戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第弐拾肆話

 騒ぎが一段落した後、踊君は緊急搬送された。

 大量のビームを残っていたちょっぴりのシールドエネルギーと絶対防御だけで受けきり、金属をほぼ素手で殴り飛ばしたんだから当然ちゃ当然なんだけど、ちょっと心配。機械だとバレないかが……。……でもよく考えてみたらあの二課でも言われるまで気付けなかったんだし平気そうです。

 あ、あと乱入してきた無人機――調べた結果やっぱり無人機だった――と闘った私と一兄、鈴ちゃんも念のために検査を受けることになった。んだけど、二人に少し疲労が堪っているくらいでなんにも問題なかった。

 私は攻撃をする暇さえ真面にあげなかったからへいき、へっちゃらです。

 その後の事情聴取でへとへとにされたんだけどね……。ちー姉の眼光恐ろしすぎ……、たぶん現存する生命なら皆我先にって逃げだすんじゃないかな。

 

「あの濁った目は怒った未来に通ずるものがある気がする」

 

『(お二人とも無茶ばかりする響さんのことが心配なだけなんですけど、本人はいつになったら気付いてあげられるのか……)』

 

 トホホ……、光を捨てちゃった目はトラウマものです。ちー姉は言うまでもないことだけど、未来がこれまた超超怖い。ガングニール着てるのに頭をガッチリホールドされて身動きが取れなくなった時は本気で死を覚悟したくらいです。

 あの時の未来の顔は早急に流すとして、えっと私はこの後どうしたら良いのかな。

 

「全部話すと良いと思うわよ」

 

「やっぱり?」

 

「逃がすと思いまして?」

 

「いちにいぃ~、へるぷみ~」

 

「逃がさんぞ」

 

「だってよ」

 

 うぇーい、やっぱりかー! 

 今、私たちはちー姉に続いて鈴ちゃんたちの尋問を受けています。皆、全部話すまで帰してくれそうにないです。

 

「うーん、何から話せば良いかな……」

 

「そうね……。まずいつのことなのか、ってことからお願いするわ」

 

「えっと7年前の第2回モンド・グロッソの決勝戦の日だよ」

 

「第2回とおっしゃいますと、織斑先生が放棄したのと何か関係が……?」

 

「あははは……、ちー姉があんなことしちゃったのも私たちのせいなんだよね」

 

 あの日の悔しさは絶対忘れない。もうちょっと私たちが強ければ回避できたのに、って何度思ったか分からないくらい思い続けてる。

 

「ちょっとドジ踏んで、二人共々お持ち帰りされちゃったんだよね~。しばらくがんばったんだけど数に押し切られちゃった」

 

「それって誘拐ではないか!?」

 

「ちっ、気付かれたか」

 

「可愛い表現で誤魔化すな」

 

 誘拐されたなんて情けないもん。翼さんとかクリスちゃんだと冷たい目とか嘲笑されそうだし……誘拐と言うのはヤダ。

 

「もうあと1年先だったら鷹爪落瀑蹴とかが使えるようになってたのにな~」

 

「(むしろそれが原因なのでは……)」

 

「(あたしもそう思うわ。確かあの日から急激に特訓量が増えてた気がする)」

 

「(気のせいじゃないぞ。響はあの日からそれまでの倍以上に量を増やしてた。……俺は流石にちょっと足したくらいで抑えたけど……)」

 

「その時に死神……ヴァルファでしたかしら? かつて黒武士と呼ばれていた方に助けられたのですね?」

 

「うん。でぃ……ヴァルファだったらしいよ」

 

 一兄から聞いた話と、聞こえてきた打撃音とか金属音で判断しただけで、メイビーな不確かなものだけど、ヴァルファはテレビで放送されてたから見間違えはしないだろうし、生身+鎌一本で犯罪組織を蹂躙できる人なんて踊君以外(この世界には)いないと思いたい。

 

「なんでそんな曖昧なのよ」

 

「いや~、大乱闘が過ぎちゃいまして、目が覚めたら目隠し手錠猿ぐつわに縄と拘束具のオンパレードで床に転がされちゃってました。なんで耳で聞くくらいしかできなかったんだよね」

 

 あの時は気付いたら目の前真っ暗でびっくり、それにすっごい怖かった。まあ、聞こえてくるのが阿鼻叫喚の悲鳴だけしかなかったからだけど……。

 

「一夏は見たのよね?」

 

「ああ。あの時のあの人は正しくヒーローって感じだった」

 

「いったいどんなのだったんだ?」

 

「響と一緒に何処かに連れ去られてさ。真っ暗な部屋でもう助けはない、って諦めそうになって、でもまだ千冬姉たちと生きたいって願った時だった。

 

 『貴様等か、子供の願いを邪魔するものは』

 

 そう言ってあの人は建物を粉砕して俺たちの前に現れたんだ」

 

 さ、流石、踊君。エスパーもびっくりなタイミングと言葉で登場したんだ。しかも部屋粉砕て、鎌使って無いんかい。まさかのパンチっすか、それともキックっすか。いやまあ、どっちでも凄いしか言葉が出ないけど。

 

「本当にヒーローのような登場の仕方ですわね。ですが、そうなるとどうしてそのようなお方が世間一般で騒がれている"死神"となってしまったのでしょう?」

 

「なんだよな。本当に事件起こしてる奴とヴァルファさんが同じ人なのか正直俺は疑ってる」

 

「性格だけ見るんだったら別人だって言えるけど、IS施設を襲ってる奴って真っ黒のマントを被っただけの生身だったんでしょ? そんな人が黒武士以外にいるとか怖過ぎるわよ」

 

「まあ確かに一理ある」

 

 ……踊君自体が一杯いるけどね。少なくとも4人は確実に。多分まだあったことのない人がもう1人はいると思うから、全部で5人かな?

 皆で首を捻って考えるけど、とある可能性を最初から除外して考えてる気がする。

 

「ねぇねぇ。逆に考えてみたらどうかな?」

 

「逆、ですか?」

 

「うん。ヴァルファって良い人?」

 

「良い人だろ。まさか響は本当はヴァルファが悪い奴で企んでるとか思ってるんじゃ…

「そんなことは思ってないから」じゃあどういうことだよ」

 

「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。じゃあ死神は良い人?」

 

「襲撃してるのよ? 悪い人に決まってるじゃない」

 

「そうですわ。我が国にも大きな損害が出ていますし、日本でも被害が出ているのですわよ」

 

「それじゃあさ、その被害を受けた研究院の人たちは良い人なの?」

 

「「それは勿論…………、あれ?」」

 

 そこにいた人全員が固まった。良い人だ、なんて私たちが言い切ることなんて出来ないもん。死神が建物を破壊し尽くして一般の目に付くほど大きかったから世界中に襲撃されたって話が広まったけど、そこで何の研究をしていたかった話はIS関連としか何処も発表してなかったりする。

 不思議だよね~。

 ……そのことに気付けたのは死神が踊君だって知ってたからなんだけどね。

 

「考えてみると確かに研究者が善だ、とは言い切れそうにないな。内容までは覚えていないが何かに関する研究を禁止する文面が、アラスカ条約で新たに記載されたという話を聞いた覚えがある。響の言う通り、真相は逆なのかもしれん」

 

「「「…………」」」

 

「やだな~、皆どうしたの? ヴァルファと死神が同じだったらって話でもしもの話だよ。そんな深刻に受け取らないでよ~」

 

「そ、そうね。もうこの話は止めにしてお茶にしましょ」

 

「そうですわね。そうしましょう。では私はお菓子を見繕ってきますわね」

 

「なら私はお茶を入れておこう」

 

「あ、俺も手伝う」

 

 話を分断して、私たちは残った時間をちょっとぎくしゃくしたお茶会で締めるのでした。

 

 

 

 どこかの暗い場所で一人の少年は呪詛を吐いていた。

 

「クソ、クソッ! たかがゴーレムに負けるとか使えねぇな、役立たずが!! あのクソ、 こんなクズ送りつけやがって!!」

 

 自身のISを地面に叩き付け少年は当たり散らす。このISが既存を遙かに凌駕する力を秘めていることに、自らが弱いということに、気づきもせず……。




 久し振りに登場したどっかの転生者さん(笑)。
 決して忘れてたわけじゃありませんよ。……たぶんですけど。
 前回のビッキーvsセッシーvsおりむー戦はクラス内でのことで参加しようなかったし、今回はゴーレムに瞬殺されたので書くことは無かった。
 次の回からはちょくちょく出るんじゃないかな?

「私たちのクラスだけ全力で避けてたからね」

 学内人気ランキングでは1年1組と極一部を除いて一夏と並んで大人気(解せぬ……)、ひぃじぃの人気は除かれた人たちからの人気は高いですが他の人からは不気味がられたり怖がられたりしています(不満大)。
 
 そして次回の投稿は初の金曜日、今から161時間後の金曜午後9時になります。
 正直死にかけてますが、これからもよろしくお願いしますですよ。
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