戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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 激闘を制しフィーネの心を救うことに成功した奏者達と聖踊。
 新たな力に目覚め進化(むしろ退化?)した彼は共に闘う響の傍でしばしの休息に浸…………りたかった。
 ところがどっこい、意識が回復して早々に響諸共厄介ごとに巻き込まれて……!?
 
 てなわけで、1クール振りです。語り部の歌多那です。
 長らくお待たせしました、
『戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜』
 の続編・聖踊第二部スタートです!


第壱話

 それはじりじり太陽が照りつける真夏のとあるお昼のことだった。

 海上に聖遺物のような反応が現れたと師匠に呼び出しを受けて、ヘリで現場に付いたのは良かったんだけど……。

 

「あれー、頭が可笑しくなっちゃったのかな……?」

 

「っ!? ついにあたしも焼きが回ったか? コイツと同類にまで落ちるなんてよ」

 

「……目を反らすな。これは現実だ」

 

「ですよねー……って、翼さんも酷い!?」

 

 貶されつつもヘリから空を見渡す。いったい何処の映画ですか、これは。世界一面ノイズがたゆたってるんだけど!? うわぁ~……地平線の彼方までノイズで一杯ですよ……。

 

「これじゃ中の様子も見えねぇ……」

 

「そうね……」

 

 余りの多さに吃驚したけど私たちがすることはいつもと変わらない。

 

「いつも通り、全部まとめてぶっ飛ばせば良いんですよ!」

 

「『アホか』」

 

「イタッ!?」

 

 クリスちゃんに頭を叩かれ、姿の見えない踊君に罵倒された。間違ってないはずなのに……、解せぬ……。

 

「お前は相変わらずの特攻バカだな……」

 

「まあ、それでこそ立花なのだろう」

 

「えへへ……ってそれ褒めてませんよね! 翼さんまで~……」

 

 どーせ、私は特攻バカですよーだ。しくしく。

 

『今回の作戦はこの先にある何かを回収することだ。幸いここにいるのは俺たち関係者だけで、わざわざ全部のノイズを相手にする必要はないぞ』

 

 声は私の胸元、胸の中からではなくて首に掛けた槍のペンダントから聞こえてくる。

 えっと、これは踊君が変形(?)した姿の一つです。何でもこの前の戦いで体内のエネルギーが99%を越える程の量を放出してしまったらし。今はその回復に努めているとか。

 人の姿だと回復と消費が同等で、余りにも回復に時間が掛かるから、エネルギーの節約のためペンダント型で過ごしている。

 踊君曰く要素をちゃんと残していればどんな形にでも変形できるとのこと。

 絶対(ガングニール)じゃないとダメってことでもないようで、(アメノハバキリ)(イチイバル)、取り込んでしまった(デュランダル)(ネフシュタン)でもちゃんとなれるみたいです。

 本人には言えないけど、気分次第で好きにデザインが変えられるアクセサリーとして重宝している。しかも無料だからお得でとってもお財布に優しい。

 

『何を呆けてる。ちゃんと話を聞いていたのか?」

 

「ええっと~……、と、とにかくクリスちゃんが蹴散らして、翼さんが穿って私が貫いたら良いんですよね!」

 

「…………間違ってはねぇな」

 

『間違っては、な』

 

「簡単な事のように言ってくれる……」

 

 あの時のような特殊状態――エクスドライブだったかな?――だったら本当に楽にすんだと思うけど、私も翼さんも空中戦が出来るようになったからそんなに大変でもないと思う。

 あの日以降私たちの纏うギアに多少の変化が起きたのだ。私の場合だと手足のパーツが一回り大きくなりギミックが増え、腰あたりのブースターの出力が格段に上がった。それと擦ってしまいそうなくらい長いマフラーができた。翼さんは足の所にスラスターが増設されてホバリングができるようになっている。それでクリスちゃんは……あれ?

 

「……クリスちゃんって白くなったこと以外に何かあったっけ?」

 

『火力は大幅に上がってはいるんだぞ。飛べんけど』

 

「……あ゙ん? 何か言ったか?」

 

「き、気のせいだよ」

 

 プロペラがうるさいのに聞こえた!? クリスちゃんの薄い目から逃れるようにノイズ達に視線を向けて歌を紡ぐ。

 

「覚えてろよ」

 

 にょえっ!? ……う、後ろから撃たれたりとかしないよね。ものすっごい不安なんですけど!? 手が滑ったとか言ってわざと撃たれるんじゃないかな!?

 殺気が痛い!

 

「魁は任せろ。雪音、援護を頼む」

 

「あいよ!」

 

 翼さんは踵にある折りたたみ式の刃を左右に展開して扉の前に立つ。

 

「立花はここで待機。合図を出すまでヘリを守っていろ!」

 

「ま、任せて下さい!」

 

 答えを返すのとほぼ同時で翼さんは一回りほど大きくさせた刀を上段に飛び出した。

 

「いざ、参る!」

-- 蒼ノ一閃 --

 

 開幕一発目で放たれたのは通常型の蒼ノ一閃。斬らずに穿つ蒼い道が混濁の世界に通った。迷うことなく翼さんはその中に飛び込んでいく。

 

「閉めてんじゃねぇ!」

-- MEGA DETH FUGA --

 

 扉ギリギリまで広げられた大型ミサイルが塞がる寸前の道を押し広げた。百発百中の腕前に驚きたかったのに、ヘリの中で躊躇なくミサイルを広げたクリスちゃんに私は吃驚した。

 ……ちなみに私はその時ヘリの壁にくっついてガタガタ震えていたよ。

 

「危ないから!?」

 

「ハッ! 心配すんな。フレンドリーファイアなんかしねぇよ。これくらい屁でもねぇ!」

 

「そっちじゃないよ!?」

 

 翼さんに当たるのではとかじゃなくて、ヘリに当たったらどうするって事だよ!? こっちを振り向くパイロットさんもしきりに頷いて同意してくれているし。それと煙い。急いでヘリ内の換気を促す

 翼さんは心配じゃないのかって? あの人なら爆風でもなんでも斬り捨てちゃうんじゃないかな、たぶん。

 

「こっち向いたぞ。んなとこにいてねぇでとっとと逝け」

 

「う、撃たないでね」

 

 その字の通りになりそうで怖いけど、泣く泣くヘリから飛び降りて一番手前のノイズを殴る。続けて丁度真横にいた鳥に裏拳で壁までお帰り頂く。良い感じに決まったと言って良いのか、鳥は灰になることなく壁中で立体ビリヤードを始めた。

 

「どうなってるの?」

 

『……位相の調律に乱れが生じている。恐らく中心部にある何かのせいだ。全員気を付けろよ』

 

 よく見れば斬撃や爆裂の中をするりと抜けるノイズが少なからず存在した。踊君の声で翼さんもそれを確認したけれど、少し反応が遅れてしまった。

 

「くっ!?」

 

「翼さん!!」

 

 そして高速で迫ったノイズは、酷くあっさりと翼さんを貫いて静かに海の中に沈んでいった。

 

「…………………………む?」

 

「え?」

 

『これは……、ッ!? 厄介な!!』

 

 翼さんは変わらずホバリングを続けている? 貫かれたはずの腹部を触れる翼さんの手に血は疎か灰すら付くことはなく、ちゃんと肉があって空洞もなかった・。

 

『条件は向こうも一緒だと言うことだ。この狂った調律は俺たち聖遺物の波長だけでなく、奴等の存在率の増減にも影響を与えているんだ。こっちの攻撃が通るか分からないように奴等の攻撃もまたどうなるかわからない!」

 

「んなのありかよ!?」

 

「なるぼど、確かにこれは厄介ね!」

 

 翼さんがそう言って3体のノイズをまとめて一閃したけど、斬れたのは2体だけで左端の1体は斬れてなかった。即座に延ばした足の刃でノイズに斬りかかると、今度はちゃんと斬り裂けて灰に還る。

 クリスちゃんはミサイルを片付けてマシンガンに持ち替えた。一発の弾丸で砕け散ることがあれば、すり抜けることも目の前で起きている。だから質じゃなくて量を取ったんだ。

 

「クソッたれ! ……おいバカ、作戦変更だ。すぐに突っ込んで中にあるもん止めてこい!」

 

「バカじゃないもん! って大丈夫なの? ここで私が抜けたら守りが」

 

「それくらいアタシがカバーする。だからさっさと行け! んなとこで手をこまねいてたって、どうせあたし等全員がジリ貧になるだけだ。あん中を正面切って乗り込めんのはお前しかいねぇんだよ!」

 

 中距離戦が封じられた翼さんは攻めあぐねていた。その手が、その足が作る軌道の先が翼さんの攻撃できる唯一の範囲、なのにそれをノイズはランダムにすり抜けてしまった。

 『剣を振り斬る』といういつも通りの普通の術が潰えた今、翼さんは簡単には前へ出られない。責めてしまえばいつか打ち漏らした半端なノイズによってその身が貫かれるのが目に見えているから。

 

「わかった。……ヘリをお願い」

 

「任せな」

 

 ニヤリと口元を歪め、臆さず瞳を滾らせていた。だから私はヘリを離れ空を蹴り飛ばす。上下を、左右を、そして行く手さえも防がれてなお引かないその背に声を飛ばす。

 

「翼さんっ!!」

 

「承知!」

 

 翼さんが刀を寝かせて空を滑って待っている。私なら出来ると信じてくれている。だから私はさらに早く、速く、疾く突き進んだ。

 そして色を失った世界の中で、私は目の前の背を追い抜いた。

 

「!!!」

 

 ノイズが一斉に私を見た。

 

 ……来るッ!

 

 そう思った時には既に私は身体を捻り上へ動いていた。刹那でノイズという矢が背面を通り過ぎる。ほっとなんかしてる暇なんかない。体勢を立て直すこともせず、もう足のユニットを弾けさせた。重力に逆らった足が天に向いて、私の胸と背を別の矢が僅かに掠った。

 勢いは止まることを知らずこの身体はただまっすぐ前に進む。右手のユニットで弾き身体を無理矢理下に押し出してクロスする矢を躱す。次の瞬間左手と右足を同時に弾かせた。脇下を通る矢に、傾けた首の真横を撃ち抜く矢、進めば進む程襲い来る矢は激しさを増していく。

 全身に掛かる重圧がユニットを弾く度にずっしりと重く伸し掛かった。

 

 でも、それでも、止まってたまるもんか!

 

「負ける……もん、か!」

 

 全方位を囲む矢の大群が私を呑み込む。

 けれど私には一つの傷もない。

 

『やらせません!!』

 

「おりゃっ!」

 

 私を隠すように左右を棚引いていた長いマフラーが螺旋を描いて直前で防いでくれていた。勢いを付けた逆回転でマフラーの外側にへばり付いたノイズを一気に振り払う。

 

「見付けた!」

 

 何千の矢を越えて見えたのはぽっかり空いた黒い穴と開いた懐中時計だった。

 

『ズレてるのは位相じゃない……! この世界そのものがズレているのか!? それに触れるな、響!』

 

「止めるんだぁああああっ!!!」

 

 残りの矢の隙間を縫って、時計を閉じた。

 世界を揺らすような強い波が球状に広がり一帯に振動を与える。

 

「今だ!!」

 

「うっしゃぁッ!!」

 

 声が聞こえると共に、駆け抜ける紅と蒼の流星が淀んでいた満天の空を彩った。

 

 任務完了、皆そう思っていた。でもまだ中心の黒い穴は閉じていない。誰かを待つように口を開けたこの穴の先にはまだ何かある。そしてこの先で誰かが待っているそんな気がした。

 

『響、行く気か?』

 

「もちろん!」

 

『私も巻き込まれるのですが……』

 

「ごめん!」

 

 穴の中に手を突っ込むと引っ張られ始めた。

 

「ちょっくら行ってきます! 未来によろしく言っといてください!」

 

「おい!?」

 

「……やれやれ」

 

 言いたいことは言えたし、逆らう事なく私は吸引する穴に身を任せた。

 

 

 

「久しいな、聖踊。待っていたぞ」

 

 えっと……、だれ?

 

 不思議な流れに身を任せひゅるると進んだ先は真っ白の世界だった。虚しくなるくらいただ白いだけの世界で20代半ばから後半くらいのおじさんが待っていた。踊君のお知り合いみたい。声を聞いてペンダントは独りでに浮き上ると、人の姿に戻った。

 

「そうだ、な!!」

 

「ぶへらッ!?」

 

 そして勢いよく飛び出した踊君はおじさんの顔面を真正面から殴り飛ばした。

 

 …………………………え? ……………………………………えぇっ!?

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