戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
色々あったけど三年が過ぎた。
本当色々あったよ……。
その辺のことは置いとくとして、私は高校生になりました。
入学したのは私立リディアン音楽院という学校です。この学校には私の憧れの人が通っているんですよ。そしてとてもレベルの高い私立なんです。
……今、誰か頭が悪いって言わなかった?
事実、私は馬鹿ですよ~だ。そこは未来や踊君に頼み込んで教えて貰いましたよ。何度、阿呆だの馬鹿だの言われたか……はぁ~。
そうして頑張った結果何とか合格しました。
ただ頭の良い踊君は不思議なことに進学しないで働くみたいです。
皆、驚いてたけど踊君なら行っても意味ないかという感じであっさり通っちゃった。大学入試の超難問は既にオール満点、大学院の研究なんかも暇つぶしと称して大幅に進めちゃうほどだから当然かもしれないけど。
頭の出来が違い過ぎです。
そして今は……
「はぁ~……」
「立花さん! 溜息を吐きたいのは私の方です! 入学初日で遅刻するとはどういうつもりですか!」
「えっと……そのぅ……子猫がですね、木に登ったまま降りられなくなっていたのを助けてて……それでぇ」
「それで?」
先生が私を睨んだ。青筋をピクピクしているのが見える。
そりゃー、入学初日に遅刻したのは悪いですけど子猫を助けるためだったんだから大目に見てくれても良いのに。
「ずっと木の上にいてお腹が空いているんじゃないかなって」
「た・ち・ば・な・さん?」
「は、はい! 申し訳ございませんでした!!!」
土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。
こ、怖すぎです。
「はぁ、まぁいいでしょう。今回は見逃してあげますが次はありませんからね」
「すみませんでした」
先生にもう一度謝罪をして職員室から出ると教室に向かった。
「響、こっちだよ」
教室に入ると未来が私を呼んだ。
「ありがと」
「普通、いきなり遅刻する? もしかして、また誰かを助けてたの?」
「えへへっ、ちょっと子猫をね」
呆れたような顔で未来は私を見る
私のことは何でもお見通しだな~。さっすが私の親友。
「響の趣味はわかってるけど、ほどほどにしなよ」
「ちょっとくらい良いじゃん」
「ちょっとって、……はぁ」
未来に溜息を吐かれちゃった。人助けが好きなんだもん、仕方ないじゃん。
「皆さん、揃ってますね?」
さっきの先生が入ってきた。この人が担任だったんだ。私の名前を知っているのも納得できる。
「貴方達の担任の――」
先生の挨拶から始まったホームルームではこの学院の初連絡や今日の流れなどがあり、あと私達生徒の自己紹介もあった。
「――えっと、取り敢えず連絡は終わりよ。後は諸事情で遅れている私の補佐をしてくれる人を待つだけです」
その補佐の人はそれからすぐに教室の扉前に来た。
「来たようですね。聖さん、入ってください」
聖さんって言うんだ。聖さんね。
え、聖? ……き、気のせいだよね。
その人は扉を開けて入ってきた。
「遅れてすみません。皆さん初めましてこれから一年このクラスを補佐することになりました。聖踊です」
「踊君(さん)!?」
ああ……予想が当たってしまった。
何で踊君がここにいるの……。
「そこの二人、静かにしなさい」
踊君に注意され大人しく……
「出来ないよ!? 何でここにいるの!?」
「普通に雇われたからだぞ」
あっれ~、踊君ってまだ16だよね。教師になれないはずなんだけどな~。
「ちなみに言っておくが私は教員ではなく教務補佐であって言い換えるなら教師の卵と言ったところだから年齢はそこまで関係ないんだぞ。あと補佐とは言え、教える側の人に溜め口は使わないように」
「そ、そうですか。すみません」
周りの人が私を見てくる。
絶対、変な子だと思われちゃってるね。
「失礼ですが、立花さんとはお知り合いで?」
「ええ、私はそこにいる立花の義兄です」
「「「「「え!?」」」」」
そこからは大変だった。先生も含めた質問攻め。答えられないことは無いけど質問が多過ぎてしんどかったよ。未来がいなかったらどれだけ掛かったか……考えたくない。
漸くホームルームが終わり学校から解放された。でもまだ帰る訳にはいけない。踊君にはまだまだ聞きたいことが山ほどある。
「何で踊君が教師になってるの?」
「だから補佐だってば」
「補佐でも猛者でも何でも良いから何でここに?」
「ダンナに仕事が無いか聞いたら紹介してくれた」
か、風鳴さんが犯人か!? あの人ったら何でよりにもよってここを推薦するのかな!? あの人にも私がここを目指してる、って言ってたはずなんだけど……はぁ~。
「踊君も受けないでよ。これから私は踊君とどう接したら良いかわかんないじゃん」
「校内で敬語を使ってくれてたら、どうでもいいだろ? 俺を敬う必要はないし」
「わ、わかった。頑張るよ」
ちゃんと敬語を使い続けられるか心配だ。油断したら鉄拳制裁が待ってるんじゃ……」
「安心しろ。手は出さんよ。出すのは課題くらいだ」
「え゛っ!?」
口に出てた!? って、まだ鉄拳制裁の方がましだった。
課題は嫌だよ~……。
「嫌なら問題を起こさなければ良いだけだ。未来はいるのか?」
「踊さん何か呼びましたか?」
踊君が呟くと唐突に未来が現れた。お、可笑しい、教室で待っててと言ったのに、何時からそこにいたんだろ。
「響のことを頼みたくてな。誰一人例外なく接するから響の手綱は任せたぞ」
「もちろんですよ」
「私は馬か!!」
「「似たようなものだろ(でしょ)」」
ぐぬぅ~……。
「どうどう」
「私は馬じゃない!!」
二人とも、酷い……。
「嫌なら自嘲しなさい」
「ついでに頭も使え」
「もう止めて! 既に響ちゃんのライフはゼロなんですよ! もう追い打ちかけないで下さい」
心が串刺しにされて、もう再起不能です。折角の高校生デビューが~~……。
「それじゃあ、聖さん。そろそろ帰ります。さようなら」
「おう。さようなら、気を付けて帰れよ」
未来に肩を貸して貰って学生寮に帰る。
やっぱり私って呪われてるよ~。
次の日からは凄い地獄だった。
確かに言った通り踊君は、誰一人贔屓せずに他の生徒と何も変わらず接してくれた。でもそれが返って辛い。日頃の行いで接し方を日ごとに変えてくるのだ。
ほんのちょっとの変化だから他の人にはわからない。けど長く一緒にいた私や未来にはわかるギリギリの変化、遅刻をしたり宿題を忘れると扱いがちょっぴり雑になっている。
筆頭は勿論私です。誰かを助けようとして遅刻、宿題を未来に手伝って貰いながらも終わらせられず未提出、どっちも自業自得だけど何日も繰り返した結果……私の扱いが最低になってしまった。
別に雑なのは平気だよ。
でもね、隣りには生徒の模範生とも言えるほど礼儀正しく誰に対しても優しい優等生、未来がいるんだよ。悪いことをして評価が下がるように良いことをすれば評価は上がる。未来の評価は私とは正反対に上がり続け最高に、一緒にいたら私が無駄に傷付くのだ。
……未来が眩しい
「友達の絆に罅が入れたいのかな~」
いっその事、グレてやろうか……
「ち、違うと思うよ」
「その心は?」
「えっと、たぶん響にちゃんとして欲しいんじゃないのかな? 私と扱いの差を変えることで響がまともになってくれるのを願ってるんだと思うよ」
「私の趣味を知っているのに?」
ほっとけないのだから遅刻もする。
「踊さんが言ってたけど、確かに遅刻で引いてはいるけど人助けをしたということでプラスもしてるって。基本は授業中の居眠りが問題らしいよ」
「え? そうだったの。知ってたなら教えてよ」
「響がグレそうになるまで言うなって」
「見抜かれてるだと!?」
まさかここまで予想してるなんて……掌の上で踊らされるというやつなのかな…………。
「居眠りしないように気を付けてね。踊さんの前じゃ今までみたいに隠れて寝るなんて真似、出来るわけがないんだから」
「善処します」
ほとんどの授業に踊君は出て何か作業をしている。基本は後ろにいて生徒が気にならないように息を潜めているため、存在を忘れてしまう生徒が続出し私もその内の一人です。
「そういえばあれって何をしてるのか、未来は知ってる?」
「あれって、何?」
「踊君って、何時も後ろで何かしてるじゃん。あれだよ」
「ああ、生徒の観察と授業の理解度チェックだよ。生徒にわかっていなさそうなところがあったら先生に報告してるんだって、勉強も教えたりもしてるよ」
「えっ!? そんなの聞いてないよ」
「聞かれない限り教えないのが踊さん流で、自分で考えて悩んでもわからないなら教えてくれるわよ」
もっと早く教えて欲しかった。わからないことだらけで既に勉強が嫌になっていたんですけど。
「いつものことだからやってると思ってたけど、もしかして今まで踊さんに頼ってなかったの?」
「うん」
未来が頭を押さえてしまった。
「それじゃあ、出来なくなるわけだよ。明日、踊さんにわからないことを聞きなさい」
「は~い」
これで、宿題忘れも徹夜で勉強をして居眠りする必要が無くなるかもしれない。扱いも元には戻せるはず。
ちょっと、希望が見えてきた。
試しに地文一文字開けやってみました。
読みやすくなりましたか?
今までと、今回のどちらが読みやすいか教えてください。意見の多い方を修正します。