戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第三話

「うわぁ~っ!」

 凄い人の数! 会場内に入った私の目に飛び込んできたのは見渡す限りの人でした。

 ツヴァイウィ……ウィ……ウィング? というグループは凄い人気があるみたいでまだライブは始まってないのに熱気がここまで伝わってくるほど暑いです。

 と、取り敢えずチケットに書かれている席を探そう。

 

「ふへぇ~、や……やっとついたぁ〜」

 …………疲れた。

 というのも席を探し始めてから10分以上がもう既にたっていました。

 もうここ広過ぎ。何番がどの辺にあるのかもわからないんだから仕方がないじゃないですか。頼りの未来は来てないし、一人寂しく探し回るしかなかったんですよ~。

 漸く席に着けた私は荷物の整理をしました。開演はもうすぐだから手短に済ませないとね。

 まずはライブの邪魔になりそうなものから持って来た手提げのバックに分けて入れる。未来に教えてもらった方法で順番に物を入れると今迄よりも沢山入りました。

おぉ! 持っていた小さな袋たちが全部入ってしまいました。

「やっぱり未来は凄いな~。こんなに入るんだ」

 未来に、代わりに買っておいてと言われたものや私が欲しくなったのが数点ずつあったのに綺麗に収まってしまったのです。

 うん。これからは無理矢理入れないで丁寧に入れることにしよう。

 そして今手元にあるのはライブには必需品だと未来に念を押された光る棒、商品タグ(?)にはサイリウムと書かれている棒だけです。

 これって何時折ればいいんでしょう。使ったことが無いのでどれくらい持つのかもよくわからないよ。ライブが終わるまでは大丈夫だとは思うけど……。

 辺りが急に暗くなりました。周りの観客たちも静かになったけれどそれも一瞬で、割れんばかりの叫び声を上げ始めます。さらに光る棒を折り始め次々と点灯させていくのです。

 それで漸く私も気付きました。この会場はドーム状で照明によって明るくなっていたのだからそれが消えるってことはライブが開演されるということにほかならないということなのです。

 すぐに気付けないなんて情けないよ、私……。

 曲が流れ始めました。色取り取りの照明が動き会場の中を照らしまわりその全てが会場の中央が照らされ白煙が立ち上がり、そして二人の歌姫が飛び出したのです。

 歌が始まりました。

「わぁ~っ!」

 言葉で言い表せないほどに二人はかっこよくて美しかったです。

 舞うように踊り続けるその姿は正に歌姫で、見ている観客も合わさり世界が輝いているかのように見えてしまいました。

 私は慌てて棒を点灯させます。既に観客は立ち上がっていて棒をテンポに合わせて振っていたからです。

「イェ~イッ!!」

 かく言う私も座って見ているだけなんて出来ずに立ち上がって棒を振りましたけどね。

 楽しい時間は長くは続かない。すぐに時間は過ぎてしまう。

でもこれは余りにも早い終わりでした。

 驚くほどすんなり入れた。

 流石、機械の体と行った所か。簡単にハッキングが出来てしまうわ、監視カメラも簡単に偽装できてしまうわで自分でも少し引くほどだ。

 どうでもいい感想は置いといて、とっとと探そう。売店には既にいないようだしどうやって探したもんか。

『ガングニール、天羽々斬の反応を確認。正常に稼働しています』

 脳内で声が聞こえた。

『そうでないと困る。そのまま聖遺物の反応は常にチェックしておいてくれ』

『畏まりました』

 これは少し(大体200年くらい?)前に作ったAIだ。

『あと、カメラが撮影している範囲内でいいから立花響の居場所を検索掛けられるか?』

『……エラー。不可能です。立花響の顔の情報が入っていません』

 そういえばそうだった。“俺”は顔を知っているがシステムが利用できるほど細かくは覚えてない。もう1億年以上前のことだ。機械になる前のことなんて流石に覚えていられない。

『とりあえず……中学前後の少女で検索掛けてくれ』

『えー、この量をですか?』

 いきなり砕けたな。今までの硬さは何処に行った。

『俺の一部の癖に拒むなよ』

『ひどーい、差別だー虐待だー』

『俺のメモリを大量に使いこんでそれに俺の演算の大部分使ってんのに勝手なこと抜かすな』

 どうやってかこいつは知らない間に疑似感情のようなものまで作り上げていたのだ。

 使っている量は元々三分の一ほどしか残っていない俺のストレージを半分近く埋めてしまっている。別にそれでも1ZB……つまり320GBのパソコン30億台分は余裕があるから構わないんだけどさ。……スーパーコンピュータを軽く凌駕してるな

 ん? 有り過ぎだ? 呵々、聞きたいのは俺の方だ。この無駄に多過ぎる容量のせいで整理するだけでもどれだけ時間が掛かると思っているんだ。

『この前した時って一日近くかけたんでしたっけ?』

 

『残念ながら一週間は掛かったよ』

『わぉ……マジですか』

 残念ながら大マジだ。

 演算処理で必要ないとサボっていたらド豪い目にあった。

 処理速度は落ちて動きにくくなり、旧世代のロボット並みのカクカクになってしまった。慌てて整理しようと思ったら中はカオス状態、何が何かサッパリな惨劇だ。

 こんな風になりたくなかったら。皆はしっかり整理整頓をするんだぞ。

『普通、そんな悲惨なことにはなりません。それより誰に向かって言ってるのでしょう?』

『さぁ? 何か言わなければいけない気がしただけだ』

『電波というやつですか?』

『多分な』

 話が大幅にずれてしまった。戻そうか。

『多過ぎます。他に特徴ないですか?』

『う~ん、確か髪は黄色に近い茶色だったはずだ。それと瞳も近い色だったと思う』

『これなら結構絞れますね。カメラもほぼ完全に移せているようですし運が良ければ見つかります』

 見つからないと困るっての。

『……検索結果126名です。表示しますか?』

 多いな。他の特徴は無かったか。

『あぁ〜、そういえば髪の長さもわかるな。確か肩にかからないくらいで癖毛が凄かったはずだ』

『もっと早く言ってくださいよ。それならば該当者は10名です』

 すまん。伝えるのをすっかり忘れていたんだ。

 該当した10人の中に立花響の姿がちゃんと映っていた。

『お~、流石だな。この子を登録して常に確認しといてくれ』

『了解しました』

 これで後は微調整をするだけで良くなった。

 だけと言っても微調整も大変だ。色々なリンクを繋いでおかないといけないからその設定もして、最適化の限定を設ける必要もある。問題は山積みだ。

 曲が始まったようだ。

『ネフシュタンの鎧と思われる反応を検知』

 問題はあれど何とかなるだろう。ネフシュタンの鎧の反応も現れたようだしそろそろか。

 そう思い動こうとしたのだが、唐突に建物が揺れ始めた。

「何だ?」

『検索、ノイズ反応なし。ただの地震のようです』

 ただの……ね。きな臭いったらありゃしない。

 ピシリッ……

「あぁん?」

 天井を見ると一ヶ所に大きな罅が入っていた。

 何か拙い気がする。

 一体何だ? 何か忘れている?

「―――ッ!!!」

 どうやら曲が終わったようだ。

 もうすぐ――ノイズが来……るッ!?

『ノイズの反応を検知。接触まで後十秒』

「しまった。これだ!!!」

 気付いた時には既に遅い、大揺れの振動が重圧となって全身に襲い掛かった。

 こんなので人が壊れることはない。でもそれは飽く迄、人だけの話だ。

 だが建物は違う。耐震性があってもこんな目に見えるほどの罅があっては効果がない!

「ぇ~ん! ぇ~ん! ママァ~!」

 女の子が泣いていた。無視なんてできるわけが無かった。

「未来を担う子供を死なせるわけにはいかないんだよ! ギア展開!」

『Mode fighter』

『身体強化、エネルギーを左手に圧縮だ。一撃で終わらせる』

『了解』

 踏み込んだ床が割れた。でもそんな些細な事は気にしてられない。

「間に合え!」

 子供と瓦礫の間に割って入る。

「撃ち砕け、掌底―波ッ!!」

 右手で瓦礫を掴みバランスを整え掌を撃ち出した。

 ドガン! ゴキャ!

 鈍い音が二つなった。岩は砕けたが一緒に俺の左腕も持ってかれてしまった。痛いがまだ大丈夫。まだ動ける。

「嬢ちゃん。大丈夫か?」

「う、うん。……!! お兄さんその手!」

「平気だ。別に気にすることは無い」

「――!」

「あ! ママだ! ママー」

 ふむ。親と会えたみたいだ。早く行かなければ……。

 大量の人の流れに逆らうように会場内へ走った。

「大丈夫だった?」

「うん! あのお兄さんが……? あれ?」

 ちっ、流石に多いな。逃げ出してきた人が多すぎて動き辛い。

『響の場所は変わってないな?』

『恐らく』

『良し。モードチェンジ』

『了解。Mode chenge. Mode sonic』

 体が軽くなるのを感じた。状況が分からない以上急がないと手遅れになる可能性がある。

 まだ、使ってくれるなよ!

 

 俺はライブ会場から少し離れたビルの中にいた。

 ここには研究所があり聖遺物の研究をしている。

「了子君、状態は?」

「極めて良好よ。問題ナッシング」

 研究部主任の了子君に聞くと頼もしい返事が返ってきた。

「そうか。皆、もうすぐ始まる時間だ。油断するなよ」

「「「了解」」」

 全員に声を掛ける。研究員の顔に疲れの色は見えない。

 ガラス越しに部屋の中央辺りにある完全聖遺物“ネフシュタンの鎧”を見る。こいつは人類の未来が掛かっているかもしれない代物だ。

『まだまだ行くぞぉォッ!』

奏と翼の映像が入っている。

「フォニックゲイン、想定内の伸び率を示しています」

 モニタリングをしていた研究員がそう言った。

「ふふっ、成功みたいね。お疲れ様~♪」

「お疲れ様でした」「よっしゃ」「終わった―」

 了子君がそう叫ぶと喝采があった。油断するつもりは無かったがその時気を抜いてしまった。

 室内に警報が鳴り響く。

「どうした!?」

 ネフシュタンの鎧からプラズマが発生しているのが見える。

「上昇するエネルギー反応、セーフティーが持ちこたえられません! このままでは聖遺物が起動……いえ! 暴走します!」

「急いで止めなさい!!」

「間に合わん! 皆伏せろ!」

 ネフシュタンの鎧は光を放ち爆発した。

「ラァァアッ!」

「てや!」

 二人の歌姫が次々とノイズを切り伏せていました。歌を歌いながら戦う姿も勇ましくてかっこ良い。

 何が起こったのか、それは二曲目が始まろうとしていた時でした。突然地震が起きたのです。

「あ、あれは何だ」

 誰かが空を指差しそう呟きました。

 始めは鳥に見えていたのですけれど、鳥にしてはやけに大きく空を覆うほどの数でした。しかも色がキモい。

 そしてまた地震が起きました。地面が盛り上がり中から何かが這い出てくる。

 って、何?!

「の…………ノイズだぁ!!!」

 そう声が上がると皆我先にと会場から逃げ出そうとするけれど私はそう出来ませんでした。

 地面から出てきたノイズが口らしき部分から大量の液体を吐き出すと、液体は分裂し形を変え別のノイズに変化しました。

 逃げなきゃと思ったけれど動けなかった。恐怖で足に力が入らなくなっていたのです。空から降ってくるノイズの雨で人々は貫かれ黒くなっていき、崩れていくのを見てしまったせい。

 話には聞いたことがありました。

 ノイズは存在が謎で建物などをすり抜けることができ無害だけれど、相手が人間の場合だけ触れると触れた場所から順に炭のようなものに変えられて、死んでしまうという話です。

 それは本当でした。たった今、私の目の前でノイズに突かれた人たちは炭のように黒くなって消えていく。

「あははっ、私ってやっぱり呪われてる~」

 あんな化け物から逃げ切れるわけがない。私は逃げることを諦めてしまった。けどまだ希望はありました。

 逃げずに会場を見ていた私が見たのは、今まで歌っていたツヴァイウィングの一人がノイズの群れに突っ込む姿でした。




ディランダルではなくデュランダル……でもなくネフシュタンの鎧が正解です。
(全く違った!?)
ごめんね、ネフシュタン。デュランダルと混合してたよ……。
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