戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第参拾肆話

 6月も終盤、大会の日が訪れた。

 

「やあ。響、箒、調子はどう?」

 

「うん、バッチリだよ。デュノア君達には負けないから!」

 

「問題ない。一夏、負けんぞ」

 

「俺だってそう簡単に負けられねぇさ。やらなきゃならねぇこともあるからな」

 

 準備も終わり待合所でペアになった箒ちゃんと対戦表の発表待ちをしていると、一兄・デュノアペアがやってきた。二人とも気合十分で当たったら楽しい試合になりそうな予感がします。

 あ、ちなみに踊君もちゃんとこの大会に出場する、のほほんちゃんとペアで。連携で考えたら私と踊君で組んじゃえば良いんだけど、流石にそれをしちゃうと誰も勝てなくなっちゃうから話し合うまでもなく組もうとはしなかった。

 私と踊君がペアを組んだとしたらワンチャン可能性があるのは滅茶苦茶仲が良くなった鈴セシリアペアくらいじゃないかな。……犬猿の仲だし、二人とも怪我で出場できないけど。

 

「それにしてもすげぇな」

 

 備え付けの大型モニターを通して映し出される観客席の様子を見た一兄が思わずといった風に言葉を漏らした。

 

「大人も暇なんだね」

 

「そんなわけないでしょ! 3年生のスカウトや、2年生の一年間での成果を見るためとかであの人達も仕事で来てるからね!」

 

「「「へー。ご苦労なこって」」」

 

「三人とも、ちょっとはねぎらってあげてよ!?」」

 

 可哀想なものを見る目で見ようとしたら、流石に会社の事情ってものを知っているシャルル君に怒られちゃった。

 

「お、きたきた……、まじか」

 

「うげっ!?」

 

 発表された組み合わせを見て呻いてしまった。

 

 まずは第1試合。織斑(兄)・デュノア VS ラウラ・桐生

 そして第2試合。織斑(妹)・箒 VS 聖・布仏

 

 絶対これ誰かの意志が介入してるでしょ!? 初っぱなから大本命の組み合わせじゃないですかー! 初っぱなから専用機持ちが総出とかそれじゃ盛り上がりに欠けるんじゃ……。残ってる専用機持ちは二人とも休養中で、代表候補生も他のクラスにあと一人いたはずだけど、それもまだ作成中だって言う話だし、これで良いんだか……。

 

 …………ところで桐生って誰だっけ?

 

 

 

「一戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」

 

「ああ、本当にな。俺も同じ気持ちだぜ」

 

 試合開始まで後、5秒程。

 一夏がラウラとにらみ合っている横で、僕はもう一人の相手、桐生龍也君に意識を向けて戦術を練っていた。

 正直に言っちゃうと桐生君相手なら特に必要はないんだけどね。一夏に、ラウラと一対一で戦わせてほしい、と頼まれたので万が一がないように用意しておくだけだ。

 

「よろしくね。桐生君」

 

 その一環として、少しでもこっちに意識を向けさせておこうと桐生君に話しかけたのだけど、それは失敗だった。

 

「こちらこそ。よろしくな、シャルルちゃん(・・・)

 

「……え?」

 

 にやける桐生君のその反しに、僕の頭は真っ白になってしまった。

 そして一時の間も置かず試合の開始を知らせるブザーが響き渡る。

 

「ハァッ!」

 

 気付いたら桐生君が目の前まで迫ってきていた。慌ててシールドを前に出してなんとかその一撃を防いだけれど、シールドに大きな傷跡ができてしまった。

 しかも自分でもわかるほど動揺が酷い。頭の中には何故や何時なんて疑問がひっきりなしに湧いて出て、試合に集中しきれてないのがイヤでもわかってしまう。

 

「へへっ、やっぱそうか」

 

「なっ!?」

 

 鎌を掛けられた!?

 油断した! 余りにも自信満々に告げた様から既に知られているものだと思ったのに、そうじゃなかったんだ!

 考えてみたら当たり前のことだった。僕は基本一夏や響たちと一緒に行動していて、彼とは廊下で数回すれ違った程度の関係でしかなかったのだ。そんな彼に僕の正体が気付けるはずがないじゃないか。

 でも後悔してももう遅い。目の前の男に僕が女の子だってことを知られてしまったのだ。どうやっても誤魔化しきれない。

 

「イレギュラーばっかで困ったけど……、漸く俺様の時代が来た」

 

 不気味な笑みを浮かべると桐生君がプライベートチャンネルを繋げてきた。

 

「なあ、学園生活は楽しいか?」

 

「……なに?」

 

 突然の質問に戸惑うも撃つ手は止めない。いや、むしろだからこそ余計に絶対に止められない。

 桐生君には既に何百というラファールに積んだ多種多様の武器が放つ銃弾を浴びせているのだ。ちゃんと命中しているのをラファールだって捉えているのは確認済み。それなのに桐生君が平然と聞いてこられるってことはつまり、これまでの攻撃が全く効いていないってことだから。

 特にあの左腕の十字の盾が堅すぎるんだ。しかも時折返されるレーザーらしきものの威力が信じられないくらいに高い。ここで少しでも弾幕を薄くしてしまったら簡単に押し切られるのが目に見えていた。

 だから少しでも策を立てるための時間を稼ぐために僕はあえて話に乗ることにした。

 

「女なのに男の振りさせられて織斑一夏に近づいてさ、自分のしたいことができずにそれで良いのか?」

 

「そ、それは……」

 

 それで良い、とは言え返せなかった。僕だって、できることなら女だって言いたい。男の振りはイヤだって言ってしまいたい。そう思ってしまうことがあったから。

 

「俺なら上手くことを運べるぜ。お前が女だって言っても誰にも文句が言えない状況を作ってやる。織斑なんか捨てて俺と来いよ」

 

 彼は僕を助けようとしてくれている、そう思わせるようなセリフだった。……並べられた言葉の上辺だけなら。でも彼の言葉を反芻すると言外に告げてられていることがわかってしまった。

 この条件を飲んで俺の女になれ、さもないと全部バラし学園にいられなくするぞ、そう彼は言っているのだ。飲んでしまえばこんな男の伴侶にされ、飲まなければ性別を偽り世間を騒がせたことを考えると死刑、運が良くて終身刑ってところかな。

 はははっ、どっちもイヤだな~。

 

「ま、この試合中くらいなら待ってやるよ」

 

「ッ!?」

 

 突然体勢が崩れた。大きく精神が揺らぎをブースターが検知してしまったんだ。慌てて直そうとしたけど、できてしまった隙は大きくて放たれたレーザーに直撃……、

 

「シャル!!」

 

 強い衝撃が僕を襲った。でもシールドエネルギーには影響がなくて、それは一夏が僕を抱えて飛んでいた。

 

「一夏、どうして……、ラウラは?」

 

「何とか躱してな。相棒だろ? 助けるのは当たり前だ」

 

 ヤバい、泣いちゃいそうだ。ラウラだって強敵のはずなのに、それでも僕も見ていてくれたことが嬉しかった。

 

「シャル、何を言われたのかはわからねぇけど、無理すんなよ。後は俺に任せとけ」

 

 桐生君と同じように一夏も笑った。でもそこには桐生君の時のような不快さは一片も感じられなかった。ただ純粋に僕のためを思って言ってくれているんだと思えた。

 でも、だからって!

 

「そんなわけには!「俺なら大丈夫だ」……一夏」

 

 僕を離すと一夏は一人で追いかけてくる二人の元へ戻っていった。

 僕も行かなきゃ、そう思っているのに体が動かない。今の僕に出来たのは手を伸ばすことだけだった。

 

「私も随分舐められたものだな!」

 

「お前等程度、俺一人で十分だ」

 

「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 

 ラウラ一人でもキツいはずなのに、一夏は二人を相手に挑発して挑む。無数の翠のビームに翻弄され、ワイヤーとナイフの暴力に曝され、極めつけは白式にとって天敵にあたるAICに止められても、一夏の目には諦めはなくあったのは勝つという強い意志だけだった。

 

「ウオォォォッ!!」

 

 ライフルを握る手に力が籠もる。

 このまま戦えば桐生君に僕の正体をバラされるだろう。そうなった後に起こることを考えると確かに怖かった。でも、それ以上にこのまま一夏が傷ついていくのを見ている方がもっとイヤだ。

 どうせ逃げ道が無いのなら、僕の人生を狂わせたあの人を道連れにできる道を選んでやる。

 例え僕がどうなろうとも、関係の無い一夏を巻き込むわけには行かないんだ!

 

『……貴方方の娘シャルロット・デュノアに何故あのようなマネをさせたのか、聞かせて貰ってもよろしいですか?』

 

 強く決意を固めたその時だった。

 あの人たちの会話が聞こえてきたのは……。




 ついにこの日が来た。
 週2回投稿の開始を告げる鐘が鳴るぅうううっ!

「……すでに瀕死状態で、投稿日時もわけわかんなくなっちゃってるのにね」

「キリが良いてだけで、一日丸々削るらしいからな。放っておくしかあるまい」

「そうよ。ぐうたら生活が響いて曜日感覚なんかがズタボロなだけよ」

「いくら本当でも、そんなこと言っちゃだめだよ」

 そこいらないことは言わない!
 あと最後のが一番胸に刺さってるから!!

「「「「嫌なら生活態度を改めろ」」」」

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