戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第拾壱話

 ついに待ちに待ったような待ってないような非常に微妙な日がやってきました。

 

「私の拳が唸るぜ!」

 

「……ひびりんってそんなキャラだったっけ?」

 

「いやぁ、何となくノリで言ってみただけです」

 

 決闘会場の第3アリーナの控え室で私は燃えていた。

 ちー姉のためとはいえバイト続きだった一兄とは久々に闘いたかったし、代表候補生がどれくらい強いのか興味があったのでセシリアさんと闘うのも楽しみなのです。

 

『ルール等を確認する』

 

 控え室に設置されているモニターにちー姉の姿が映る。

 

『ルールは至って簡単だ。先にシールドエネルギーを0にした方が勝ち、特出した反則はなし何をしようが構わない。ただし禁止事項として勝敗が決した後の追撃、並びに試合中相手を死に至らしめるような行為やそれに類する行為があった場合、即座に危険と見なし試合を中止し失格とする。いいな!』

 

『『はい!』』

 

 ISに乗ったのだろう二人の顔がパネルの隅に並んで表示された。セシリアさんは堂々とした感じだったけど、一兄はまだ慣れない感じが残っていた。

 

「もうすぐ二人の対決が始まるね~」

 

「うん。見られないのが残念」

 

 肩をすくめて呟く。

 公平を期するために試合出場者は互いの試合を見れないように配慮されているのだ。本来ならアリーナの光景を映すパネルも今は沈黙して私とのほほんさんの顔を反射するだけしかしてくれない。

 ここにいない踊君もこことは別の控え室で私と同じように待機している。

 

「私が代わりに見て来てあげるのだー。じゃ~、またあとで~、応援してるよー。さらば~」

 

 長い裾をバタバタさせてのほほんさんは控え室を出て行く。

 静寂に包まれる部屋で一人、備え付けのイスから離れるとひんやりした地べたで座禅を組んで、試合開始のサイレンを聞き流した。

 

 

 

「最後のチャンスを差し上げますわ」

 

「チャンス?」

 

 名前の割にはそこまで真っ白ではないIS、日本政府が用意した専用機『白式』に乗った織斑一夏は、セシリア・オルコットと彼女の青いIS『青い雫|ブルー・ティアーズ』と向かい合っていた。

 

「惨めな姿を曝す前に今ここで謝罪するというのであれば許してあげてもよくってよ?」

 

「……そう言うのはチャンスとは言わねえ。それに謝る気もねえ」

 

「そう、残念ですわ」

 

「っ!」

 

 言うやいなやセシリアは手にしていた銃身の長い銃を一夏に向けて引き金を引いた。慣れない身であったが、ブーストの点火に成功した一夏は辛うじて飛び出してきた青い光の筋を躱すことに成功した。

 

「さあ、踊りなさい!」

 

 一夏に安堵を付く暇はない。第2、第3と豪雨の如くレーザーが上からさらに一夏を襲い始めた。

 

「私、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲で! 行きなさい、ブルー・ティアーズ!」

 

 前後左右あらゆる方向から突き進むそれはセシリアとは別位置からだ。高速起動に苦しみながらも一夏は巻き上げられる砂塵の隙間から降り注ぐレーザーの根元に意識を向ける。

 

「な!?」

 

 そこには小さな板が浮いていた。先端の尖った部分からレーザーを撃っては独自に移動し、再びレーザーを撃つと繰り返しており、一夏を囲っていた。

 ーー自立機動兵器、通称ビットと呼ばれる操縦者の意識を受け単独行動と多角射撃を行う強力な兵器の一つだ。

 警告と共に無尽に飛び回る板の数が一夏の視界の隅に表示された。

 

「4つ……。何か武器はないのか?」

 

 ISに搭載されていた音声認識で白式に問いかける。

 通常だったらそんな必要はない。なんと言っても専用機だ。操縦者に合わせた武器が用意されているもので、説明も受けているはずなのだ。あくまでそれは通常だったらという話で、一夏の場合は違った。

 『政府から支給された専用機』そう聞くと聞こえは良いが、一夏がこの『白式』を受け取ったのは昨日の今日どころか数分前のたった今で、さらに「起動したな。良し行け』という無茶な要求を姉にされ、そのまま試合に臨むことになったのだ。

 当然武装について聞くことはおろか、調べることさえもさせてもらえなかった。

 白式は正確に一夏の言葉を受け取り、視界に投影されていたコマンドの中から次々と選択してWeaponと名付けられたブロックを展開してくれた。

 

「まずは近接ブレード、他に……ってこれだけかよ!? ちくしょうっ!」

 

 四の五の言っている場合じゃない一夏は頭の中に湧いてくる様々な文句を呑み込んでそのたった一つ格納してある武器を手元に呼び出した。

 

「やるっきゃねえってか!」

 

 雨の中、一夏はセシリアの懐に入ろうと前に突き進む。

 

「中遠距離型の蒼い雫に、剣で挑もうなど笑止ですわ」

 

 しかし止むことのない4本1組で迫り来るレーザーの束が近付くことを許さない。

 一夏が前に出ようとする度にその少し前をいずれかのレーザーが遮り、減速したところをさらに別のレーザーが追撃を掛けた。

 

「それでもやらなきゃなんねえんだ!」

 

 気合一喝、一夏は横にブーストを噴かせセシリアの周りを回る。素早い機動で追い駆けるビットを振り切ることは叶わなかったが、期待したように集中するビットは一夏の後を追う。

 

「……! ここだ!!」

 

 全てのビットが背後に付いたその時、一夏はさらに横に曲がり真っ直ぐセシリアの方に飛んだ。

 

「しまった!? ……なんてね。かかりましたわね!」

 

 セシリアの腰部にもまだビットが待機していた。一夏は嵌めたのではなかった、嵌められたのだった。

 

「お生憎様、ブルー・ティアーズはまだありましてよ」

 

 急遽、回避するために白式にブレーキを命じるが、既に準備の整っているビットの射程からは到底逃げられない。ビットから覗く大きな銃口からミサイルは飛びだした。

 

 

 

 二度目のサイレンが響いた。どうやら一兄の試合が終わったみたいです。

 

「さーて、どっちが勝ったのかなー?」

 

 再び電源が着いたパネルに意識を向ける。

 

「セシリアさんが勝ったんだ」

 

 WINER セシリアとだけかかれたパネル。流石にどんな戦いをしたとかは教えてくれないかー。ま、いいけどねっと。

 

「ということは、最初の相手はセシリアさんかな?」

 

 試合の参加者は3人なのでトーナメントではなく総当たり戦が採用されている。因みに踊君は私たちの中の勝者と最後に闘うことになっている。

 

「さ、頑張ろっと」

 

 準備するため、座禅を崩し立ち上がった。ISスーツというシンフォギアのスーツに似た服に着替える。ほとんど変わらないけどこっちの方が肌の露出が微妙に多い。ちょっと太ももがスースーする。

 

「これで良し」

 

 肩を回したりして変なところがないか確認してっと、ゲートに向かった。

 

「きたか」

 

「よ!」

 

「織斑先生。あ、一兄! お疲れさまー」

 

 腕を組んだちー姉と純白のISに乗ったままの一兄が待っていた。これが一兄のIS、格好いいじゃん。鳥のような翼に軽く拳骨を当てる。コツンと良い音が帰っていた。

 

「あとちょっとだったんだけどな。……何やってんだ?」

 

 次に一兄の身体を観察する。負けたといっても一兄は怪我らしい怪我はしていない。絶対防御があっても打撲の一つや二つするかなと思ってたんだけど、結構善戦したみたい。

 

「戯け、エネルギーに気を使わないからだ」

 

「ちゃんと確認したって。……1回くらいならできると思ったんだよ」

 

 ムスッとする一兄を横目において準備万端のISを見る。

 

「用意はしてある」

 

 鈍く光る甲冑の傍による。

 それだけでその子は起動した。

 

「よろしく、打鉄ちゃん」

 

 このISの名称を呼ぶ。

 これは学園が保有する訓練機の1つで、装甲は防具みたいな形で主な武器が刀という近接型、見た目通り武士のような姿をした機体だ。

 本来ならだけど。

 

「本当にそれでよかったのか?」

 

 今私が動かしているISは通常とは大幅に違う。

 まず左右に漂っていた盾のような肩当てがない。スカートのような左右の大きな垂れも取り払ってミニスカのような感じに。

 あと格納されている武器も全部外しておいた。闘ってる最中にいきなり出てこられても邪魔だもん。

 

「ちぃ~っすです」

 

「あ、踊君」

 

 ふらっと現れたのは制服を着物に改造してしまった踊君だ。

 

「何故お前がここにいる。控え室で待機しておくように言ったはずだ」

 

「響嬢に野次のお届けものでございます」

 

「受け取り拒否します。速やかにお帰りください。それか激励をください」

 

「ふ、それはできない相談デェスッ」

 

「何でよっ!?」

 

 いつも通りの返しに心が真っ二つにへし折られそうです。

 

「お前はいったいどこの迷惑業者だ」

 

「断ち花印でございマース」

 

 以後お見知りおきを、とでも言うかのように深々とお辞儀する踊君。いや、それって私の心を断ちに来たってことだよね!?

 

「踊ってそんなキャラだったのか?」

 

 義理でも兄妹は似るのか、ついさっきのほほんちゃんに同じようなことを言われた。

 

「響を弄るためならばどんなキャラにだってなってみせよう! それが私デェス」

 

「そんなことに努力しないでよ!」

 

「そ、それは辞めとけ!? ISで殴ったら洒落になんねえから!」

 

 思いっきり振りかぶった腕が白式に止められる。

 

「離して! 一回殴らないと気が済まない!」

 

「せめて降りてからにしろ!?」

 

「わかった!」

 

 踊君を殴るために打鉄から飛び降りようとした。

 

「試合だ、馬鹿者共」

 

「「ふぎゃっ!?」」

 

 したのだが、脳天に伝家の宝刀・出席簿が突き刺さった。

 どこから取り出したんですか!? ISの絶対防御抜いたんですけどその出席簿は本当に紙ですか!? あと何で踊君は受けてないんですか!?

 

「やれやれ」

 

「前途多難デスね」

 

「お前も含めてな」

 

 まだ頭の痛みが引かないうちに私はゲートの前にたった。

 

「いってきます……」

 

「負けても良いのですよ~。悦しい特訓が待っているだけですから」

 

 ま、負けられない!?

 24時間耐久組み手はやだ!?

 

「心配ご無用。今度は48時間でございまーす」

 

 それは絶対死ぬ!?

 負けられない理由が急激に強化された瞬間だった。

 

「お、おおおお織むら響、うううち鉄、い、いきます!」

 

 ガクガクしながら私はゲートを大急ぎで潜った。

 

「何が48時間なんだ?」

 

「苛ッ禍ッ過ッ」

 

 あ、あああ頭の中で勝手にされる変換は誤変換に違いない。う、うん、そうだ、そうに違いない。

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