戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第十六話

 あの後ちゃんと、未来との約束に間に合うことができた。

 翼さんや踊君のことを思うと素直に楽しめなかったけど、流星群はとっても綺麗だったな~。未来と一緒に見れて本当に良かった。

 それで、今は踊君に呼ばれて、何時もになってしまった司令室に眠っている翼さん以外の関係者が集められている。

 

「態々集まってもらってすみません」

 

 皆が集まると開口一番にそう言った。まあ、そう言われても誰一人返事はできなかったんだけどね。だって……

 

「もう直ってる!?」

 

「ん? ああ、これのことか」

 

 踊君は自分の腕を見て、ようやく周りが戸惑う理由に思い至ったみたい。あーとか、うーんとか唸って、何を思ったのかおもむろに右手で左肩を掴んだかと思うと、ガシャッと音を立てて引き千切った。……ひぃ!?

 

「だから機械だってば。それに直ったわけじゃないぞ。単なるハリボテだよ。ほい」

 

「キャアアァアア!?」

 

 千切った腕を投げつけないでくれないかな!? た、確かに中身はスカスカで軽いけどさ、怖いよ!

 り、了子さんはよく普通に触れますね!? 弦十郎さんもほ~、とか言って感心して見てるし……。

 

「あの、櫻井女史。そろそろ腕を返してもらえませんか? 片手じゃ話しにくいんですが」

 

「え~。もう少しくらいダメかしら。話すだけなら腕は必要ないでしょ?」

 

「残念ですけど、ちょっと入り用なんですよね」

 

 了子さんから腕を返してもらうと、またがシャッと音を立てて付け直した。ロボットものでよく聞くくっつく最中の音は嫌いじゃないけど、人の姿でされるとちょっと……ね。

 

「では聞かせてもらおうかな?」

 

「呵々、尋問って奴ですね」

 

 なんで踊君は楽しそうなのかな? 私には理解できないよ……。

 

「君がアンドロイドというのは本当なのか? 君の過去の三年のデータは全て入手しているが、特別可笑しな点はなかった。今のだけでは義手とも取れる」

 

「それはどうかしらね? 確かに、身体検査も一般的で普通、全くもって可笑しくはないけど、両腕とも義手なら可笑しいわよ?」

 

「えっと~、どうしてですか?」

 

「さっき持った感じだと重さは人の腕と大して変わらないけど、中身がなかったわよね?」

 

 気持ち悪かったけど、確かに軽かった。もっとも腕の重さなんて知らないけど。

 

「ねえ、踊君。本来ならその腕の中身は詰まっているはずなのよね?」

 

「勿論です。そうじゃないと戦えませんよ」

 

「……ッ!?」

 

 踊君がからかうように笑っていた。うっ………久し振りに踊君を可愛いと思ってしまった。目元を緩めてニコッと笑う姿はもう美少女だ。直視できない。

 

「なら、なおさら可笑しいわ。金属の塊を両腕に付けているのに60kgを超えないなんて有り得ないわ。どうやってやったのかしら?」

 

「本当に俺がアンドロイドだったなら、予想が立っているのでしょう?」

 

「ええ、まあね。デキル女ですもの。でも貴方の口から直接聞かせていただけないかしら?」

 

 二人だけで会話を成立させないで下さーい! 私たちは誰一人ついて行けてませんよー!

 

『南無です』

 

 ……え、誰ッ? き、ききき、気のせいだよね?

 

「ククク、電磁力で地球の磁場に逆らっていただけです。実際は500kgくらいだったと思いますよ? 他の検査は全部機器に介入して表示を変えてもらいました」

 

「またデタラメな……」

 

「呵々っ、自分でもそう思います」

 

 も、もう聞こえないし気のせいだったんだね。キョロキョロ辺りを見回してみたけど、私達以外に誰もいない。

 

「……ふぅ~」

 

「どうかしたの?」

 

「い、いえ! 声が聞こえたような気がして。でも気のせいでした」

 

『気のせいじゃありませんよー!!』

 

「「「!?」」」

 

 また聞こえた!? ど、何処から?

 

「む? AIか。いきなり喋らんでくれよ」

 

『もー。酷いですよー。いつもいつも私を除け者にしないで下さい!』

 

 踊君の中から聞こえてるの!? もう何でもありだね……。

 

「えっと……その声はなんだ?」

 

「今のは、昔俺が作った演算補助プログラムのAIです。気付けば色々なデータを取り込んだり作ったりして勝手に成長してるんです」

 

『皆さん、初めまして! 踊さんのAI、イアです!!』

 

「自分で名付けしてるし……」

 

『むー! ずっとAI、AI、呼ばれるのが嫌で一生懸命考えたんですから!』

 

「一所懸命、な。引っくり返しただけだろ。それにお前にも俺にも一生という定義はないぞ」

 

『そういえばそうでしたね。でもちゃんと考えましたよ。とある小惑星から取ったんですよ』

 

 機械だもんね。……じゃなくて、AIって成長するんだ。あれ? 話が変わってる……戻さないと。

 

「えっと。イアちゃんよろしくね。えっと、踊君がアンドロイドなのはわかったけど何のために造られたの?」

 

「お前のためだ」

 

「はぇ? ……えぇええッ!?」

 

「てのは嘘で、お前の胸の中にある聖遺物の管理のためだ」

 

「何だ……嘘なんだ……。ざん……じゃなくて。どういうこと?」

 

 あ、危ない。変なことを口走るところだった。頭を思いっきり振って言葉を追い出す。誰にも聞かれないで良かった。

 

「? まあいいや。俺は聖遺物の悪用を止めるために聖遺物と同時期に造られたんだ。それで、ずっと世界中を回って聖遺物のある遺跡の保護と監視をしてる」

 

「ならばここにいるのは危険なのではないのか? お前は監視しないとならんのだろ?」

 

「大丈夫ですよ。既にほぼ全ての遺跡は破壊しましたし、人類が発見した聖遺物についての情報は全て手元にありますので。それに世界でもここが一、二を争う最大の危険地帯なんですよ?」

 

 はい!? 何で日本が危険なの? 確かにノイズが多いけど、アメリカとかの方が危険なんじゃ。

 

「響は昨日戦っただろ」

 

「雪音クリスのことか……」

 

「間違っちゃいませんけど。あの子のほうではなく、あの子が使ってた物の方ですよ。あれが何だったか、響は覚えてるか?」

 

「し、知らないけど……強かった。そう言えば翼さんは完全聖遺物って言ってたような……」

 

 そう言えば私の中にあるガングニールも翼さんの天羽羽斬も聖遺物の破片って……。

 

「その通りだ。ネフシュタンの鎧と呼ばれるあの聖遺物は完全な状態で採掘された数少ない物だが、そのポテンシャルは破片のそれとは格が違う。まだ起動していないとは言え、ネフシュタンの鎧と同格のモノがこの国には3つもある」

 

「そんな筈はない。ヨーロッパから譲渡されたデュランダルと雪音クリスの持つネフシュタンの鎧の二つだけだ」

 

「ダンナが知らないだけで、もう一つこの国に持ち込まれています」

 

「何だと?」

 

「通称ソロモンの杖、その能力はこの世界とはズレた次元に納められた対人専用生命兵器ノイズを呼び出し、使役すること」

 

「「「!?」」」

 

 ノイズを操る聖遺物があるの!? それじゃあ最近のノイズの大量発生ってそのせいなんだ。

 

「それは違うぞ。まだ聖遺物の起動は確認していない。飽く迄、待ち運ばれただけだ。この国の異常は別にあるはずだ」

 

「もしそれが事実なら急ぎ回収せねば。起動すればどれほどの被害が出るかわからんぞ」

 

 考えたくもないよ。今のままでも沢山いるのにこれ以上増えるなんてことになったら……。

 

「それともう一つ、天羽奏のことですが」

 

「詳しく聞かせろ!」

 

 踊君が奏さんの名前を出した途端、弦十郎さんが肩を掴んで激しく揺さぶった。

 

「ちょ!? 落ち着いて下さい! そんなに揺さぶったら踊君が話せませんよ!」

 

「す、すまん」

 

「うぁ~……っとと、あ~響ちょっとこっちに来てくれ」

 

 踊君は解放されると私の手を引っ張りモニターの前に立たせた。わけがわからず踊君の顔を見つめる。

 

「ちょっと、すまん。胸を見せてくれ」

 

「へ!? いきなり何!? セクハラ!?」

 

 顔が熱い。何でここで脱がなきゃいけないのよ!

 

「あら、大胆」

 

「……いいから、胸の傷を見せろ」

 

「え? ああ、胸の傷のこと。もう、最初からそう言ってよ!」

 

 それでも恥ずかしいのは変わらないけど、渋々胸元を開けて傷が見えるようにする。すると踊君は何かの線を取り出した。片方の先っぽはよく見るケーブルで機械に接続し、もう一方は私の傷と同じフォルテの形をしていて、どうやってかそれを胸に付けられた。

 さらに踊君の腰辺りから線を取り出すと空いている部分に繋げる。

 

「AI……じゃなくてイア、モニタリングは任せたぞ」

 

『アイアイサー!』

 

 司令室いっぱいに張り巡らされた画面に棒グラフや折れ線グラフ、円、他にも英語と思うけどよくわからない大量の文章が下から上へと流れていく。踊君の指が忙しなく動いていると、不意に画面の中央に大きな真っ黒のウィンドウが開いた。

 3D画像のようで緑色の光が集まり何かを形作っていく。

 

「すごい技術ね……。流石、古代技術の結晶、というところかしら」

 

 しばらく見ていると、光が人の形に集まっていることがわかった。

 

『修復率 87%。まだもう少しかかりそうですね』

 

「そうか。了解した。響の方はどうだ?」

 

「え、私?」

 

『ちゃんと抑制してます。まあ、暴走しないわけではないので要注意ですけど』

 

 何でそこで私が出てくるのさ。て、暴走って何!? よ、抑制? 踊君は私に何をしたのかな?!

 

「……そろそろ説明してくれないか。これは何だ?」

 

「これって、酷い言い方しますね。奏嬢が聞いたら泣きますよ」

 

「何故そこで奏の名が出てくる。関係ないだろ」

 

 顔をしかめて弦十郎さんは踊君を睨み付けた。奏さんって、天羽奏さんのことだよね? ずっと病院で眠り続けてるって聞いたけど、これとどう関係があるんだろう?

 溜息を吐くと。踊君は光る人物を指して言った。

 

「この光は、天羽奏の魂です」

 

「「「何(ですって)!?」」」

 

 ……何で、私の中に奏さんが?!

 

「できれば翼がいる時に話したかったんですがね。語りましょうか。三年前のあの日俺がしたことを……」

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