戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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 いきなりながら申し訳ございませんです!
 第拾漆話の内容が第拾捌話になってしまってました。
 手元の話数と公開された話数に差があり何故だろうと確認したところ発覚しました。つい先程修正及び追加を行いましたので、こちらをお読み頂く前に拾漆話をご覧下さいますよう、なにとぞお願いいたしますでする。

 それともう一つ、これから投稿間隔を少しずつ短くしていこうと思います。目安的には毎回1時間程ずつです。今回は予期せぬ事態があったため出来ませんでしたが、次週は今週及び次週分の2時間、22時00分に投稿する予定です。

 これからも響ちゃんと踊君の応援、よろしくお願いしますです。


第拾玖話

クラス対抗戦開始直前になったけど、残念ながら一兄は最後までなぜ鈴ちゃんが怒っているのかわからなかった。

 全校生徒-1くらい(何故か踊君が見当たらなくっているのかどうかわかりません)が見守る中、初戦のペアの決定が知らされる。

 

『織斑一夏vs凰鈴音』

 

 わぁお……、いきなり専用機持ち同士の対決みたいです。しかも一兄対鈴ちゃんっていう絶対誰か仕組んだでしょとツッコミたくなる人選に二度見して頬を叩いて確認してしまった。

 

「いきなり鈴ちゃんだなんてー。一兄も大変だね」

 

「ひびりんはどっちが勝つと思う~?」

 

 私は今のほほんちゃんと一緒に客席にいる。……あ、何気に客席で観戦するの初めてだ。この前は当然としてずっと前に来た時も面倒なことがあって見逃してしまったんだよね。

 

「うーん……、鈴ちゃんのほうが有利だとは思うけど、一兄の剣技は侮れないし……、あー、でもあれじゃ一兄が勝つのはけっこう難かも」

 

 一兄よりも先に準備を整えた鈴ちゃんが戦場に舞い上がった。

 そんな鈴ちゃんの手には双槍とでも呼べばいいのか、前後両方に青龍刀が取り付けられた鈴ちゃんの身の丈を超える武器があった。

 使い勝手の良さはわからないけど、ああいった特殊な武器は相当の訓練を培わないとまともに使いこなすことはできないらしい(踊君談)。両方に刃があるから強そうに見えるけど、実際の所刃の方向と振る向きが完全に一致しないと何も切れなくて(翼さん談)、振りミスると自分が切れちゃうこともあり踊君談)、届く距離も剣と変わらない(翼さん談――ただし自由自在に大きさを変えられるアメノハバキリには無用な悩み)とかデメリットのほうが多いみたい。

 でも鈴ちゃんにとって大切な試合に持ち込むほどなんだから、そんな沢山のデメリットを打ち消しさらに高度の技術を持っているんだと思う。まだまだ感の取り戻せていない一兄にはとても厳しい戦いになるんじゃないかな。

 

「それにあの肩でふよふよしてる二門も気になるし」

 

 下を向いてホバーリングしている球体の何か、何か撃ってきそうなんだよね~。

 

「もん? あれへんてこなブースターじゃない~?」

 

「たぶん違う気がする。勘だけど」

 

 遅れて一兄がピットを飛び出した。変わらず純白なISが日の下で燦々としていて眩しい。

 

「頑張って織斑君!」

 

「絶対勝つのよ!フリーパスのために!」

 

「勝って、私たちに貢ぎなさい!」

 

 ……私は何も聞いてない。だって私は二人の決戦に集中してるからね。

 

 

 

「行くぜ」

 

「かかってきなさい!」

 

 試合開始と共に一夏は駆け出した。

 あらゆる戦闘において手の読み合いというのは重要な役割を担い、IS戦においてもそれは然りであり、そうするべきだ。とはいえ一夏と白式のペアにはあまり必要がない……いや、それどころかむしろそんなことをすれば悪手である。

 

「はぁあ!」

 

 第一の理由は白式に搭載された武器。

 一夏は白式の推進を疎らに吹かし不規則な軌道で迫ると、唯一の武器たる雪平を手に振り下ろした。

 

「甘いわよッ!」

 

 だが鈴の持つ青龍刀に正面から相殺された。立ち止まる暇などは取らず、一夏は即座に身体を引くと二連、三連と彼女の機体『甲龍』に斬りかかる。

 中距離仕様の武器さえ持たない白式に距離を取るという選択肢はまずありえない。そんなことをすればどうぞ撃ってくださいと言っているようなものだ。

 セシリア戦の時のように所持している武器を知らないわけじゃない一夏は前に出ることを自ずと選び続けなければならない。

 

「まだだ!」

 

 斜めから落ちてくる青龍刀を肩につきそうなほど斜めに寝かせた雪平で流す。さらに剣を手放すと左手に持ち替え、身体の捻りで極限まで高めた遠心力で強烈な一撃を叩き込む。

 

「っう! やるじゃないっ! でもっ!!」

 

 流されたとわかるやいなや鈴は手を回し石突きにあたる部分の刃で相打たせると、雪平を基点に一夏を飛び越え、さらに無数の斬撃をもって離れた。

 

「チッ!」

 

 一夏が振り向いた先で、鈴の肩あたりを漂っていた二基の球体が眼を開いた。最悪の事態と判断し一夏は神経を今まで以上に研ぎ澄ませ鈴の動きに注視する……だが、そんな一夏を嘲笑うかのようにそれは目を光らせた。

 

「がはっ!?」

 

 突然の警告に追随するかのように何かが一夏の腹部に叩き込まれた。

 

「(何が!?)」

 

「今のはただのジャブよ!」

 

 目を白黒させているうちに姿のない拳が一夏の顔面を殴りつけた。

 

「(風?)……空気砲か!」

 

 当たる寸前に感じた周りに逆らい頬を撫でた違和の風に、たった二度で一夏はその正体を見破った。正確には衝撃砲といい、もう少し応用を効かせられるものなのだが甲龍の今の設定なら間違いでもない。

 それにどっちにしたとしても一夏にとって苦しい状況なのに違いはない。

 

「ぐっ!」

 

 そして悪手たる第二の理由が浮上し始めた。それは圧倒的に足りない練度。

 一夏は長年の怠りで剣士として1.5流ほどに落ち込んでしまっており、ISに至っては3流にも届かない初心者だ。

 見えない砲弾を完全に避けることは叶わず、直撃しないことが一夏のできる精一杯……………………………………のはず(・・・)だった。

 

「残念。所詮は男ってことね……」

 

 誰かが落胆の声を上げた。その言葉に会場は皆頷く。

 けれど、その声に頷かなかったものもいた。

 それは彼と共に歩んできたものであり、

 彼と共に培ってきたものでもあり、

 彼と力を交えたものでもある。

 彼女達は彼をよく知っている。彼はどんな時でもその眼差しを曲げないことを。

 だから今起きたことを素直に受け入れる。

 

「っ!! そこだっ!」

 

 彼と戦うものも知っていた。故に驚かない。彼が見えない砲弾を斬り裂いたということに。

 

「……もう慣れたってわけ」

 

「ふぅ……ヒヤヒヤしたぜ。おう、それはもう見切ったぜ」

 

 たった5つの砲弾で彼は慣れたという。観客が息をのむ中で、一夏は鈴の放ったさらなる5連の空気の塊を難なく斬った。いくら練度が足りなくてもそれを補う術が偶然にもこの時の一夏にはあったのだ。

 

「鈴の癖は覚えてるからな」

 

 長年、織斑千冬と過ごしてきた一夏は女子を見続けることにあまり照れを感じない。こと戦闘においては全くと言っていいほどなく、観察も優に行える。

 そこに加えて相手がセカンド幼なじみの鈴というのも味方している。去年とは言え普段をよく知っているからこそ、撃つ時の僅かな差異に早い段階で気づくことができた。

 そして聖踊というイレギュラーの介入を受けさらなる高みへと進み続ける立花響というイレギュラーの存在もまた一夏の力になった。彼女とはライバル的な関係で魂をぶつけ合った一夏があの負けを認めた日のまま暢気に過ごしていられるわけがない。

 視線と合わせれば今の一夏でも打ち払う程度不可能ではなかった。

 

「まあ、だからって全部見せたわけじゃないから構いやしないんだけど、ねっ!」

 

 鈴がほんの僅かな力を加えただけで、双槍は半ばで分断されて二刀流になった。

 

「今度は双剣かよ」

 

 衝撃砲を躱し一夏と鈴は空中で斬り結ぶ。

 

「はぁああっ!」

 

「うぉおおおっ!」

 

 互いに刃を振るい幾度となくしのぎを削りあった。衝撃砲の撃ち出される微かな音が鳴り止まない金属音の中に紛れて響く。その度に一夏は空気圧に耐え全身を仰け反らせて射線上から白式を引かせ完全に反応してみせた。

 だが手数も武装も有利な鈴に抗えるほどの実力を一夏は持ち合わせていなかった。いくら何でもたった一振りの剣だけで双剣双銃(砲?)を相手するのはその道を極めた者であっても厳しいものだ。一流に満たない今の一夏が腕だけで勝てるなど到底なし得ない希望でしかない。

 残された勝利への導はたった一つ。

 

「(……こうなったら)」

 

 不利を悟った一夏は一か八かの大勝負に打って出た。

 

「(やるっきゃねぇ!)」

 

 今までの超近接の激しい突貫戦が嘘のように、自分から大きく距離を取ると雪片を正面に構え直し、自身の周囲を静寂で包み込んだ。

 

「(あの目……来る!)」

 

 鈴の勘が危険を告げたと同時、一夏の背が轟きを起こした。次の瞬間、鈴の目の前まで一夏は攻め込んでいた。

 

瞬時加速(イグニッションブースト)ッ!?」

 

 瞬時加速、名の通り瞬間で加速する技法の一つで、叩き出す最高速度は通常を遥かに上回る。

 しかし、それには当然代償が伴う、それも3つ。空気圧で描ける軌道は直線しかなく、爆発時に使用されるエネルギーと体を守ろうと働くエネルギーもバカにならず、さらに急激にかかる重圧は回避時のそれと比べるのも烏滸がましいほどの差で乗り手の身体にあっさりと悲鳴を上げさせる。

 

「ぐぅっ!」

 

 そのため高度な技法として知られているのだが、どうしてそんなものを一夏が知っているのか?

 疑問は尽きないだろうが、実のところ本人もそれが瞬時加速と名付けられているのを知らない。というのも、この前の響の動きを少しでも取り入れようと試行錯誤してできたのがこれだっただけなのだ。

 色々解説を交えたがそんなことはすこぶるどうでもいいことか。今重要なのは一夏が高速で迫り、雪平の切っ先を鈴に向けているという事実だ。

 

「いっけぇええぇえええっ!」

 

 雪平の刃がガシャリと開くと共に、煌めく光明の鋒が姿を現した。白式の持つ単一能力(ワンオフ・アビリティー)、零落白夜が発動したのだ。

 それは嘗て姉である織村千冬を世界最強の座に導いた最強の力。凡ゆるエネルギーを切り裂く最強の戈であり、しかし自身を動かす源から剥奪し糧とする諸刃の剣ともなりうる業。

 これが決まれば一夏の勝利、決まらねば敗北は必至。

 一夏の全力を賭けた一撃……、

 

「な、何!?」

 

「……黒いIS?」

 

それは予期せぬ乱入者によって阻まれるのだった。

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