戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
「重要参考人として、もう一度本部まで連行させてもらいます」
「へ?」
いきなりそんなことを言われた。
放課後、踊君に出された補習課題を終わらせて感動に包まれようとした直後、翼さんが教室にやってきたのです。そしてまた手錠をされ連れて行かれてしまった。
「やぁ。良く来てくれたね」
「さあさあ、座って、座って」
全く良くないですよ……。そう言うなら連行しないで下さい。手錠なんてしなくても来ますから……。踊君も笑って見てないで助けてよね。
「それじゃあ、この間のメディカルチェックの結果発表♪」
了子さんが映像を出して、説明を始めた。
初体験の負荷は残ってるけど、体に異常はほぼ見られないらしい。でもほぼ……なんだ。
「そうね。貴女が聞きたいことはそんなことじゃないわよね」
「教えてくれませんか? あの力のことを」
翼さんがペンダントを取り出した。
「あれは、天ノ羽々斬。翼の持つ第一号聖遺物だ」
聖遺物? 何それ?
「聖遺物とは、様々な歴史に登場する、現在では到底造れない程の異端技術で造られた遺物だ。多くは遺跡から発掘されているんだが、如何せん遙か昔の産物で、大部分が破損してしまい、当時の力を保っているのは希少なんだ」
「この天ノ羽々斬りも刃の極一部の欠片に過ぎない」
「その欠片に残された僅かな力を引き出す唯一の鍵が特定振幅の波動なの」
「つまりは、歌。歌の力で聖遺物は起動するのだ」
そう言えば、あの時も胸の底から歌が沸いてきたんだ。
「だからとて、どんな歌、誰の歌にも聖遺物を起動させる力が備わっているわけではないッ!」
つ、翼さんが叫んだ。流石、歌手……耳がキーンとする。
「その通りだな。だから、聖遺物を起動させ身に纏うことが出来る者達を彼ら政府は適合者と呼ぶんだ。それが翼嬢であり、お前だ」
「どう? 分かってもらえたかしら? 貴女に授けられた力について」
「あの!」
覚悟を決めて声を張って、言った。
「……全然分かりません」
皆に呆れた顔をされてしまった。踊君に至っては恥ずかしそうに顔を覆ってしまう。仕方ないじゃん。わかんないものはわかんないんだから。
「いきなりは難し過ぎちゃいましたね……。だとしたら、聖遺物からシンフォギアを作り出す唯一の技術、櫻井理論の提唱者が私であることだけは「それだけ覚えてどうなりますか」……もう、失礼ね~」
「はぁ~、取り敢えず今は、シンフォギアにはノイズと戦う力があって、それを響は使えるということが理解できたら良いでしょ。櫻井理論などについては後日ゆっくりねっちょり教えたほうがいいと思いますよ」
「……それもそうね」
ねっちょりって何!? 二人の笑みが若干黒く見えるのは気のせいかな……気のせいだよね……。
ま、まあ、聖遺物については理解できたと思う。
あれ? でも、よく考えたらそもそもの話、私は聖遺物を持ってないよ。なのに、どうして?
「これが何なのか、君にも分かるはずだ」
弦十郎さんに促された踊君は、モニターの画像を切り替えX線の画像を出すと、心臓近くにある白い点を指した。
「あ、はい。三年前の怪我ですけど?」
「心臓付近に食い込んでいるせいで、手術でも摘出されなかった無数の破片。調査の結果、かつて奏ちゃんが身に着けていた第三号聖遺物、ガングニールであることが判明しました」
「「!?」」
ガタッン!
大きな音を立て、翼さんが壁に倒れ掛かった。
「だ、大丈夫か?」
「問題、ありません」
あぁ……凄く無理してるのが分かる。翼さんは頭を押さえ出ていく。やっぱり私の……。
「ちょっと待ってくれ」
……踊君、空気読もうよ。そっとしておいてあげようとか、思わないの?
「翼嬢にも関係がある大切な話があるんだが……」
“ウィーン、ウィーン”
「ノイズ、出現!!」
これ、警報!? またノイズ……?
「ちっ、タイミング悪いな」
「行きます」
「待て!! 翼ッ!!!」
弦十郎さんの静止も振り切り、翼さんが行ってしまった。
「あの! 私も行きます!」
「響君、我々に力を貸してくれるのか?」
「誰かがやらないと、ノイズの被害者はどんどん増えていくんですよね。誰かのためになれるなら、私も戦います!」
すぐに部屋を出て、翼さんの後を追う。
*****
……翼嬢も響も行ってしまった。
折角のタイミングだったのに、どうしてこうなるんだか。
「誰かのため、ですか。優しい子ですね」
「はたして、それだけなのだろうかな。ついこの間までただの高校生だった子が、誰かのためにと命をかけられるというのは、異常なことだ……。それに、あの子の目は……」
流石、ダンナ。気付きますよね……。俺のせいでもあるけど、響の精神状態は原作よりも非常に危ういバランスになっている。
そしてそのことに本人が気付いてないのも痛い。このままでは、心が壊れる可能性だってある。ここで止めなければならなかったのに、少し時間を掛け過ぎた。
今のまま、あの子に会えばどうなるやら……。
「聖君も気付いているのだろう?」
「ええ、でも俺には止められないんですよ。……ああ、そうだ。ダンナ、もし響が鍛えて欲しいと言ってきたら、引き受けてくれませんか?」
「? そうか……何か抱えているのだな。わかった。俺に出来ることなら、何でも手伝おう。ただし、その時は君も一緒にだがな」
呵々。ダンナに教えを仰ぐってのはいいかもしれない。この世界じゃ、俺はあまりにも弱すぎる。
「それはありだたいです。その時は俺もお願いします」
「任せておけ。じっくり鍛えてやろう」
「翼さんがノイズと接触しました!」
そろそろ戦闘が始まるみたいだ……。
映し出された映像に目を向ける。ノイズは人のいない静かな路上に出現したようで被害は無さそうだ。それに大した数もいないようだし、二人いればすぐに終わらせられるだろう。
「…………協力が出来てませんね。あれじゃあ本来の半分くらいですかね?」
「どうにかせねばならんな」
「「ハァー……」」
俺もダンナも同時に溜息を吐き、周りもやれやれと言った感じの雰囲気を出した。