戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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~報告~
オリジナル技、オリジナル設定のタグを増やしました。


第三十二話

 今、響さんの前に踊さんが立ち塞がっていた。翼さんの前にはディバンスさんが、クリスさんの前にサージェさんが行く手を遮る。

 響さんは何度も呼びかけるけれど、誰も反応を返さない。ただ無言で襲いかかった、……シンフォギアをまとってもいない彼女たちに向かって。

 

「未来たちが危ないんだよ! 急がないといけないのに! 何で邪魔する……ッ!?」

 

 響さんは説得を試みたけれど、無情にも立ち並ぶビルに反響するだけで無駄に終わる。踊さんが距離を瞬時に詰め、その右手が響さんの頬を掠った。……ギリギリだ。当たる寸前でなんとか踊さんの手首に腕をぶつけたことで最悪を免れた。けれど人としての戦いを止めたあの方には勝てない。

 

「クソッ! どうしちまったんだよ……。うおっ!」

 

 姿は見えないけれど、クリスさんの体温が壁向こうに飛び込んだ。その直後に高速に突き進む高熱の線が空間を駆け抜け、クリスさんの逃げ込んだ壁や道路に歪んだ熱が生まれた。

 

「ック! ……何のマネだ、お前達! 何故私たちを攻撃する! やはりお前は、お前達は!」

 

 流石人類最強とされる人の姪御、防人と名乗るだけあってディバンスさんの鎌を押さえ込んでいる。でも困惑したままでは長時間は持たないだろう。

 

 ……だって彼も話を聞く気は無いのだから。

 

『……皆さん、戦って下さい。急ぐ理由があるのでしょう。沢山の人が貴女たちが来るのを待っているんです。それに……あの方たちをこれ以上苦しめないで下さい!』

 

「イア……ちゃん?」

 

『踊さんの思いは響さんが一番よく知っているはずです。彼が何を大切にしているのか』

 

 三年間、響さんは踊さんの傍にいたのです。苦楽を共にした貴女なら必ず。

 

「……子供の笑顔。私が初めて会った時からずっと子供は笑ってる方が良いって言ってたっけ」

 

『はい。その思いは何一つ変わっていません。本当はあの方たちも嫌なのです。今彼らのしていることは、守ろうとしている子供を傷つける行為。彼を悲しませないで。勝って皆の笑顔を守って下さい』

 

「…………」

 

『悩まないで下さい! 貴女たちの勝利を一番望んでいるのはあの方たちなんです。聖踊が本当に大切なら、皆さんの持てる全てで挑みなさい! 詠いなさい! 貴女たちの心を踊さんたちに届けてッ!!』

 

 私が頼んでいることが響さんたちにとって如何に残酷なことであるかはわかっているつもりだ。どんな関係であれ共に戦場を駆けた人と戦えなんて、私だって言いたくない。

 でもそれが彼らの望んだことだから

 

「……翼さん、クリスちゃん」

 

「……わかった」

 

「……やるっきゃねぇか」

 

 そして彼女たちは歌を詠った。

 

 

     *****

 

 

「こうして斬り結んでいるといつかのことを思い出す。……先延ばしの勝負が、このような日になるとはな!」

 

 何度も刀と鎌はぶつかり合った。技術はほぼ互角で互いに攻めあぐねている。

 常に斬る、と意思を込めて振るった刀は、正面から止められ鎌を斬るどころか傷一つ付けられた様子がない。いくら金属製の鎌とはいえ、斬り裂くことに特化した刀で傷一つ出来ないとは恐ろしい鎌だ。

 

「…………」

 

「貴様も何か言ったらッ……どうだ!」

-- 逆羅刹 –

 

「! ……ッ!!」

 

 右上から来る刃を刀の腹で流し、隙の出来た脇に脚部のブレードを叩き込もうとしたが一撃目は石突で打ち上げられ、揺らいだ二撃目は後ろに下がることで難なく回避された。

 遮るものが何もない広場、私が自由に刀を振れるように相手もまた自由というわけか……。

 

「間は取らせん!!」

 

 勢いに乗ったまま着地の反動も利用して床を蹴った。空いた間を塞ぐと共に突きを放つ。

 

「なっ!?」

 

「……ッ! ……!!」

 

 突きに柄の芯を合わせた!? 傾いた鎌に完全に遮られ、地面に縫い付けたかのような重量感で勢いが殺された。だが、ここ止まれば裂かれるのは私! そうはさせまいと、刀を寝かせ身と鎌の間に滑らせた。

 しかし予想外なことにディバンスは振り下ろすのではなく鎌を右へ振り上げる。

 

「しまッ!? カハッ!!」

 

 石突に脇を殴打され呼吸が一瞬止まった。衝撃で体が僅かに持ち上げられる。このまま鎌が振り下ろされれば拙い! 間に合え!

 

「ッ!!!」

 

「蒼ノ一ッ!」

-- 蒼ノ一閃 --

 

 撃ち出すことは叶わなかったが瞬時に巨大化したハバキリが盾になり真っ二つになるのは防げた。思った通りだ。ディバンスは私より対人経験が遙かに勝っている。そうなるとこの環境は私に味方をしているかもしれんな。

 

 ……ただ広いだけで隠れる場所のないこのような地は、普通細工が出来ない分強者が圧倒的に有利になるが、場合によっては逆に働く。

 経験が高いとはつまりそれだけ様々な戦場を歩んできたということだ。それは戦場にされた細工全てから生き抜いたということ。弱者から強者、凡人から天才までの多種多様な細工を知る者相手に下手な細工は立てるだけ無駄だ。

 まして相手に細工を張られたらそれこそ一巻の終わり、生憎私には細工を打開できるほどの器用さはない。

 それに私の対人経験は司令だ。しかも今と同じようなただ広い場所での真剣勝負。

 そう考えればこの状況は私にとってとてもやりやすい。

 

 構え直し再び攻撃に転じる。下から斬り上げ、さらに左脚部のブレードだけを出してもう一度下から追撃。斬り上げで鎌を弾いたことで避けざる終えなくなり、左手に避けた。

 ならば!

 

「そこ……」

 

 勢いの付いた流れで軸足になっていた右足がふわりと地面から離れた。それを感じた瞬間蹴り上げたような状態にある左足で目前の地面を踏み潰す。対の関係にある右足は当然対照的に上へと流され、つま先は天を指した。

 無茶な体勢なのはわかっていた。外した時のリスクが高いのも重々承知。だがそれでも決める! 真下から真上へ急速に引っ張り上げられたスピードそのままに振り下ろす加速を加えた。

 

「だッ!!!」

 

「ッ…………!」

 

 狙いはまだ上に上がり続ける奴の手だ。甲を捉えた踵が手を砕いた。力の入らなくなった手から鎌が滑り落ちてしまえば楽になったのだが、そう甘くない。すぐに左手で掴み直すと高速で回転させた。

 変な体勢の今、止める手立てはなく着いた左手で体を捻りその場から飛び退くしかない。

 ……来る!

 

「ッ! 同じ手は効かん!!」

 

 回転する鎌が弧を描き背後を取られた。右手の刀は背後に、脚部に仕舞われていた小太刀を逆手に振り上げる。

 思った通りどこからともなく現れた2本目の鎌が切り裂かんとしていた。

 だが対策はすでに出来ている。刀を向かってくる鎌にほぼ平行にして僅かに向きを下にずらし、小太刀は叩き付けるようにして右後ろに投げ飛ばす。

 

「行け!」

-- 千ノ落涙 --

 

 飛び上がりもう一本の小太刀を射出する。幾十、幾百に分裂した光る刃がディバンスの背を襲う。それも回転を利用した即興の盾に弾かれた。

 

「ッ!!」

 

 下!? 三本目の鎌を持ったディバンスが真下にいた。

 

「キャッ!?」

 

 ディバンスの馬鹿力に舌を巻きそうだ。ビルの4階以上の高さまで飛ばされた。だがそれすらも利用してみせよう。

 

「天ノ逆鱗……」

-- 天ノ逆鱗 –

 

 巨大化した両刃の剣が奴の胸を目指し落下する。これもまた拮抗した。衝撃で一部がへこむも決着はまだ付いてはくれない。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 先ほどのノイズとの戦闘が後を引き、体力の限界がどんどん近付いてきている。フィーネが何者かわからないが、雪音が捨てた鎧を二課が回収できなかったことを考えると恐らく奴が持っていると考えて良いはず……。

 カ・ディンギルの話を考えると、奴が何か細工してきたとしても可笑しくない。長引かせるわけにはいかん。

 

 ……次で決める!

 

 体を穿つような激しい痛みを意識の外へと追いやった。体に残されたエネルギーをかき集めこの手の中の刀に全て込める。

こんな場所で倒れるわけにはいかないのだ。立花が帰る場所である小日向という少女の元を大切にするように、私にも大切な帰る場所がある。それが二課なのだ。そして何より奏が帰ってくる場所でもある……だから、

 

「絶対に守ってみせる。例え貴様が私より強かろうと関係ない。必ず勝ち、フィーネを討つ!」

 

「…………」

 

「第1号聖遺物、天羽々斬。奏者、風鳴翼! これで終わらせて頂く!!」

 

 呼応するようにハバキリに色濃く蒼の輝きが灯る。そして対するディバンスが回す鎌から蒼白い圧が漂い始めた。奴もまたこれで終わらせるつもりのようだ。

 極限まで薄く細い太刀となったハバキリを、上段よりもさらに振り上げ地に当てる。ディバンスは片足を後ろに引き鎌を水平に構えた。

 

 風無き静寂が訪れる。言葉は交わさずとも互いに感じていたはずだ。ハバキリが最高潮になる時と鎌の圧が最大になる時は同時だと……。

 

「蒼ノ……一閃ッ!!!」

 

「…………ッッァ!!!」

 

 ゼロ距離で全てをぶつける。無駄に出来るエネルギーなど一片もない。一から十まで全てでせねばこの嵐は越えられない!

 

「デェエエヤァァアアアア!!!!」

 

「……ッ!

 

 前へ踏み込め、さらに前へ!

 

 風を巻き上げ位置が逆転し、背中あわせのようになった。どちらも動かず、音のない空間が拡がった。極度の緊張状態の中、変化は訪れる。

 

……パキッ。

 

 僅かな音がなり罅が入る。そして折れたのはハバキリだ。

 

「御見事……」

 

 だが、その膝を折ったのはディバンスだった。

 

「……この勝負私の勝ちだ」

-- 蒼ノ一閃・滅 --

 

 折れたハバキリを仕舞い、背を向けてその場を離れる。

 

 ちらりと見えた彼の隣には勇猛なる武人を立てるように三本の鎌が突き立っていた。

 

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