戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第五話

 あの日からはや三か月、胸の傷も痣が残るくらいに治った頃。

 体の麻痺はリハビリのおかげでほどほどなら動くようになりました。ただ歩けばガクガク、手を上げればブルブルで本当にほどほどですけど。

「まだ無理か~」

 今はお昼の時間です。お箸で食べたいのですけどやっぱりまだ無理みたい。

 む~……何か悔しいな~。

 今日も諦めてスプーンとフォークで食べるとしよう。

「呵呵、なぁ、響。自力で食えるだけまだ良いじゃないか。俺なんて漸く腕が使えるようになったところで指のほうは全然動かないんだぞ」

 そう言って踊君が両腕を上げた。

 前までは肩から先まで一本の棒だったけど今は右腕は手首を固定してるだけになり親指だけならピクピクと動くようにはなっている。

 左腕はちょっと巻いてるのが減ったくらいしかかわっていない。そう言えば不思議な治り方をしてるとお医者さんも言ってたっけ。

「そうだったね。えへへ、ごめん」

 ちょっと前まで、というか今も、踊君にリハビリも兼ねてご飯を食べさせたりしている。それまでは看護師さんが食べさせようとしてたけど、拒み続けるから隙をついて私が無理矢理食べさせたのだ。それからは大人しく食べさせられてます。

「響、聖君、元気にしてる?」

「失礼する。元気そうだな」

 お母さんと渋い声の男性が入ってきた。ああ、風鳴さんでしたか。

「げ、元気です」

「やぁ、いらっしゃい。おっさんが来るなんて珍しいじゃん」

「おいおい、おっさんはないだろ。俺もまだおっさんと呼ばれるほど年はとっとらん」

「む、では風鳴のダンナ?」

「(奏と似た呼び方だな)まあいいだろう」

 おっさん呼ばわりは悪いと思うけどダンナも大概じゃないかな……風鳴さんがいいならいいのか。

 う~ん。悩んでも仕方ないや。

「それで今日はどうしたんですか?」

「おっと、そうだったそうだった。お前のことについてだ」

「はい? どうかしたんですか?」

 踊君がどうかしたんだろ?

 踊君を見てもわかっていないようで首を傾げています。何だろ、凄くかわいい。静かにしてると踊君はかわいいなぁ。

「おいおい、お前のこれからのことだぞ。忘れるな」

「……あぁ!」

 踊君は静かに手を叩いた。かわ……じゃくて何の話か思い出したみたいです。

「お二人は踊の家のことは聞いていますか?」

「はい。聞いてます。確か家族がいないって」

「そうでしたか。それは良かった。一応私が保証人をすることにしたのですが如何せん私には既に一人養子がいて姪の面倒も見ていて、こいつを養うことができないんです」

 あ、話がわかってきた。

「それでこいつも馴染んでいる立花さんたちの家に住まわせてやれないかと思い伺った次第です」

「そうでしたか。……響はどうしたい?」

「へ?」

 何故かお母さんは私に振った。

「ふふふ、私は別に構わないのよ。響のリハビリも手伝ってくれてたし、支えてくれたみたいだからね。……ただ年頃の娘が同年代の男の子と一緒にいて耐えられるかなって、主に響が」

「あ~……って私が!?」

 何で私が襲う側にいるのかな!? 

 でも確かに一理ある。(あ、私が襲うのところは違うからね!)特に何も考ええないでに引き取っちゃえばいいと思ってたけど、よく考えたらこれって貞操のピンチ!?

 ……同年代の男の子…………うぅう……プシュー………………!

「響は嫌なの?」

「そうなのか……?」

 そんな目で見ないで。嫌なんじゃないからね。男の子なのに何でかわいいのかな!?

「違うからね。嫌じゃないよ、嬉しいよ! ……ハッ!?」

変なこと口走っちゃったぁぁあああ!?

「ふふふ、青春ねぇ」

「ちょっと!?」

 お母さんにからかわれるなんて思っても見なかったよ。

「私のことは良いから話を進めてよ」

「あら、そう? 照れちゃって」

 そこの二人、笑うな! 風鳴さんはまだ良いけど(いや、良く無いよ)踊君のせいなんだからね!

「では手続きをお願いします」

 漸く話が戻り、手続きに移った。何でこんなに恥を掻かなきゃいけないんだろう。やっぱり私って呪われてるのかな?

 風鳴さんがカバンから一枚の紙を取り出した。

 お母さんはその紙を受け取ると、

「これだけですか?」

 訝しげにそう聞いた。私も気になり横から覗きこませてもらう。

 うわ、少ない。ノートくらいの紙に数行しか書かれていない。あとあるのは署名欄と判子を押す所だけだ。

「お母さん、お母さん。ここ見て」

 最後の一文を指差し読み上げた。

「えっと……『なお、手続きはこの一枚のみとしその他一切の全ての責任は政府が負う』だって……」

「…………?」

 私とお母さんは同時に踊君を見た。当の踊君はにっこり笑って首を傾げている。

 かわ……じゃなくて、政府が責任を背負うなんて……踊君は何者なんだろう。疑う気はないけど、気になる。

 それから直ぐに正気に戻ったお母さんが書類にサインと判子を押し風鳴さんに渡した。

「確かにお預かりしました。それではこれで」

 風鳴さんは書類を受け取るとすぐに病室から出て行った。

「忙しい方なのね」

「みたいだね。……ねぇ、お母さんは何で判子を持ってたの?」

 先は気付かなかったけどさも当然のごとくカバンから判子が出てきたよ。何時もは家に置いてる筈なのに。

「出来る女の嗜みよ~。じゃああとは若い子たちでごゆっくり~」

「え゛っ!?」

 お母さんがオホホホと奥様笑いをして帰ってしまった。せっかく頬の赤みもなくなってきたのにこれじゃあ意味がないよ。また、顔が熱くなってきた。

「呵呵、何はともあれこれからもよろしくな、響」

「あ、うん。よろしくお願いします」

 この人なら心配しなくても大丈夫だった。

 邪推した私が馬鹿でした……。

「馬と鹿に失礼だぞ。馬鹿じゃなくてバカ、もしくはVAKA」

「どうでもいいよ! てか何でVA!? そこはBAじゃないの!? あと、心読まないでくれる!」

「BAKAよりVAKAの方がイラッと来るじゃん」

「確かにそうかもしれないけどどうでもいい!!」

 自分に向かって苛立たせる必要ないしね!

 あぁ……恥ずかしい…………。




踊君、響家の養子になりました。
子供好きの踊君(ロリコンではない)と響の本編までの二年は後日、閑話として投稿しますので、来週は高1からになります。
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