戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第二十話

翼さんと奏さんが目を覚ましてから数日が経ちました。

あの日は翼さんが起きたことしか聞いてなくて、翼さんがいなくなったって聞いて本当に驚いた。しかも奏さんまでいなくなってて、誰かに誘拐されたんじゃないかって皆大騒ぎ。あの師匠まで凄く焦ってたよ。

けど踊君からメールが来てさらにビックリ!

言われた通りに奏さんの病室で待っていたら、なんと翼さんを背負った踊君と、意識を失っていたはずの奏さんが一緒に入ってきた。

皆最初は呆然として何にも言えなかったけど、目の前に起きていることが現実だと理解した時、そこが病院だってことも忘れて大騒ぎしてしまった。……私も忘れて騒いだんだけどね。しばらく話したら、奏さんも不意に眠ってしまった。踊君達が言うには急に体を動かしたからだそうです。

確かに考えてみると3年間も動いてなかった人が普通に動けるだけでも凄いことだ。

それで奏さんは不満だったらしいけどしばらく安静にしておくために数日を空けた今日、奏さんのこれからのことを話し合うために、奏さんの病室に集まった。

 

「全員集まったな」

 

集まったのは、師匠と了子さん、踊君に翼さん、それとマネージャーの緒川さんと私の六人。私が口出すことなんてないと思ったけど、二代目ガングニールの保持者として来るようにと言うことらしい。

 

「昨日も言ったが、奏おめでとう。そして、すまなかった」

 

「よしてくれ。これはあたしが選んだことさ。後悔なんざしちゃいねぇっての。むしろ力をくれて、戦う意味を教えてくれて礼を言いたいのはあたしのほうだ。あたしの我儘を聞いてくれて、ありがと。でも、あともう少しだけあたしの我儘に付き合ってくんねぇか」

 

「何を言ってるの! 奏には聖遺物は無いんだよ!!」

 

「そうですよ! 翼さんの言う通りです。何を仰ってるんですか!」

 

「……わかった」

 

「「司令!?」」

 

辛いはずのなのにそれを押し隠して師匠は奏さんに話を促した。うう……。私がいなかったらよかったんだよね…………。

 

「馬鹿なことを考えてないでちゃんと話を聞いとけ」

 

踊君に注意されて四人の会話に耳を傾ける。

 

「お前の我儘は昔から変わらんな」

 

「あんがとよ。ダン「だからと言って、全てを許すわけじゃないぞ」……わかってるって。皆の言う通り、今のあたしに力はない。でも」

 

視界に隅に映る踊君が静かに頷いた。そして奏さんは口角を上げた。

 

「あたしは諦めない。この手で奴らを根絶やしにしてみせる。そのためにあたしは旅に出ようと思ってる」

 

「旅、ですか?」

 

「ああ。ダンナからは学べることは学んだつもりだ。だから、あたしは世界を旅して鍛えたいんだ」

 

「そんな無茶苦茶な……」

 

「……いいんじゃないかしら?」

 

空気のような感じになって何も話さなかった了子さんがここで口を開いた。周りの反対に焚いて、それは肯定的な言葉だった。

 

「ここだけではなくて世界に目を向けてみるのもいい機会じゃないかしら? 奏ちゃんは奏者の中でもトップクラスの実力を持っていたし、なくたって十分強いわ。ここに居続けるよりももっと勉強になると思うわよ」

 

「だろ~! 了子さんはわかってるー!」

 

「……………………俺も賛成です。記録資料に目を通しただけですが奏嬢は二人とは桁外れな技能を持っています。それに……言い方は残酷ですがここはノイズが多過ぎます。今のまま奏嬢をここに置いていて勝手に暴走されたら迷惑です」

 

誰も言い返せなかった。翼さんは言い返そうと口を開けたけれど、結局は何も言えず悔しそうに顔を歪めた。

……私も言い返せない。それでも言いたいことはある。

 

「そんなに急ぐこと無いんじゃないですか? 奏さんだってまだ病み上がりで体も万全じゃないですし、折角奏さんが起きて翼さんと話せるのに……」

 

三年間、ずっと翼さんは奏さんのために泣くことも我慢してずっと一人で戦い続けていたんだ。このまま行かせるだなんて酷過ぎる。

 

「まだいかねぇさ。流石のあたしでもこんな体じゃ行きたくても行けないっての」

 

「響なら知ってるだろ、俺がどれだけ子供を大切に、大事にしてるか。今すぐ行かせるわけがないだろ」

 

「あたしはもう二十歳だってば」

 

「精神は17歳とも言ったぞ」

 

(…………ややこしいなー)

 

まあ良いか、奏さんは奏さんなんだし、えっとそう言われてみたら踊君は子供が好きで(もちろんロリコンさんじゃなく)良く世話を焼いてたっけ。考えてみたらすぐに行かせるわけがないよね。

 

「しばらくの養成を置いて、しっかり準備してからだ。それまでは翼嬢と一緒にリハビリだな」

 

「1週間で仕上げてみせるさ」

 

「引きはしない、ということか。仕方ない好きにしたら良い。だがちゃんと戻って来いよ。これ以上俺達を……、翼を悲しませるなよ」

 

横を見ると、押してみたくなるほどぷっくり頬を膨らませる翼さんがいた。何時もの凛々しさが嘘のように目に大粒の涙を溜めて、奏さんを睨んでいた。

 

「う゛っ……あー、もう無理はしないからさ。許してくれよ…………」

 

翼さんが幼児退行した!? 良いもの見「(ギロリッ)」てません! 私は何も見ていません!! 見てませんったら見てません!

 

「絶対だよ」

 

「しし、当たりめぇだ!」

 

何とか話の決着がついてようやく一息つけるよ……。疲れた~。でもこういう時に限って何かあるんだよね……。私って呪われてるから……て、そんなわけな……

 

「む? ……俺だ。どうした?」

 

「あら? ……はぁ~い! もしもし、こちら了子で~す。どうしたのかしらん?」

 

「「何(ですって)?……デュランダルを?」」

 

あれ? デジャヴ?? デュランダルって聞いたことあるような気がするんですが。

 

「そちらもか。響君、出動要請だ。了子君の護衛として今からとある場所に行ってくれ」

 

……あぅ。私に休みは無しですか……。そうですか、そうですか。わかりましたよー。行けばいいんでしょ、行けば。

 

「……………………まったく……」

 

「声が漏れてるぞー」

 

「はひゃっ!?」

 

し、しまった。ちゃんと口は閉じとかないと。

 

「それと翼はここで休息していろ。踊、お前は二人が無茶をしないように見張っていててくれ。ダメージも残っているんだろう?」

 

「………………」

 

「ここは響に任せてやれって」

 

「……わかり、ました…………」

 

行きたそうに強い眼差しを向ける翼さんを奏さんが押さえてくれた。

 

「残念ながらです」

 

あっけらかんと言ってのけたのは踊君。無茶しそうな予感があるけどあんな酷い怪我だったし、大人しくしていてくれるはず。それに私がしっかりやれば、危険なことはする必要ないっしょ。

 

「何をしてるの? 早くいらっしゃい」

 

「あ、は~い! 今行きます」

 

よっしゃぁあ!! 頑張るぞー!!

 

     *****

 

で、やっぱりこうなるんだよね。

 

何度も繰り返す破裂音。金属と金属がぶつかり合う音と一緒に恐怖に震える悲鳴が聞こえてくる。

 

「ぬわぁぁあああーー!!」

 

イッターい! 頭ぶつけた……。

 

「狙いはやっぱりこれのようね」

 

隣にいる了子さんが指したのは一つのアタッシェケース。その中には何処かの国から受け取り移送中の完全聖遺物『デュランダル』が入っている。様々な研究を繰り返すも起動のきの時も反応を示さなかったらしくて、師匠達二課が引き継ぐみたい。

それを何処かから聞きつけた、

 

「!!」

 

ノイズと雪音クリスちゃんが襲いかかってきたのだ。それを了子さんのドライブテクニック、という名の爆走で回避を繰り返し、何とか生き延びている。

……まあ、何度も頭をぶつけたんで無事じゃないけどね。

 

「あらら。もうダメみたいね」

 

「な、何言ってるんですか! 諦めちゃダメですよ!!」

 

「そうは言ってもねぇ~、ほら」

 

了子さんのかけ声と共に車が急激に減速した。車のメータを見るとガソリンが残りゼロ……。

 

「ガス欠よ」

 

「えぇぇえええ!!!?」

 

まさかのここでガス欠。制御を失った車は回転し、壁に衝突して何とか止まる。

……ぁあ! もう、私がやるしかないよね。

 

「私が食い止めます! 了子さんは早く逃げて下さい」

 

拉げた車の中で、私は深く息を吸う。まだ翼さんや奏さんのように戦えないけど、ここで食い止めてみせる。

そして詠う。私の思いを乗せて。

シンフォギアが体を覆いつくすのを感じる。沸き上がる力を拳に乗せて、思いっきり振り上げる!

 

「りゃあ!!」

 

たったそれだけで金属の板が噛みまくったガムのように伸びて引きちぎれ、少量のノイズを巻き込んでふっ飛んだ。車から飛び出すとすぐに拳を突き出して構え、遅れて着いたクリスちゃんと対峙する。

……特訓を積んだ今ならわかる。この子は強い。ほんの一瞬の油断が命取りになる。

だけど私はあの子と戦いたくない。

 

「ねぇ。クリスちゃん。ちゃんと話し合えばわかり合えるはずだよ!」

 

同じ人なのに、ノイズと違ってちゃんと話ができるのに、何も分からないまま戦うなんて嫌だ。

けれど、クリスちゃんは……否定した。

 

「だから、話し合うことなんてねぇんだよ!!」

 

そして、振りかざされた鞭が私に向かって容赦なく振り下ろされた。

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