戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第拾参話

「ごめんなさい……」

 

 試合が終わるとすぐにオルコットさんと一緒に先生達に回収されて、オルコットさんは医務室に運ばれたのに、私はゲートで仁王立ちする鬼の前に放り込まれた。

 

「山田君、打鉄の被害状況はどうだ?」

 

「は、はいぃ! えええっとダメージは……レベルEオーバー!? よくこれで動けましたね……」

 

「見事にボロボロですね。装甲にまで亀裂が入っています。……義妹がすまぬ」

 

 踊君は打鉄に近づくと装甲を撫でて労った。同じ機械として何か通じるものがあるのかも知れない。

 付き合ってくれた打鉄に黙祷を捧げ、一兄を見る。

 

「さて、次の試合は一夏殿対響ですが、どうします?」

 

「……止めとく。今の俺じゃ逆立ちしても響には勝てない。でも、必ず勝つ。今は無理でもすぐに追いつく」

 

「そうですか。呵々、君たちになら必ず響と肩を並べることが出来ますよ」

 

 一兄と戦えないのは残念です。すごく楽しみにしていたから……。けど、一兄がそう決めたのなら私は何も言わない。次の機会を望めばいい。

 

「一夏君の不戦敗ということは……、響さんの2勝で次は響さんと聖君の試合ですね」

 

 視線がぶつかる。踊君は鋭い犬歯を見せニヤリとする。

 

「よし、やりますか」

 

「おっけーっ!!」

 

 長い時間をかけて鍛練を積んだんだ。私は何処まで強くなれていてどれほど踊君に近づけたのかを知りたい。

 

「もう、待って下さい! 早く闘いたい気持ちはわかりますが、打鉄の修理には時間が掛かるんです! 借りられた訓練機はこの打鉄ともう一機のラファール・リヴァイヴだけしかありませんので、すぐには無理です!」

 

 あ、そうだった……。今から訓練機を借りるのもいいけど、それでも時間がかかるのは一緒だ。すぐに出来ないのか……。やる気になっていたから少しへこむ……。

 

「大丈夫です。私がラファールを、響はこの子を使います」

 

「この子?」

 

 踊君は懐から水晶玉のようなまん丸な玉を取り出し、手首を内側に軽くスナップを効かせ、

 

「さあ、初陣ですよ。イア」

 

 投げた。

 鋭い投球は落ちることなく、一直線に私の胸元にあるペンダントの中に吸い込まれていった。

 

「……え、吸い込まれ?」

 

 強い光が視界を埋めた。暖かいと言うか、熱い! 全身に熱が伝わっていく。

 

「はふぅ……、え、これって……」

 

「ニールハート、貴女の専用機です。愛称はイア、概要は全てこの子が教えてくれますよ。では、先に行ってますね」

 

「え、ちょっ……」

 

 何の説明も無しにラファールに乗って一人、先に飛び立ってしまった。残された私たちは呆気に取られる。

 

「……話は終わった後であいつから直接聞く。織斑妹、あの阿呆を叩きつぶしてここに連れて来い」

 

「はい!」

 

 翼がなく、ISとしては珍しい形をしていた。でも、私にはとてもしっくりきた。

 

『準備は万端です。Gungnir・Earhart、いつでも飛べます!』

 

「(イアちゃん!?)」

 

 ニールハートは、そのままとはいかないまでも、慣れ親しんだガングニールそのものだ。イアちゃんの声が頭の中に響いた。

 腰にある二門のバーニアを開く。

 

「ニールハート! 織斑響! 行きます!」

 

 踊君の後を追って私はピットを飛び出した。

 

 

 

 互いに飛ばず陸に降り立つ。

 

『ニールハートはガングニールをIS用にチューニングした機体です。ですのでサイズの変化が出来ないくらいで変化はありません。手足のユニットのみの力と防御のみに特化させた愚直型です。好きなだけ突っ込んじゃって下さい!』

 

「よっしゃぁああ!!」

 

「いきますよ」

 

 ニールハートの拳が飛んでくる拳銃の弾丸を殴り落としアリーナの地面に突き刺した。殴った感触は良好だ。高らかに響く拳骨は欠けることなく弾に打ち勝った。

 

「調節はしっかりできているようですね」

 

「これなら!」

 

「甘いですよ」

 

 響は第二射も同じように落とした。だが、その後ろに隠されていたもう一発が肩を突きへこみを入れる。踊の手にはいつの間にか二つの拳銃を握られていた。

 

「(この感じ、サージェ!)」

 

「さぁ! 楽しみましょうか!」

 

 紅の瞳に金のラインが幾重も走る。

 

「うそ……」

 

 二人が魅せる宴武に誰しもが驚愕する。

 

「「ッ!」」

 

 二人は互いに前に出る。銃弾とジャブの応酬に目映い火花が幾重にも咲き乱れる。すれ違い様に深く沈み込むと響はアッパーカットで地面ごと削り取ろうとするが、表面塗装一枚を剥ぐだけに終わる。

 立ち位置が入れ替わると同時、踊は前に突きだしていた片方の足だけで急停止させ、反転と共に響の横を狙い撃つ。

 

「ッ、ハァアッ!」

 

 響の脇を通り過ぎた弾は叩き落とされ宙に跳ね上がっていた先人達を踏み台に背後から襲い掛かった。不規則な弾道を躱すだけでも常人を凌駕するというのに、響は身体を捻った回し蹴りで離れ業を為す。

 僅かな踏み込みで立ち位置を修正し蹴り上げる足の甲に寸分違わず当てると、鋼の表面を滑らせ向かってきた勢いそのままに向きだけを変えて蹴り返した。

 

「ふふっ!」

 

 そんな曲芸で返された弾に向け、踊は冷静に左右の拳銃から1発ずつずらして撃ち込んだ。1発目は円錐の形をした弾の下に当たり軌道を斜め上に曲げる。次の2発目で垂直にさせるという、巧みの技で応戦した。

 その隙に響の間合いが踊を取り込む。

 

「セイッ!」

 

「ハッ!」

 

 右手の正拳突きを銃の側面で横に流し、即座に放たれた蹴りを片手の銃を捨て平で上に払う。響は流れた蹴りの速度を生かし踵を落とすが、響の周りをブーストで飛行することで踊は威力を最小限に緩和して、掴み取ると放り投げる。だが離れまいと響は全身のバーニアで勢いに抗いその場で止まり肘鉄を噛ます。

 この連撃に使われた時間は僅か3秒に及ばない。

 余りの速さに観客席にいる生徒の中で真面に動きを追えたのは武道の心得がある数少ない生徒と野次馬で来ていた他学年の先輩くらいしかいなかった。

 

「呵々、強くなりましたね」

 

「えへへ、ちー姉のお陰かな。みっちり鍛えてもらってるからね! じゃあ、そろそろ本気で行くから!」

 

『Knuckle Banker 起動します!』

 

 響の前腕にある真っ二つに裂いた竹のような筒型のパーツが後ろに伸びた。ついにニールハートの持つ唯一の武装をお披露目する時が来た。

 

「ドリャァアアアッ!!」

 

「おわっと!」

 

 横にスライドして難を逃れた踊は大気を抉り地面に大穴を開ける拳を見て思う。

 

「(やりすぎたかもしれません……)」

 

 と……。

 ISはセーフティーのために実戦(戦争)用と競技用という二つの設定が存在するのだが、それをニールハートのバンカー機能は軽く越えてしまった。

 踊が設定をし忘れたわけでもイアが設定を解いたわけでもない。

 考えられる要因はただ一つ、つい先程行ったPICなしでセシリアと戦闘したことだ。その経験がおそらく響を無駄に強くしてしまったのだろう。

 神様から受け取った特典が裏目に出てしまったようだ。地面が消し飛ぶ威力にラファールの……どころかIS全体で、絶対防御がちゃんと機能してくれるのか不安が過ぎった。

 

「『(一夏さん、闘わなくて正解でしたね……)』」

 

 ニールハートを用意した御二人は同じことを思い、闘わない選択をした一夏を静かに褒め称える。

 

「まだまだぁ!」

 

「チッ!」

 

 そんな思いに気づかず、両足のバンカーで瞬間移動のような高速起動を行う猪少女は出鱈目に攻め立てる。自分のためだけでなく、ラファールやラファールを整備することになる人たちのためにもあれに当たるわけにはいかない踊はひたすら回避に徹するしかない。

 どんどん低くなっていくアリーナの地表を余所に低空で争う二人は互いに焦りと激しさが増す。

 

「いい加減に当たってよ!」

 

「ちょっと、それは無茶というものではありませんかね!?」

 

 ほんの二十秒程度の攻防戦だが、バンカーの撃鉄を鳴らす度にニールハートのエネルギーが減り響は焦る。その度に目で追いきれるかどうかという速度で放たれる鉄槌が襲いかかり、当たればほぼ確実に大破するとわかる踊が焦る。

 二人は攻防の最中で少しずつ外へと逸れていく。

 

「そこ!」

 

「やむを得なませんね。……ぐぅっ!」

 

「うわっ!?」

 

 瞬時の判断で踊は何とか拳を流し、直撃だけは避け腕を取る。流しきれなかった衝撃が腕の装甲に穴を開けたが、掴んだ手は離さず片手で背負い投げ、手にしていた銃を切り替える。

 

「ほう、ラピッド・スイッチか」

 

「ほ、本当にあの子たち、初心者なんですかね……。それ以前に本当に子供なんでしょうか……」

 

 拳銃が消えると同時に大型のサブマシンガンが踊の手に握られる。

 

「ふぅ、チェックメイトです」

 

「まだ、終わらせない! 全部まとめて薙ぎ払う! 行くよ! ニールハートッ!! クロスバンカー、フルブーストッ!」

 

『りょ、了解(アリーナ大丈夫かな……)」

 

 足を杭にして響はアリーナの中心で止まる。避けきれないと告げる直感に躊躇いなく従い、迎え撃つため腕を重ねて両手のバンカーを一つに繋げる。

 ガングニールと同様のそれは彼女の意思に応え、振りかぶる拳から離れるとシールドバリアーすれすれまで遠い先まで伸びた。

 

 そして、そのトリガーが引かれる時、イアの不安は現実となる!

 

「いっっけぇぇぇえええええ!!」

 

 轟音と共にアリーナの内側には側面ギリギリまで窪みが穿たれ、1分足らずという瞬く試合の決着は付けられた。

 

『勝者、聖踊!』

 

 と……。




申し訳ありませぬ……

途中で途切れている部分があったでございます。


  少しずつ外に
         」

って、何なんでしょうね。
投稿直後見返して、目を丸くするという滑稽なことをやってしまいました。

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