな、と以前と変わらないあっけらかんとした態度で付け加えた。
でも心強いと思う反面で不安が拭いきれない。
相手には新型も混じっているという話だ。いくら奏さんでも初見じゃ危険……。
『へぇ、こいつらが噂の新型ってやつか。ちょっとは楽しませてくれよ! デュランダルの全開が出せるくらいにはよ!!』
『~’%”#’(゚Д゚ll)~($”』
………………あ、大丈夫そう。
何か悲鳴のようなものが聞こえてくるくらい奏さんは活き活き狩りをしてるみたいです。キイキイして耳の痛くなる音もやだけど、それに紛れて肉がねじ切れるようなおぞましい音まで聞こえてくる。
これ切ってもいいかな? いいよね? もう聞いていたくないんですけど!? うぷ……気持ち悪くなってきた。
『ラ゙ァッ!! と、そうだった。後輩の楽しみの時間は邪魔させねぇから、安心して楽しんできな』
それっきり奏さんの声が聞こえなくなった。どうやら通信を切ったみたいです。殲闘音(誤字にあらず)も聞こえなくなってる。
もう向こうには聞こえてないってわかっててもこれだけは言いたい。
「……それだけなら、闘い始める前に切って欲しかったです」
『まったくだな』
師匠とはまだ繋がってたんだ。深い溜息を吐きながら同意をもらってしまった。
それにしてもクリスちゃんは大丈夫なんだろうか……。音声だけでも凄いグロテスク感が半端じゃないのに目の前でって……トラウマになってないと良いんだけど……。
「どうしたどうした! 新型ってのもこんなもんかァッ!」
奏は全力の咆哮を上げてISノイズと斬り結んでは、デュランダルの絶なる刃でぶつ切りにしていた。彼女の背後では累々とノイズが亡骸……ではなく残灰を晒している。
響の思ったように繰り広げられる光景はグロテスクの一言に尽きた。
やはりこの光景にはさしものクリスも恐怖を
「さっすが、天羽先輩。あたしも負けてられねぇな!」
覚えなかった……。
むしろヒャッハーなる叫び声を上げて共鳴していらっしゃる。
だがそれも当然だ。この少女はサージェに育てられたようなもので、戦場を知る子だ。人ならともかく灰になるノイズに恐怖を覚えるはずがなかった。
そしてこの二人はバトルジャンキーなアベンジャーとトリガーハッピーなアベンジャー、共に翼のパートナーなどなど意外と共通点が多い。
「「ヒャァッハァアアアッ!!」」
そのため二人の相性はとても良い、それはもう最悪なまでに。
斬撃も銃撃も激しさが増すばかりで周りは焦土と見間違うほど悲惨だ。こうなって始めて風鳴翼がいかに偉大だったか、後輩の立花響が彼女たちにとってどれほど重要だったかに気付かされる。
((((((誰か止めてくれぇっ!))))))
ストッパー大事、現場にいる大抵の方の心が一致した瞬間である。
「ちょっ!? 僕を守るために来たんじゃないんですかぁーっ!?」
そして彼ら以上に被害を被り同情を買うのは悲鳴を上げて走り回っている男性、ウェル博士。彼はただ杖――ソロモンの杖を受け取りに来た研究員で奏者の二人が最優先で保護しなければならない人物だ。
「おぉぉわぁっ!? 僕ごと切る気ですか!?」
……ならない人物なのだ。
「ぎゃぁあああっ!?!?!? ちょっとキミ! 僕の首に弾丸が掠ったんですけどぉお!? 本当に守る気あるんですよねぇ!?」
「「ごちゃごちゃうるせぇなっ! テメェから討つぞ!」」
「ファッ?!」
………………………………ならない人物だったよね?
と、取りあえずノイズもあと僅かだ。
師匠からの知らせを受けてからしばらく、私たちは無事に会場入りを果たした。
いつでも飛び出せるように心構えもした上で何度か奏さん達の戦況を確認してたけど、概ね良好みたいで行く必要は皆無とのこと。
ついさっきでも電話したんだけどほとんど終わってるって話で愁いは消え去った。
「いやー、凄い人だったわ。流石は今をときめくアーティストのライブ。人の数がハンパじゃないわ」
「どこもかしこも人でいっぱいだったわ……」
「もう少し準備しておけば良かったです……」
「ふふ、響を信じないからでしょ。あ、響。クリスたちは大丈夫そう?」
サイリウムを買いに行ってた未来たちが戻ってきた。
ちなみに私は持参してきてる。遠い昔のことになっちゃったけど、これでも経験者だからね。ライブの販売が途轍もなく込むことを知ってるのだ。
未来にしか信じてもらえなかったけどね! 三人には聞き流されてしまったよ……。
「うん。始まる頃には来れそうなんだって」
「良かった。ちゃんと皆で見れるんだね」
師匠に教えてもらったことをさくっと伝えたら未来の顔が綻んだ。詳しいことが聞けないのもあって私より不安は強かったんだと思う。
ほっと吐いた未来の息はとても深かった。
私としては今更なに遠慮してんだYO!とでも言いたいけど、政府の監視とか未来たちに付けさせたくないのでここは我慢。
未来がそれでも聞きたいって時まで私は待つ。……言われたら踊君に頼んで政府にO・N・E・G・A・Iしてもらえば良いしね。踊君万歳!
「てな話は横に置いといて」
「へ?」
「踊君とは会えた?」
余計なことを考えていたら重要なことを思い出した。
「タマ先も来てるの?」
先生のタマゴ、だからタマ先。
「うん。まだやることがあるから先に現地入りしてるって朝早くに出かけたよ」
「私は見てないかな。皆は?」
「あんな美人で変人、目の端に入っただけでも足止める自信があるわ。今日も浴衣とか着てるんでしょ? でもあたしは足を止めてない。よって見てない」
「弓美に同じく」
「創世に同じく」
「そ、そっか」
なんと酷い理論。でも反論の余地なし。
私でも今の踊君の姿は見たら足を止めると思うから。
「ん?」
関係者以外立ち入り禁止エリアに踊はいた。響の念が聞こえたはずはないのだが天井を見上げて首を捻っている。
「調! たぶんコッチですよ! ……あ!?」
「待って、切ちゃん。 ……い?!」
「……うぇ?」
「「おー!」」
わけがわからないよ。
「このお姉さん、やるですよ!」
「一つの母音で二音を埋めるなんて!」
どうやらまた勘違いが発生したようだ。ひそひそと話しだした二人の少女は迷いなく踊をお姉さんと言ってしまった。
聞こえているくせに踊は常と訂正しないで話を進める。
「それで君たちはこんなところでなにをしてるのかな?」
「え、えっと、それは~……」
切ちゃんこと切歌は優しい笑みを浮かべるお姉さん(笑)に問われて目を泳がせた。となりの調は我関せずの方針を貫き責任を全部押しつける腹づもりのよう。
「んぅ……。ここは結構入り組んでいるし、迷っちゃったのかな」
聞いて置いて自己完結したらしい。踊は勝手に納得していくつか道を示した。
「お手洗いならあっち、会場に行きたいならそっち、売店は向こうで、風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴの控え室はこっち。舞台裏もこっちだよ」
「おぉ! ご親切にどうもありがとうですよ!」
「いえいえ。お役に立てて光栄です」
「…………そこまで、教えてもらっていいのかな?」
「いいんです」
(注意) よくありません。
「気を付けて下さいね」
「はーいデース!」
「……ありがとう、ございました?」
踊は笑顔で二人を見送った。他の誰かに見つかったら雷が落ちてもおかしくないが、見つかっていないので気にしない。
「あのお姉さん凄い格好でしたね!」
「でも、綺麗だった」
「やはりマリア嬢の関係者なのだろうな~。なにせ聖遺物を持っているようだし。まぁ、悪い子ではなさそうだし惨事にはなるまいか」
誰もいなくなった通路でぽつんとゴスロリ姿の男の娘は呵々と笑う。
「あぁー!? 探しましたよ、ディレクター! ちゃんと仕事して下さいよ!!」
「む、すまない。すぐ行こう」
ただの日常が流れている中で、
世界の存亡を掛けた戦いが起ころうとしているなど、
この時の彼らには知る由もない。
踊君がゴスロリなわけ
・よう君でないとはいえそれでも見た目が10代
・前情報で男と知られている
・独創性が足りない(踊君の中の演出家のイメージでは)
・あまり目立たない(本人が自覚してないだけ)
なのでより目立ち奇抜で若造だと舐められない、誰もが二度見をしてしまう奇をてらった格好を踊君なりに模索した結果こうなった。
これには響も言葉が出なくて間違えて見送ってしまったとのこと。