戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第四話・後編

 光は消え白い世界に元の景色を映した。

 つい今までライブ会場だったはずの場所にはライブのセットどころか照明も客の座る席さえもほとんど残っていない。

 そして蠢いていた100を超えるノイズも跡形もなく消し飛ばされていた。

 その場にいるのはたった四人、だが立っているのは、ただ一人翼だけだった。残り三名の生死は定かではない。

「奏ェエエエ!!」

 力なく倒れている奏に、翼は駆け寄った。

その時、空から複数のヘリが変わり果てた会場に着陸した。

「クソォオオッ! 救護班! 向こうに倒れている少女を最優先に全員を運び出せ! 奏は俺が運ぶ!」

 真っ先にヘリから降りてきたのは弦十郎だ。倒れている三人を見えて瞬時に指示する。普通であれば、絶唱を使った奏を優先にするはずが、彼が優先したのは響であった。それは奏の命を諦めたからなのか、それとも奏なら大丈夫だと信じていたからなのか、それは彼にしかわからない。

 ただ理由はどうあれ奏が命懸けで守ろうとした少女を死なせるわけにはなかったのだ。

 例え奏が生きていても、彼女を救い損ねたなら彼女は今よりもさらに苦しみ、一層荒れてしまうだろうということが、娘のように育ててきた弦十郎にとって想像しやすいことだったからである。

 響の胸からは大量の血が流れでていて、今もまだ少しずつ流れている。側で倒れる少年の方も、両腕が本来曲がることのない場所が、様々な方向にぐにゃぐにゃと歪み砕けていた。

 ただ曲がるだけでなくまるで軟体動物かのようになっている。

 ただそれでも見捨てることはせず弦十郎たちは全員を本部の抱える病院へ緊急搬送した。

「んっ……んんぅう~。んにゃ?」

 あっれぇ~? 目を覚ましたら知らない天井がある~。

 ここって天国ぅ~。せま~い。

 軽~く現実逃避。何があったんだっけ?

「あぁ~、そうだ…………って生きてる!? う~ん……みゅぃっ!?」

 頬を抓ろうと腕を動かしたけれど胸に激痛が入った。

 生きているかの確認には小さな痛みで良いのに激痛は酷いよ。でも生きてるって思うと我慢できないほどでもないかな。

 でもこれは~……

「お、起きれない」

 ここはおそらく病院。窓から入る日差しが眩しい。反対側にはベッドが一つあり誰かと同室であるのがわかった。けれどそれだけしかわからない。

「んんぅ~もう、ちょっと」

「お! 嬢ちゃん、目を覚ましたか」

 起き上がろうと頑張っていたところに男(女?)の子が入ってきた。どっちか判断が微妙なところな人です。口調は男っぽいけど、髪は長く、見た目は若干女の子よりの中性。服装によっては男でも女でも通りそう。男の子かな? 女の子かな?

「えっとどちら様?」

「ああ、ごめん。驚かせちまったな。あと、無理に体を起こさなくてもいいぞ」

「すみません……」

 凄い恥ずかしいところを見られてしまった。

 入ってきた子は雰囲気は私よりも年上のように見える。

「ずいぶん酷い怪我だったけど、大丈夫……ではなさそうだな」

「えへへっ」

 うん。全く大丈夫じゃないです。体のあちこちを打ったみたいですっごい痛いし、体中に砂を入れたような感じもあって手足がぞわぞわする。

 正直言って気持ち悪い。

「あれ? でも何で私の怪我が酷いって?」

「そりゃ、あの場にいたからな。でも意識がほとんどなかったみたいだから覚えてないのも仕方ないか」

 入ってきた子は隣りのベッドに腰掛けた。

 そういえば私以外にも誰かいたような……

 そこで漸く彼の異常さに気付いた。

 彼は肩から指先にかけてぐるぐるにギブスで巻かれているのだ、しかも両腕を。それに足首からは包帯が巻かれているのも見える。

「その腕どうしたの?」

「これか? ちょっと子供助けようとして振ってきた天井砕いたら一緒に砕けた」

「…………」

 彼はちょっとで腕が砕けたことをあっさり流してしまった。予想よりも軽い返答に私は唖然としてしまい言葉が出なかった。あそこの天井は確かコンクリートだったはずなんだけど、それを砕くって……

「……だ、大丈夫なんですか?」

「へーき、へーき。人よりも体は頑丈だからな」

「砕けちゃったら頑丈とか関係ないような……」

「ん、それもそうか」

 ……ガクッ。

「何を漫才みたいなことをやってんだ?」

「う、うっさい!」

 思わずズッコケてしまった。ベッドから転げ落ちそうになったけど彼に助けてもらって大丈夫だった。

 ただ恥ずかしい所を見られちゃったよ。顔が凄く熱い気がする。

「気を付けろよ。えーっと……そういえば名乗って無かったな。俺は聖踊(ひじりよう)。聖なる踊りって書いて、そう名乗ってんだ。あと言っとくけど俺は男だ」

 名乗ってるってどういう事なんだろ。

「……えっと立つ花が響くと書いて立花響(たちばなひびき)です。」

「響か、良い名前だ。立花さんこれからよろしくな」

「よ、よろしくです」

 彼、聖さんの言葉に少し引っ掛かったので聞いてみよう。

「あの……名乗ってるってどういう事なんですか?」

「ああ、俺は捨て子なんだよ。それで赤ん坊の頃からずっと孤児院で育てられてたんだ。この名前も捨てられた時に俺の傍に置いてあったらしい」

「そ、そうなんだ。ごめんなさい」

 聞いてはいけない話だったかも、素直に謝る。

「謝らなくてもいいぞ。別に単なる笑い話だ」

「何処が!?」

「呵呵。それがな、親が置いて行った紙はとても小さな紙だったんだけどさ」

 そう言うと彼はギブスの巻かれた両腕で大きさを表現する。言ったら悪いけどとても分かりにくい。

 もう勘で聞くっきゃない。

「えっと名前シールみたいなサイズ?」

 少し聖さんは考える素振りを見せると、

「その半分位かな。二文字がギリギリ入るサイズだ」

「小っさ!? 拾った人もよく見逃さなかったね……」

「呵々、それは俺も思った。でだ、そのせいで『聖踊』が名字と名前だったのか、それとも名前だけで、“せいよう”とかだったのかも分からないんだよな」

「うわー、大変ですね」

 それからもしばらく話は続いた。

 話をしていてちょっと驚いた。二、三歳は年上だと思っていた聖さんは私と同い年だったのです。

「信じられないです。本当に聖さんは13歳なんですか?」

 疑いの眼差しを聖さんに向ける。嘘をついてるようには見えないけど怪しい。

「嘘ついてどうする(嘘だけど)。まあ同い年とは思わなかったのは同じだがな(確信犯してたが)」

「それって、私が子供に見えるってことですか!?」

「おう、見えたぞ」

 この人、酷っ!? そんなハッキリ言わないで欲しいかな! 人が気にしてることをグッサリついてるよ。

 私も周りの人と比べると子供っぽいかなって思うことあるけどそんなキッパリ言い切らなくてもいいじゃん。

「子供っぽく見られたくないなら取り敢えず敬語を止めてくれ。()()()と合わさって俺より下に見える」

「グワッフ!」

 また言ったよこの人。もしかしてわざと言ってるの? 嫌がらせ?

「わかったから子供っぽいって言うのは止めて。これでも気にしてるんだから」

「そうか。すまん」

 悪気は無かったみたいだし許す。次に言ったらドウシヨッカナ~♪

「ブルル……ん? んん?」

「どうかしたァ?」

「い、いや、何でもない」

 何故か自分の顔がニコニコしてる気がするよ。おっかしいなぁ~。

 その時、扉が開き人が駆け込んできた。

「「「響!!」」」

「あ、お母さん。お婆ちゃんに未来も、どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ。心配させて。丸五日も眠ってたんだから。死んじゃうんじゃないかって、未来ちゃんもずっと心配してたんだからね」

 い、五日!?

「ご、ごめんなさい。五日も寝てたんだ。皆ありがとう」

「謝るのは私の方だよ。響がこんなことになったのも私が誘ったせいなんだから。私も行ってたら響が怪我することもなかったのに」

 未来が暗い顔をする。空気が凄く重たい。

「はぁー、何で皆暗い顔してんのかねぇ」

 聖君が随分無神経なことを言った。

 

「何「今は、響ちゃんが怪我したことを悲しむよりも、響ちゃんが目を覚ましたことを喜ぶべきじゃないんですか? 生きていることを噛み締めようとしてる響ちゃんを悲しませてどうする」……ごめんなさい」

 こ、怖かった。未来が怒ったの久しぶりに見た気がする。

 あと、ちゃん付けは止めて欲しい。

「だから暗いって明るく、明るく」

「聖君は明るいね」

「子供は笑ってる方が良いんだよ」

「同い年でしょ!?」

 同い年の人に子供って言われたくないよ。

「え!? そうなんですか?」

「そうだぞ。ってまだ名乗ってなかったっけ」

 そう言って聖君と未来は簡単に紹介を済ませた。

「お母さんたちは知ってたの?」

「ええ、初めてここに来た時に色々話したのよ」

 

「踊君が男なのは……」

 

「知ってたわよ?」

 

 え……。

「……私って五日間も寝てたんだよね?」

「ええ」

「聖君、何時から起きてたの?」

「五日前だ」

 可笑しい気がするのは私だけ? 私の感覚が可笑しいのかな? 未来の方を見ると顔が引きつっていた。

 良かった。間違ってないみたい。

「普通、年頃の娘を知らない男の子と同じ部屋で寝かせとく!? 親なら反対とかするんじゃないの!?」

「ふふふ、彼はそんなことするような子じゃないと思ったからよ。むしろ彼なら守ってくれそうだったから私がお願いしたの」

「はい!?」

 

「呵々、やっぱそうなるよな。俺も初め聞いたときは驚いた」

 カラカラと笑いながら聖君が言う。

「でも受けたんだよね?」

「役得?」

「ちょっ!? 本当に何もしてないよね!?」

「俺は何もしてないぞ」

「俺()って、()って何!?」

「ちょっとピーーが」

「ピーーって誰!?」

「聞きたいの?」

「聞きたくないです」

 聞いたらダメな気がする。

 聖君がニタニタと笑いながらこっちを見てくる。

 あっれ~、背筋が寒くなってきた~。

「そう、残ー念」

 

 それから今後のことを話してお開きになった。

 この言い方だと何か飲み会みたいだね~。病院だからそんなこと出来ないけどさ……はぁ~、イテテッ……。




主人公の名前が漸く発表出来ました。

今更ながら、主人公の性能だけはチートになりそうだ……戦うことは少ないからどうタグ付けしたものやら……

因みに、元の世界では世界最強とまで言われてましたが、この世界ではそんなにです。
だって、向こうには弦十郎のダンナや緒川さんなど沢山いますもん。

元の世界には忍者の末裔とか無傷で地面砕いて盾にできる人なんか流石にいないです。
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