戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第二十八話

 あれから約一週間が経った。まだ未来とは仲違いしたままで、あんまり面と向かって話せていないです ……。前までは二段ベッドでも隣り合って寝てたのに、今では上下に分かれて寝ている。少し寂しいです……。(え? それが普通? またまた何をご冗談を)

 もういっそ素直に有りのまま言おうとも思うんだけど、なかなか決心が付けられない。未来を巻き込みたくないって思いもあるし、このまま隠し事し続けるのも辛い! って気持ちもある。激しい板挟みにへとへとだよ ……。

 

 あ、そうそう、この一週間の間に奏さんは旅に出発した。踊君の元を訪れた後、翼さんと話してそのまま行ってしまったらしい。それに加え書き置きだけ残して、踊君までいなくなっていた。

 書き置きを読んだのは師匠一人だけで、師匠曰く何か必要な物を取りに行くとか。

 

 先日の無茶も顧みず、勝手に決めて勝手に何処かにいってしまった踊君に師匠は静かに頭を抱えていた。相変わらず踊君は気ままだ。そのせいで今日は早朝から師匠直々の呼び出しを受け、事情聴取的なことをしなければならなくなってしまった。だからとーっても眠たい。

 

「響さんも同罪でしたよね?」

 

 緒川さんににっこりスマイルでそう言われた。ムッて来たけど…………身に覚えがあり過ぎて反論の仕様がなかったです。……兄妹揃って気ままでごめんなさい。

 心の中で深々と頭を下げた。

 

 その時、久々にノイズ出現の喧しいアラームが鳴り響いた。

 

「ここって……!!」

 

 無事完全復活を遂げた翼さんと二人で現場に駆り出されて、着いた場所は私もよく行く商店街の真ん前だった。えっと、この商店街には『ふらわー』って言う美味しいお好み焼き屋さんがあって時間があるとよくクラスの友達達とよく食べにきている。勿論、未来とも一緒に……。

って、そんな物思いに耽ってる場合じゃなかった。

 

「市民の避難状況はどうなっていますか」

 

「現在、住人の6割の避難が完了。ノイズが広く散らばっており、避難困難区域が多数です!」

 

「わかりました。立花、ここは頼んだ!」

 

「はい!」

 

 既に現場を駆け回っていた別部隊からの報告を受け、翼さんは即断した。即座にシンフォギアをまとうと建物を飛び越え、別の場所の救助に向かう。

 見送りもほどほどに、私の心を震わせる。……歌える? そんな問いが聞こえたような気がした。でも、気には止めない。歌わないと皆を救えないんだ!

 息を吸い込み、歌を……。

 

「キャアアアァァアアアア!!」

 

 耳を突き刺すような甲高い声が聞こえた。女の人の悲鳴!! 声が少し籠もっていた感じから……建物の中からのはず。声自体も比較的近い距離だ。

 声の聞こえた方向を見渡すと、一つの建設途中のビルが目に止まった。根拠はない……けど、あそこのような気がした。

 

「迷ってる暇なんか、ないよね……」

 

 歌うことさえ忘れて、ビルの中に乗り込むことに決めた。

 

「誰かー! 誰かいませッ!?」

 

 何かいるッ!? 階段を飛び降りて上を見上げると……イカ? みたいなノイズがいた。強くもなさそうだし、速攻を仕掛ける!

 

「ァ……ムグッ!?」

 

 突然、誰かに口を塞がれた。驚いてそっちを見ると、何故か未来がいてさらに驚いたけど向けられたスマホを読んで冷静になる。

 

『静かに あれは大きな音に反応するみたい』

 

 私が読み終えるのと同時で未来は携帯をいじり文章を書き換えた。

 

『あれに追いかけられてふらわーのおばちゃんとあの子を連れてここに逃げ込んだの』

 

 未来の指差す方向には気を失ったおばちゃんと顔を赤くして倒れ伏すクリスちゃんだった。どうしてここにいるのかは気になるけど、それよりこの状況をどうするかが先決だ。

 シンフォギアをまとうために歌うと未来やおばちゃん、クリスちゃんも危ない……ここに来る前にまとっておけば良かった! どうしすれば……

 

「……ッ!」

 

 新たに向けられた内容を読んで一瞬思考が停止した。……あまりにも危険すぎる賭けで、思わずダメと叫びそうになった。すんでのところで抑えられたけど、あまりにもあんまりな方法だ。

 慌てて自分のスマホで返事を書いて、止めるように説得したけど、未来の決意は固くて変わらなかった。

 

「わたし、響にひどいことをした」

 

 突然、私の耳元でそう呟いた。意味が分からないよ……。悪いのは何も言わなかった私なのに、なんで未来が謝るの……?

 

「今更許してもらおうなんて思ってない。それでも一緒にいたいから」

 

 ただ、そう言うと私から離れていく。

 

「どう思われようと関係ない。わたし……もう迷わないッ!!」

 

 笑った未来は一人、大きな音を立ててビルを飛び出した。

 

 見送ることしか出来なかった……。ちゃんと未来に話していれば、私が迷ったりしなければ、未来にこんな危険なことをさせずにすんだのに!!

 私ももう迷わない! 全部打ち明けて、ちゃんと仲直りするんだ!!

 

「-- Balwisyall nescell gungnir tron --」

 

 クリスちゃんを背負って、おばちゃんを抱える。ありがたいことに天井は作りかけでほとんどないに等しい。

 何度も壁を蹴り調節することで、安全に外へ抜け出せた。

 

「響ッ!!」

 

 眼下に車が走ってるのが見えた。あれは師匠! 着地地点すぐのところに車を止めてくれたおかげで、すぐに二人を預けることが出来た。

 クリスちゃんのことで話す必要があったけど、それよりも大事なことがある。

 

「待ってて、未来。今、行くから!!」

 

 未来を探すために大地を駆け、空を裂く。止めたくても止められないのには理由があった。だって未来は……

 

『響聞いて わたしが囮になってノイズの気を引くから その間におばちゃんを助けて』

 

『ダメだよ そんなこと未来にさせられない』

 

『元陸上部の逃げ足だから何とかなる』

 

『何ともならないッ!』

 

『じゃあ何とかして』

 

 ついさっきの未来とのやりとりを思い出す。

 

『危険なのはわかってる だからお願いしているの』

 

 力強く微笑んで、

 

『わたしの全部を預けられるの』

 

 私を信じて、

 

『響だけなんだから』

 

 戦っていたから。

 

 そうだ。戦っているのは私一人じゃない……シンフォギアで誰かの助けになれると思っていたけど、それは私の思い上がりだ……ッ!

 助ける私だけが一生懸命なんじゃない。助けられる誰かも一生懸命。

 本当の人助けは自分一人の力だけじゃ無理なんだ。奏さんも踊君もわかってたんだ。だから、あの日、あの時、奏さんは私に生きるのを諦めるなと叫んだんだ。そして踊君はずっと私の傍にいてくれたんだ。

 

 今ならわかる気がする……ッ!

 

「キャァア!?」

 

 未来の声!

 

「誰かのためになら、人は強くなる!」

 

 そうだ、私が誰かを助けたいと思うこの気持ちは惨劇を生き残った負い目なんかじゃないッ!

「今の私の全てで、放つ歌声で」

 

 3年前、二人から託されて、私が受け取った……、

 

助けを求める人()の悲しみを、僅かでも消すこと出来たら!!」

 

 気持ちなんだッ!!

 

 崖から落ちる未来とノイズが見えた。ガングニールが力を貸してくれているのか、足のユニットが撃鉄を打つように私を加速させていく。立ちはだかる空気の壁を突き抜け、我武者羅に空を走った。

 右手のユニットを引いて力を込める。

 

 絶対、未来には指一本触れさせない! 指じゃないけど……ネッ!!

 

 ノイズの顔面を貫くと、炭化して砕け散った。でも、まだ終わりじゃない。

 

「私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ!」

 

 未来の音が私たちの中に響いてくる。返したい。私たちと云う音を未来の中に響かせたい。だから、ガングニール! 貴方の音を私に、私たちに聞かせて!

 

 未来を抱きしめ衝撃から庇い、脚部のユニットを弾けさせ、背中のバーニアで少しでも勢いを殺す。

 

「優しさを、シングァゥトウィズアァス!!」

 

 着地は上々だった。

 

「ぬわぁぁあっ!」

 

「きゃっ!?」

 

「「アイタッ!?」」

 

 でも着地地点が微妙に坂になっていたことに気付かず、さらに体を通り抜けた余剰の力が地面を砕いたせいで、バランスを崩して転げ落ちた。

 もう、何とか助かったっていうのに……悲しいかな、最後は全く締まらなかった。

 

「イッタ~……。未来? 大丈夫?」

 

「イタタ……。うん、大丈夫だよ」

 

 未来も私も普通に起き上がることが出来た。お互い泥だらけだけど無事で何より。

 

「ありがとう、響なら絶対に助けに来てくれると信じてた。でもこんな形で助けられるなんて思ってなかったけど」

 

「ありがとう、未来なら絶対に最後まで諦めないと信じてた。あははは……、黙っててごめんね」

 

「だって、わたしの友達だもん。何時までも信じるよ。あ、でもちゃんと話してね」

 

 あははは……、釘を刺されてしまった。いや、既に話す覚悟は出来てるから良いんだけどね。

 

「わたしね、響が黙っていたことに腹を立ててたんじゃないの。誰かの役に立ちたいと思っているのはいつもの響だから。でも、最近は辛いこと苦しいこと全部背負い込もうとしてたじゃない」

 

 ……未来の言う通りだ。力が暴走する以前からずっと全部一人で抱え込もうとしていた。

 これ以上翼さんが傷つかなくていいようにって勢い込んで、奏さんが無理をしないですむようにって一人で突っ走って、踊君が捕まった時も翼さんのことをちゃんと見ないで一人で助けるんだって勝手に焦っていた。

 

「わたしはそれがたまらなく嫌だった。また、響が大きな怪我をするんじゃないかって心配してた。……実際してたし」

 

 じっとりと半目で睨まないで! 私ももう十分反省して無茶はしないようにするから。だからどろっとした視線を向けないで下さい! 怖いです……。

 

「はぁ……だけど、それは響を失いたくない私の我が儘だった。そんな気持ちに気付いたのに、今までと同じようになんてできなかったの」

 

 私って、こんなに大切に思われてたんだ。……私が巻き込まれた時点で、既に未来も巻き込んでしまっていることに全然気付けないで、一人置き去りにしてずっと苦しめてたんだ。

 

「ごめんね、未来。……全部話すよ。今まで起こっていたこと全部。必ず皆を説得して話すから」

 

「約束だよ」

 

「うん!」

 

 やっと未来と仲直りすることができた。

 やらなきゃいけないことは一杯あるけど、今日はもう良っか。久し振りに何のわだかまりもなく未来と一緒に眠れるんだから!!

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